幼児の集団指導-新しい療育の実践-
第3章 集団指導の方法
はじめに
「集団指導の技法」について、これは、次の①~⑤の原則に基づいて展開している、「集団の指導の方法」であることを述べておく。
① 集団指導の技法の展開には、次のような、保育の方法におけると同様な基本的な考え方が必要である。
保育の方法に関して、「明らかなことは、子どももおとなも、そして広く、活動を創ることに参加する『もの』のすべてが、共にかかわって活動する、接在共存状況の必要なことである。接在共存状況において展開する『保育活動』であって、この保育のためには、その状況が成立し、展開・発展していくことが必要である。そのためには、どういう方法があるか。保育のための方法のなかでも、とくに重要なのは、その状況を設定し、それを展開・発展していく方法である。その方法との関連において、諸他の方法がその特性を発揮しうるのである。*)」
② 集団指導の技法とは、集団活動において、指導者が、上記の接在共存状況の、成立・展開・発展する場面状況を、意図的に設定する方法**)である。これを場面設定とよぶ。これは、集団活動に、ともに参加する「もの」すべての自発的な活動をきっかけにもたらされうる性質をもつ。その意味では、「集団活動の発展を促進する指導性(リーダーシップ)機能は、保育者とともに、子どもたちも、ときには、物も担うことができる。『集団指導における指導性とは、集団関係機能であり、特定の個人の資質ではない。この考え方からは、集団成員は(物もまた)指導者となる可能性がある』*)」
③ 場面設定は、設定状況にかかわる個人(子ども)においては、どのような体験が成立することとして意味をもつのであろうか。次の例をみてみよう。
- 数人の子どもたちが部屋のあちこちに位置を占めている。自分で手を伸ばして隣の子どもにさわったり、声を出して自分の存在を人に知らせることのむずかしい子どもたちの場合、ほかの子どもとともにいる現実の場の共有体験を、どのように成立させていくことができるだろうか。たとえば、指導者が「○○ちゃん」と一人一人によびかけると、自分にかけられたことばの占有性は意識されるが、集団においては、一人一人の自己独自領域の連なりにすぎなく、それだけでは相互の関係の成立はのぞめない。そこで、指導者が、フープ(輪)をもち、「○○ちゃんをテレビでうつしちゃおう」と一人一人の子どもを目立たせながら移動していく。人における物の所有の仕方からいえばフープを分有することで、どちらにも共通の活動(テレビにうつし出される人とみている人)を媒介に、いくつかの交差領域が生まれて、自己領域の広がりとして体験されるだろう。さらに、全体に、輸になったなわを、体のどこかで支えられるように渡す。すると、なわを共有しながら、一人一人の自発的な動きが全体に伝わり、おもわぬ力動的な波となってゆれ動いて、そこに全体統合領域の基盤がつくられ自己領域の質的な深まり(自己の発展的形成)が期待される。
これは、物の占有性、分有性、共有性を人の活動において生かした場面設定がなされて、集団に、独自領域、交差領域、統合領域が発展的につくられることにより、そこに参加するものの自己領域の広がりと変動がもたらされることの期待される場合である。
このように、集団状況における一人一人の物理的、心理的自己領域の伸縮性に着目し、その発展がもたらされるように場面設定のなされることが大切である。
④ 集団形成の時期においては、特に、一人一人の自己領域の特性や活動が生かされて、他との交差領域がつくられていくために、細かい配慮と段階をふんだ場面設定がなされていくことが必要である。
⑤ 本章では、集団指導の技法のうち、特に治療的役割の大きい集団活動の集団形成期において、関係変化体験が段階的にもたらされる技法、および一人一人の自己領域活動が、他の領域との交差領域を形成するのに役だつ技法を類型化してあげることにする。
日々の実践の過程で体験される創造的活動への喜びを、技法として意識化しことばで表すのはむずかしいことである。写真により、場面の枠組が、多少なりともとらえられるのではないかと期待する。
