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第9節 各国の「保護雇用」分野における労働法適用に関するアンケート調査の結果概要

松井 亮輔(法政大学現代福祉学部)

このアンケートは、オーストラリアおよびニュージーランドを含む、欧米諸国14か国に対して行ったが、回答が得られたのは、スウェーデン(ス)、オランダ(オ)、英国(英)、ドイツ(独)、米国(米)、オーストラリア(豪)、ニュージーランド(二)およびアイルランド(ア)の8か国であった。それらの回答の主な内容は、つぎのとおりである。

1.保護雇用されている障害者への労働法の適用状況について

(ス)保護雇用されている障害者(サムハル2万人、その他5,000人)は、労働者とみなされ、一般労働者と同様、労働保護法が適用される。ただし、雇用保障法は適用されない。理由は、一般労働市場で適当な就職先が紹介された場合、保護雇用障害者は、そこに移行しなければならないことと、サムハルは、市場の需要が減っても、障害従業員を解雇あるいはレイオフはしないという意味で、実質的に雇用保障がされているため。
労働保護法が適用されないのは、訓練期間中(最長6か月)の障害者のみ。

(オ)労働者とみなされ、一般労働者と同様、労働保護法が適用される。ただし、公務員として雇用されている障害者には、特別の雇用規定がある。
訓練期間中(最長6か月)の障害者は、労働者とはみなされず、無給。

(英)常勤雇用者の場合は、労働者とみなされ、一般の労働者と同様、雇用法が適用される。障害者差別禁止法(DDA)では、障害に関連する理由で、障害者を差別することは、違法。事業主は、障害者のため、「合理的調整」をする義務がある。合理的調整をめぐる紛争(過度の負担かどうか等)についての立証責任は、事業主にある。

(独)保護雇用制度はない。障害者作業所(ワークショップ)で就労する障害者は、サービス利用者とみなされ、労働法は適用されない。

(米)公正労働基準法では、事業主は身体または精神障害のために「生産能力」が低下している者に最低賃金適用除外を認めているが、最低賃金適用除外の者も労働者とみなされ、一般の労働者と同じ権利と保護が与えられる。
州の中には、たとえばアリゾナ州のように、最低賃金適用除外規定を廃止した(2007年1月1日)ところもある。

また、障害のあるアメリカ人法(ADA)では、すべての障害者について、雇用上の差別禁止規定が適用される。

なお、学校から就職への移行年齢の障害者について、無給の労働経験に関する連邦政府の協定覚書(Memorandum of Understanding)がある。

(豪)ビジネス・サービスで就労する支援雇用障害者は、一般労働者と同様、労働法が適用される。しかし、支援雇用障害者の生産性と能力(職業技能)が低いことから、賃金は一般労働者よりも低い。

(二)2007年11月までは、シェルタード・ワークショップ(以下、ワークショップ)で就労する障害者は、他の労働者と同じ処遇は受けていなかった。ワークショップは、障害者雇用促進法(以下、DPEP)により保護されていたが、同法はワークショップに5年間の移行期間を与え、廃止された。

47年間にわたり、DPEPは、ワークショップがそこで就労する障害者の能力に関係なく、最低賃金、年次休暇および疾病休暇を与えることを免除してきた。2001年9月職業サービスへのニーズと経験について障害当事者、家族および関係団体と広範にわたる協議を行った後、「インクルージョンへの道」(パスウェイ・ツー・インクルージョン)が発表された。「インクルージョンへの道」は、DPEPが障害者を不公正に処遇していたということを根拠に、同法を廃止することを含む、職業サービスのための新しい方向を提示した。

DPEPは、障害者に対して差別的で、受け入れることができない、時代遅れの態度を示していると感じられてきた。同法は、またニュージーランド人権法、国際規則や条約に違反している。したがって、その廃止は、「ニュージーランド障害者戦略」で提示されているように、「すべての市民を尊重し、彼らの完全参加を奨励する」社会というビジョンを成就するのにきわめて重要とみられている。

DPEPの廃止により、障害者は個人として認められることとなった。つまり、同法廃止後容認される最低賃金適用除外は、個人に特定されるもので、労働検査官による評価と定期的な見直しが行われる。これは例外なく、全国的に適用される。労働検査官は、職場を訪問し、(障害者が従事している)仕事が労働かどうか判断する。たとえば、販売のための手芸をしている障害者のそれは、労働とは認められない。

(ア)(保護雇用制度にかわるものとして)賃金補助制度(WSS)制度がある。これは生産性の低い障害者について賃金の50%まで、および、障害者を支援する職員の人件費の50%を事業主に補助するもの。WSSの対象者には、労働法が適用される。(アイルランドには労災補償制度はない。)雇用条件上の差別禁止は、雇用平等法(2001年制定)で規定されている。

