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高齢者の運転適性に関する研究(2)

NO.4

3 結果

 1.安全運転自己診断の結果
 使用した調査用紙の結果整理法に従って、評点を算出し、年齢グループごとの項目(検出要素)別人数およびそのパーセンテージを求めたところ表7図4のようになった。

    年齢
項目/比率
59歳未満 60~64歳 65~69歳 70歳以上 備考
人数   % 人数   % 人数   % 人数   %
A1 14 軽信運転者
A2 12 86 53 91 24 100 12 100 冷静運転者
B1 36 25 43 14 58 58 躊躇運転者
B2 64 33 57 10 53 42 余裕運転者
C1 15 26 17 17 軽率運転者
C2 13 93 43 74 20 83 10 83 控え目運転者
D1 21 16 21 25 過信運転者
D2 11 79 49 84 19 79 75 譲りあい運転者
E1 21 12 21 29 不注意運転者
E2 11 79 46 79 17 71 12 100 慎重運転者

表7 年齢群別の運転ぶり一覧

年齢群別の運転ぶり一覧

図4 年齢群別の運転ぶり一覧

 この結果から加齢に伴なって運転ぶりがどのように変化するのかをみると、63歳グループに軽信運転者が5名(9%)で、それ以上の年齢には皆無であるが、躊躇運転者が加齢とともに増加してゆく傾向がみられ、ゆとりある運転ぶりが失われてゆく傾向を示唆している。
 しかし、軽率運転や軽信運転者のパーセンテージには加齢の影響はあまり顕著にあらわれていないので、総体として不注意な運転ぶりとは言えず、高齢ドライバーの運転ぶりは比較的に慎重であることがうかがわれると言ってよいであろう。

 2.安全運転態度の結果
 使用した回答用紙の結果整理法に従って換算値を算出し、年齢グループごとの換算値別人数およびそのパーセンテージを求めたところ表8図5のようになった。

換算値
年齢段階/人数比率
 4
人数 比率 人数 比率 人数 比率 人数 比率 人数 比率
60~64歳 2 2.4 15 17.4 51 59.3 14 16.3 4 4.7
65~69歳 2 4.4 9 20.0 27 60.0 4 8.9 3 6.7
70歳以上 3 20.0 2 13.3 5 33.3 3 20.0 2 13.3

表8 安全運転態度の年齢段階別の換算値の人数と比率

安全運転態度の各換算値の占める比率(年齢段階別)の帯グラフ

図5 安全運転態度の各換算値の占める比率
   (年齢段階別)

 この結果から加齢にともなって安全運転態度換算値がどのように変化するのかを検討すると、換算値1の安全運転態度劣悪者は63歳群の2.4%から68歳群の4.4%と上昇し、さらに70歳以上では20.0%と急上昇する。一方、安全運転態慶良好者と考えられる換算値5の比率は63歳群の4.7%から68歳群の6.7%、70歳以上群の13.3%と、これも上昇して行く。換算値3の平均的な安全態度を示したものは63歳群の55.3%、68歳群の60.0%と横這いに推移し、70歳以上群では33.3%とほぼ半減する。
 安全運転態度の結果は高齢ドライバーになればなるほど、安全運転態度が良好と劣悪という2つの両極に分極化してゆく傾向を示しており、高齢、とりわけ70歳以上では劣悪の方向に傾きがちであるが、換算値の1と2を加えた比率と4と5を加えた比率を比べると、両者は全く等しくなり、やはり分極化の傾向を示唆するものと思われる。

 3.危険感受性の結果
 使用した回答用紙の結果整理法に従って換算値を算出し、年齢グループごとの換算値別人数およびそのパーセンテージを求めたところ表9図6のようになった。なお、この検査の結果整理法に従えば換算値4は該当しないことに注意する必要がある。

換算値
年齢段階/人数比率
人数 比率 人数 比率 人数 比率 人数 比率
60~64歳 22 25.6 28 32.6 32 37.2 4 4.7
65~69歳 15 33.3 13 28.9 15 33.3 2 4.4
70歳以上 6 40.0 4 26.7 3 20.0 2 13.3

表9 危険感受性の年齢段階別の換算値の人数と比率

危険感受性の各換算値の占める比率(年齢段階別)の帯グラフ

図6 危険感受性の各換算値の占める比率
    (年齢段階別)

