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第1部 CBR
地域に根ざしたリハビリテーション~私たちの体験から~ 障害者の声

調査結果

全般的な所見

CBRプログラムの成功例とはどのようなものなのか? それは提供されたサービスの量と質によって測定するべきなのだろうか? あるいはCBRプログラムを契機として何とか始まった社会変革のプロセスの観点から測定するべきなのだろうか? 本調査は、CBRプログラムの強みが後者の分野に見出されることを示している。CBRプログラム実施対象地域では、医療や身体的リハビリテーションのサービスは依然として大半の障害者にとってアクセス困難であるのに対し、エンパワメントおよび社会の受容のプロセスは始まっている。

本調査が明らかにしているように、CBRプログラムは実施対象地域において変革プロセスを生み出すとともに、さまざまな分野で障害者のQOL向上をもたらした。しかし、CBRプログラムが実施されたコミュニティおよび障害者の数は依然として極めて少数である。また、コミュニティ(もしくは地方政府)がひとたび認識を高めれば、必要なリソース、基本的なサービス、簡単な補助具などを提供するであろうとの期待は、未だに実現されていない。CBRプログラムが永続的かつ総合的な向上を達成するためには、社会における他の取り組みや施策との一体化、メインストリームのコミュニティ開発プログラムへの統合、ならびに政府による本格的な支援が必要であることは明白である。この実現のためには、DPOおよび国際組織が権利擁護や能力開発の分野で重要な役割を果たすことが出来る。

調査対象となった3ヶ国すべてにおいて、障害に関する国レベルの政策や新たな立法が現在検討されつつあり、あるいはすでに採択されていることは心強い。ガーナでは、「地方議会」を通じて政策の優先順位と資源配分に影響を与える新たな選択肢が生まれている。ガイアナでは先ごろ、保健省とCBRプログラムとが新たな合意に達した。さらにネパールでは、障害問題に対するメディアの関心が高まっている。

本調査でインタビュー対象者が語った体験談は、CBRプログラムが多くの好ましい影響を与えていることを実証しているが、CBRプログラムの効率性および持続可能性についての懸念も提起するものである。

QOL分析

CBRプログラムは社会規範や価値観に変革のプロセスを惹き起こしたと思われるが、これは障害者のQOLのさらなる発展にとって不可欠なものである。本調査は、以下のような側面でCBRがQOLに好ましいインパクトを与えたことを示している。

  • 自尊心
  • エンパワメントおよび影響力
  • 社会へのインクルージョン
  • 自己信頼

しかし、インパクトは次のような点に関して限界がある。

  • 身体的ウェル・ビーイング
  • 社会が人権上の責務を果たすことに対する信頼と信用

自尊心

本調査では、障害者および障害児の親の報告から分かるように、CBRプログラムが自尊心を向上させたことが示されている。障害者は存在感を強めた。すなわち、障害者は障害種別に関係なく、家庭生活やコミュニティ対して貢献出来ることを示したのである。典型的な発言には以下のようなものがある。

「私は以前、劣等感がとても強かったのですが、CBRプログラムに参加してからは・・・劣等感を克服することができました・・・今では自分は他の人に引けをとらないと思うし、一定の活動や仕事を非障害者よりも上手にこなすことが出来ます。」

「私は以前まではとても内気な女の子で、2、3人の前で一言話すのにも気後れしていました。差別があったし、障害のない人たちが私に投げかける視線もその理由です。この村でプログラムが始まってから、私たちは障害のことが分かるようになって、いろいろな訓練を通して自らを支えることも学びました。私は今では自分に自信をもっていて、大勢の前で自己紹介したり、考えを話したり出来ます。」

「私は自分のことを、他の障害者のロールモデルだと思います。」

「CBRを始めてから、前のように気分が落ち込むことがありません ― ああ、私にもこういう子がいる。他のお子さんと会って交流することで、私の娘は多くのことを学びました。私は娘のことを誇りに思います。」

「このプログラムは障害者の経済的状況を引き上げるのに役立つだけでなく、障害者が内面的に強くなるための手助けをしています。」

こうした変化もたらしたと思われる理由を分析すると、グループによって違いはあるものの、いくつかの結論を導き出すことが出来る。

は、子どもが社会的行動を向上させ、新しい技術を身につけ、コミュニケーションが改善されると、誇りをもつようになる。また、親は自分の経験を他の親への手助けに役立てることが出来ると、そのことを誇りに思うようになる。

障害者は、以下のような点が可能になると自尊心を向上させる。

  • 家族のウェル・ビーイングに対して、実践的または経済的に貢献する。
  • 自身の自立を保つ。
  • コミュニティの発展に貢献する。
  • 社会的役割を積極的に果たす。
  • 良好な学業成績を収め、有用な技術を身につけ、また収入を得る能力があることを証明する。

障害のない人を助けることが出来ることは、自尊心にとって大きな刺激となる。ガーナのある女性は、CBRプログラムからの融資を利用して、女性グループ全体で原材料をローンで購入する手助けをした。これによって、この女性の自尊心も社会的地位も大いに高まった。

聴覚障害者にとっては、自尊心と社会へのインクルージョンはコミュニケーション能力とも関係がある。一般に認められている手話および手話通訳サービスへのアクセスは、社会における認知とインクルージョン、ならびに自尊心と自信の必須条件である。調査対象国では、補聴器が大半の聴覚障害者に手ごろな価格で手に入る状況が近い将来に実現する見通しはない。