- なお、集団指導の技法については、本書第2部の他の章に多くの実践例があげられている。第1章では、集団指導の技法の主脈をなす、「集団状況における接在存状況明確化・創造過程」に働く諸技法(集団状況発展の技法)が表出されている(第1章2)。それらの技法との関連においてその特性が発揮されている専門諸技法として、「運動発達を促す技法」(第4章3)、「言語発達を促す技法」(第5章3)、「保育技法」(第6章2)、「母親集団技法」(第7章1)の実践例が各々の立場から整理されている。
*) 松村康平「保育と保育のための方法」日本保育学会『保育のための方法』フレーベル館、1975
**) 伊藤祐時、松村廉平、大村政男編集「心理技術事典」朝倉書店、1977
*) 松村廉平「幼児の性格形成」ひかりのくに、1976
1 関係変化体験がもたらされる技法
集団の基本的な関係類型である「一者関係」「二者関係」「三者関係」の関係変化体験が意図的、段階的にもたらされることを目的とする技法を3つあげる。
① ひとりごま・ふたりごま・さんにんごま
(関係自由運動による三者関係体験の技法)
② フープのかがみ
(「物」所有関係操作による三者関係体験の技法)
③ 「しま」ができた
(方向関係認知による三者関係体験の技法)
技法1 ひとりごま・ふたりごま・さんにんごま
(関係自由運動による三者関係体験の技法)
(内容)
- ひとりでひとつの「こま」になる。
- ふたりで「こま」になる。
- さんにんで「こま」になる。みなで「こま」になる。
(特性)
- 人間の身体が表出する活動の多様性は、関係の変化と対応して限りのないことが実証される。
- 「ひとりごま」では、自己身体運動をとおして、自分が自分に働きかけながら一者関係活動が展開し、自己充実感が高まる。「ふたりごま」から「さんにんごま」へと、二者関係活動、三者関係活動の関係変化体験がつみ重ねられていく過程で、単なる人数の増加あるいは個々の運動の複合による以上の、対人関係的高揚感を伴う力動的な多種の活動が展開し、集団活動の基盤となる関係変化体験が段階的に把握される。
(指導者のかかわり方)
- タンバリンをたたいたり、レコードをかけて、拍子やリズムを変化させると、働きかける自己における、人および物との関係活動の、さらに発展することが期待される。
(活用例)
- a.母子合同活動において
- 母と子の単位で、様々の「こま」になって動く。他の「こま」とぶつかってこわれれり他の「こま」のまわりをまわったり、あちこちで「こま」どうしのつながりが生じ、「こま」をつくり変えながら、次第に大きな「こま」がつくられていく。全体が大きな輪になりゆれ動き、輸から離れる子どもの方へ輸全体が移動したりして、ダイナミックな母子合同活動が発展できる。
- b.集団指導や保育実践者の研修活動において実践指導技法のデモンストレーションや、行為法(心理劇)による集団関係体験の実習の際の、ウォーミングアップとして役だつ。参加者相互の親和感が深まり、集団づくり(形成)に関する課題が体験的に成立しやすい。
技法2 フープのかがみ*)
(「物」所有関係操作による三者関係体験の技法)
(内容)
- フープ(輸)を一人に一個ずつもって遊ぶ。
- 二人に一個ずつもって遊ぶ。
- 三人に一個ずつもって遊ぶ。
- 「フープのかがみ」をつくり遊ぶ。
(特性)
- フープを一個ずつ専有して一者関係活動が、二人で一個を分有して二者関係活動が、三人で一個を共有して三者関係活動が展開し、「物」を媒介に、人における「物」の所有の仕方を変化させていくことにより関係変化体験がえられやすくなるところに特色がある。
- 「フープのかがみ」の活動は、三者関係性を体験するのに特に役だつ。自己が物に働きかけ、まわりの人とかかわりあいながら三者関係活動、あるいは働きかける人、働きかけられる人、その両者をとらえてコントロールする人との三者関係活動は、子どもの自発性、創造性を開発する。
(指導者のかかわり方)
