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『児童と青年のための録音図書 ―― 読書による体験、読書訓練と知識』

児童担当司書はディスレクシアの子ども達のことは考えていないのでしょうか?文:シーア・スティーネン

「子ども向けの録音図書はどこに置いてありますか?」各県立図書館にアンケートを実施しました。一番多かった回答は、児童図書コーナーではありませんでした。しかしながらこのアンケートの実施により、幾つかの図書館が録音図書を児童図書コーナーに移動することにしました。

 1996年に児童専門ソーシャルワーカーは各自治体の主要図書館の児童担当司書を対象に、「児童向けの録音図書をどこに置いてありますか?」というアンケートを実施しました。
 録音点字図書館は1996年の秋に県立図書館が行った地方自治体に対するレポートをもとに資料を集めました。図書館の規模は以下のように市町村の人口から決められています。
 人口15,000以下:小規模図書館、人口15,000~30,000:中規模図書館、人口30,000以上:大規模図書館。
 2県を除いて全県立図書館がレポートを提出しました。アンケートに回答しなかったのは(調査をしなかった2県以外では)ある県の4つの市町村だけでした。
 つまり回答率は大変高かったわけです。ですから私達のまとめた結果は人口密度の低い地域においても、大都市においても、国内の各地域にある主要図書館の様子を的確にとらえたといえるのではないでしょうか。
 このレポートはある傾向を示してはいますが、まったく文字通りに受け取れるものであはありません。この数字の資料には不確かな部分もあるのですから。

アンケート1.
図書館毎の録音図書、カセットブック、ブック&テープ(録音図書)の入手状況

表_図書館毎の録音図書、カセットブック、ブック&テープの入手状況

a:あなたの図書館には児童向けの録音図書がありますか?
b:あなたの図書館には児童向けのカセットブックがありますか?
c:あなたの図書館にはブック&テープがありますか?
d:あなた方は通常県立図書館から児童向けの録音図書を借りていますか?
e:あなた方は通常県立図書館から児童向けのカセットブックを借りていますか?
f:あなた方は通常県立図書館からブック&テープを借りていますか?
g:あなた方は通常録音点字図書館から児童向けの録音図書を借りていますか?

 235の図書館が自館の蔵書についてアンケートに答えました。
 図書館側にとっては児童向けの録音図書を備えていることが必ずしも当然ではありません。小規模の市町村立図書館のうち30%と中規模の図書館のうち16%は備えていませんでした。
 カセットブックに関してはほとんど全ての館が、持っていて当然という見方をしています。
持っていなかったのは若干の小規模図書館のみでした。
 ブック&テープ(録音図書)は中規模の図書館と大規模の図書館ではすでに確立されたメディアであり、95%の図書館が備えていました。小規模の図書館のうち23%は備えていませんでした。
 県立図書館からの録音図書借り入れに関する質問に応じたのは229の図書館でした。児童向けのカセットブックは特に小規模の図書館が県立図書館から借りていました。ほとんどの大規模図書館はブック&テープ(録音図書)の借り入れは行っていませんでした。
 録音点字図書館からの借り入れに関する質問に答えたのは、229の図書館でした。
 これらの図書館が自館に備えのないメディアを借り入れによって補っているのかどうかは、上のグラフから見ることはできません。

  • 国内の主要図書館のほとんどは購入または借り入れによって、児童向けの録音図書を入手している。

  • 市町村のうち、10ほどは録音図書業務を行っていないところがある。

  • 図書館の多くはノンフィクションの児童向け録音図書やあまり借り手のいない録音図書は借り入れていない。(ほとんどの場合録音点字図書館にあるのみ)

  • ブック&テープ(録音図書)業務は一般的になりつつあるが、小規模の図書館では行っていないところもある。

  • ほとんどの図書館が児童向けのカセットブックは備えている。

アンケート2aからc. 録音図書、児童向けカセットブック、ブック&テープ(録音図書)の配置について

選択肢
a:児童図書コーナーにこれらのメディア用の書架がある。
b:児童図書コーナーに普通の本と一緒に収めてある。
c:録音図書コーナーに大人向けの録音図書と一緒に収めてある。
d:上記以外の収め方をしている

*児童図書コーナーに置いてある3つのメディアによる児童図書の数はaとbを 足すことによって得られます。

アンケート2a.
児童向け録音図書の配置

表_児童向け録音図書の配置

 dのabc以外の配置方法はたとえば雑誌やAVメディア、または大人向けのカセットブックと共に配置することや、簡単に読める本のコーナーに置くことです。
 規模の大きな図書館ほど利用者は児童向けの録音図書を、児童図書コーナーで見つけることができるようです。

大規模図書館の半分が児童向け録音図書を児童図書コーナーに配置していましたが、小規模図書館や中規模図書館はほとんど大人向けの録音図書と同じ場所に置いていました。

アンケート2b.
児童向けカセットブックの配置

表_児童向けカセットブックの配置

 児童向けカセットブックのabc以外の配置方法はラウンド式本棚や、入り口近くの棚や、カセットブックコーナーに置くことです。
 ほとんどの図書館は児童図書コーナーに置くか、子ども達が最も見やすい場所に置くのが当然と考えています。
 
主要図書館のほとんどは児童向けカセットブックを児童図書コーナーに置いています。

アンケート2c.
ブック&テープの配置(本とテープが一緒に梱包されている場合)

