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ンデイェ・ダグ・グウェ・ディエ

ンデイェ・ダグ・グウェ・ディエセネガル運動機能障害者協会女性部/セネガル 2002年よりアショカ・フェロー

女性障害者のリプロダクティブヘルス 生きるためのロジック

グェデル・ンボッジ著 バレリエ・ウィルソン英訳

セネガルの背景

セネガルの憲法は、すべての市民に平等な権利を認めている。しかし現実には多くの経済的、物理的、そして心理的な壁が障害者の社会統合を妨げている。

家族省は、障害当事者団体やその他すべての障害分野で働く関係者と協働で、障害者のすべての問題に配慮した重要な法案を起草した。この法案はすでに承認され、私たちはそれが国会で可決されることを期待している。

WHO(世界保健機関)によると、障害者はセネガル人口約1,100万人の10%を占め、そのうち49%が女性である。障害者の80%は地方で暮らしており、70%以上が基本的な社会サービスにアクセスできていない。障害者の16%が視覚障害者、4分の1が運動機能障害を持ち、51%が聴覚障害やアルビノ(白色症)など他の障害を抱えている。

一般的にセネガルの女性の状況は、多くの敵対的・差別的要素に特徴づけられている。残念なことに、女性障害者の方がより当てはまる。これらの要素とは、

  • 社会的、文化的な基準
  • 女性にとってはさらに劇的な社会的結果をともなう、貧困の女性化
  • 時折の差別と、教育、基本的な社会サービス、仕事へのアクセスからの除外
  • 意思決定分野での限られた出席と女性障害者の限られた参加

このように、女性障害者は人生の各段階で二重の意味で弱い存在となっている。障害のせいで、彼女たちは自分たちの生理学的状況や不安定な経済的状況に関して常に困難な状況に直面している。

教育と訓練

教育の分野を見ても、現在機能している学校や大学の制度は女性障害者に公平ではない。構造も構造基盤も不充分で、多くの場合、障害者は利用することさえできない。学生たちは、障害学生を受け入れ、助ける必要性にいつも気づいているわけではい。

これらの要素すべてが、女性障害者の非識字率が高い(50%)原因となっている。

職業

女性障害者の中で、有給の仕事に就ける人は非常に限られている。拒否される確率は驚くほど高い。民間企業は、障害者の生産性への偏見が強いので、障害者を雇用することは極めてまれだ。それは民間だけでなく、セネガルの行政機関も同様のロジックに従っている。

女性の障害者は、旅行業、ホテル業や法律関係の仕事など、多くの業種から排除されている。働く機会を与えられた人は、職場内で差別にしばしば苦しんでいる。彼女らが重要な責任を負う仕事に昇進することはほとんどない。

セネガルは雇用に関するILO(国際労働機関)159号条約をまだ批准していない。

それにもかかわらず、この領域では進展が認められる。一つの画期的な取り組みとして、セネガル政府は公的な仕事の15%を障害者のために確保することを表明した。女性障害者は、ますます重要な責任ある仕事に就いている。現在、「女性の全国委員会」のゴールは、的確な技能レベルを持つ女性障害者が、自分たちの尊厳を保ちながら、自分たちに値する仕事に就くことだ。

我々の取り組みの成功の鍵は、研修に掛かっている。私たちは障害者を対象に、(IT企業のような)新興産業での認定された研修を会員に行っている。教育水準の低い人々に対しては、イタリア・インターナショナル・コーポレーションや他のNGOと連携して、将来性のある革新的業種での就職を目指し、機能的識字訓練を導入した。このような研修モジュールは、国中の女性障害者リーダーの出現に貢献している。

ンデイェ・ダグ・グウェ・ディエンデイェ・ダグ・グウェ・ディエ

社会革新:運動機能障害を持った女性のリプロダクティブヘルス

障害を持つ人たち、特に女性の効果的な社会経済的統合は、大きな偉業である。そのためには、社会のあらゆるレベルで行動や意識を変える必要がある。もうひとつの大きな挑戦が、運動機能に障害を持つ女性のリプロダクティブヘルスについてである。彼女たちの健康管理、特にリプロダクティブヘルス・ケアを目的にした具体的なプログラムは、ほとんど見つけることができない。

セネガルで行われた調査によると、障害者の78%が完全な貧困状態で暮らしており、基本的な健康管理や衣服、教育を家族に頼っている。具体的には、運動機能障害を持つ女性の大部分は、ポリオが原因である。この病気は、骨盤の中枢神経系の灰白質まで攻撃し、それはもちろん、出産の過程でとても重要である。この分野における女性障害者や親の情報不足が、彼女らにとって深刻な事態を招き、時には死に至るリスクをもたらす。女性障害者は、骨盤が非対称なせいで帝王切開で子供を産むことが多い。もっとも基本的な予防措置もなされない時がある。この種の手術は非常に費用が高く、僻地では現実的でない。また女性は、手術をするために社会活動局長から保証書をもらう必要がある。私たちは、妊娠した女性障害者が大きな病院でケアを受けられるように、彼らに問題意識を持ってもらうことに努めている。