エンパワメントおよび影響力

多くのCBRの政策文書には、障害者および障害者団体の参加と影響力の必要性が実際に明記されているにもかかわらず、CBRプログラムの大半は、こうした側面が依然として弱い。DPOおよび障害者は、発言力と選択権をもった参加者としてではなく、受益者と見なされている。しかし、CBRプログラムは、この状況に立ち向かう力を多くの障害者に与えた。以下の発言は、CBRプログラムがエンパワメントおよび影響力に与えるインパクトを、障害者とその家族がどのようにとらえているかを表している。

ガーナでの感想:
「以前は、私たちはお互いにほとんど知りませんでした。それが変わりました。「協会」のことを知ってから、私は他にも私のような人がいるということが分かったのです。仲間がいるから、会合に出席するといつも楽しいです。助言を受けたり、仲間を作ったり、権利擁護の役割を果たすことが出来ました。」

「CBRは「協会」にとって大きな助けとなりました。なぜなら、CBRのおかげで、私たちは資金を得て、協会メンバーを動員することが出来たからです。3つの協会(視覚障害者協会、ろう者協会、身体障害者協会)は、私たちの地区では一致協力して活動しています。CBRプログラムが励みとなって、DPOは共通の問題をとりあげて共通の展望を示すための共通の基盤を作ることが出来ました。」

ガイアナの親の発言:
「CBRのことを知ってから、私は多くのことを学びました。障害のあるお子さんは他にもたくさんいて、私の子どもだけではないことが分かりました。私の経験から他の親御さんにアドバイスすることが出来ます。私は16年間、子どもと向き合ってこなければならなかったので、いろいろな経験をしました。だから、CBRから学んだことは何であれ、子どもをいつも楽しく過ごさせたり、子どもを家に閉じ込めないで他の人たちと交流出来るようにするためにはどうすればよいかを、私は若い親御さんに伝えることが出来ます。かつては、私は子どもをめったに家から出しませんでした。誰かが子どもを笑うのではないか、子どもとコミュニケーションがとれるのは私たち親だけなのではないかと気遣ってのことです。CBRに参加出来ることは、本当にすばらしいことです。」

「政策立案者は、私たちに相談することなく、私たちに代わって物事を決めることは出来ないことを理解していると思います。当事者は私たちであって、自分たちがどう感じるのかを正確に分かっているのだから。」

ネパールでは:
「この村でCBRが始まる前は、私たちはこのコミュニティに障害者が何人住んでいるのか、知りませんでした。障害者を見かけて、彼らの障害のことを知るだけだったのです。しかし、今では私たちは互いに強いつながりをもっています。私たちが望むままに何でもできます。自分の障害が彼や彼女のそれとは違うことが分かるようになりましたが、何らかの方法で私たちが互いに支えあっています。このことは、私たちがCBRプログラムの指導と支援のおかげで学んだことです。」

「この「障害者組織開発グループ(DODG)」の結束を通して、私たちは何でも出来ます。このコミュニティの中で、自分たちの権利を求めて闘うことが出来ます。私たちの進む道を妨げる人がいたとしても、私たちは果敢に立ち向かって、私たちにとってマイナスになる行いをやめさせることが出来ます。もし、『あなたはああだこうだ』と言う人がいたら、私たちはDODGを通じて、そんなことを言うべきではないと説得することが出来ます。」

エンパワメント向上に寄与したと考えられる要因を分析したところ、以下の点がまとめられた:

  • 障害者および障害児の親が体験を共有出来る集まりの場をつくったこと。
  • 困難や差別についての共通体験、ならびにこうした問題を克服するための可能な解決法を共有したこと。
  • 集会への参加を経済的、物理的に可能にする自立性。
  • リーダーシップ研修が自信と自尊心を高めたこと。

こうしたエンパワメントにもかかわらず、影響力を獲得するまでには長い道のりがあるという強い感覚がある。障害者およびDPOの参加については、口頭で、また方針の中で盛んに述べられていることを多くの障害者が証言している。しかし、実際には、障害者は受動的な受益者と見なされ、CBRプログラムにおいて雇用、登用、スタディ・ビジット、研修機会の対象として検討されることはない。また、障害者はリソース・パーソンや教師と考えられることもない。知的障害者およびろう者は、コミュニケーションの問題から、さらに不利な立場にあることが指摘された。

「聴覚障害者の場合、関心事を言葉に表すことができないので、邪魔者と見なされます。人々がこんな否定的な言い方をすることも少なくありません。『ろう者が来るぞ。』と」

「私は手話が少ししか出来ないので、制約があります。もっと訓練を受けたいと思います。当局とのコミュニケーションが難しいので、私たちのニーズを真剣に受け止めてもらったことはありません。」

社会へのインクルージョン

CBRプログラムの結果として、すべての障害種別に関して社会へのインクルージョンおよび受容がいかに改善されたかを、多くの体験談が示している。

「社会の理解度が向上しました。私たちは皆と交流でき、皆が私たちを笑いものにすることはありません。」

「障害者が長官公邸に入ることは、以前はタブーでした。それが今ではすっかり変わりました。」

「コミュニティの中で動けば、援助は快く提供されます。視覚障害者に対する理解度は大幅に向上しました。」

「私は今では、家族の集まりに招かれます。」

「CBRによって、障害児をもつ他の多くの親が外に出て、社会に自分たちの居場所があること、隠れたり家に閉じこもるべきではないことを理解するようになりました。その意味で、CBRは優れています。CBRはこうした親や障害児を勇気づけたのです。」

