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幼児の集団指導-新しい療育の実践-

第7章 母親集団活動

はじめに

-集団指導における母親集団活動の概略-
母親集団は、子ども集団を構成している子どもの母親(時には、父、祖父母やその他の人たちの参加もある)と指導者によりつくられている集団である。
母親集団活動は、子ども集団活動と相互に関係しあいながら、独立した集団活動を展開している。
母親集団活動では、話しあいを主にしながら、母親たちの主体的な参加のなかから自発的に課題が出される。
母親集団活動のねらいは、単に個人で解決できない問題を集団で解決しようとするのではなく、指導者および他の母・子との相互関係や集団のダイナミックスを体験することにより、それぞれの母親が安定し、変化していくとともに、集団自体も発展することが目的とされる。さらに、母親個人の変化や向上が、集団の発展と相互作用的に働きあいながら、ひいては社会的他集団においてソーシャルアタションを展開していくような力として発展していくことが望まれる。
母親集団指導の活動は、毎週1回1時間定期的に行われている。なお、1期の活動期間は6か月である。
活動には、ケースワーカーと子ども集団活動の指導者1名が、それぞれ役割を分化しながらチームを組んで参加している。話しあいの課題に応じて、その他の専門領域の指導者が参加する機会がある。
本文の内容は、筆者もケ一スワーカーとして話しあい活動に参加し、集団における参加体験を他のメンバー(母親ほか)と共有しながら、それらの体験および話しあい活動の記録をもとに整理・分析したものである。
なお、今回はふれないが、母親集団活動は話しあい活動を軸としながら、母子合同活動、いくつかある母親グループの合同活動、他施設との母親交流会、卒園児の保護者との交流会、講演会、バザーなど多様な活動を展開しながらすすめられていることを記しておく。