WSSの限度額は、独身者への無税の手当のほぼ上限。WSS対象者は、所得税や社会保険料を負担する。

2.(保護雇用制度下で)労働者とは認められない障害者に対する労働法の一部適用、または、労働法にかわる特別の保護規定の有無について

(ス)訓練期間中のものを除き、保護雇用障害者には、すべて労働法が適用される。スウェーデンには、最低賃金法はないが、労働協定には最低賃金が含まれることが多い。

(オ)訓練期間中のものを除き、保護雇用障害者には、すべての労働法が適用される。保護雇用障害者は、最低賃金以上を受給(月額約1,250ユーロ)。平均賃金月額は、最低賃金の1.25倍(賃金水準は、最低賃金の1~3倍の範囲)。

ただし、パートタイムの場合、労働以外の部分には、国民保険法(AWBZ)が適用される。

保護雇用障害者の労働条件に関する交渉は、中央レベルで実施される。その交渉には、オランダ・ワークショップ連合(Cedris)が参加。

(1)賃金は、職種によって設定される。生産性や能力は、(賃金決定の)重要な要素ではない。(2)労働時間は、通常は週36時間(一般の標準労働時間は、36~38時間)。残業は、その分後で労働時間を短くするか、残業手当を支給。

(3)年次有給休暇は、労働法で24日と定められている。有給休暇が余った場合、翌年に繰り越せる。(4)職場での安全について特別の法律がある。同法は、ワークショップにも適用される。社会・雇用省には、同法が順守されているかどうかチェックするための特別のモニター部門(労働監督官)が設けられている。(5)災害補償について、 ①疾病の場合は、2年間賃金が支払われる(1年目賃金の100%、2年目賃金の70%)、 ②新たな障害の場合、国民保険法(WAO)が適用される。(6)一般労働者と同様、すべての権利が尊重される。

(7)保護雇用障害者には、労働組合員となる権利がある。全国レベルでは、2つの労働組合(キリスト教系組合と一般の組合)のいずれかに加入。ワークショップは、障害者の組合費の一部を補助。また、ワークショップには労働評議会が設けられており、障害者はワークショップの運営について意見を表明する権利をもつ。(8)国の法律で、(雇用上の)差別は許されない。(9)WSWで規定されている。

(英)雇用されている障害者には、DDAが適用される。最低賃金は、すべての労働者に平等に適用される。現在の最低賃金(2008年10月1日から)は、

  • 22歳以上の労働者:時給5.73ポンド
  • 18歳~21歳の労働者:時給4.77ポンド
  • 18歳未満の労働者:時給3.53ポンド

(独)障害者作業所(ワークショップ)は、社会法典第9編および特別の障害者作業所規定に基づき運営されている。そこで就労する障害者には、一般労働者と同様、社会保障制度で保護される。ただし、労働の権利が認められるのは、自傷や他傷をしないもので、経済的最低限の仕事ができるもの。

(作業所で就労する障害者には、年金保険、疾病保険、介護保険、災害保険への加入が義務付けられている。保険料は業績に対してではなく、最低報酬に対する定額として毎年決められる。保険料の20%は疾病保険、介護保険および災害保険の保険料で、リハビリテーションおよび社会ケア機関が負担する。80%は年金保険の保険料で、これは連邦政府が負担する。)

作業所利用者は、自分たちの代表(労働者代表)を選ぶ。その代表は、作業所利用者の労働条件について経営者と交渉する権限をもつ。

(障害者作業所では、職業訓練課程にいる者には賃金は支払われないが、その代りに職業訓練手当が支給される。金額は1年目が月額57ユーロ、2年目が67ユーロ。就労継続過程にいる者には、業績に応じた賃金が支払われる。賃金が月額325ユーロに満たない場合には、労働促進手当という名目で、325ユーロと本人の賃金の差額が、26ユーロを限度としてリハビリテーションまたは社会ケア機関から支払われる。)

(なお、アンケートの回答では、触れられていないが、労働生活への参加が困難なために障害者作業所の対象ではないと判断された者は、社会扶助法に基づく社会福祉施設としての「作業活動センター(Tagesfoerderungsstatt)」の対象となる。同センターと障害者作業所は、多くの場合、同じ敷地内または同じ建物内にあり、経営主体も同じであることが多い。障害者作業所の利用者数約22.7万人に対して、作業活動センターのそれは2.2万人程度とされる。)