「私は町で一目置かれる仕立て屋の一人なので、社会の認知とか受容といったことで大きな問題はありません。」

「この村でCBRプログラムが始まる前は、障害者は地元の人たちにからかわれたり、屈辱を受けたりしていました。こういうことをされて、障害者は外に出ることをためらうようになり、そのため何もしないで家の中でじっとしているほかありませんでした。しかし、CBRプログラムがこの村で始まってから、障害者の生活は激変しました。障害者にさまざまな技術活動訓練が行われ、自分の力で収入を得る能力が身につきました。今では、障害児は一般の子供が勉強する学校に通っています。障害児は以前のようにからかわれることはありませんが、そういうことが全くなくなったわけでもありません。」

社会の受容が変化した理由を分析すると、以下の点がもっとも重要であることが分かる。

  • CBRプログラムが障害者の状況について質問を開始すると、障害者の存在が明らかになる。
  • 障害者は自分たちが技術をもっており、家庭生活に貢献し、収入を得ることが出来ることを、コミュニティに示した。
  • 障害者はNGOおよび政府当局の関心を引き、それがコミュニティの利益となっている。
  • コミュニティのリーダーおよび住民は、さまざまな障害、その原因、ならびに障害児・者の支援方法を理解した。

社会規範や価値観を変えるための唯一の最も効果的なツールは、成功したロールモデルの例を示すことであることに注目すべきである。「成功例」とは、所得創出ならびに実践的技能、社会的技能あるいは学力の面で十分な実績を挙げているということである。これは、学校、訓練計画、職場において先駆者となっている障害児・者にプレッシャーを与えるかもしれない。

障害児にとって、社会へのインクルージョンは学校に受け入れられるかどうかという問題でもある。CBRプログラムが障害児の普通校への就学数にインパクトを与えたことは、疑いの余地がない。しかし、親およびDPOは、インクルーシブな教育のインパクトをめぐって、入り混じった感情を抱いている。メリットを受けた子どもがいる反面、一部の子どもにとっては、屈辱、低い自尊心、社会的疎外を意味したからである。

ろう者が社会へのインクルージョンを享受するためには、手話環境が前提となる。CBRプロジェクトにおいて、手話環境はほとんど整備されていない。「ろう者協会」は、しかるべき支援が与えられれば、ろう者の社会生活および手話能力開発に重要な役割を果たすことが出来る。ガーナでは、地域のろう者協会の設立促進にCBRプログラムが貢献している。ガーナおよびネパールでは、ろう者の発見およびこうした協会への照会に、CBRプログラムが大きな役割を担っている。

自立

CBRプログラムは、多くの障害児・者の自立に好ましいインパクトを与えた。第一に、日常生活技術の訓練は有益であり、以下のような発言があった。

「当初、私は社会生活に順応することは難しいと思いました。身の回りのことをする能力もありませんでした。例えば、靴を履くことも私には難しかったのです。CBRプログラムからの訓練を受けて、今では自分のことは自分で出来ますし、コミュニティの住民と交流することもできます。」

「私が家の外に出ると、皆が私をじろじろ見て、よくこう言ったものです。顔と体は美しいけれど、歩けないのだから何の価値もない、と。人はそうやって私を哀れんだけれど、両親は私のことを愛し、精一杯支えてくれました。今では、車椅子のおかげで、もっと遠いところへも行くことができます。自分で服を着替えることもできます。洗濯もできます。母や姉妹、義理の姉妹の支えなしに入浴も出来ます。」

「CBRは私たち家族全員の生活を変えました。生まれたときから子どもは自分で何も出来なくて、何をどうすればよいのか、どこに助けを求めればよいのか分からず、とても苦しい思いをしました。そんな時、CBRが私たちの生活に入ってきたのです。他の家族や私たちにとって、CBRは非常にうまくいきました。」

個人としての自立に好ましいインパクトが及ぼされた理由を分析したところ、社会カウンセリングならびに日常生活技術および移動能力に関するアドバイスがもっとも重要な要因であることが分かった。補助具または身体的リハビリテーションの提供が自立に役立つという言及はなされなかった。上述の例で車椅子を支給された女性は、例外である。この女性はその車椅子を、スウェーデンから寄贈された ― CBRプログラムを通じてではない。ネパールには部品がないため、この車椅子は現在、故障中である。

第二に、以下の発言に見られるとおり、自立は技術訓練や融資計画よって達成された。

「現在、私はこの仕事から利益を得ていて、夫に頼らないでいられることを誇りに思います。私たちの社会では、女性はみんな男性に頼って生きていますが、私の場合、自分の仕事をもって自力で子どもを育てています。そのことを大変うれしく思います。」

「視力を失ったとき、私はどうすれば結婚相手を得ることが出来るか、どうすれば他の人と同じように畑に出られるか、心配でなりませんでした。織物技術を学んだ日は、私にとっていちばん幸せな日になりました。これが、収入を得る第一歩になったのです。それは、私が初めて融資を受けたときに現実のものとなりました。CBRプログラムからの融資によって、私は織物の商売を始めることが出来ました。今では、自分の必要なものを買い、家族を助けています。」

「この地域でCBRプログラムが始まっていなかったら、私はここまでやって来られなかったと思います。つまり、家族に何もかも頼って、1日中家にいたことでしょう。私は地面を這い、皆が私をじろじろ見て、私の障害のことを尋ねていたでしょう。でも、このプログラムは私の人生を前向きに変えました。CBRプログラムが始まる前は、家族に頼らざるを得ませんでしたが、今では私の独立した仕事で、家族を支えることが出来ます。」

