3.RNID(Royal National Institute for Deaf People)
清成 幸仁
平成17年3月7日(月)午後2時30分~4時30分
RNID専用会議室にて
訪問者:寺島・川畑・小松・阿由葉・清成・谷・中村
(1)理事長<Dr John Low>の説明
「私たち(RNID)は慈善団体(チャリティー)です。非営利団体です。」
RNIDは約100年難聴者のために活動している。昔は小さな団体が沢山あったが、発言力がなかった。発言力を持つ大きな組織が必要であった。
100年前の聴覚障害者は精神病院にいれられて鍵をかけられていた。今日では、地域社会の一員である。しかし、まだまだやらなければならない仕事(取り組み)がある。
雇用に関してであるが、難聴者に比べて刑務所を出所した健常者のほうが就職率が高い。
補聴器を装用していると、低く見られてしまう。
英国民は現在約5,800万人であるが、200万人(3.4%)が補聴器をつけ、400万人(6.9%)が補聴器を必要としているという、調査結果(政府の医療審議会の調査で実施)がある。
RNIDのビジョンは「世界をかえる!」こと。そのビジョン達成のために、
- 政府に働きかける(ロビー活動)
- 法律を変える
- 雇用先を伸ばす(拡充する)
- ケアをする
ことにとり組んでいる。また工学技術の開発と活用も大切である。
また、RNIDは、職員が専門家なので、効率よく働くことができる。
「1in7」(ワン イン セブン)・・7人の中の1人は補聴器を必要としている、という意味。(会報の名前でもある)
聴覚障害者の概要としては、
35万・・・重度
40万・・・電話ができない
300万・・・35db以下
600万・・・加齢のため補聴器が必要な人(全国民の10.3%)
というデータがある。
(2)組織
■職員
本部は1,200人の職員。職員は、ゲイ、民族、マイノリティー等、誰でも受け入れている。しかし、仕事に手抜きをするわけではない、やるべきことはしっかりとやることが大切である。
1,200人のうち約210人位(約17.5%)が障害を持つ職員である。(盲は5人くらい。聴覚障害者の数値は明言しなかった)。見学した本部ビルでは250人が働いている。
協会のビジョンは
ことである。
■会員
会員は35,000人。年会費は£20。1年間に会報を6回送る。
会員は理事長を選出する権限を持つ。また、医療専門家、学校の先生、親、祖父母、興味をもっている人等が所属している。職員も会員である。
(RNIDが聴覚障害者に対して行っているサービスを受けるための会員ではない。従って聴覚障害者が必ずしも会員となる必要はない。組織を支える、支援する意味での会員という形である。その点、日本での当事者団体 例;全難聴の会員とは性格が違っている。)
(3)仕事(取り組み)
キャンペーン活動(ロビー活動でもある。)をする。
目的は、障害者に対する規制の廃止、職業の開発などである。
そのために、沢山のサービスを幅広くやっている。
- 聴覚障害・盲などのケアホームを20カ所持っている。地方自治体が金銭を負担し、運営はRNIDが実施している。
- 通信サービス
BTという企業の代わりにやっている。
電話リレーサービス(トーク200万通信)をしている。様々な団体の協力をもらっている。 - 研究
医療、工学分野など
これらのサービスを行うために、他のチャリティー団体や海外の団体と交流している。
一般の人の考えを変えていくことが第一。法も大切であるが、人々の心が先。
(4)組織について
6部署に分けている
①サービス部
700人(組織の中で最も大きな部)
通訳サービス
教育サービス(学校で難聴児に対する教育方法について教えている。)
②資金部
いくつかの課にわかれている。
- 企業を担当する課
- 法的(法人)機関(トラスコ財団、宝くじ等)を担当する課
- プロジェクト毎に資金集めをする。(使途を限定しての資金集め)
例)通訳の数を増やす訓練のプロジェクト、聴覚障害児の教育支援 - 職員の給与、施設の維持費等はサービス提供の利益や(3つ目の課が担当する)遺産からの寄付から捻出している。
- 政府からの資金援助はなし
③財務部
IT、技術、法律 等
④研究部
後述する
⑤人事部
人事(人材育成や募集)、給与
⑥コミュニケーション(渉外)部
様々な団体との交渉、メディアとの連携、マーケティング(学校への教材提供等)
(5)研究部
研究と研究支援(海外を含む)
技術へのお金はボランティアから入る。世界中の大学の研究に協力している。
$150万出している。
(事例)人工内耳の研究への助成
ブリストル大学の神経伝導路の再生技術研究(共同)等ほかにも沢山ある。
本部(見学した施設)にも研究がある。ITや製品開発などをしている。
例としては、BBCとの共同研究を行っている。テレビに手話通訳の画面をどこに入れるか研究している。手話を見ている人の視点(視線)をチェックしている。手話ばかりをみないように高画質の画面等研究している。
(6)コミュニティーの機器サービスについての説明(Commuinty Equipment Service)
地方自治体の社会福祉部と共同でプロジェクトをしている。地方自治体は、機器の提供の責任をもっている。そこに技術指導等を提供している。
支援(機器)技術は、聴覚障害者の生活(雇用、一般家庭等)を豊かにするためのものを含んでいる。
英国政府は、全国的にサービスのレベルを一定(地域格差の縮小)にしていくという方針にある。また、地方自治体や公的機関が民間と協力するように命令している。
機器の費用効果の高い活用法を検討している。
利用者自身の選択が重要。選択した機器について、地方自治体から直接払いをしている。評価(アセスメント)して必要があれば、提供される。
- 地方自治体に対する直接機器を提供する。
- 専門家の派遣。
- 機器の使い方、リサイクルなどコストを考える。
- ユーザーがどこで使っているのかが重要。
援助(支援)としては「自治体に直接技術」「職員を派遣する→リハビリのための職員」がある。
宝くじ基金の活用プロジェクト等も行っている。
最近補聴器を使用し始めた人には、維持メンテナンスの方法も教えている。
ボランティアの活用やボランティアの育成と派遣もする(補聴器のフィッティング等)
これらのサービスを行うためRNIDのその他の部門(技術部、職業部、渉外部)からもサポートを受ける。
地方自治体に対する感覚障害の水準決定に対するサポート
サービス窓口をRNIDが提供することで利用者に使いやすい制度が提供できる。
例:感覚障害者(RNIDがサービスの契約をとった)へのサービス
小学校での感覚障害児の理解を広めるサービスの提供を実施。
ここにいけばサービスがあるというように福祉課のかわりにRNIDが実施する。
LB Redbridgeサービスセンターの運営の委託を受けた
・・経費£19万6000は事務とアセスメントに関するもの。機器は含まない。
アセスメントにより、sound advantage(機器)を推薦する。
お金のない人は、地方自治体でだす。補聴器、ループ、ドアベル(援助機期)なども出す。
£1000以下なら補聴器は自治体が進める
(7)コミュニケーションサービス部
2つの課に分かれている
サポート必要者にサポートを販売している。資金援助はうけてないため有料独立採算制としている。
- 英語手話通訳の提供。北アイルランド政府に対するアイルランド手話の提供。
- リップリーディング
- 盲ろう者に対する通訳
- Speeched text(ノートテイク?)