1 母親集団活動の発展

 1) 母親の集団参加体験の構造化

ここで述べるのは、母親における集団参加体験を、A.話しあいの課題、B.集団全体の発展、C.指導者のかかわり方、との関係の柱に即して構造化を試み、5つの位相に分類したものである。
なお、図7-1~図7-6は、母親の体験が母親をとりまくまわりとの関係において、どのように構造化していくかの過程を図式化したものである。
(1)構造化の段階
<第1段階>
母親が集団に受容されて安定し、母親のもつ「問題」の現在肯定的把握がなされていく段階。
図7-1
図7-1
さまざまな悩みや期待を抱いての初めての集団体験であり、とまどいや緊張がみられる。
しかし、新しい人的・物的・社会的環境の理解が少しずつなされ、他の母親の発言を聞いたり、何をいっても安心していられる集団に気づいて情緒的にも安定するなかで、集団全体を許容的に感じるようになる。そして、集団の一員として受容され、相互共感的な姿勢が高まるとともに、集団への参加の意義を母親自身のなかで積極的にとらえようとする時期である。
A.この段階での話しあいの課題は、母親に成立している子どものさまざまな「問題」、母・子関係の「問題」、母親自身および家族の「問題」が多く、それらが個々に集団に投げ出される。ここで出される「問題」は個別的、現在否定的なものが多く、問題認識の仕方も過去の体験や既成の障害観などに規定されやすい。
話しあいがすすむ過程で、母親の変化としては過去の事実を次第に現在的に受けとめるようになり、母親相互のかかわりを通して、他の母親、子どもや母・子関係を知ったり、現実に即した見方での理解が深まる、そして、子どもの新しい側面での発見や、母親自身、母・子関係の変化に気づき、話しあいたい「問題」が多く出されるようになる。
B.集団全体としては、課題を中心にさまざまな層が類同的に構造化されている段階で、個々に出された問題に共感しあいながらお互いを理解することが主となる。
C.指導者のかかわり方としては、集団のなかで個々の母親が情緒的にも受容されながら安定していく過程で、「問題」が意識化され、現在的な把握が可能となるような働きかけが必要である。
指導者の意識的なかかわり方として次のような方法があげられる*)
① 意識の変革がもたらされる技法
ア.過去的、概念的な見方が固定されている時、現在の関係のあり方をめだたせることにより、現在的把握がされるようにする(現実場面媒介による意識変革の技法)。
イ.母子合同での活動の共通体験を通して、子どものようす、他の母親や子どものようす、母・子関係、指導者のかかわり方、活動の内容などで気づいたことや変化を出しあう(体験媒介による意識変化定着の技法)。
ウ.指導者が子ども集団活動のなかでとらえている子どものようすや変化を伝え、母に意識化されていないことがらを再確認していく。
エ.個々にノートを渡し、書くことによって自分の意識をまとめたり、客観的な見方がされるとともに、母親のとらえる変化や子どもをみる目が継続的なものとなっていくようにする(物媒介による関係意識変革の技法)。
また、個々で書くことを通してえられたものが集団に反映されて、活動は促進される(物媒介による活動促進の技法)。
② 集団状況展開の技法
ア.集団内の個々の母親も集団自体も明らかになるように連絡網をつくる。
それぞれが分有できることにより、集団意識が育ち高まる(物媒介による集団内役割明確化の技法)。
イ.集団共有のノートを渡す。話しあいの内容を記録することにより、1回1回の内容が集団で確認でき、全体の流れのなかに位置づいて次の話しあいの方向性がでやすくなったりする。また、話しあいが始まる前に、前回の内容や残されている課題を記録をもとに確かめることにより、今回はそのつみ重ねのなかで何について話しあうかが明らかになる。前回参加できなかった母親もスムーズに話しあいに加わることができる。
③ 課題成立の技法
ア.個別的な「問題」が集団の共通課題として発展していくために、内容を整理し、今話しあいたい「問題」への焦点化をはかる(攪枠焦点化による共通課題形成の技法)。
<第2段階>
共通課題の成立と発展の段階
母親の集団的体験が深まり、現在的把握がされてくると、個々の「問題」は集団で話しあいたい「課題」として母親に成立するようになる。
図7-2
図7-2
A.集団参加意欲が高まるにつれ、自発的に個個の課題を集団の全メンバーに投げ出し、集団共通の課題として話しあおうとするようになる。ここに、母親集団の共通課題の成立がみられる。
それぞれの母親に成立している課題が数多く出され、また、課題の内容の広がりもみられるが、同様な経験を他の母親が話すのを聞くことにより、自分自身を客観視したり、対象化してとらえかえすことができやすくなる。
母親の変化としては、集団の担い手として主体的に共通課題に即して考え、解決していく手がかりをつかもうと自発的発言の交流がなされる。課題をより深く洞察し、相互に経験的立場からの具体的な方法が出され意識の拡大がもたらされる。
さらに、認識的にとらえるだけではなく、話しあいで得た新しい方法を自分のものとして位置づけ、実際に家庭で体験化してみるとの能動的な課題への取り組みがみられる。その結果は再び集団にフィードバックされることにより、課題はさらに深化し展開することになる。
B.集団全体としては、それぞれの母親が、集団体験を自分自身の生活にいかす態度と、家庭での体験が集団にかえされる過程において、集団と家庭が相互に関連をもちながら発展しているといえる。
C.指導者のかかわり方としては、共通課題を発展解決させることが必要である。
① 意識の変革がもたらされる技法
ア.課題を明らかにし、母親個々に焦点をあて全員が1人1人発言できるようにする。自分の意見をはっきりと人に伝えられるように意識化するとともに、自分の意見を述べることにより他の母親にも役立ち、他の母親の意見を聞きながら認識を広げるという、相互の意見を尊重しながら共通理解が深まる(焦点移動による認識拡大の技法)。
② 課題成立・解決の方法
ア.概念的話しあい活動とともにロールプレイを行い、体験的に把握していく。
それぞれが役割をとり、場面を設定することにより、現実生活で問題ととらえられている人間関係を明らかにし、洞察を深め、よりよい方向に関係を発展させる(役割演技法による課題解決の技法)。