 この結果から、加齢にともなって危険感受性換算値がどのように変化するのかを検討すると、換算値1の危険感受性低下者は63歳群の25.6%から68歳群の33.3%、70歳以上群の40.4%と、加齢に伴ない上昇していく。換算値2と3を普通と捕らえ、両者を加えた比率を見ると、63歳群では69.8%、68歳群で62.2%、70歳以上群では46.7%と減少している。一方、換算値5の危険感受性優良者は63歳群では4.7%、68歳群では4.4%と60歳代では変化が見られないが、逆に70歳代では13.4%と顕著に増加する傾向にある。このことは安全態度の結果と同様に、危険感受性においても、年齢の増加とともに劣悪一優良という二極化をたどりながら、なお劣悪化の傾向を示すものであるように思われる。

4.安全運転態度と危険感受性の関係
 本研究においては、安全運転態度と危険感受性の2つの検査を受けた対象者が同一対象者であったため、対象となった高齢者がこの2つの検査に対してどのような関係にあったかを調べた。両方の検査の換算値が1または2であったものを安全運転態度と危険感受性の関係を1とし、一方の検査の換算値が3であっても、他方の検査の換算値が1,2の者を両者の関係を2とし、両者ともが換算値3の者および一方の換算値が4以上でも他方の換算値が1や2の者を両者の関係3とし、一方の換算値が3でも他方の換算値が4以上の者を両者の関係4とし、2つの検査の換算値が4以上の者を両者の関係5とする5段階で両者の関係を検討した(10)。

安全運転態度と危険感受性の換算値の関係の区分のグラフ

表10 安全運転態度と危険感受性の換算値の関係の区分

このようにして処理して得られた結果が表11である。

関係区分
年齢段階/人数 比率
人数 比率 人数 比率 人数 比率 人数 比率 人数 比率
60歳~64歳 10.5 36 41.9 32 37.2 9.3 1.2
65歳~69歳 17.8 18 37.8 15 33.3 8.9 0.0
70歳以上 13.3 40.0 33.4 13.3 0.0

表11 安全運転態度と危険感受性の換算値の関係区分の人数と比率年齢段階別

この結果を見ると、両者の関係が1の者、つまり両検査の換算値が2以下の者のパーセンテージを加えると、63歳群の10.5%、68歳群の17.8%、70歳以上群の13.3%と常に10%を越え、68歳群がピークになることが示された。これに両者の関係2の者、つまり一方の換算値が3で他方の換算値が2以下の者のパーセンテージを加えると、63歳群で52.4%、68歳群で55.6%、70歳以上群では53.3%になり、いずれの年齢群でも過半数を占めている。一方、両者の関係が良好な者を見てみると、両者の関係が5のもの、つまり両検査に4以上の換算値を示した者は68歳群から上では皆無であった。両者の関係が4の者を含めたパーセンテージを見てみると、63歳群で10.5%、68歳群で8.9%と低下するにもかかわらず、70歳以上群では逆に13.3%とやや上昇し、比較的良好な者が10%程度いることがわかる。
 この結果は安全態度および危険感受性の検査結果を別個に処理した場合には、70歳以上群では極端に低下していたにもかかわらず、両検査を組み合わせてみると、70歳以上群でもそれほど極端な低下が見られず、むしろ68歳群よりもやや良好になっていることが示された。このことは特に70歳以上の高齢になると、安全運転の心構えあるいは危険感受性の一方が極端に低下する傾向があるが、逆に他方には気を使っていること、そして、全体としては平均的な運転ぶりを示すということと考えられよう。

安全運転態度と危険感受性の関係の各換算値の占める比率(年齢段階別)の帯グラフ

図7 安全運転態度と危険感受性の関係の各換算値の占める比率(年齢段階別)


主題・副題:
高齢者の運転適性に関する研究(2) 72~75頁

著者名:
森 二三男

掲載雑誌名:
高齢者問題研究

発行者・出版社:
北海道高齢者問題研究協会

巻数・頁数:
No.3巻 65~78頁

発行月日:
西暦 1987年 

登録する文献の種類:
(1)研究論文(雑誌掲載)

情報の分野:
(1)社会福祉

キーワード:

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