(米)米国会計検査院(GAO)の2001年報告によれば、全米で5万6,000以上の事業主が、約42万4,000人の労働者に最低賃金以下の賃金を支払っている。その半数以上は、時給250ドル以下。最低賃金以下の賃金を支払っている事業主の大半は、非営利の就労・地域リハプログラム(CRP)で、その多くは、小規模のシェルタード・ワークショップ。CRPで就労する者も含め、すべての労働者は、連邦法の適用をうける。

(豪)障害者の雇用に適用されるのは、1986年制定の障害者サービス法で、障害者就労支援を行うビジネス・サービスが連邦政府の補助を受けるには、障害者サービス基準をクリア―しなければならない。(1)支援雇用障害者に対する強制最低賃金はなく、支援雇用障害者に適用される特別の賃金決定措置がある。新連邦政府は、支援雇用部門に最低賃金を適用すべく、現在の措置を見直すことになっている。(2)支援雇用障害者が連邦政府による補助対象となるには、1週間に少なくとも8時間就労しなければならない。残業については、企業または職場協定として知られる、地域の職場取り決めが適用される。ビジネス・サービスがつくったこれらの協定は、連邦政府により承認される。(3)支援雇用障害者は、休日および有給休暇について一般労働者と同じ権利をもつ。(4)ビジネス・サービスには、一般企業と同様、職業安全衛生法が適用される。(5)労災補償制度は、一般労働者と同じである。(6)産業関係法制については、現在見直しが行われている。解雇規定は、一般的にはビジネス・サービス事業協定に提示されている。ビジネス・サービスの方針や手続きが公正かどうかは、障害サービス基準について実施される、品質保証監査を通じて見直しが行われる。(7)支援雇用障害者は、労働組合に加入でき、職場交渉に労働組合の参加を求めることができる。労働組合は、能力に応じた賃金を決めるプロセスにひろくかかわっている。(8)障害者の差別問題を扱う法律(連邦障害者差別禁止法)がある。(9)前述したように、法制および基準という形で支援雇用障害者に対する特別の保護規定がある。

(二)政府により認められた最低賃金がある。労働省に最低賃金適用除外を申請できる能力(水準)が決められている。この制度は、ワークショップで就労している障害者だけでなく、すべての労働者について利用できる。

(ア)保護的職業サービス(SOS)の対象となる障害者は、福祉サービスの受給者とみなされる。これらの障害者は、労働法のうち、安全衛生法のみ適用される。SOS利用者は、WSSと同額の障害年金に加え、一定額の手当を受給する。これは、収入とは認定されない。SOSに関する実践綱領づくりが行われている。

なお、雇用条件上の差別禁止規定は、SOS利用者にも適用される。

3.保護雇用に関連する制度について

(ス)(1)雇用サービスで求職者登録をするのは、一般労働市場への移行を希望する障害者のみ。(2)サムハルは、年間少なくとも保護雇用障害者の5%(2008年の目標)を一般就職させることを国から求められている。就職促進策としては、①一般就職後1年間は、サムハルにもどる権利を保障、②各種の能力開発プログラムの実施、③事業主への賃金補助。現在、全体で約5万7,000人が賃金補助による支援で雇用されている。賃金補助は、通常4年間で、補助額は雇用サービスと事業主との交渉で決められる。賃金補助は、事業主に給付。(3)サムハルの賃金は、一般企業と同様、労働協定による。 サムハルは、スウェーデン労働組合連合(LO)に加盟する7つの労働組合と労使協定を結んでいる。ホワイトカラー労働者については、別に協定。サムハルの平均賃金は、一般労働者の約90%。平均基本額(月額)は、約1万6,600クローネ(2008年5月から)。この基本額に、①どの程度仕事がこなせるか、②経験年数(雇用期間)などを考慮して、手当が加算される。(5)慢性疾患または障害により追加的支援や経費が必要な場合、障害手当が受給できる。障害手当の額は、支援の必要度や追加的経費の大きさに基づき、物価基本額の36、53または69%。現在の物価基本額は、約4万クローネで、この手当は、本人の稼働収入や家族の収入とはリンクされていない。

19歳から29歳までで、労働能力が恒久的または一定期間(1年以上)少なくとも4分の1低下している場合、活動補償(従来の障害年金)を受給できる。
30歳から64歳までで、労働能力が恒久的に少なくとも4分の1低下している場合、疾病補償が受給できる。

労働能力の低下は、疾病、あるいは身体または精神機能の障害によるものでなければならない。労働能力や労働を通して自らの生活を維持する機会がどの程度低下しているかにより、全額、4分の3、半分、または4分の1の活動補償を受給できる。