<第3段階>
相対的に存在する社会的他集団に気づき、社会的課題が成立する段階
母親と子どもの生活に対する積極的な姿勢にともない、生活領域の広がりがみられるようになる。
図7-3
図7-3
新しい共通課題が増え、話しあいの内容も深められるとともに、課題のとらえ方も母親集団内あるいは母親自身のこれまでの生活領域の経験にとどまらず、社会的な他集団へと拡大されるようになる。社会的他集団といっても、初めはかなり家族集団から一歩出た領域である。
A.この段階での課題も、近所に友達がいない、遊び場の利用について、近隊との関係などが中心となる。
母親の変化として、子どもの発達や母親自身にとっても、地域での集団の場や地域とのかかわりがいかに必要であるかを知るなかで、地域社会や他の集団への目も広がってくる。たとえば、社会制度の利用や地域活動、児童館など社会資源の地域構造に気づいたり、就学や次への集団の場として学校、保育所、幼稚園などに自らかかわることの必要性を感じたりして、社会的レベルでの課題が話しあわれるようになる。
B.集団全体としては、母親集団をこえた新しい事態に直面して、集団としてのゆれ動きのみられる段階である。
C.指導者のかかわり方としては、社会的課題の受けとめ方はそれぞれの母親により異なるが、全体に位置づくように内容を整理することが必要である。
また、新しい事態に直面しての漠然とした不安やとまどいに対して、現状を確かめあいながら先に向けての取り組みを明らかに、かつ積極的なものにしていくことが必要である。
<第4段階>
社会的課題の発展・拡大の段階
A.課題の解決に向けて直接的に社会的他集団へ働きかける行動はまだ見られないが本や資料をもちよって学んだり、他の通園施設の母親集団との交流を深めるなかで、個々の体験の交差・交流が盛んに行われる段階である。
B.集団全体としては、他の集団と出あうことで、より自分たちの集団としての意識も高まり特色もとらえられるようになる。
図7-4
図7-4
他の集団のメンバーの体験談や活動の成果は、母親集団内で集団的に受けとめ、調整・統合していくなかで、次への行動の予測をたてることもできてくる。
<第4′段階〉
社会的他集団に働きかけていく段階
A′.社会的課題の解決にむけて、見通しや方法を母親自身のなかで明らかにしながら、それぞれの母親が実際に働きかけを行ってみたりする段階である。そこでの体験や、直面した問題となる状況および働きかけのようす、結果は母親集団活動にフィードバックされ、さらに新しいみとおしで話しあわれることになる。
図7-5
図7-5
B′.集団全体としては、母親たちのなかで、体験者としてのレポーターの役割をとったり、司会の役割をとるなど、集団を自分たちで主導的に操作・発展させる役割もになうことができてくる。
C′指導者のかかわり方としては、次のようなことが考えられる。
①集団操作的役割を果たす母親の補助的な役割をとり、方向性を出したり、集団活動成果を整理し明らかにしながら内容を促進させる。
②社会的他集団への働きかけに関して、個別性の強いものはケースワークアプローチに主眼がおかれながら、母親集団活動とケースワークの相互の関係が発展していくようなかかわりが必要である。
③福祉援護(制度、しくみ)や社会賞源の内容とその利用について、資料をもとに具体的に把握できるようにかかわるが、母親が主体的に活用する動きとして生かされていくことが望まれる。
<第5段階>
母親集団、課題、家族集団、社会的他集団の全体的・統合的発展の段階
図7-6
図7-6
A.それぞれの母親が課題に対して個人的にばかりでなく、母親集団全体として、社会的地集団に考えをあらわしたり直接働きかけを行うこともでてくる段階である。
B.その過程で、集団と集団が相互作用的に影響しあい、母親集団の働きかけがソーシャルアクションを展開していくような力として発展することも考えられるようになる。
その結果、母親集団の集団としての働きかけにより、地域社会金体のさまざまなかたちの変革が期待されるが、そのプロセスで母親集団自身も変わっていく必要性にせまられる。
このような相互関係的な変化・発展とつながりをもつ体験は、退園などで新しい集団に移行した所においても、集団の相互関係的なかかわり方や状況をつくり出していく態度としていかされていくことが期待される。
C.指導者のかかわり方としては、母親集団としての考え方を統一したり、社会的他集団への具体的な働きかけの内容やすすめ方について細かく整理・検討するとともに、社会的他集団との積極的な連絡をとることがあげられる。
(2)まとめと今後の課題
以上、母親の集団参加体験の構造化に関して、まとめおよび今後の課題として次のことが考えられる。
①.母親の集団参加体験を5つの位相に分類したが、現在との発展段階に位置づくかは、それまでの母親の集団経験の有無や、集団に参加している指導者のかかわり方により大きく異なる。
しかし、目的は第1段階にあるものを第5段階に近づけようとするのではない。それぞれの母親が現在どこに位置づいているかを明らかにし、先に向けてどのように発展していくことが望ましいかを見通して、集団全体としての発展のみちすじの指標とすることにある。
②.指導者のかかわり方を全体的にみると、その内容にも変化が見られる。
活動の初めの段階では、個人に焦点をあて集団参加意欲を高めたり、意識を変革・促進させたりのいわゆる認識的側面への働きかけがみられる。
しかし、活動の発展経過につれてそれぞれの母親の意識が集団として高まってくると、集団状況全体の展開へと焦点があてられることが多くなる。
課題の成立にともない、課題との関係で集団が発展していくようになるが、認識的な面にとどまらず行為的レベルでのかかわりがみられる。
指導者は、常に集団の発展状況を把握し、指導者側に立てられているねらいと相互に関係させながらかかわることが必要である。
さらに、ねらいおよび技法・効果を明らかにすることが課題である。
③.母親集団活動とケースワークアプローチの併用ケースをとりあげ、相互関係的な変化のプロセスを分析することも課題である。
④.集団参加体験をとおしての個別ケースでの変容過程の分析も必要である。