経済的自立に好ましいインパクトが与えられた理由を分析したところ、融資計画が唯一、もっとも重要な影響をもつものと報告された。インタビュー対象者の多くが融資額は少なすぎると考えたものの、融資は技術訓練よりもはるかに高く評価されていた。理由は以下のとおりである。

  • 職業技術がなくても、社会経済的状況を改善するための選択肢の一つとして、動物の飼育がある。ニワトリまたはヤギを購入するための融資は、ターニング・ポイントとなりうる。
  • 見習い仕事を自力で見つけることの出来る障害者は多いが、開始資金がないため、商売を始めることができない。
  • 一部の障害者からは、CBRプログラムを通じて行われる技術訓練は効率的でないこと、また、特定の障害に適した技術訓練の種類に関して先入観があることも、不満として出されている。

身体的ウェル・ビーイング

障害者の身体的ウェル・ビーイングは、CBRプログラムの影響をそれほど受けていない。以下の発言が示すとおり、早期介入はほとんど行われず、多くの場合、依然として伝統医療が第一選択となっているのが現状である。

「私たちは最初から分かっていたわけではありません。私たちの子どもは、ジョージタウン公立病院で生まれました。難産で、医師に説明してもらうのにも本当に苦労しました。黄疸と関係があるが、いずれは何もかもよくなるということでした。時間が経過しても、私たちの見ることころ、まったく改善はありませんでした。小児科のクリニックでは、医師はやはり、何も問題はない、娘さんはちゃんと発達しますよと言いました。何年か後になってやっと、私たちは娘に障害があることを知りました。娘は、動くことも、頭をあげていることも出来ませんでした。」

「私は1年間、伝統治療師のところに通いました。治療師は、地元で作られた薬を私の脚に塗るほか、何ヶ所かのお寺に、ヤギやニワトリなどの動物を生贄として供えるよう、私たちに言ったものです。しかし、何をしても私の状態はよくなりませんでした。そこで私は病院へ行きましたが、薬物治療も私を救ってはくれませんでした。自分の足で立つことも、曲げることも出来ませんでした。私は、這ったり座ったりして仕事をしていました。というのも、医師や姉たちが、何もしないで座ってばかりいると、私は何も出来なくなって、状態はもっと悪くなると、それとなく言ったからです。それで私は、自分で出来るのならどんな方法でも、自分ですることにしました。」

「薬代が払えないので、私はもう病院へは行きません。だから、痛みがあるのです。」

こうした状況がなぜ起こるのかを分析すると、以下のような結論が得られる。

  • 医療従事者は依然として、さまざまな状態の診断または治療に関する知識に乏しい。
  • 医療はコストが高いため、アクセスできない。

ネパールからは、病院での治療および補助具の実費をCBRプロジェクトが支払うという朗報が届いている。これは一部の人には恩恵をもたらしている。しかし、各人の医療費を支払うことは、大規模に行うことの出来る持続可能な方法ではない。

さらに、コミュニティレベルで提供される身体的リハビリテーションの取り組みおよび補助具は、皆無であるか、質が低いように思われる。典型的な例は以下のとおりである。

「私は補装具を支給され、使い方の訓練を受けました。でも、家に戻るとひどい痛みを覚えて、見通しは良好とはいえませんでした。今では、杖を使って歩いています。」

「私は病院に連れて行かれましたが、快復することはできませんでした。歩行杖をもらいましたが、役に立ちませんでした。経済的な問題があって、私にぴったりのものを買うことができませんでした。今、私は歩行器なしでも何とか歩いています。CBRの担当者が、もっと楽に歩き回る方法を訓練してくれました。」

「補助具への支援はありません。保健省の管轄下にある義手義足センターにはすべての材料がありますが、とても高価です。私たちが苦情を言ったところ、聞くところによると、問題は原材料にかかる税金と、不利な為替レートなのだということです。」

こうした状況がなぜ起こるのかを分析したところ、以下のような影響が言及された。

  • 身体的リハビリテーションおよび補助具の製造は、予想よりも困難であるように思われ、コミュニティのボランティアが容易に取り扱うことができない。
  • 距離もしくは費用が原因で、照会施設にアクセスできない。

社会における信頼と信用

これは、CBRプログラムの弱点の一つであった。障害者(およびその家族)が指摘するところによると、協力的な発言や新たな政策にもかかわらず、家庭、コミュニティ、政府機関省庁おいても、また国際的開発援助においても、資源配分に関してはほとんど実践されていないのが実情である。障害者および障害者団体は、「私たちを救うのは私たち」であり、「私たちなしでは何も起こらない」との結論に達した。他者の善意に頼ることに、もはや納得していない。ボランティアが関心と熱意を失い、CBR委員会が解散し、政府や国際機関が約束を反故にするのを、彼らは目の当たりにしてきた。受ける権利のある支援を政府やコミュニティから得る可能性に対して多くのインタビュー対象者が悲観的だとしても、驚くにはあたらない。彼らの多くが希望を託しているのは、国際NGOである。以下、コメントの一部を示す。

「コミュニティは、社会の態度に関してとても革新的です。私が地方行政長官のところへ行くと、心から歓迎してオフィスに招き入れられ、多くの問題について話し合うことが出来ます。でも、経済的な取り組みや支援に話が及ぶと、対応にがっかりするのが常です。」