表_ブック&テープの配置

 ブック&テープ(録音図書)のabc以外の配置方は、貸し出しカウンターに置く、学校の教科書コーナーに置く、『簡単に読める本』コーナーに置く、カセットブックといっしょに置く、AVメディアルームに置く、学習コーナーに置く等です。
 中規模図書館の25%と小規模図書館の21%は大人向けの録音図書コーナーに配置していました。
 ブック&テープ(録音図書)は学校の教材とみなされる傾向があります。

主要図書館の半数あまりがブック&テープ(録音図書)を児童図書コーナーに配置しています。


ディスカッションテーマ
 なぜ児童向けの図書が、印刷されているか録音されているか、または梱包の方法が違うだけで扱いが変わるのでしょうか?
 児童向けの録音図書だけが図書館によって扱いが変わるのは、場所が足りないから、以前からの習慣から、見た目が普通の図書と違うから、貸し出しの規則から、カセットの扱いが特別だから、司書達に充分な知識がないから、それとも誰の管轄にあるのかはっきりとはしないから、でしょうか?
 録音図書は他のメディアよりも盗まれやすいからでしょうか? Boken kommer (訪問貸し出し、または郵送貸し出し)によって児童向けの録音図書がよく利用されるていのは、なにか生物工学的な動機によって大人向けの録音図書と一緒においてあるためでしょうか?
 ブック&テープ(録音図書)はどうして他の図書のように独立して置かれないのでしょう?ブック&テープ(録音図書)の借り出し規定は他の図書よりも簡単だということでしょうか?
 カセットブック用のテープは録音図書よりも保存しやすいのでしょうか?ブック&テープ(録音図書)が児童図書コーナーに置いてあるのは、Boken kommerによって貸しだされることがないからでしょうか?
 読書訓練用のブック&テープ(録音図書)が児童図書コーナーにあるのは、教師達の希望によるのでしょうか、それとも児童担当司書の知識がそうさせるのでしょうか?
 ブック&テープ(録音図書)を利用している子ども達やその両親達や教師達は、普通の録音図書の利用を申し込むことはないのでしょうか?
 視覚障害を持つ子ども達は自分が読みたい本をどこで探すのでしょうか?
 児童担当司書は児童向けの録音図書ならば、児童図書コーナーよりもオーディオビジュアルコーナーや録音図書専用のコーナーや棚で探す方が簡単だと考えているのでしょうか?
 児童向けの録音図書購入に関しては、誰が責任を持つのでしょうか?カセットブックに関しては?ブック&テープ(録音図書)に関しては?
 児童図書コーナーに児童向けのカセットブックがおいてある図書館が、なぜ児童向けの録音図書はおかないのでしょうか?

復習
 多くの市町村が児童向けの録音図書の扱いに関してディスカッションを重ねるには、それなりの理由があるようです。
 1.たとえばディスレクシアキャンペーン(1996-97年)は、社会にまずそのような子
   ども達と向き合って、彼らがどのような読書方法を必要としているのか話し合うよ
   うに仕向けることはできたのか。
 2.読書に対して障害を持つ者、児童の読書、一人一人に適したメディアについて第8-
   9項で言及している図書館法(SFS 1996:1596 )は図書館業務の改善にとって意味が
   あったのか。

 
 最後に、児童向けの録音図書やオーディオビジュアルメディアの業務はほとんどの場合、大変うまく機能していたことを述べなくてはなりません。配置も子ども達にとって手の届きやすいところであり、その掲示も図書館の目立つところにありました。職員達はこの業務に強い責任感をもってあたっています。それはどんな規模の図書館においても変わりません。
 上記のように質問を投げかけたのは、職員が児童に対する図書館業務をより入念に見直す必要があると感じている図書館や市町村において、問題点が見つめられ、より活発な話し合いがなされるためなのです。

資料
 録音点字図書館 TPB

  • 印刷された文章を読むことに困難がある人々に適したメディアを製作し、貸し出す国立行政機関
  • 録音図書は地方公共図書館、または学校図書館を通して貸し出しが行われている。
  • 点字図書は録音点字図書館から直接貸し出されるか、販売される。図書館を通して貸し出しサービスを行うこともできる。
  • 読書に対して困難を持つ大学またはカレッジの学生は録音図書、点字図書、電子図書、または拡大図書などの形で録音点字図書館から専攻学科の教科書を借りることができる。
  • 録音点字図書館はデジタルな録音図書を製作し、下記の人々が利用できるようにデジタル録音図書システム、DAISYを開発している。

録音図書利用の権利を持つ人々:

  • 視覚障害者

  • 身体障害者

  • 知的障害を持つ人々

  • 失語症を持つ人々

  • 読書が困難な人々

  • 聴覚障害者(聴覚トレーニングのため)

  • 長期療養患者

  • 回復期患者

 一時的に読書が困難になった人々も、その期間は録音図書を利用する権利を持っています。

近隣の図書館からの貸し出し
 現在では50,000冊の様々な録音図書が出版されており、毎年約3,000冊は新たに製作されています。それらは全て近隣の図書館から借りることができます。

広報
 録音点字図書館はカタログや検索リストなど様々な広報資料を作成しています。それらには『録音点字図書館広報』と大きく銘記され、録音点字図書館から無料でもらえます。
 レーナ・ベリィマン著『読み書きに困難を持つ小学生のための録音図書』というレポートはその一例です。
 録音点字図書館のホームページ、www.tpb.seをのぞいてみてください。このホームページにはHandikatというページがリンクされており、録音図書のカタログなどが載っています。