疾病または活動補償を受給している場合、補償への権利を失うことなく、働ける可能性がある。これは休止疾病または活動補償といわれる。少なくとも1年間疾病または活動補償を受給してきた者が、労働に対処することができるかどうか試してみたい場合、補償と賃金を同時にもらえる。それは、この試験雇用期間と休止補償期間をあわせ24か月までか、または補償を認められた残りの期間継続しうる。(6)保護雇用は、労働市場プログラム内の他のすべてのサービスやプログラムと同様、国の予算でまかなわれる。障害者は、これらのサービスやプログラムの費用のいかなる部分も負担する必要はない。

(オ)(1)求職者/申請者は、市レベルで求職登録する。受理・判定を担当する独立の組織「労働・所得センター」(CWI)がある。そこが、障害のレベルや措置ニーズを決める。能力が(標準の)15%以下の場合、(ワークショップでなく)デイケア措置の対象とされる。(特別の)措置が必要ではない場合、申請者は一般労働市場で就職すべく手続きがとられる。この決定は、大抵は2~5年間に関するもので、その期間後は、再判定を受けなければならない。この決定には、保護または支援雇用への職業紹介も含まれる。申請者は、ワークショップを選択することもできる。(1)過去には法律で1%の移行が目標とされ、それが達成されない場合、罰則があったが、それはうまく機能しなかった。現在は、移行に成功した場合、特別の費用を支払うことで、市/ワークショップ組織の移行への取り組みを奨励しようとしている。一方、(事業主がリスクなしに障害者を雇用できるように、)障害労働者が病気になっても、一般の事業主が特別の費用負担をする必要がない制度が設けられている。(3)賃金は、職務分類と賃金表による。ベースとなるのは、国の最低賃金である。ワークショップでは、平均して最低賃金の1.25倍の賃金を支払っている。賃金は、労働組合と協議しなければならないため、一般企業のそれに匹敵する。(4)障害者が一般就職する場合、少なくとも最低賃金を支払われる。障害者の生産性や能力が標準より低い場合、事業主は賃金補助を受給することができる。(5)障害者がワークショップで働きはじめると、障害給付は停止される。彼らは、仕事をやめた後、再び給付がうけられるよう、その権利を維持することができる。保護雇用期間中は、障害給付は保険機関から社会省に支払われる。その額は、現在約4億ユーロで、(保護雇用障害者の)賃金経費全体は、約24億ユーロである。平均すると保護雇用障害者一人当たり年間2万4,500ユーロ、社会省から補助されていることになる。(障害給付受給には、)家族の収入は考慮されない。(6)保護雇用障害者は、誰もサービス費の(一部)負担は求められない。(7)ワークショップでは、障害者には一般労働者並みの賃金が支払われているのに対し、長期失業者には最低賃金またはそれ以下の賃金しか支払われていないことが、問題として取り上げられている。長期失業者は、国民扶助法から支援を受ける。その収入は、全国最低賃金の80%である。したがって、長期失業者は、ワークショップ内またはワークショップを通して、職につくことを強制される(いわゆる、労働ファースト・プログラム)。議論になっているのは、「この差をどう説明できるのか」ということ。ワークショップでは、約10万人の障害者と、約20万人の長期失業者が就労している。もう1つの議論は、市の役割についてである。市は、一般企業に補助金をつけることで、直接、障害者の職業紹介をしたほうがよいのか、あるいはワークショップといった特別の組織を必要とするのかということである。

焦点は、一般の職場での支援雇用をもっと増やすことにあると思われる。ターゲット・グループに対する特別法をやめて、すべての障害者あるいは長期失業者のための一般法を制定するという考えもある。そのためのツールとして、賃金補助、ガイダンスおよび(合理的)調整があるが、その実施には、それらの人びとの状況を判定するための新たな組織が必要となる。障害保険団体と結合することで、労働・所得センター(CWI)の変革が行われている。これは、市ではなく、保険への動きである。それとは別にデイケア措置のための判定委員会がある。これら2つの判定委員会を結合する必要があろう。