「セネガル女性の全国委員会」は、運動機能障害を持つ女性が無料で基本的なケアを受けられるよう、国や協力機関にロビー活動を展開している。これは世界的な闘いであるといえる。なぜならこの問題は、特に途上国におけるすべての運動機能障害を持つ女性に関わっているからである。

米国国際開発庁は、女性障害者のためのプログラムを実施している。

出産は障害を持つ女性にとって根源的な問題である。他の女性と同じように、彼女たちは家庭を持つ必要があり、そして子どもが彼女たちの人生において大きな役割を持つからである。母親にとって赤ん坊は、後に友人となり、そして相談相手となる。その子たちは母親の問題を他の誰よりも理解するだろう。

「ポリオを経験した私は、二人の子どもを帝王切開で産みました。高学歴と公務員という肩書から、出産時に質の良い医療ケアを受けることができました。でも運動機能障害を持つ女性の大半は、そのような医療を受けられないのです」

事例の紹介

「最初の例を挙げると、ある女性障害者は普通に出産できると信じ、特別な準備を何もせずに出産に臨みました。しかし彼女には帝王切開が必要だったのです。

彼女をル・ダンテ病院に入院させる保証書に記入するだけでも、私は多くの問題に直面しました。出産は危険を伴うものでしたが、結果的に赤ちゃんは無事生まれました。

私は他のケースで妊婦や赤ちゃんが命を落とした例を知っています。出産を乗り越えて生き残った女性たちが、私をこの闘いに駆り立てたのです」。

成果

「セネガル女性の国家委員会」は多くのパートナーの協力もあり、いくつかの重要な社会的・経済的なプログラムで大きな成功を収めている。この委員会の女性障害者は、会員に資金提供するために、いくつかの融資を利用している。プロジェクトの裨益者は、責任を担い始め、普通の人生を再発見している。今や多くの女性障害者が、料理やIT、ファッションなど様々な業界で活躍している。

もう一つの壁は、障害に対する社会の認識だ。社会の認識不足から、運動機能に障害を持つ女性たちは、多くの惨めな、つまり這わねばならないという経験をしてきたからである。委員会は彼女たちに車椅子や義足を供給してきた。女性は綺麗で美しくそして自分自身の女性らしさや尊厳を保つことが必要である。尊厳を得るための闘いは、同時に当事者に刻み込まれた根深い劣等感との闘いでもある。だが今は、少なくとも彼女たちには目指せるロールモデルがいる。

障害を持つ女性の帝王切開については、政府が対応してくれるようになった。現在、彼女たちの生活水準は大きく改善された。障害を持つ女性が重要な責任ある仕事に昇進する機会も増えてきている。「その証拠として、内閣は私に技術顧問の地位を2度もオファーしました。私たちは既に約600人もの障害を持つ女性に機会を与えています。彼女たちはもうデモ行進でただ道端に座っているのではなく、自分たちの運動を守ることによってリーダーになれることを証明したのです」。

経験から学んだこと

我々のようなアフリカの国々で、自分たちの社会参画を実現するには多くの障壁がある。それには、物理的、社会学的、構造的、心理的、そして偏見上の障壁が含まれる。

さらに、障害を持つ女性が夫を見つけることは非常に難しく、未婚率は非常に高い。この一般的状況は社会・文化的な制限や偏見から生まれている。多くの場合、両親は息子が障害を持つ女性と結婚することを認めない。彼らは障害を持つ女性は洗濯や料理といった家事ができないし、さらに悪いことに、身体的状態ゆえに、その女性が家に悪運をもたらすと考えている。

これらの事柄すべてが、不当な扱いや不平等と闘う私たちの決意を強める。私たちにはともに戦う仲間がいる。それでも、すべきことはまだ山のようにある。

失敗

障害のある女性の社会経済活動への参画を助ける社会法は、まだ充分に適用されていない。たとえば、適切な条約は使われていない。他の問題として、屈辱を根絶しようとする私たちの努力にもかかわらず、女性障害者は物乞いを強要させられる根深い問題がある。物乞いをすることにより、彼女たちはあらゆる虐待や仕打ちを受ける危険にさらされるからである。

協力者

セネガルの市民社会で著名な人物が、私たちの社会正義を求める闘いに加わってくれた。ジャーナリストのアネット・ムバエ・デルネヴィユは、障害を持つ女性の再適応と認知にずっと貢献している。彼女は我々のロビー活動や啓発活動にすべて出席している。さらに、彼女は障害を持つ女性を雇ってもいる。

提言

障害の問題には包括的なアプローチが必要なので、私たちの熱意や行動だけでは充分ではない。これはすべての人々に関わる問題である。

それゆえ、私たちはこの分野での調査や研究を奨励している。コミュニケーションと情報共有の方針は、障害者の生活で繰り返される無知や偏見を取り除く。また、相互支援や団結の価値と多様性について幼い頃から教育することは、必ず社会意識の芽生えに役立つだろう。