*) お茶の水女子大学児童臨床研究室編「児童臨床学」、1968

 2) 母親の意識内容の変化

話しあいの1期の活動期間は6か月であるが、その最終回の活動時に、最小限の枠を設けた自由記述法によりそれぞれの母親が感じていることを書くことにしている(表7-1参照)。
表 7-1*)
表 7-1
ここでは、昭和50年4月から昭和51年9月までの3期にわたるのべ57枚の記をもとに、〔母グループについて〕と〔今後のことについて〕の項目をとりあげ分析し、さきに述べた5つの位相との相互関係的な様相を明らかにしてみたい。
<第1段階の意識内容としてとらえられるもの>
a.母親集団活動の全体枠について

  • 話しあいはとても良いので続けてほしい。
  • 時間を長くしてほしい。
  • 他集団との合同活動の話しあいの機会を多くしてほしい。

b.初めて集団に参加して

  • 通園するまでは外へ出るのがとても億劫で、つい家の中ですごしていた。自分自身が負けそうになって、いやなことばかり考え悩んでいたが、思いきってようちえんに来てみてよかったと思う。自分自身がずいぶん強くなった。
  • ハリが出てきた。日ごろ家にとじこもりがちだったが、外に出るのが楽しみで、母子で通園が生きがいになっている。
  • 楽しくて。子どもより母の方が進んで来る。

c.共通基盤にたつ連帯意識について

  • すべて不安一色だったが、同じ思いを経験したという1つのことで結びあい、勇気づけられた。
  • 自分の子どもが一番不幸というのがぬけなかったが、希望がわいてきて、精神的にも楽になった。
  • 自分のことがどの母にも共通していて話しやすかった。

d.集団で安定する体験について

  • グループの方々ともすっかり慣れ、心身共にゆとりがでてきた。
  • 何か迷ったりわからない時、グループで話してどんなに気が楽になったことか。
  • 学ぶことがたくさんあり、親の精神安定の面からも参加してよかった。
  • 母同士気を使うこともなく、何でもいえた。
  • 隠しだてのない話のできるグループは大切にしたい。

e.集団意識について

  • 休園するとグループの方から電話があり、活動のようすを知らせてくれる。
  • ようちえん以外でも親しくできる関係は良かった。

f.他の母親に気づく

  • 他の母親は子どものこと、自分のことをよく考えて、体と体でぶつかりあっているようで感心する。私もがん張らなくっちゃと思っているばかり。
  • 他の母たちは、子どもについて心配して、よく気を配っているようだ。

<第2段階の意識内容としてとらえられるもの>
g.母親自身の集団への参加態度の変化

  • 自分でもびっくりするほど、他人によく話せるようになった。
  • 何に対しても、恥ずかしくなくなった。
  • 消極的だった私も、大分積極的になった。
  • 以前より慣れも手伝ってか、リラックスして話せる。

h.集団の課題について

  • 事前に話しあいのテーマが出されていることは勉強になる。
  • 小さな問題から社会的な問題まで、内容豊かでいろいろわかり見聞が広がった。

i.課題の体験化のフィードバックについて

  • 今までは、横木などのおもちゃで遊ぶことをとてもいやがり、無理に引きずりこむと、不愉快な顔をするばかりだった。集団での遊びを見たり、指導されたようにやってみると、少しばかりは興味を示す時がある。いやがることでも、やり方をかえたり気分をかえたりして、遊んでみようと思う。今までは、いやがることはやらせないでなるべく避けるようにと理解してきた。
  • 自立を目標にしているが、三輪車に乗る方法を聞き、子どもに一番良い方法もわかり、今では2時間も外で遊べる。
  • コップを1人で飲ませるアドバイスを得、自分で気づかない方法を知った。
  • 食事、学習などの意見を参考に、自分の子どもにも新しい体験をさせた。
  • 夏休みの生活記録を今まで続けており役立っている。課題になった読書も、忙しいが楽しみであり続けたい。
  • 自分の考え方が正しいと思ったことも、いろいろな考えがあり、変えてみるよう努力した。
  • 自分一人で考え悩んでいたことも、他の人の意見を聞くことにより、考え方を改めたりこれで良かったのだといいきかせたり、考え方の違いを悟り勉強になった。
  • 母達の話を聞いて、やってみようと思ってもなかなか続かず、1日の時間割にしてもできないことが多いが、これからも今までの話を思い出して、1つずつやってみよう。

j.自分の養育態度の客観視と変化について

  • 何でも親がやってあげてはいけない。時間を待って、余裕をもって子を見ることを教えられた。
  • 家にいる間は、同年の子どもばかり目につき、あせるばかりでかえって逆のこと(子がいやがるのに無理にさせたり)をしてきたが、通園し始めてから、ムリにさせない、試してみないを頭にいれてきたつもりで、自分でも以前とかわったのではないかと思う。
  • 今週はどんな変化があったかなと考えるだけでも、自分自身に問い返すことになり、私自身の反省になる。
  • 子を叱ることが少なくなってきたことは、自分の気もちのあせりがなくなってきたことと、子どももしっかりしてきたから。
  • こうしてやらなければと思うことがたくさん出てきた。
  • 気が短いせいか、子どもと一緒にカッカしたり、イヤになったりして、子どもを私のぺースにあわせようとして失敗した。今後は、のんびり、ゆったりぺースでいこうと思う。

k.家族集団への広がり

  • 他の方々の話を聞いて、父親の役割を痛感した。
  • 体の不自由な子がいることで、兄弟も暗くならないように接したい。

l.集団活動体験を経ての課題の成立と、今後にむけての期待。

  • 子どもが話を聞く姿勢をもつには、親はどのように対処していったらよいか。
  • 子ども自身、母の声は理解できるが、他の人の呼びかけでは判断できない。どのようにかかわっていけば良いのか。
  • 子どもの健康と共に、親の健康管理に留意したい。
  • 障害のために、普通の子どもよりすべて劣ってしまうことがないよう、これだけは負けないというものを身につけさせたい。
  • 衣服の着脱、食事、排便の自立を心がけたい。
  • アルバムを開く時、戸外保育や遠足の写真が生き生きみえるので、親子で外に出る機会を多くしたい。
  • 今後のことを考えるときりがないが、子どもの状態を尊重して無理をしないで対処していきたい。
  • 普通の子どもとは違っても、人生というものは楽しいということを知りてほしい。
  • 就学前の1年は、普通の子の集団にいれたい。
  • 学校のことが一番気になるが、それまでに少しでもみんなと同じ行動ができるようになればと思う。
  • 学校での食事、トイレ、通学のことが心配だけど、1日でも多く元気に通ってほしい。
  • 入学まであと1年余り、方針を固め、土壇場で迷わないよう気持ちを整理したい。
  • 就学を目標に、最もよいように努力したい。