もっとも重い課題は、ターゲット・グループが、ワークショップを必要としているかどうかである。

(英)(1)障害者は、通常ジョブ・センター・プラス(JCP)に求職登録をすることもある。JCPの障害者雇用アドバイザーは、ワークステップ、ワークプレップ、アクセス・ツー・ワーク、パスウェイ・ツー・ワーク、就職あっせんなどの(就労支援)制度を活用して、職業復帰支援を行う契約者(ショー・トラストなど)に求職障害者を紹介する。求職者の願いと適切な就職に必要な能力とをマッチさせるのが、契約者の役割である。(2)保護雇用から一般就労への移行は、障害者個人と保護雇用事業者次第である。(障害者が職を変えたり、より上の職につきたいのであれば、それは支援され、彼らの個別発達計画の目標となりうる。)(3)ワークステップを利用する障害者の賃金は、一般労働者と同様、事業者によって決められる職務内容による。彼らの賃金は、DDAで保護されているように、同一の職についている障害のない労働者と同一である。
(3)障害給付を受給できるかどうかは、障害者の稼働収入による。雇用・支援給付の受給資格がある場合、まず13週の評価段階に入る。この期間25歳以上の独身者は、週60.50ポンドまでの基本レートの給付を受ける。25歳未満の独身者は、週49.95ポンド、あるいは、所得に関連した雇用・支援手当の対象者の場合、夫婦で週94.95ポンドである。何らかの就労関連活動ができる対象者は、「就労能力評価」の一部として、就労に焦点を当てた健康関連評価に参加する。それは、就職についての計画を検討し、その移行を援助する健康関連支援を特定するためのものである。評価段階の8週間後できるだけ早く、対象者は就労に焦点を当てた面接を受ける。その面接では、アドバイザーは対象者の給付受給資格、復職への考え、彼らの就職を援助するために必要な支援パッケージについて協議する。対象者が何らかの形の就労関連活動ができる場合、彼らが申請後14週のはじめから就労関連活動グループに入る。就労活動グループの対象者は、週84.50ポンドまでの給付を受ける。もし彼らが所得関連雇用・支援手当を受ける場合、夫、妻または民法上のパートナーに余分のお金を支払うことができる。対象者に他の所得がない場合、彼らが受給する基本的週レートは、少なくとも118.95ポンドとなる。

新しい雇用・支援手当には、拠出ベースと所得ベースの2つの要素がある。国民保険に十分拠出してきた場合、拠出ベースの雇用・支援手当を申請する資格がある。一方、十分な所得がなく、国民保険拠出を十分しておらず、かつ、受給条件を満たしている場合、所得ベースの雇用・支援手当を申請する資格がある。これは、1万6,000ポンド以下の貯蓄しかなく、かつ、配偶者や民法上のパートナーがいる場合、平均週24時間以下しか働いていない場合である。対象者は、稼働収入と働いた時間により決まる労働不能給付/ESAを受給しながら、一定量の「許容された仕事」に従事できる。許容された仕事のルールでは、所得関連要素のESA対象者および給付の拠出要素の者は、1年間は週86ポンドまで稼ぐことができる。それは彼らが給付を離れ、就労に移行するのを援助するものと期待される。(4)利用者は、サービス対象外とならない限りは、支援雇用により生じる訓練やサービスの経費の負担を求められない。それらの経費は、民間契約者、(ワークショップを運営する)地方公共団体から事業主に及ぶ、プログラムを運営する団体を補助する政府の予算で賄われる。(5)英国におけるすべての障害者の雇用の権利を保護するためにDDAがある。ワークステップ制度は、対象者ができるだけ短期間に、できるだけ容易かつ効率的に支援のない通常の就職への道筋をつけることを意図している。これは、レンプロイ工場の閉鎖に例示されるように、近年保護雇用/ワークショップからの転換に向けての全般的な動きを代表している。労働不能給付にかわるものとして導入された、新しい雇用・支援手当は、利用者の目的と願いを彼らの能力とマッチさせ、仕事へのバリアの除去と取り組むことで、彼らを一般市場の雇用につなげる、ワークステップの目標と結びついている。ESAは、利用者のできないことよりもむしろ達成できることに焦点を当てている。

(独)(1)すべての求職者は、国の労働機関に就職支援を求める。彼らのために適切な労働/雇用を見つけるのがこの機関の役割である。(2)さまざまな方法があるが、最も一般的なのは、通常の職場での実習経験である。(一般労働市場への移行率は、1999年0.19%、2000年0.24%とされる。)(3)ワークショップでの賃金は、県ごと、ワークショップごとに異なる。したがって、平均賃金を示すことは難しい。(別の資料によれば、ドイツ全体の作業所の平均賃金月額(2002年)は、159.81ユーロ)(4)ドイツでは、労働能力でなく、障害程度が測定される。障害程度により、仕事についているかどうかにかかわらず、財政的支援が受けられる。(5)障害給付と賃金収入とは、リンクしている。(6)職業訓練期間中は、連邦労働機関が、ワークショップでの労働経験中は、ソーシャルケア提供機関が経費を負担する。その経費の一部を利用者が負担することはない。