「CBRプログラムは地域に根ざしたものであるはずですが、ここでの対応はまったくもって期待はずれでした。教会で陳情した後、受け取れるのが約1ドル80セントなんて、信じられますか? これでは、陳情にかかった交通費にもなりません。」

「最初、あの人たち(当局)はプロジェクトに参加すると言いましたが、しばらくして、援助はもらえないことが分かりました。そこで私たちは、団結して助け合うことに決めたのです。」

「これはCBRプロジェクトですが、私たちを支援するはずの担当者は、私たちを軽視しました。あの人たちは、何か報奨がもらえるものと期待して会合に参加していました。そんな見込みがなかったので、だんだん参加しなくなりました。」

信頼がほとんど向上しなかった理由を分析したところ、以下の点が明らかになった。

  • 多くのコミュニティは極めて貧しく、住民すべてに権利を保障するためのリソースがない。
  • 寄付を行うことの出来る少数の財界人が、疲弊している。
  • 精神的支援を行うのは容易である。費用がかからず、知名度も増す。リソースが求められると、熱意には限界があること、他の問題の方が優先度が高いことが明らかになるのである。

CBRプログラムの取り組みの分析

QOLに好ましいインパクトを与えるために用いられたさまざまなCBRプログラムを調査すると、障害者がもっとも有益だと考える取り組みは以下のように結論づけることが出来る(有益度の高い順に)。

  • 社会カウンセリング
  • 移動能力および日常生活技術の訓練
  • 融資の提供もしくは利用の円滑化
  • コミュニティの意識向上
  • 職業訓練/見習い制度の提供または促進
  • 地域の自助グループ、親のグループおよびDPOの結成の促進
  • さまざまな関係当局との連絡の促進
  • 就学の促進(学費や教師との連絡)

こうした意見を「基準規則」の文脈の中で考えると、CBRプログラムの取り組みについて、以下のような結論が得られる。

意識向上

意識向上は、CBRプログラムの中で、障害者のQOLにインパクトを与えるのに成功した重要な構成要素であると認識されている。

「最も重要なことは、障害者(PWD)に対する彼ら(コミュニティの住民)の態度を変えることです。障害者は自分たちを支えることが出来ることを、彼らに知ってもらわなくてはなりません。立派に生きている障害者の例を挙げて、彼らの注意を喚起しなければなりません。」

「一番すばらしかったのは、CBRの代表者たちが村役場の前で感動的なスピーチをした時のことです。スピーチを全部記憶しているわけではありませんが、一つだけは覚えています:彼らは、私たちにこう言いました。優れた技術と経済的な支援があれば、障害者は何でも出来る。もし機会を与えられれば、そして自分のしていることに自信と確固たる決意があれば、障害者は自立し、あらゆる分野で非障害者と対等な立場に立つことが出来る、と。その瞬間、私は子どもを養育するために出来ないことは何もないことを夫に示そうと、自分に誓いました。このことは誰にも言いませんでしたが、たとえ男性の仕事であれ何であれ、私は何でも出来るのだという強い決意を、自分の中に感じました。」

変化をもたらしたのは、主として以下のような意識向上の方法であった。

  • 家族および本人への社会カウンセリング
  • ロールモデルの提示。たとえば、社会的、物質的に「成功している」と思われている障害者など。
  • コミュニティの集会における対話および情報の普及。
  • 障害者とその家族を対象としたエンパワメント・ワークショップ。

インタビュー対象者からは、以下の点を指摘する声もあった。

  • 最善の社会認識は、障害者自身がつくりあげるものである。
  • 演劇は、人々に偏見に気づかせるための強力なツールである。
  • 従来のワークショップやセミナーは、効率的であるとは限らない。政府職員を対象とするセミナーは、実践的な実地研修および実務改善への報奨と併用しない限り、変革に結びつくことはほとんどない。
  • ラジオおよびテレビの視聴者が増加している中、メディアは新たな情報普及手段である。
  • 権利擁護者として、ポップスターやスポーツ界のスター選手が十分に活用されていない。

医療

CBRプログラムは保健医療当局の協力を得ることが出来なかったようで、医療扶助を提供する手段は極めて少数にとどまっている。唯一ネパールでは、CBRプログラムが医療費の支払いをしており、医療へのアクセスが向上したとの報告が障害者から確かに寄せられている。しかし、大半の障害者にとって第一選択は依然として昔ながらの治療師であり、このことが早期介入の妨げとなっている。以下の発言が、障害者とその家族の意見を代弁している。

「経済的な問題から、私は治療を受けられたためしがありません。」

「息子は生まれたときから、脚が内側に曲がっていました。彼(医師)は手術をして、歩けるようにしようと言いましたが、その医師のおかげで悪化しました。医師は3回手術しました。1回はジョージタウン病院、2回はセント・ジョセフ・マーシィ病院(私立)です。私たちは、「女性連合グループ(NGO)から(経済的)援助を受けました。CBRプログラムは、資金援助には役に立ちませんでした。説明によると、CBRが対象としているのは、親の訓練と、障害児の、特に家庭での生活支援の指導だということでした。」

保健医療システムには、以下のような問題があると報告されている。

  • プライマリー・ヘルス・ケアは、正確な診断および治療の能力に欠けている。
  • 治療は無料ではない。
  • 距離および費用が原因で、照会先の専門家にアクセス出来ない。