<第3段階の意識内容としてとらえられるもの>
m.社会集団に気づき、社会的課題について

  • 各地区の現状を知りたい。
  • 福祉・学校の話をもっと詳しく教えてほしい。
  • 就学前の保育所・幼稚園などへの移行をどうしたらよいか。
  • 来年は就学なのでそれだけが心配、なんとかしなければと思いながら何から手をつけたらよいのか。
  • 学校にはいれるか心配。
  • 合同の話しあいで、行政の遅れを知り、地域活動の大切さを痛感した。

<第4段階の意識内容としてとらえられるもの>
n.社会的課題に対しての情報を得たり、働きかけの報告について

  • 就学前に幼稚園にいれたいが、近所の幼稚園は一年保育なので入園の可能性について。
  • 区の保育所に申しこんであるが、のびのびになっているので早くはっきりさせたい。
  • 地域の現状に関する知識を得たいと、区の集会、活動に出席している。
  • 保育所入園のための働きかけで、少々疲れたと言いたいが、障害児をもつことがいかに大変かを改めて知った感じがする。
  • 今一番悩んでいることは、私の区の保育ママさんの数が少なく、順番待ちの人が多いため妹を預ってもらえないこと。

<第5段階の意識内容としてとらえられるもの>
o.社会集団へむかって

  • 初めて“社会”というところに出る。今までは、いわば同じような子どもたち、親たちの中で隔離されていた状態から、普通の一般社会に出るので、いろいろなことがあると覚悟はしているが、一方どうにでもなれ、なるようにしかならないと少々やけっぱちな気持ちになっている。仕方がありません。
  • 学校をひかえて、悩み事、心配事きりがない。母同士の話しあいの中で随分解決できたが、今後孤立しそうで心配だ。どこかで、母同士の話しあいができる会と積極的につながっていきたい。

*) お茶の水女子大学児童臨床研究室児童集団指導研究会で用いられた質問紙を参考にする。

 3)母親集団活動の実践成果

各期の終わりには、子ども集団活動の成果(グループの製作品)、母親集団活動の成果、指導者チームによる活動経過の報告、感想などを1つの文集にして活動のしめくくりとしている。これは、母親集団活動にとっては集団レベルでの統合・整理であり、いくつかある母親グループ間の内容的交流の意味をもつものである。
方法としては、今までの集団活動の成果を確めあいながら話しあいを行う。そこでは母親が記録してきた集団のノートも生かされながら、6か月間の話しあいの内容をどのような柱でまとめるかが決められ話しあわれる。
過去に話しあわれた課題をさらに発展させるかたちでの感想も出されて、単なるまとめに終わらず、この話しあい自体が次への出発点となる場合も少なくない。
ここでは、母親集団活動の実践的成果の1例として、昭和50年後期(昭和50年10月から翌年4月)の文集の一部を記述する。このグループのメンバーは8人で、就学をひかえた子どもをもつ母親が多く、学校見学、教育相談の報告や意見の交換が活発になされたり、また地域への積極的な参加・活動がみられるなど、社会的課題での話しあいが展開・発展したグループである。