(米)障害者は、ワン・ストップセンターに求職登録することを求められてはいない。(2)きわめて個別化されたプロセスで、連邦法で規制されていない。現在の職業リハ・サービスに関する連邦/州パートナーシップでは、保護雇用はリハビリテーションの成果とは認められていない。これまで20年以上にわたり、とくに援助付き雇用技術により、保護雇用モデルからの転換がかなりすすんできた。保護雇用されている人びとのほとんどは、彼らの目標や進歩を示す、個別サービス計画を持っている。保護雇用から統合雇用への移行計画が、個別サービス計画に入っている。(3)事業主が、労働者に「最低賃金以下の賃金」を支払うには、職務での具体的な要件を分析し、作業標準を設定することを労働省から求められる。その標準をベースに、障害のある労働者に対してその生産性に応じた賃金が支払われる。(たとえば、製造の職務の一般の平均賃金が10ドルで、障害のある労働者の生産性が50%の場合、その賃金は時給5ドルということになる。)
(4)賃金補助制度はない。(5)障害給付は、社会保険庁の所管。社会保険を受給するには、個人は雇用労働者として保険に加入していなければならない。つまり、社会保険の適用対象となる事業所で、一定期間以上雇用されてきたことが求められる。障害給付の資格を得るには、個人は障害の発生前に10年間に20クレジット取得する必要がある。31歳前に障害者となった者は、その資格を取得するには、雇用期間はもっと短くてもよい。年収に応じて、年間4クレジットまで取得できる。2006年には、労働者は970ドルの所得ごとに1クレジットを取得できる。この額は、全国の平均賃金レベルの上昇を考慮する方式により、毎年自動的に増やされる。つまり、社会保険を受給するには、個人は①医学的に障害と認定されること、②不就労か、所得が SGA以下であること、③以前、労働者として保険に加入してきたこと、が求められる。(6)通常、保護雇用サービスは、就労地域リハビリテーション・プログラム(CRP)により提供され、こうしたサービスの経費は地元の資源(共同募金など)か、あるいは保護雇用サービスの付帯事業の一部として自前で賄われる。したがって、障害者や家族が、そのサービスの費用負担を求められることはまずない。(7)保護雇用サービスを廃止するためにこれまで多くの努力がなされてきた。これらのサービスは、脱施設化をすすめるうえで、重要な役割をはたしたが、いまや価値ある就労とはみなされず、多くの州ではこれらのサービスを廃止するため、最低賃金適用除外をやめる努力をしている。これらのサービスの恩恵を受け、それを選ぶ障害者がいると主張する者もあるが、過去10年以上にわたって連邦政府は、これらのサービスへの支援をやめるという政策をとってきている。

(豪)(1)連邦政府の補助を受けるビジネス・サービスで就労するすべての支援雇用障害者は、センター・リンクに登録しなければならない。登録した支援雇用障害者には、利用者紹介番号が与えられる。(2)現在のところ、支援雇用障害者について一般労働市場への移行を支援する正式のプロセスまたは一連の措置はない。一般就職をしようとする支援雇用障害者に対する現在の唯一の配慮は、就職先でうまくいかない場合、2年間はビジネス・サービスに戻れるようになっていることである。(3)2006年の場合、支援雇用障害者1万5,196人中、週給101豪ドル以上18%、100豪ドル以下82%となっている。きわめて大雑把な計算では、支援雇用障害者の年金を含む、週あたりの平均所得は、約411豪ドルである。(4)ビジネス・サービスで就労する支援雇用障害者への賃金補助制度はない。一般雇用部門で障害者を雇用している事業主は、期限付きの賃金補助を受給することができる。賃金補助制度として知られる、一般労働市場で働く障害者のために賃金決定制度がある。(5)21歳以上の独身の障害者支援年金は、2週間あたり546.80豪ドルで、2000年7月からそれに18.80豪ドルの補足年金が加算される。独身で、子どもがいない障害者の場合、年金以外の所得が2週間当たり138豪ドルまであれば、フル年金を受給できる。(その所得が138豪ドル以上であれば、年金は40%カットされる。)また、年金以外の所得が 2週間当たり1,519.50豪ドル未満の場合、部分年金が受給できる。(6)ビジネス・サービスで就労する支援雇用障害者へのサービス経費は、連邦政府が徴収する税金で賄われ、支援雇用障害者による費用負担はない。(7)ビジネス・サービスに対する連邦政府の補助のあり方と賃金決定方法について主な改善がなされることになろう。全国ビジネス・サービス(MBS)は、ビジネス・サービスによって用いられる賃金評価法の見直しが間もなく開始されることを望んでいる。賃金評価法の合理化には、①支援雇用障害者への最低賃金の適用、②ビジネス・サービスで用いられている賃金評価方法の数を現在の31から減らすこと、という2つの主な目標がある。

