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被災地からの提言-誰もが住みやすいまちづくりに向けて

 世界保健機関(WHO)によれば、世界の人口の15%が障害者と推計されています。障害者の多くは、「災害時に最も被害を受けやすい人」と言えます。
 2011年3月11日に発生した東日本大震災では、障害者の死亡率が住民全体の約2倍であるとの報告が出されています。その理由の一つに、防災政策が障害者にとって有効でなかったことがあげられます。すべての住民に共通に行う防災の取り組みはもちろん大切ですが、同時に、一人一人のさまざまな条件やニーズに対応していなければ、いざというときに命を救うことはできません。東日本大震災の直後には、個人情報保護に関する法制上の壁などもあって、障害者の居場所の確認すら難しかった事実を忘れてはなりません。また、命は取り留めたものの、その後の避難生活で大きな忍耐を強いられ、人としての尊厳を傷つけられたことも少なくありませんでした。
 これらを踏まえて、次のことを提言します。

1.防災に関わるあらゆる政策、計画、取り組みに、障害者を明確に位置付けることが必要です。

  • 2015年からの防災に関する国連の国際的な枠組みに、障害者を明確に位置付けることが必要です。
  • 国、自治体、その他公的な防災に関する計画と取り組みにも、障害者を位置付けるとともに、災害時の障害者支援を担当する部局を設けることが重要です。
  • 災害に関わるニーズは一人一人異なります。それぞれの障害の実態に対応するとともに、性別、年齢、国籍などに配慮する必要があります。

2.防災の計画や取り組みに、障害者とその関係者が参加することが不可欠です。

  • 防災に関する政策、計画づくりや、日ごろの訓練も含む取り組みに、障害者とその関係者が参加することが不可欠です。
  • 国、自治体、その他公的機関の、防災を担当する部局にも、障害者を任用することが重要です。
  • 障害者に関わる課題は幅広く、障害当事者を含む住民や民間団体の知恵と経験を活かすことが大切です。このことは東日本大震災の経験からも明らかです。
  • 障害者自身が参加することにより、それほど大きな費用をかけることなく、障害者を支援するために最も的確で効果のある政策、計画、企画を実施することができます。また、障害当事者の参加によって、説得力のある啓発が可能となります。

3.防災に関わる計画の作成や取り組みを、障害者権利条約に基づいて行い、差別や格差を生まないインクルーシブなものにすることが必要です。

  • 防災に関する政策、計画や、日ごろの訓練、訓練のためのマニュアル、そして災害時の警報や避難指示・勧告、避難支援の行動を、誰にでも分かりやすく、また利用しやすいものにすることが必要です。
  • 特に、防災に関する情報や、建物・設備を利用しやすくするために、地域を越えた共通の取り組みができるよう、国などの広域的なルールづくりが必要です。
  • 一人一人が、支援を受ける対象者となるだけではなく、日ごろから、防災の取り組みに参加し貢献できるような地域の仕組みを、すべての住民の参加により作ることが大切です。

 災害は、社会のありさまをそのまま映し出すと言われています。日ごろの取り組みこそが、災害時に大きな効果を生むと言えます。防災の取り組みを、差別や格差を生まないインクルーシブなものとすることで、誰もが住みやすいまちづくりにつながるはずです。

2013年10月29日
国際防災の日記念 障害者と防災シンポジウム
参加者・主催者一同