  1. 就学について
    1. 学校見学をしての報告、感想
      1. 東京都 A養護学校
      2.       B養護学校
      3.       C養護学校
      4.       D養護学校
      5. 埼玉県 E養護学校(内容略)
    2. 就学相談の経過と問題点について
      1. <東京都の場合>(略)
      2. <埼玉県の場合〉(略)
      3. <千葉県F市の場合>(略)
  2. 地域活動について
    1. 東京G区「Hの会」に参加して
      1.  地域といってもいろいろな会があるけれどその中でG区の場合は、保健所の保健婦さんの管内に数人障害児がいるので集まったらどうかという呼びかけで、「Iのつどい」というグループができた。
        2年目になり、障害児をもつ親の気持ちを少しでもわかってもらえればと文集を出版し、それを区内はもちろん他の機関にもうったえた。
        それがきっかけかどうかわからないが、3年目をむかえ、管内だけのグループではなく、G区内全体のグループへと大きくなり、名称も「Hの会」となった。人数もふえたので、区の方でも腰をあげ、予算もとれ、区の施設も借してくれるようになった。
        まだ3園だけだが区立の保育園で障害児をいれてくれるようになった。将来はどこの園でも自由に受けいれてもらいたいと、皆で願っている。それまでは、親同士がん張り実のある保育活動をやろうと、張り切っている。
        親もお互いに交流しあい、つながりができて、少しのことではくよくよしなくなった。親が明るくなると、子どもも自然に、子どもらしく明るく育っていくように思う。
    2. 埼玉J市における市民の会に参加して
      1.  障害の別なく、障害児をもつ親、養護学校の先生が主になって活動している。月に1度は、市役所、福祉センター、図書館などを利用し、障害課の課長さんなどが参加して話しあいがもたれる。今まで、医療費の無料化、未就学児をなくすこと、特殊学級・重症児学級の設置・増設、保母の増員などを要望してきた。
        春にハイキングなどの行事もあり、年に1度10月には、みんなで遊ぶ会が開かれる。この時には、子どもたちは保母さんといっしょに外で遊び、私達は講演を聞いたり、話しあいの機会をもつことができる。
        地域の人々と知りあいになれ、同じ境遇の親同士が気軽に明るく話しあえる。また、ひとつの問題をみんなで真剣に考えあい、お互いにはげみにもなるし、子どもも多くの友達と一緒に遊び、新しい体験を得ている。
  3. 絵本についての話しあいのこと
    1.  絵本の与え方について、さまざまな本の中から、どのような本が子どもによい影響を与えるか、また、どうすれば本好きの子どもになるかを話しあった。数年前、ようちえんに講演にきた童話作家のKさんの推薦書を皆で読みあい、次のようなことがまとめられた。
      ① 出版してから、25年以上経ている本はそれなりに味がある。
      ② 読んであげる時は、素直に飾り気なく読む。
      ③ 絵本は楽しむものであるから、説明魔にならないようにする。
      ④ 絵本から受けるそぼくな感動を、大事にしてあげる。
      その他まだまだあるが、幼児にとって、物の見方や知識を吸収するのに、絵本がいかに大切かを知った。
      この本の中には、代表的な本として次のような絵本があげられている。「ちびくろさんぼ」「百まんびきのねこ」「いたずらきかんしゃちゅうちゅう」「おかあさんだいすき」「シナの5人きょうだい」「おさるのジョージ」
      私の5才の女の子は、「大きなかぶ」「そらいろのたね」「かばくん」などを、喜んで聞いている。特に、「かばくん」の、ちびのかばとかめの子がでてくるのがおもしろいようだ。ことばがでないので話はできないが、手足をバタバタさせてニコニコしている。
      聞くことが上手になり、絵本のおもしろさがわかってきたようで、途中で読むのをやめるとベソをかく。意志表示がはっきりし、表情が明るくなったように感じられ、これからもどんどん良い本を読んであげようと思う。

2 母親集団活動における個別的課題へのアプローチ

-三者面談法について-

 1)三者面談法の原理

集団のなかでは解決できにくい個別的な問題や状況に対しては、ケースワーカーとしての立場からさまざまなアプローチの仕方が考えられなければならないが、ここでは、三者面談法の実践をとりあげる。
三者面談法は、関係療法の技法として松村康平により昭和30年ごろには確立され、その後多くの領域において用いられている面接(カウンセリング)法であるが、武藤安子は母親集団活動における三者面談法の効用について次のように説明している*)

  1.  母親集団において、母親に成立した子どもの「問題」が集団の「課題」として話しあわれていく過程で、母親の個別的な問題がめだってとらえられ、集団内での解決が困難だと思われる時、また、まだ母子の関係がつよく母・子が、母親集団、子ども集団に入りきれない状況が生じた時などに、その解決法のひとつとして三者面談法がとりいれられる。
    三者面談がもたれる場合は、母に、多かれ少なかれ、集団の他のメンバーとの間に、集団体験のレベルでの差異が感じられており、三者面談状況においてもたらされる三者関係発展の体験が、集団内での人間関係の回復をもたらし、現実の生活自体における、母子関係を含む対人関係的いとなみを高めることが、目的のひとつとされる。
    三者面談は、一般に主相談者と、副相談者と、来談者とで行われるが、この場合の主相談者は母親集団指導者であり、面談を主としてすすめていく役割をとり、解決の方向を見とおしながら、面談をすすめやすい場面づくりをする。子ども集団指導者は副相談者として、主相談者の補助をしたり、母親の共感者となったり、必要に応じて、解決の手がかりとなる情報を、場面に投入したりする役割をとる。しかし、面談のすすめられていく過程では、場面によってそれぞれの役割は、機能的に変化し、交代されて、三者のだれもが、異なる役割を体験することができる。
    さらに、専門領域の異なる2人の指導者と母親との間で、三者面談を展開することが必要な場合も生じる。その場合には、母親において、子どもの「問題」の方向が統合されてとらえられやすいことが効果としてある。
    三者面談の効用は、主として次の3つにおいてとらえられる。
    ① 来談者に、自己客観視による洞察がうまれやすいこと。
    二者相談では、問題解決への期待を主とした(教えてほしい、のような)、情緒的関係において問題の主観的なとらえかたがなされやすい。三者面談では、来談者が、話し手のもう1人の人の意見を聞くことにより、あるいは、他の二者のやりとりをとらえて、来談者が、自己を他者のうちにみいだし、客観的な洞察を得やすい。
    ② 来談者における自発活動の高まり。
    来談者が相談者にむかう時、そこには勾配関係が生じやすく、来談者にとって、相談者が圧力の大きい存在として感じられたり、また、相談者に依存的になったりすることがある。三者面談をすすめる場で、副相談者を媒介として、話がしやすくなったり、来談者の、自発的、主体的な問題解決への態度が養われる。
    ③ 役割関係の分化によりもたらされる役割体験。
    面談がすすめられていく過程でもたらされる役割体験として、来談者においては、たとえば父、母、子の三者の役割の分化、あるいは、集団の話しあいの場での、話を主としてすすめていく役割、他の人の話をとらえて媒介的にふるまう役割、話題をどんどん提供して内容をゆたかにする役割、聞いて他の人をうけとめる役割などの分化によってもたらされる役割体験(立場)につながるもので、三者面談における役割体験の変化により、現実の生活での対人関係における役割体験の変化が期待される。
    その他、「問題」の種類によっては、四者面談など、多者面談も考えられるが、個人場面、集団場面をつなぐ、三者面談における三者関係発展の原理をふくんだ状況を、媒介的意図的にもうけることが母親集団活動の運営と「問題」の解決に有効とおもわれる。
    また、二者面談においても、物の使用などにより、三者関係発展状況はつくることができる。