NBSは、連邦政府に対してつぎのような提案を行っている。

  • -ビジネス・サービス部門における障害者雇用人数の制限を撤廃すること
  • -ビジネス・サービスへの連邦政府の資金供与についてひんぱん、かつ、現実的な指標化をすること
  • -連邦政府(州および地方政府も)はビジネス・サービスから製品やサービスの購入を増やすよう奨励すること
  • -支援雇用から一般雇用への障害者の移行を促進すること
  • -ビジネス・サービスに関する行政的、遵守負担(つまり、レッドテープ)を減らすこと
  • -支援雇用部門の長期存続をはかるため、マーケティングと啓発への取り組みを通してその周知をはかるよう、ビジネス・サービスを援助すること

(二)(1)保護雇用されている人びとは、給付制度を管理する政府の担当部局である「労働及び収入」に求職または失業登録はしていない。ワークショップで支給される賃金が、最低賃金を上回っている場合には、障害者は給付、つまり、障害・疾病給付が受けられなくなる。労働が定期的でないため、支給される賃金が週毎または月毎に変動する場合には、障害者はその給付の一部を引き続いて受給できる。その人は、給付額が調整されるよう、毎週ケースマネジャーとコンタクトする必要がある。多くの場合、ワークショップはそこで就労する障害者について「労働及び収入」局に通知する。障害者が給付額以下の賃金を支給されている場合には、給付が主な収入で、労働からの賃金は二次的と見なされ、通常より高めの税が課される。これは、人びとが給付から労働に移行する阻害要因となってきた。

(2)一般労働市場での労働が、政府にとって障害者のためのより好ましい選択肢であるが、障害者には選択権があり、ワークショップで就労することを選ぶこともできる。しかし、若年障害者は、一般雇用を選択する。というのは、彼らは、障害のある生徒のための特殊学校でなく、普通校で主として教育を受けてきているからである。ワークショップで就労する障害者数は、一般雇用への移行を奨励する特別の活動がないにもかかわらず、減少している。

(3)DPEPが廃止された際、政府は関係省である、社会開発省および労働省を通して、最低賃金制度を実施するため「寛大な」アプローチをとった。大部分のワークショップは、そこでの下請け作業のほとんどが単価の安いもので、最低賃金(現在時間当たり12NZドル(約610円))を支払えるような状況にないからである。最低賃金適用除外の最初の利用者評価では、ほとんどの場合、利用者が従来支給されていたのと同様の額が認められた。ほとんどの利用者は、引き続いて最低賃金適用除外を受け、ワークショップ経営者は、最低賃金の20%しか支払わないことを容認された。何人かの利用者は、例外的に、最低賃金の75%あるいはそれ以上の賃金を支給されている。ほとんどのワークショップで行われている類の組み立て作業では、一般雇用の労働者は、最低賃金に基づく賃 金または時給14NZドル(約785円)以上支給されている。

ニュージーランド職業・支援サービス(VASS)が開発した最低賃金評価ツールがあるが、ワークショップではそれを活用することは求められていない。ワークショップの中には、独自の評価ツールを開発しているところもある。それは生産性とワークショップ経営者の支払能力に基づくものである。

(4)一般労働市場の事業主が利用できる賃金補助(制度)があるが、ワークショップは利用できない。この賃金補助は、ワークブリッジ(Workbridge)という機関を通して行われる。その額は、最低賃金の約20%である。それは、障害労働者が(職場の)同僚からの付加的な支援を必要とするか、あるいは、労働能力が他の労働者よりも低い場合に利用できる。これらの補助は2年間に限られる。学校、病院または地方議会のような、国の費用で賄われる機関に就職する障害者について利用できる別の補助がある。このプログラムは、「メインストリーム」と呼ばれ、最初の年には賃金の100%、2年目には賃金の50%が支払われる。

(5)給付は、資格要件による。医師によって行われる評価の基準に合致していなければならない。基礎給付とそれを補う、住宅費を賄う住宅加算、および通常投薬といった継続的な医療費を賄うための障害者加算といった付加支給により、加算されうる。基礎給付には、資産調査はなく、最低賃金の約75%である。他の付加給付のいくつかは、家計に寄与する他の同居者の有無によって決まる。事故によって障害者となった人の場合、ニュージーランド事故補償委員会を通しての別の支給制度がある。これらの人びとは、従来の賃金の80%を受給するが、ケースマネジメントを通して密接に管理され、職場復帰への彼らの能力を確かめるため、定期的に見直しが行われる。