各国保健省はこうした不備に対して責任を負っており、研修ニーズならびに治療費助成の問題に取り組むべきである。現代医療システムが満足のゆく選択肢とならない限り、依然として昔ながらの治療師がコミュニティにおける第一選択であり、それは早期介入が行われないことを意味する。医療には、コミュニティレベルでは通常得られないリソースおよび知識が必要であることを認識するべきである。

リハビリテーションおよび支援サービス

身体的リハビリテーションおよび補助具の提供は、CBRプログラムの取り組みとして成功したと認識されてはいない。コミュニティレベルでこうしたサービスを提供することがこのように困難であることは予想外であり、照会システムは依然として、多くの地域でアクセス不可能もしくは皆無である。ガーナのあるDPOの代表の言を借りれば、以下のようになる。

「CBRプログラムでは当初、こういう期待がありました。コミュニティ内の適正技術から物質支援その他、すべての支援を得るべきだと。しかし、私の姉が言っていたように、適切なものを製造するためにはそれなりの専門知識が必要です。たとえば、コミュニティレベルでは、松葉杖を作りたいと思えば簡単に作ることが出来ますが、結局のところ、脇の下に当たる部分のクッション材がないため、利用者は脇の下にこぶができる可能性があるのです。サイズが合っていないことがあり、そうなると利用者は体がまっすぐ立つことが出来ず、むしろ曲がってしまうこともあります。こうしたサービス提供の研修施策がなくてはなりません。家で行う理学療法のような受動運動に関して言えば、施術者の知識が乏しいと、運動は役に立つどころか有害になる場合もあります。だから、こうしたサービスの提供にあたっては、ある程度のノウハウが必要です。」

補助具もしくは理学療法用具の地元での製造は、もともとCBRプログラムに含まれていなかった。進んだ技術の器具を生産するよりも、地元の材料を使って適切な器具をその場に応じて設計する方が、より熟練技能を必要とする場合がある。一般に、補助具の製造は依然として、国内数箇所のセンターでのみ行われているか、輸入されているかのどちらかである。このため、大半の障害者にとってあまりにも高価なものとなっている。

また、理学療法運動(エクササイズ)の考案および用具の使用にも技術が必要である。専門的なバックアップおよび照会システムがないため、対応は困難であった。理学療法もしくはリハビリテーション技術についての適切で質の高いアドバイスを提供したり、補助具を考案したりするための十分な知識を備えたCBRワーカーはほとんどいない。数日間の研修でフォローアップもなしというのは不十分である。親からは、以下のような発言もあった。

「私たちは、(専門家を交えた)2日間のワークショップを受けましたが、それだけでは何の役にも立ちません。継続的な取り組みが必要です。彼ら(理学療法士など)はニューアムステルダムから来なくてはならないので、ずいぶん費用がかかりますし、彼らの尽力には対価が支払われるべきです。」

しかし、3つのCBRプログラムにおいて、社会的リハビリテーションおよびカウンセリングは、障害者とその家族のQOL向上を達成したCBRプログラムの取り組みの中でもっとも重要な成功例であると言及された。もっとも評価された取り組みは、以下のとおりである。

  • 社会カウンセリング
  • 実践的な日常生活技術の訓練
  • 移動能力の訓練

残念ながら、カウンセリングおよび訓練は、コミュニケーション可能な障害者に限られている場合がほとんどである。知的障害者および聴覚障害者は放置されがちである。CBRワーカーは通常、こうした障害者とコミュニケーションをとり、そのニーズを把握する方法を知らない。しかし、ガーナおよびネパールでは、手話クラスがろう者協会との協力で運営されており、特に自尊心および社会へのインクルージョンに対する認識の面で、聴覚障害者のQOLに大きく貢献していると報告されている。

教育

調査対象となったCBRプログラムのすべてにおいて、普通校での教育へのアクセスを容易にすることは、重要な役割であった。授業料、教科書、制服には助成金が支給されるとともに、教員の養成も行われている。ガーナでは、巡回教師が普通校教師の支援を行っている。これは多くの子どもにとって、そのQOL向上に非常に貢献しているが、すべての子どもというわけではない。恩恵を受けるのは、肢体不自由もしくは軽度の障害をもつ子どもが大部分であると報告されている。インクルーシブな教育についての考え方は、障害者とその家族の間で異なる。インクルーシブな教育の概念は広く受け入れられているものの、その実施は議論の多い問題である。

本調査で語られた体験談は、子どもの障害種別および学校のリソースによって、インクルーシブな教育が有用にも有害にもなるさまを如実に物語っている。親子の大半が現実として直面するのは、多人数クラスで、教材が不足し、カリキュラムに柔軟性がなく、学習法や学習形式について不十分な研修しか受けていない教師である。このような環境に対処するために子どもが必要とするのは、家庭環境が支えとなること、良好なコミュニケーション能力があること、ならびに教師から特別扱いされる必要がほとんどないことである。そうでなければ、学校教育が排除と自尊心の低下を助長するおそれが高い。

以下の発言が示すとおり、障害者と親は、視覚障害および聴覚障害のある子供の状況に懸念を抱いていた。

「目と耳の不自由な生徒のために、教師はとくに研修を積むべきです。現在、私たちのところに視覚障害のある子供はいません。教師はその子たちの読み書き方法を理解しなければならないからです。教師に点字の知識がなければ、視覚障害のある子供が学校に通うのは無駄なことです。学ぶことは何もないでしょう。ただ学校へ行き、帰ってくるというだけです。聴覚障害のある子供の場合も同じように、教師は手話の知識をもつべきです。それでようやく、耳の不自由な生徒は十分に学ぶことが出来るのです。」