- パソコン要約筆記
- 英語手話の遠隔手話通訳(ISDNを利用)
25人事務員、35人通訳。また330人登録契約通訳(自営業)がいる。
300人の通訳がいるとしてろう者5万から7万人に対しては少ない。
盲ろう通訳、リップリーディング、パソコン要約筆記は、すべて契約。
RNIDは年間22500回ものサービスを提供している。RNIDの他にも70の団体が同様のサービスを提供している。
サービス提供先は医療機関、地方自治体、雇用側、等である。
問題は、通訳者の不足。登録者は330人がいるがサービスを満足に提供するには3000人くらい必要ではないかと思う。
Q)国会の通訳者は、貴機関が提供しているのか。
A)彼女は、契約(自営業)
<注釈>英国国会貴族院に1名聴覚障害者(ジャック・アシュリー)が所属している(その他にも高齢による補聴器装用者は数名いるとのこと)。彼の為にパソコン要約筆記が常設されていることをRNID視察前に行った国会視察で確認した。その通訳に関する質問である。
Q)英国の通訳派遣制度全体を説明して欲しい。
A)最終的には、利用者の選択である。ある地方自治体や医療機関については、我々が、サービス全体を委託を受けている。例えば、今夜劇場に行きたいとすると自分の好きな通訳や通訳機関を選ぶと思う。
手話については、RNIDが提供していること市民は知っている。
問題点は、読唇、パソコン要約などの代替手段についての情報をどこから手にいれればよいかがわからないということである。
Q)英国で統一的に手話サービスを提供する制度はあるか。
A)ない。RNIDが唯一の全国組織である。
(8)テレビ(メディア)議会とのテレビの人権について
人権保護の担当者(マーク・モリス)
①アクセスについて
②テレビでの障害者の扱い(どうやって紹介されているか等)
手話、テキストの法律→コミアクト法 2003年情報通信法がだされた。
RNIDが影響を持つ「オフコム」が監査している。
現在70CHに字幕・手話・解説がついている。
BBCでは2008年までに100%全てのチャンネルにつけることを述べている。
「テレビ」という定義も変わってきている。常にチャレンジが必要。
しかしながら、老人は字幕があるのを知らない。知識がない。どうやって知ってもらうかが課題でもある。
プログラムの内容について厳しい規制はない。
精神障害者、知的障害者などステレオタイプに対する問題を一部提起されている。
著作権は、音楽のみ昔はあったが、現在はない。
劇などの放映において障害者向けに専用につくるべきか、実際に障害者が実施すべきか。
シナリオについて著作権はないか。
障害者に対して著作権は問題にならない。「アクセス」「機器」が問題
なぜ、音楽に著作権がなくなったのか。→BBC自身がプロバイダーになった
(9)ビジネス開発マネージャー(マイク・コックス)
○雇用者支援サービスの提供
利用者に対する就職アドバイス・維持
経費は、DWPやEU基金、宝くじ、
訓練内容 ICTなど1:1での訓練
○雇用主の意識・態度・環境を変えるためのサービス
経費は宝くじなど
お店等へのアクセスの改善
雇用者へのアドバイス(障害者へのサポート)、コンサルタント
雇用と雇用後の対応をしている。
会社側に自覚してもらう。(難聴者を雇うため)
louder than words 「ことばよりも大きい(合い言葉)」
一般の人が行く「店」「映画」「劇」等にアクセスしやすいように考える。
店へのレクチャーは有料。しかし中小企業は無料の場合もある。
チャーターを達成すれば認証がもらえる。この認証を会社のパンフや封筒に付けることにより、会社の評価(障害者等に優しい 等)が高まる事になる。
Q)スタッフの数
A)40-45人。400企業・団体に4,000人についてかかわった。400~450人が就職した。
企業アドバイザーは、12名いる。
職場にスタッフを派遣する。
Q)準備訓練をしないのか。
A)1:1で主任を訓練している。
Q)誰が、訓練をするのか。
A)Cicdpという基準がある。一部は自分たちである。他は、大学や訓練施ががある。