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高齢者の運転適性に関する研究(1)

NO.2

2 研究方法と対象

1.方法

 この研究に使用した装置は重複作業反応、速度見越反応および追従動作反応(目と手腕の協応動作)を計測記録するため竹井機器工業株式会社が製作した機器で、これに瞬発跳躍力(全身反応)と夜間視力の計測機器を並列接続して運転適性検査機器としてシステムを構成したものである。ただし後の2つの測定機器については検査指標の妥当性等が未確認のため今回の研究対象から除外し参考データとして併記するのみにとどめた。
 写真-1に重複作業の反応の測定時の模様を示したが計測の方法は黒い衝立に3個水平にならんだ円孔に左から青、黄、赤のランプをランダムに点灯し、被験者に「あなたは青ランプの時に右手、黄色では左手、そして赤ランプの時には右足をすばやくキースイッチから離してください」と教示するのである。
 さらに「ランプがついても同時にブザーが鳴ったときには手足を離さないでそのままにしていてください」と追加指示をして開始するが、点灯の順序はあらかじめプログラムされていて同一試行を16回おこない反応時問および誤数を記録する。

重複作業反応の計測の写真

写真-1 重複作業反応の計測

 写真-2、は速度見越反応の計測機器で、これは判断動作のタイミングをみる焦燥傾向の検査器として用いられている。
 教示は「向って右端にランプがつくとすぐに光は溝の中を左の方へ走ってゆきます。ランプが黒い壁のかげに入ると見えなくなりますが、あなたはこの光が今、走ってきたのと同じ速さで黒壁の裏側を走ってゆくものと仮定してください。そして壁を通り抜けて丁度左はしの穴のところに現われる頃だなと思ったら、その時にキーを押してください。」ということでいわゆる速度の見越時間(ms)を記録するのである。

速度見越反応の計測機器の写真

写真-2 速度見越反応の計測機器

 写真-3は追従動作反応から被験者の目と手腕の協応動作の同滑さをみて処置判断力を検査する機器として前記の2機器とともに運転適性の検査バッテリーを組んで用いられている機器である。
 回転円盤上に16個の赤と緑の色標がつけられていて、被験者は指示通りに左右の針が周囲の赤線からはみ出さないように、また緑色のしるしに沿うようにハンドルを操作するのである。若し、赤線や赤の色標に触れるとカウンターが作動してエラーとして表示されるようになっている。1回転35秒、3分半の時間制限法で一試行と決められている。
 ところでこれらの機器をテストパッテリーとして組み運輸関係の事業に従事している運転乗務員を対象として研究した東北大学の研究グループはC,A,Drake*2の主張するaccidentproneness(事故多発傾向性)の仮説を援用して事故者と無事故者の弁別力を検討した。
 たとえぱ重複作業反応の誤反応数を無事故者群、事故者およぴ中間群の3グループに分けて度数分布をみたグラフを示すと図-1の通りで、弁別効率は69から76パーセントと報告している。

処置判断動作(追従動作反応)の計測機器の写真

写真-3 処置判断動作(追従動作反応)の計測機器

重複作業反応の誤反応数分布の折れ線グラフ

図-1 重複作業反応の誤反応数分布

2.対象者
 運転免許証を所持する健康な60歳以上79歳までの成人363名(実験群)と50歳から59歳までの健康な成人75名(対照群)を被験者として、昭和60年7月15日から同9月20日まで、北海道交通安全協会・安全運転学校(札幌市西区曙5条4丁目1の1)において測定記録をおこなった。 とくに実験群として選定した被験者の年齢分布を図-2のグラフに示した。

対照者の年齢分布の円グラフ

図-2 対照者の年齢分布

*2 C.A.Drake, 1940, Accident Proneness, J.of character and personality, 8, 331-341.


主題・副題:
高齢者の運転適性に関する研究(1) 94~96頁

著者名:
森 二三男

掲載雑誌名:
高齢者問題研究

発行者・出版社:
北海道高齢者問題研究協会

巻数・頁数:
No.2巻 93~107頁

発行月日:
西暦 1986年 3月

登録する文献の種類:
(1)研究論文(雑誌掲載)

情報の分野:
(1)社会福祉

キーワード:

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