ンデイェ・ディエの物語

現在40代となったンデイェは、障害者として多くの偏見を経験してきた。「私は一歳のときにポリオに罹り、それ以来ずっと松葉杖や装具を必要とする人生を歩んできました」と彼女は言う。しかし彼女は、母親の愛と、父親の成功への大きな貢献のおかげで、幸せな子ども時代を過ごすことができた。父親は、障害者、特に女性障害者の地位向上を阻む社会的、文化的な制限と闘うことを決してあきらめなかった。「学生時代に私はたくさんの闘いを耐え抜いて、必ず成功するのだという意志を強く持ちました。父は『誰かが障害をばかにしたときには、君は自分の価値を相手に証明しなくてはならないのだよ』といつも言い聞かせてくれました」。

ンデイェは20年以上にわたって教師をしており、また意欲的で利他的な母親でもある。彼女は考える以上に、行動することの大切さを訴えている。

彼女にとってもっともショックだったのは、「障害ゆえに彼女は仕事に適していない」との理由で、女子高等学校の教職をたった数カ月で解雇されたことだった。この不当な決定には何の法的根拠もなかった。彼女は当時を思い出して「最悪の気分だった。まるで自分を根底から否定されたようだった」と語る。しかし、ンデイェは幸運だった。父親はすでに亡くなっていたが、彼女の養父となったマックスター・サーの尽力で、彼女は前職の女子高等学校で仕事を取り戻すことができた。養父は、彼女の人生に関わるようになって以来、すべての闘いを通じて彼女の味方だった。

この辛い事件は、彼女を、障害を持つ女性のための闘いにますます駆り立てた。

そして彼女は障害者の団体のひとつ、セネガル運動機能障害者協会に参加した。彼女はすぐに昇進し、セネガル障害者協会連盟 の女性代表になった。この組織は全国に約20もの支部を持つ、女性のための連盟である。

ンデイェは、障害の分野で働く人たちにも影響を与えた。障害を持つ女性の社会参画を求めるロビー活動や権利擁護活動によって、彼女はメディアにも頻繁に登場した。

ンデイェは、多くの国際会議にも出席し、女性障害者のために尽力した。監督官庁、そこは彼女に専門家として二度就任を要請し、彼女は結局受諾するのだが、彼女の経験と専門性を認めている。

ンデイェのもっとも称賛されるべき点は、逆境にも屈せず、障害者の中で女性リーダーの出現のために闘い続ける強さである。

彼女の活動は、プロとしてのキャリアと家庭生活の両方を奪うこととなった。しかし彼女は、共に戦ってくれた理解ある夫、ディエネに助けられた。

ンデイェ・ダグ・グウェ・ディエンデイェ・ダグ・グウェ・ディエ

「ンデイェは女性、特に障害を持つ女性の権利向上を訴える精力的な活動家です。彼女はいつも責任と勇気を持って世の中に訴えかけてきました。彼女の最大の魅力は、チームワークを尊重することです。それは彼女が『女性のアドバイザリー委員会』で行ったスピーチにもっともよく表れています。それは、障害者の社会的、経済的な融合政策を提案した家族省を称賛する内容でした」。

彼女は障害者問題に取り組む上で、ジェンダーや医療、教育の権利促進を基本方針としている。その戦略が、彼女を同世代におけるもっともカリスマ性のある女性リーダーの一人にしたのだ、と私は考えている。

ンデイェは正に、自分の仲間のために尽くすことを選んだ人道主義者が、コミュニティに代わって理想を追い求めて自分を見失っているような時代とともにいる。

彼女は障害を持って生活する人たちの闘いにおいて、象徴的な人物になっている。家族問題省が彼女の豊富な経験と専門性を信頼し、役人に加えたことは単なる偶然ではない。「すべての人に平等な機会を」。それが、彼女の未来に向けた信念である。

ママドゥ・ンドイェ 社会学者、家族問題省局長


ンデイェ・ダグ・グウェ・ディエ
47歳、既婚、二人の子供を持つ。2002年からアショカ・フェロー(セネガル)。人生を通して、装具と二本の松葉杖と共に闘ってきた。彼女はセネガルで最初の女性の全国障害者協会を創設した。彼女はセネガルの運動機能障害を持つ少女や女性の社会的、経済的な地位の向上 に尽力している。研修によって教師となった彼女はセネガルでいくつかの名誉を得た。セネガル女性・子供・家族省による女性障害者の権利向上の闘いにおけるパイオニアとして、アフリカ女性教育者フォーラム(FAWE)による女子の教育向上における女性のロールモデルとして、などその他多数である。

Section féminine de l'Association Nationale des Handicapés
Moteurs du Sénégal
Mail: bp 17 381 Dakar Liberté, Senegal
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E-mail: dague1962@yahoo.fr
Web: www.anhms.net