- 「フープのかがみ」の活動では三人の役割の交代がなされるよう配慮する。三人でいながら、一者関係活動、二者関係活動が展開している場合もある。たとえば三人のうち一人が見ている場合、審判の役割を賦与するなど、三者関係活動の展開への補助的な働きかけをする。
(活用例)
- a.グループづくりに
いすとりゲームのように、音楽が止むごとに、一人あたりのフープの数を減らしていき、しだいに一つのフープを共有する人数が増えながら、いろいろな人との組み替えを楽しむ活動を展開することもできる。 - b.指導者の養成に
心理劇の技法を活用し、二人が向かいあって、間に鏡を想定しながら、一方が相手の所作に即して動作をすることで、「即する(内接的)かかわり方」の実習として有効である。他の一人の、観客としての役割が、演じている二人の新しい動作を誘うのに役だつ。
技法3 「しま」へわたろう
(方向関係認知こよる三者関係展開の技法)
(内容)
- 組み替え可能な円形三段舞台の下段(大)を一方向に設置し「ひとつの島」をつくる。
- 中段(中)を他の方向に設置し「もうひとつの島」をつくる。
- 下段(小)をさらに他の方向に設置し「べつの島」をつくる。
- 三段を積み重ねて「大陸」をつくる。
(特性)
- 具体的に認知されやすい方向(円形舞台)が、段階的に明示され、それにかかわる行為をとおして方向関係認知体験を育てるのに役だつ。
- 一方向が認知されて、それとの関係が強まり、一者関係活動が展開する体験、二方向が同時に認知されて、それらに選択的にかかわり、二者関係活動が展開する体験三方向が認知されて、それらに統合的にかかわり、三者関係活動が展開する体験など、全体状況における関係活動が方向関係の認知の仕方を発展的に変化させていくことが実証される。
- 組み替え可能な円形舞台*)は、心理劇における舞台の効用と同じく、子どもの活動によって、さまざまな機能が生じる空間であり、たとえば、そこが「家」になったり、「広場」になったりして、集団活動の場面設定に欠かすことのできないものである。
(指導者のかかわり方)
- 方向関係認知の援助としては、集団活動を促進する三つの機能*)(方向性機能、関係性機能、内容性機能)に対応する働きかけが効果的である。
(活用例)
- 夏のある日の集団活動において
- 空想的な場面「海」で、子どもたちは自由に部屋の中を泳ぐまねをしながら移動する。
- L1(リーダー)は舞台大を設置。「ここに島がある。あがって昼寝でもしよう」
舞台にあがる子ども、さらに遠くに行く子ども。 - L2は二つ目の舞台(中)を設置。一緒に舞台にあがった子どもたちと相談して楽しそうに魚つりを始める。二つの島の中間で動かない子ども。行ったりきたりする子ども。
- L3は三つ目の舞台(小)を設置。
- L1「大変だ。大雨が降ってきたよー」いそいで手近の舞台にあがる子ども。いつまでも動かない子どもを「船」で助けに行く子ども。他の島に「でんわ」をかける子ども。舞台の領域間のやりとり、子どもの往来が活発発になる。
- L1「島が流されている。。近づいてきたよ」と大、中、小の舞台を三段に重ねていく。子どもたちは新しくできた「大陸」をめざしてあつまる。
*) p.117.前掲書。本書p.145参照。
*) 本書p.84を参照
*) 本書p.78を参照
2 関係交差領域成立の技法
集団形成期においては、一人一人の自己・自発活動は容認され、促進されなければならない。その活動がのびていく方向で、しかもまわりとのかかわりを広げていくためには、集団指導における諸技法のなかで、特に関係交差領域成立の技法が展開されることが必要である。ここでは、それらを次の①~⑩のように類型化してとらえて、その内容を簡単に述べることにする。
場面設定 | 技法 *) | 交差領域の成立の仕方 | |
---|---|---|---|
① | 「いえ」をつくる | 制限領域設定の技法 | 定位 |
② | 「まど」をつくる | 対置法 | |
③ | 「通路」をつくる | 軌道設置の技法 | 開発 |
④ | 「トンネル」をつくる | 開通路の技法 | |