*) 武藤安子「幼児集団指導」Vol.3 日本肢体不自由児協会、1973

 2)三者面談法の実際

ここでは、長谷部尚子によりなされた実践記録を引用する*)
母親集団の話しあいで、母親が子どもの変化(伸び)をとらえにくいことがある。積極的に変化(伸び)をみつけようとする態度が育っていなかったり、母親の「こうあってほしい」というニードばかりが先行し、子どもの現在の状態をとらえられずに、「ちっとも変わらない」ということで片付けてしまう側面もある。そのため、個の特色・問題をより明確化して、個に即した働きかけをうながす過程も必要になってくる。その方法として、母子共通の状況を用意して、母子が共通体験をしながら、個々の変化をおさえていく方法がとられている。たとえば全体行事の1つである遠足、運動会に参加して、「ともだちとの活動のなかにいる自分の子どもをみて、お母さんはどのように感じたか」を個々に考える。あるいは、母親集団が子ども集団の活動の中にお客様として役割を担って入り、そこに展開された母子合同活動で個々に感じたこと、発見したことを話しあうなどである。しかし、共通の状況の中でも、「わが子の場合どうしたらよいか具体的にかかわり方を知りたい」とか「いや、そのことにはあまり関心がない」など、集団の課題として成立しにくい個の問題・関心が目立つことがある。また、母子分離が難しい状況では、子どもが母親集団に入ってきたり、子どもの要求に応じて、逆に母親が子ども集団に入ったり、時には、両集団の中間に位置する場所で、子ども集団の指導者のひとり、あるいは母親集団の指導者のひとりが、かかわったりしているが、母子いずれも、母子各々の集団への安定した参加ができないでいる場合がある。このように集団の中では解決できにくい個の問題や状況を、いかに集団のレベルで受けとめていくかなど、母親集団活動において、三者面談法の実践は多くあるが、次に1例をあげながら、効果を考察してみる。

*) 長谷部尚子「幼児集団指導」Vol.3 日本肢体不自由児協会、1973

 (1)実践例
T・H君、5才、以下お母さんの述べた最近のH君の様子である。
「興味の範囲が広がってきたみたいです。私の友人の子どもの持っていた、赤ちゃんのぬいぐるみに関心をみせました。子どもにとって今は、調子の良い時期のようです。丈夫だし気嫌も良い、声が大きくなったし、足もともしっかりしてきています、ただ聴力障害があるので、してはいけないことをどのように伝えたらわかってもらえるのか……それが悩みです。」
聴力検査に関しては他施設を利用しているが、日常生活における具体的な接し方に不安をもち、特に人への関心が育ちにくい状態が続いており、子ども集団活動のなかでの指導の仕方を参考にしたいとの希望が強く出された。
そこで、母親と母親集団指導者が子ども集団活動の参加観察をしたのち、子ども集団活動に参加している指導者(言語治療士)と三者面談がもたれた。

