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日本作業療法士協会の取り組みと提言

一般社団法人日本作業療法士協会

1.今回の震災全体を通じての見解

 中村会長を災害対策本部長として、震災の翌日の2011年3月12日に災害対策本部が設置された。災害支援活動は本部を中心に、被災地の各県作業療法士会と随時連絡を取りながら、被災地の迷惑になることなく、当協会として出来ること、作業療法士としてすべきこと、などを都度関係者と協議しながら行ってきた。当協会の災害支援活動の原則は「被災地の状況に合わせ、決して急ぐことなく、復興に向けた支援をできるかぎり長期的な視点で展開すること」であった。

【この1年の協会の取り組み】 

 災害対策本部を設置後、2011年3月13日に第1回災害対策本部会議を開催し、以下の方針が決定されいち早くホームページにも掲載した。

1. 被災地の会員状況や被災状況を把握するための情報収集を行う。(協会災害対策本部専用メールアドレスの開設、被災県作業療法士会との連絡網の構築)

2. 災害支援金口座を開設する(会員から広く支援金を集める)

3. 初期対応支援金を4士会(岩手、宮城、福島、茨城)に30万円ずつ支給する。

4. 被災会員への対応として会費免除申請を受け付ける。

5. ボランティア活動を展開する。

6. 実習施設の影響について調査する。

この方針に基づき、災害支援活動を展開してきた。

2.当協会の取り組み、対応

(1)災害支援活動の経済的支援

  • ① 震災後初期(3~4月)に岩手・宮城・福島・茨城の4県作業療法士会に30万円ずつ初期対応支援金を支出した。
  • ② 被災県の作業療法士会に対する支援、当協会が行う災害支援活動、支援物資の購入等の資金とするために支援金を募集した。
    【収入】約1,335万円(平成24年3月現在)
    【支出】約764万円(平成24年3月現在)

(2)被災地への会員派遣

全国の会員からボランティアを募集・登録し、被災地の作業療法士会等の要請に応じて、必要とされている人員を適宜派遣した。

  • ① 宮城県仙台市若林区における生活機能対応専門職チームへの会員派遣
    【派遣期間】平成23年4月3日~5月9日
    【活動場所】宮城県仙台市若林区・宮城野区
    【派遣者数】10名
  • ② 宮城県作業療法士会の災害支援活動への会員派遣
    【派遣期間】派遣期間:平成23年4月15日~9月22日
    【活動場所】石巻市、気仙沼市、南三陸町
    【派遣者数】延べ65名
  • ③ 岩手県作業療法士会の災害支援活動への会員派遣
    【派遣期間】平成23年5月1日~7月22日
    【活動場所】釜石地区(釜石市・大槌町)
    【派遣者数】延べ37名
  • ④ 日本発達障害ネットワークが福島県から受託した「被災した障がい児に対する相談・援助事業」への会員派遣
    【派遣期間】平成23年11月7日~現在継続中
    【活動場所】福島県相馬市・南相馬市
    【派遣者数】5名
  • ⑤ 福島県南相馬市における災害支援活動への会員派遣
    【派遣期間】平成23年12月11日~平成24年3月31日
    【活動場所】福島県南相馬市(原町区・鹿島区)
    【派遣者数】23名

(3)被災地の会員支援

 ① 会費に関する優遇措置(平成24年1月現在)

  • 地震・津波で罹災した会員の会費免除:64件
  • 原発事故で被災した会員の会費免除:26件
  • 会費支払い期限の猶予措置:2件
  • 会費支払の分納措置:1件

 ② 被災会員の復職支援

  • 被災した会員の復職先として全国から求人情報を収集し、順次ホームページに掲載。合計165件の求人情報を掲載した。

 ③ 作業療法士養成教育関連の調査と支援

  • 被災地で学生の受け入れが不可能となった臨床実習施設の代替となる実習受け入れ施設を全国から募集し、養成校とのマッチングを行った。

(4)その他

 平成23年度3次補正予算により、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課を事務局として実施される「被災者の心のケア」事業に従事する専門職として会員の調整・確保を行い、結果的に4名の作業療法士を派遣した。

3.震災発生直後から今日までで見えてきた課題

  • ① 大規模災害時の速やかな医療やリハビリテーション機能の復活に向けた動きがとれるような体制を常時構築しておくこと。
  • ② 被災地の自治体に発信機能が期待できない場合は、速やかにコーディネーター機能を補完できるシステムを構築すること。
  • ③ 被災地の情報収集および適切な情報発信のシステムを構築すること。
  • ④ 災害救助法に作業療法士の職名を明記すること。
  • ⑤ 非常事態に支援に入ったボランティア等の動きと現地の従来の医療や介護のサービスにうまくつないでいく機能を持つこと。

4.今後に向けての提言

 ① 平時より大規模災害を想定し、災害時支援協定を結ぶ等、被災地に速やかに医療・リハビリテーションの支援が展開できるシステムを構築すること。

  • <理由> 大規模災害により、本来あった医療やリハビリテーション機能が壊滅したままの状態が続いている地区が多く、仮設住宅での生活を開始してはいるが、従来の医療やリハビリテーション機能が戻らないままにある。住民は医療やリハビリテーションのサービスが不足したまま生活をしている状況がある。

 ② 被災地の自治体に発信機能が期待できない場合は、速やかにコーディネーター機能を補完できるシステムを構築すること。

  • <理由> 今回の災害は発信およびコーディネートする機能を、被災地である自治体が果たせないほど被害が甚大であった。そのことで、支援を適時に展開することができなかった。そのような場合を想定し、現地にコーディネーター機能を外部から補完する必要がある。

 ③ 被災地の情報収集および適切な情報発信のシステムを構築すること。

  • <理由> 情報収集および適切な情報発信ができない状況が続いたので、被災者には不安を助長させ、適切な支援展開ができない状況があった。

 ④ 災害救助法に作業療法士の職名を明記すること。

  • <理由> 今回の災害で多くの作業療法士が支援活動を展開したが、その多くはボランティアという形であり、その活動には限界があった。災害救助法に作業療法士等リハビリテーション専門職を明記することで、その力を十分に発揮できる。