⑤ | 「ふみきり」をつくる | 障壁操作法 | 連結 |
⑥ | 「境」をつくる | 境界領域設定の技法 | |
⑦ | 「回覧板」をまわす | 焦点移動・拡散化の技法 | 交流 |
⑧ | 「でんしゃ」がまわる | 領域移動・焦点化の技法 | |
⑨ | 「店」をつくる | 媒介領域形成の技法 | 形成 |
⑩ | 「空気のボール」をなげる | 包括領域形成の技法 | 統合 |
技法1 「いえ」をつくる(制限領域設定の技法)
(内容と特性)
- 他領域からは区別される、自己活動領域を象徴する「いえ」を設定する。
- 「いえ」は、特に集団形成の初期には、子どもの感情的な依留地点となり、行動の起点、復帰点ともなる。
- また「いえ」は、中からも外からも知覚される二次元的な制限領域としての性質をもち、他からの働きかけをさそいやすい特色をもつ。
(指導者のかかわり方)
- 「いえ」の設定により、個々の自発活動を、集団内のコーナー活動として安定、定着化させることができる。
- 集団形成の方向としては、子どもの自発活動に対応する多様な「いえ」を点在させて集団拡散化状況を形成することもできるし、核となる「いえ」を設定して集団焦点化状況を形成することもできる。
(活用例)
- ゴザ、円台のような平面的な領域制限物、囲いやドールハウスのような立体的な空間遮蔽物、積木などの構成物は、各々異なる体験をもたらす。
- 視-知覚的に全体状況を把握しにくい場合、集団活動への参加が困難な場合、あるいは幼少児の集団指導など、「いえ」が治療的な効果を発揮する。
技法2 「まど」をつくる(対置法)
(内容と特性)
- 自己活動領域と他領域を対置させるかたちで「まど」を設け、「自」と「他」、「内」と「外」の接点の定位化をうながす。
- 「まど」により、外からの働きかけに応じて内からの活動(注視する、よびかける、さし出すなど)が、ひき出されやすくなる。
(指導者のかかわり方)
- 「まど」を設置する位置により、集団形成の方向が異なる。たとえば、子どもたちの活動の中間に置くと、その両側に対置するコーナー活動が展開しやすくなる。
(活用例)
- 円筒、フープ、枠積木、窓のあるついたてなどが現実的な効果を発揮する。
- 「まど」に、子どもの自発活動に即して機能(店のカウンター、切符売り場など)をもたせると、活動の内容が発展する。
技法3 「通路」をつくる(軌道設置法)
(内容と特性)
- 自己活動領域から他領域への、方向性をもった移動活動を開発する。「通路」を設定する。
- 「通路」づけには、他領域との同方向性が強化される場合もあれば、交差性が強化される場合もある。
(指導着のかかわり方)
- 集団内に各コーナー(活動領域)が分化して固定化したり、自発活動が高まりにくい場合、「通路」を設定して各領域の動きを活発にすることができる。
(活用例)
- でんわ、伸縮性ロープなどは、領域が移動しないままでの通路づけに有効であるが、道路などを場面設定する場合は、むしろ領域の移動自体が目的とされる。
技法4 「トンネル」をつくる(開通路の技法)
(内容と特性)
- 軌道の途中に「トンネル」のような制限領域を設定すると、そこが、自己活動領域と他領域との共有点、交差点となり、内的発展活動がさら開発されやすくなる。
(指導者のかかわり方)
- 「トンネル」は各コーナー活動の交差点、となりながら、コーナー間の移動のなされやすい集団状況を形成できる。
(活用例)
- ジャバラのような長いものや、半円の台を立てて橋のようにするなど、設定された制限領域の性質のちがい、により、他領域との共有・交差体験は異なるものとなる。
- 階段、スロープなど、高さや勾配を生かした領域設定は、ダイナミックな活動をさそうのに有効である。
技法5 「ふみきり」をつくる(障壁操作法)
(内容と特性)
- 自己活動領域と他領域との間に、「ふみきり」のような操作可能な障壁を設けることにより、その疎通性がつよめられる。
(指導者のかかわり方)
