障害者と災害時の情報保障
~新潟中越地震の経験と今後の防災活動~
シンポジウム報告書
レジメ
A:実情=被災状況(知的障害者・保護者・家族・家庭・家屋)
1.人的被災
①養護学校児童の祖父と兄弟が家の全壊により死亡(小千谷市)
②障害者の母親が「エコノミークラス症候群」で死亡(小千谷市)
2.物的被災(知的障害関係)
- ①家屋
- 県内の50市町村(県内の約半数・育成会会員2,098人=県内会員の約50%)が「災害救助法」 の適用を受けたが、育成会関係で被害の報告があったのは23市町村(会員1,093人=被災地域会員の約50%・県内会員の約25%)であった。
被災状況区分 | 市町村数 | 家屋数 | 家屋割合・% |
全壊 | 8 | 37 | (5.1) |
大規模半壊 | 6 | 22 | (3.0) |
半壊 | 12 | 67 | (9.2) |
一部損壊 | 20 | 602 | (82.7) |
計 | 23 | 728 | (100.0) |
*被災地の十日町市・川西町・小千谷市・長岡市・越路町・小国町・柏崎市・高柳町・西山町・刈羽村を回ったが、被害が個別・千差万別である。
(山古志村は立入禁止地域であった。)
*同一地域の隣接家屋でも、被災状況に大きな違いがある。(複雑な地震・地層?)
*夕食準備の時間帯(17時56分ころ発生)でも、火災発生なしは、特筆注目
*「阪神大震災」に匹敵するであろう大地震にもかかわらず、被災家屋数が莫大にならなかったのは、家屋が雪国仕様の建築であったことによるのであろうか?
- ②利用施設
- 被災地域にある知的障害児者の利用施設の被害状況をまとめると、
・児童施設(5) 電気・ガス・水道設備に被害(4)、建物に損壊、亀裂(2)
・入所施設(12) 建物、敷地に亀裂(大規模損壊・居住不能)(1)、
電気・ガス・水道設備に損傷(9)、被害なし(2)
*居住不能施設では、利用者が他施設に移動(移住)
*地震当日の夜は、入所施設では「安全」を考慮し、体育館・大部屋に避難・宿泊
・通所施設(17) 一部亀裂、電気・ガス・水道設備に損傷(10)、被害なし(7)
・グループホーム(30) 一部損壊、電気・ガス・水道施設に損傷(9)、被害なし(21)
・小規模作業所(12) 半壊、一部損壊、電気・ガス・水道に損傷(6)、被害なし(6)
B:取り組み=相談・支援・復旧活動
- 1.相談体制
- ①県、障害児者生活支援センター(フォーマル)
被災地域のセンターだけでなく、県内各地からコーディネーターの派遣あり
(土曜日・日曜日も対応)
②育成会(インフォーマル)
県育成会から市町村育成会・小規模作業所に被害状況の照会・確認、被災地の視察
身体・精神・きょうされんの作業所間との連携を提議(実働せず⇒個別対応) - 2・相談内容
- *生活=自閉症児の避難場所の確保障害児の仮設での入浴に困難、障害児を連れて行列での、飲料水、食物、救護物資の受け取りに困難、短期入所、利用施設の変更(⇒身体的・精神的・経済的負担)、安否確認、情報収集の困難(在宅者)
*雇用=雇用中止、内定延期、就労者・実習生の待機
*健康=PTSDの障害者あり、施設移動による治療継続の困難(身体・経済)
*相談受理(フォーマル)=88人(電話・来所・訪問-自宅、避難所、その他) - 3.支援・復旧活動(育成会・参画)
- ①炊き出し、救援物資の提供
②作業所を早期復旧して、「日中活動の場」の早期確保・再開
(在宅の障害者にとって、精神的にも欠くことのできない場)
③支援金の協力(県内・県外)
④インフォーマルな相談体制の継続
⑤地震体験者に聞く(緊急時対応のために) - 4.総括
- ①震源地周辺の被災地域は、新潟県内で「施設から地域へ」の生活移行がもっとも進んでいると思われる地域であり、地域内での支援も活発であった。
(「ノーマライゼーション」が緊急の時でも普通に実践されたとの評価あり)
②利用施設(入所・通所)においても、毎月1回は避難訓練を実施されており、職員の指示に従い、無事に、整然と非難できたとのことである。
③地震想定の避難訓練(また、そのマニュアル)はより具体化される必要があろう。
(施設・グループホーム・作業所など)
④グループホームでは、バックアップ施設の職員がすぐに駆けつけて、宿泊したり、また施設が避難先となり、緊急対応がなされた。(GHに支援員配置が必要?)
⑤作業所での避難訓練の意識・実施は入所・通所施設ほどではないようである。
建物の強度や利用者の実態からすると、検討すべきであろう。
⑥養護学校が障害児の避難先として提供されたことが、障害児(特に自閉症)の情緒安定にプラスであった。(保護者にも支援となる。)
⑦定期的な医療・診療の必要な障害者(人工透析など)への継続的な医療・診療の確保が望まれる。(医療機関・利用施設ともに)
⑧在宅障害者の連絡網(携帯電話による)の整備も必要
⑨被災の経験が風化しないよう、体験・証言を今後に活かすことが求められよう。
⑩全国からの支援に感謝いたします。
- 発行
- 2005年3月
- 編集・発行人
- 財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
Tel:03-5273-0601
Fax:03-5273-1523