  1.  母親集団指導者:母L(母リーダー)とする。
    子ども集団指導者:子L(子リーダー)とする。
    母L1:お子さんの活動をこうしてみるのは、はじめてですか? (T母:ええ)どのように感じられましたか?
    T母1:よく遊んでいましたね、輪(注 フラフープをH君と子Lが向かい合って持ち、お互いに動かしていた)を1度はなしたあと、もう関心がないのかと思ったら、またあそんでいました。
    子L1:あの輪を自分の力で動かしていたんですよ、私は段々力を抜いていきました。
    T母2:1つのことをずっとやれていたので楽しかったのでしょう。輪で遊ぶのは、はじめてです。それからレコードのボリュームをもっと上げてはどうでしょうか、他の子には聞こえたのでしょうか。
    子L2:他の子の、今遊んでいる遊びを止めては意味がないのです。レコードを聞かせることが主ではないのですから。
    T母3:できればHをスピーカーのそばに寄せてほしかったのですけど…音が出ていることが本人にわかった方がよいと思うからです。家では直接さわらせているんです。なるべく音の出ていることを気づかせていただくと良いのですが……。
    子L3:それに関して、今日の活動の中で気をつけたことが2つありました。1つは、おんぶが好きなH君の要求があればおんぶしよう、そして背中から音を伝えようと気をつけました。大きな声で背中をゆする、コミュニケーションの一方法として今まで続けでこのような方法をとってきましたが、今日はそれが輪になったわけです。片方が輪を動かすと、その動きでもう片方が、伝わるそのようなコミュニケーションの伝わり方もあるわけです。そして、もう1つは、子どもと正面に位置して輪のうごきにあわせて声を出すということを気をつけてしてみました。「ポッ、ポッ」声を高く低く、体を一緒に動かすとH君は、口をじっとみています。正面を向いている時は、複雑なことを言わずに大きな声で簡単なことを言うように注意してみました。
    母L3:今のお話を聞いて、H君の関心が段々広がってきているように思えたことと、母グループにH君が来た時に、生かせることがあるのではないかなと思いました。
    子L4:H君とリーダーの2人の関係にこだわらずに、新しいお友だちが出て来た時にとても喜びますね。今日、輪の中にJちゃんが入ってきたらとても喜んでいました。
    T母4:そうですか、楽しく遊べたのですね。
    母L3:今日、母グループでは、親にとって困ることを子どもがする場合、ダメという禁止を前面に出さないで、子どもに伝えるにはどうしたらよいかという課題が出され話しあわれたのですが、H君のお母さんも、人とのやりとりの面で困っているようです。子どもグループの活動では、どのようにしでいるのでしょうか。
    子L5:これは今、こまるよという気持ちで、その物を動かして伝える。例えばH君のそばに寄って、手をもってそのものからはなしながら、言葉と動きを一致させて伝える。対人関係のつながりがきれないように、こまる気持ちを伝えたい。
    T母5:実は、家でおばあちゃんの部屋の障子を破いて困っています。寒いのと、外からよく見える所なので困っています。障子を破くのは外をみたいだけではないらしいのです。
    子L2:破くことが楽しいのでしょうか。今のH君には人との関係がきれてしまうような禁止のしかたは、できるだけ少なくした方が良いと思われます。というのは、テンポをゆっくりして体で伝えるということが、とてもうれしくなっているからです。
    母L4:障子を破く代りに何か用意できるものがあるでしょうか。
    T母6:障子のあけたてがおもしろいのかもしれませんね。
    子L7:あけたてをしている内に偶然に破いてしまうのかもしれませんね。破れにくいビニール障子を使うとか…破くということは別に考えてみてはどうでしょう。
    T母7:破いてしまった時は、その都度叱る方が良いのでしょうか。
    子L8:お母さんが困ったという感情は伝えなければならないでしょう。拒否したことだけを残すと良くないと思います。
    母L5:「お母さん困ったわ」とかですか……そろそろ時間ですので…今、いろいろ具体的なことも出されましたので、お家で実践してみて、またお母さんの話しあいの中で返して下さると役に立つ方がいるかもしれませんね。

 (2)実践の効果
① コミュニケーションをつけるという、H君の個別の問題に関して、今、子ども集団で働きかけている具体的方法を知り、そのなかでH君が変化をみせはじめていること、同時に母親が実践できる面を参加体験および話しあいからとらえた(子L3、母L2、子4)。
② 母親集団の課題が、三者面談状況にもちこまれて、日常生活面での具体的な話しあいが展開するなかで、子どもの接し方への基本的な考え方と方法がみい出された(子L5、子L6、子L7、子L8、母L5)。
③ 子どもの行動を母親の立場から困ったこととのみとらえるのではなく、母親に、子どもの立場にたっての洞察がうまれた(T母5、T母6)。
④ H君個人の問題のみにとどまらず、さらに母親集団にフィードバックしていくことによって、母親集団での課題が深化・拡大してとらえられ発展していくことが期待される(母L5)。

(高見 照代)

参考文献
(1)松村康平「心理劇」誠信書房、1961
(2)日本肢体不自由児協会「幼児集団指導」Vol.1~8、1970~1978

主題・副題:幼児の集団指導-新しい療育の実践- 195頁~214頁

著者名:五味重春・田口恒夫・松村康平 監修・著 武藤安子・吉川晴美 著

掲載雑誌名:

発行者・出版社:社会福祉法人 日本肢体不自由児協会

巻数・頁数:1頁~214頁

発行月日:西暦 1979年 3月 第1刷

登録する文献の種類:(5)書籍

情報の分野:(1)社会福祉、(4)教育学、(9)心理学

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