一部の親、とくに知的障害児の親は、子どもは所得創出に役立つ技術を学んだ方がよいと感じているが、その一方で大多数の親は、障害児にとって学校教育はより重要であると感じている。

「障害があってもなくても、子どもの教育はとても重要です。その上、障害児は野外作業や他の肉体労働が出来ないのですから、一般の子供よりもなおのこと教育を受けるべきです。だから、障害者が自立して生きていく近道は、教育を受けることです。」

「障害児の親の中には、子どもを学校にやらない人がいます。こういう親は、あなたのお子さんは教育を受ける必要がある、それだけがお子さんを社会で尊敬される人にする方法なのだと、プログラムの中で助言を受けるべきです。」

本調査のインタビュー対象者は、以下のようなニーズを強調した。

  • 聴覚障害のある子供および家族を対象とする手話クラス。
  • 知的障害児を対象とする技術訓練およびケアに的を絞った、親の運営によるコミュニティセンター。
  • 視覚障害児を対象とする日常生活動作(ADL)および点字の訓練。

CBRプログラムではこうした取り組みを強化するよう提言された。

所得保障および社会保障

本調査の結果によると、所得創出は意識向上とともに、CBRプログラムにおいて最も評価の高い取り組みである。所得創出は、本調査で示されたQOLのすべての側面に好ましいインパクトを与えている。すなわち、自尊心、社会へのインクルージョン、自立、身体的ウェル・ビーイング、エンパワメントおよび影響力の側面である。これは次のような発言から明らかである。

「理想としては、障害者はただ座しているべきではなく、熟練を要する活動に従事して自立し、障害者が非障害者に劣らないことを非障害者に示すべきです。」

「CBRが導入されたとき、私たちは融資と日常生活動作の訓練から、大きな支えを得ました。私は最初の融資を原材料の購入に使いました。2回目の融資で、ヤギとニワトリを買いました。すでに繁殖しています。今はウシを購入するために貯金しています。結婚したいと思ったら、花嫁の家族にウシを贈るのがしきたりなのです。」

CBRプログラムでは、技術訓練、系統的な見習い制度、ならびに回転融資制度が提供されている。本調査が明示しているように、融資は所得創出の取り組みの中でもっとも重要な部分と考えられている。融資へのアクセスはコミュニティの共通の問題であるが、障害者にとってはとくに困難であった。CBRの融資が突破口であったが、融資額は非常に小額であり、ガーナでは、利用出来るのは原材料の購入のみであった― 道具や機器は対象外であった。調査対象となった3ヶ国では、継続中の他のNGOや貧困削減プログラムの一環としても融資制度が実施されていた。CBRプログラムは今後、障害者に的を絞った融資と併せて、こうした他のプログラムによる融資にもアクセスしやすくするべきであると、インタビュー対象者は提言した。事業の構想へのアクセスおよび融資制度のモニタリングで、DPOと連携するべきであるという点も提言された。

職業訓練も、CBRプログラムの中で評価の高い部分である。しかし、以下の点も指摘されている。

  • 職業訓練センターで行われる訓練よりも、見習い制度の方が有益かつ効率的な場合が多い。
  • 道具や材料購入のための開始資金がなければ、訓練後に商売を始める手段はない。
  • 求人数が少なく、明らかな偏見が依然として存在するため、障害者にとって就業は今も選択肢とはならない。
  • 実施される訓練は革新的なものではなく、障害者の能力に関する先入観に従っている。

ネパールでは、仕立業の訓練を受けた女性が以下のように語った。

「織物染色や編み物、ろうそく作りなんかの職業訓練が受けられたら、もっといいと思います。そう、お香作りの訓練もいいですね。こういうちょっとした商売からみんな利益が得られるから。このコミュニティでは、この商売をやっている人は今のところ誰もいません。」

ガイアナでは、所得創出は親を対象としており、それによって子どもが間接的に利益を得るとの指摘があった。しかし、さらに進んで、若年成人層の自立へのニーズに対処することが課題となっている。親の組織は当然、プログラムを親の視点から見るとともに、親特有のニーズを第一に考える。CBRプログラムが特定の利益団体または政府部門によって運営される場合、障害者のニーズおよび権利に全体的かつ多部門的に取り組む点で、問題を抱えているように思われる。

政府およびコミュニティのコミットメント

本調査は、コミュニティおよび政府のかかわりが、現段階では精神的支援に限られていることを示している。個々の学費および所得創出の取り組みが助成を受けている少数の例を除けば、コミュニティもしくは地方政府当局による実質的な協力はない。本調査から明らかなように、CBRはコミュニティに変化のプロセスを起こすための強力な戦略である。しかし、こうしたプロセスを持続可能なものとするためには、政府が責任をもって役割を果たす必要がある。

調査対象となった3ヶ国の障害者が語った体験談は、姿勢、善意、ボランティア的な努力では、出来ることに限りがあることを示している。

「寄付はたいてい個人からのものです。私たちはコミュニティや地方の組織から資金を受けたことはありません。私たちのニーズは優先順位が低いのです。私たちの行動計画は当局に知らせてありますが、いつも予算からはずされてしまいます。」

「『ローカル・スーパバイザー』(ボランティア)は、現在の財政状態では活動することが出来ません。出張、会合、研修に対して報奨金も資金もないのです。」

「私たちは親やコミュニティの責任を認識してはいますが、CBRプログラムはこれらを最後の手段として、補っていくべきです。私たちのコミュニティは、経済的に強くありません。」