(6)障害者は誰も、職業訓練、デイアクティビティ・サービスの利用、雇用への実務訓練や支援を含む、障害者支援を受ける費用を負担しない。こうしたサービスの提供者は、これらのサービスを提供するという契約に基づき、政府から資金提供を受ける。その資金は、合意した人数の人だけしか支援できないという制約が課せられている。もっとも、サービス提供者は、自前の費用でそれ以上の人を支援することはできる。政府からの財政支援のレベルは、他の国とくらべかなり低い。ワークショップは年間(利用者1人あたり)約3,200NZドル(約162,000円)+付加価値税を支給される(付加価値税は、政府に還元される)。この政府の財政支援レベルについては、現在大きな議論になっている。

(7)DPEPが廃止された結果、いくつかのワークショップは、障害者が通常の地域活動に参加し、ボランティア・ワークをする「地域参加」と呼ばれるプログラム提供へと転換している。ワークショップが雇用法を順守する必要がなかった頃とくらべ、ニュージーランドで就労する障害者数は少なくなっている。事実、ニュージーランドで最大の障害者サービス提供団体であったIHI/IDEAが、すべてのワークショップを閉鎖したため、利用者のほとんどはその影響を受けている。障害のある家族が、毎日ワークショップに行き、そこで少しでも仕事をし、それに対してごく少額でも報酬を得てくることに満足していた家族には、きわめて不評である。彼らは、法的な問題や障害者が搾取されているという一般の見方は、気にしていない。

他により深刻な問題がある。ニュージーランドには、現在従業員にとって有利な、きわめて公正な雇用紛争(調停)制度がある。従業員が公正な待遇を受けていないと感じると、彼らは「個人的苦情」を雇用裁判所に持ち込むことができる。ワークショップ経営者も作業パフォーマンスが悪い利用者に対処する際、困難な状況におかれる。一般の職場では、十分な仕事ができなければ、(公正な手続きが取られる限り)事業主は彼らを解雇できる。ワークショップはその存在の性質から、二重の役割をもつ。それらは、一般就職に向けて努力する人々を支援するために存在する。したがって、ワークショップは、こうした作業成績の悪い人をどうして解雇しえようか。現在のところ、主な労働組合はどこもこの状況に興味を示していない。政府は、障害者のための新しい権利擁護サービスに資金を提供しているが、雇用紛争にはあまりかかわってこなかった。

(ア)(1)求職者の登録制度はない。(2)3年間までのリハビリテーション訓練、12か月までの支援雇用、および適当な場合、職業訓練を含む、一連の措置がある。それに加え、職場を改造したり、支援を提供するための一連の補助金制度がある。(3)賃金補助制度(WSS)は、公共部門以外の事業主が、障害者を最低 20時間雇用するのを奨励するため、経済的に支援するものである。その対象となるのは、生産性の水準が通常の80%以下でなければならない。彼らには、その職務の通常の水準の賃金が支払われる。WSS制度の対象者には最低賃金法が適用される。障害者が稼げる所得には上限はないが、補助額には上限がある。したがって、もし障害者が最低賃金の2倍稼ぐと、補助金だけではその全体をまかなうことはできない。SOS制度の利用者は、サービスの受給者とみなされる。その結果、最低賃金規定は適用されず、利用者はサービス提供者から(年金所得に上乗せする)手当を受給するのみである。その額には上限がある。(4)WSSによる賃金補助は、生産性に基づき、計算される。生産性が測定される基準は、同様の仕事をする一般従業員の生産性である。WSSは、恒久的な措置で、期限はない。(5)WSSと障害給付の関連は、申請基準に基づく。障害年金を受給している場合、WSSの申請をするのは、容易である。障害給付は、拠出制の短期の給付、疾病給付は、拠出制の長期の給付、そして障害手当は、非拠出制の資力調査を伴う、給付である。(6)SOSの対象となる障害者は、すべて保健関連および社会ケアサービスの対象となる。サービス利用者が医療上の問題をもっている場合、資力調査を伴う医療カードにより、公共保健制度の対象となる。職業準備や職業訓練は、公共雇用ガイダンスのカウンセリング・サービスを通して無料で利用できる。(7)WSS制度は、つい最近導入されたばかりであるが、すべての人に認められている。SOSは35年以上存在してきた。その実践綱領づくりに過去10年間取り組まれてきたが、なお議論の最中であり、承認されるには至っていない。