- 「ふみきり」により、コーナー間の対立的な状況を一時的に成立させて、障壁の除去あるいは移動などの操作をすることで、コーナー間の連結をはかることができる。
(活用例)
- 「ふみきり」や、ロープを波のようにゆらして「かわ」などの場面設定をして、各コーナーの交差するところに障壁を設けて疎通をはかる場合もあるし、かくれんぼのように、障壁にさえぎられたコーナーの、その障壁をとりのぞこうとすることで、相互のつながりがつよめられる場合もある。
- 「信号」や「時間の制限」(8時になったら門が開く)なども、一種の障壁操作である。
技法6 「境」をつくる(境界領域設定の技法)
(内容と特性)
- 自己活動領域と他領域との境界を明確にし、それへの働きかけを活発にすることにより、相互の関連性がつよめられる。
(指導者のかかわり方)
- 分化したコーナーの境界を明確にすると、各コーナーが集団状況にはっきり位置づく。また境界領域を設定していくなかで、コーナー間の関連性が意識されて、活動の内容を相互にとり入れやすい基盤がつくられる。
(活用例)
- 境界領域の内容として、各コーナーのどれとも関連性のある場面設定が効果である。たとえば、折り紙コーナーとままごとコーナーの間にロープをわたし、「電線」にする。折り紙コーナーの作品が「でんき」になりロープにつり下げられる活動が展関し、ままごとコーナーでは、それをままごとの台所の燈や、燃料にみたてるなどの活動へと発展する。
技法7 「回覧版」をまわす(焦点移動・拡散化の技法)
技法8 「でんしゃ」がまわる(領域移動・焦点化の技法)
(内容と特性)
- 自己活動領域と他領域との間に媒介となるものが行きかい、あるいは共有物が明確になることにより、交流がはかられる。
(指導者のかかわり方)
- ひとつのコーナーからの成果が、他のコーナーに配られたり(焦点移動・拡散化)、あるいは、ひとつのコーナーの活動が、他のコーナーの活動を吸収しながら(領域移動・焦点化)集団全体の枠を明確にしていく。
(活用例)
- 「手紙」が各コーナーへ届けられたり、ひとつのコーナーからぬいぐるみなどが「散歩」に出かけるなどは、「回覧版」と同様の機能をもつ。
- 「でんしゃ」は、各コーナーでの乗り降りを活発にしたり、切符など共通の物を所有したりすることで、コーナー間の交流は活発になる。
技法9 「店」をつくる(媒介領域形成の技法)
(内容と特性)
- 自己活動領域と他領域が、もうひとつの領域に位置づくことにより、相互の交差領域が形成されて交流が活発におこなわれる。
(指導者のかかわり方)
- どのコーナーにも媒介となる領域を設定し、そこを各コーナーの交差領域とすることで、各々のコーナーの活動がさらに発展するような、関係接在的集団形成の活動を展開することができる。
(活用例)
- 子どもの自発的活動により成立したあるコーナー活動を、「店」として意味づけ、場面設定をすることで、他のコーナーおよび全体に対して媒介的機能を発揮することができる。「場面設定」や「役割をとる」こと自体も、相互を関係づける媒介領城としての意味をもつといえよう。
技法10 「空気のボール*)」をなげる(包括領域形成の技法)
(内容と特色)
- 自己動領域も他領域も相互に働きかけ、働きかけられて変わる関係を維持する。
(指導者のかかわり方)
- 集団全体を包むような状況を成立させて、コーナー相互の働きかけ、全体への働きかけが同時にもたらされることにより、集団状況転換へのきっかけをつくる。
(活用例)
- 心理劇技法である「空気のボール」は、集団の統合活動として活用しても有効であるが、集団形成技法としても、集団の自発活動を高め、凝集性を促すのに役だつ。
子どもの活動には、「雨」「雪」などの場面設定も、同様な効果を発揮できる。
(武藤 安子)
*) 技法の命名に際しては、中山和子「集団状況発展に関する研究-統合構造化領域の成立について-」関係学研究編集委員会『関係学研究』第6巻第1号1978からヒントを得たものもある。
*) p.117 前掲書
主題・副題:幼児の集団指導-新しい療育の実践- 116頁~127頁