「地元で寄付をしてくれる個人も団体も数が限られているので、寄付疲れしています。」

政府が以下の点を実行するよう確保することが、CBRプログラムにとって急務である。

  • 通常のコミュニティ開発プログラムおよび貧困削減計画に、障害者を参加させる。
  • コミュニティ・ワーカーに対し、バックアップ、継続的な研修機会および報奨を与える。
  • 地方レベルの照会システムを支援する。
  • 教育システムおよび保健医療システムに対して、研修およびリソースを提供する。
  • 補助具を無料で支給する。
  • 手話開発および手話通訳者の養成を支援する。

DPOへの支援

CBRプログラムは一般に、DPOの能力開発支援が弱点となっていた。唯一ガーナにおいて、DPOの能力開発に向けて戦略的な取り組みが行われているが、CBRプログラムの働きは未だ十分でないとの批判がある。ガイアナでは、CBRプログラムは障害児の親に焦点を絞っている。ネパールでは、国内の障害運動と正式な結びつきのない、コミュニティ自助を進めるDODGに、支援は限定されている。

障害者の権利実現のためには、強力なDPOが不可欠である。CBRが主としてリハビリテーションサービスの提供を行うプログラムから、障害者の人権およびインクルーシブなコミュニティを促進するプログラムへと発展するにつれて、DPOが主要な関係者として参加することの重要性は高まるであろう。

DPOは、政府当局に助言と圧力を与えるとともに、構成員である障害者のエンパワメントを行うという二重の役割を果たすことが出来る。しかし、こうした役割を効果的に担うことが出来るよう、多くのDPOは組織を強化し、より幅広い支援基盤、民主的かつ透明な組織構造、ならびにより戦略的アプローチを確立する必要がある。DPOは現在、すべての市民にとってインクルーシブなコミュニティではなく、特定の障害種別に固有のニーズと権利を促進する場合が多い。効果的な働きを確保するためには、障害種別を越えた連携が必要であることを、本調査は示している。肢体不自由者、視覚障害者、ならびにろう者はある程度まで、その当事者団体がそれぞれのグループの強力な権利擁護者となっているが、これらのカテゴリーに入らない障害者、とくに知的障害者には、代弁者がいない。また、優先的に取り扱われるのは、主として成人男性によって規定された問題である。したがって、女性団体および親の団体にも、能力向上および発言力強化のための援助が必要である。このように、利益の共通する問題を促進するためには、コミュニティ、地方、国の各レベルにおける共同の基盤が必要である。

CBRプログラムは、こうした知見を考慮に入れるとともに、DPOを対象とする総合的なエンパワメント対策をプログラムの取り組みの一環として盛り込むべきである。

主な懸案事項

調査対象となったCBRプログラムは、それが実施されたコミュニティにおいて障害者のQOLに相当のインパクトを与えたことを示しているものの、以下のような懸案事項もある。

  1. 調査対象となった3つのCBRプログラムが、導入後10~15年間にカバーしたのは、極めて少数のコミュニティおよび住民にとどまった。3ヶ国で計200万以上と推計される障害者人口のうち、これまでに3つのプログラムが実施されたのは2000~3000人に過ぎない。プログラムが中央政府支援の取り組みであるガーナでも、対象となった障害者の数は極めて少ない。
  2. CBRプログラムが実施されているコミュニティにおいても、プログラムから恩恵を受けたのは障害者の半数にとどまるようである。ガーナおよびネパールでは、利益を受けている障害者の大部分が中程度度の肢体不自由者であるが、それに対して知的障害者やコミュニケーションが不自由な障害者は十分な対応を受けていない。親がプログラムの対象となっているガイアナの調査では、異なる状況が示されている。すなわち、主として知的障害児および聴覚障害児が、プログラムから利益を受けたと考えられる。
  3. 平均して、CBRプログラムの対象となった障害者のうち、およそ45%が肢体不自由者、20~25%が視覚障害者、15~20%が聴覚障害者、5%が知的障害者である。それ以外は他の障害者である。唯一ガーナでは、てんかんもしくは精神的問題などの他の障害をもつ住民が明確な対象とされていた。CBRプログラムは、当然のことながら、コミュニケーションが容易で、かつ特殊な教育手段や高価な治療の必要がない障害者にアプローチすることからスタートする。これによって、重要視されない障害者 ― 多くの場合、支援のニーズがもっとも大きい障害者 ― の間に不満が高まる。
  4. CBRプログラムは概して、障害者を声や選択権をもつ参加者ではなく受益者と見なし続けている。障害者および障害者団体による影響力は、いかなるものも限られている。しかし、ガーナでは、(CBRプログラムだけでなくAction on Disability and Development [ADD]その他のNGOから)DPOの能力向上に直接支援が行われており、状況は改善した。
  5. CBRプログラムの持続可能性は、大きな懸案事項である。本調査では、以下の点が示されている。
  • ボランティアのコミュニティ・ワーカーは、支援や報奨がなければ継続は困難である。
  • CBRプログラムの運営および支援を唯一の目的として設置された特定の委員会は、委員がプログラムから利益が得られないと消滅するように思われる。
  • コミュニティのリソースがプログラムの支援のために提供されるであろうという期待は、実現していない。
  • 政府当局が、CBRプログラムおよび照会システムを支援するためにリソース配分を行うことはほとんどない。