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第1章注釈

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たとえば、厚生労働省のホームページでは、障害者の就労支援対策として、「「福祉から雇用へ」推進5カ年計画の策定を行い、障害者の地域における福祉的就労から一般就労への移行を推進する」とあり(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/shurou.html)、また、厚生労働省の地域障害者就労支援事業を「福祉的就労から一般雇用への移行を促進する事業」(厚生労働省「平成21年障害者白書」)としている。ただし、社会保障審議会障害者部会報告(平成20年12月16日)では、福祉的就労の定義があいまいなことから、あえてこの言葉を「就労継続支援」へ修正した経緯がある。
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なお、障害者の作業施設としては、本稿で述べている障害福祉サービス系の事業の他、労働者災害補償保険法第29条の社会復帰促進等事業として設置されている、業務災害又は通勤災害による重度のせき髄障害、両下肢障害者を対象とする入所作業施設である労災リハビリテーション作業所がある(全国6箇所、2009年3月末現在の在籍者数81名。設置・運営は(独)労働者健康福祉機構)。
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福祉的就労施設における労働者性の判断については、厚生労働省労働基準局長通達「授産施設、小規模作業所等において作業に従事する障害者に対する労働基準法第9条の適用について」(平成19年5月17日基発第0517002号)に示されているほか、厚生労働省労働基準局監督課長通達「授産施設、小規模作業所等において作業に従事する障害者に対する労働基準法第9条の適用に当たり留意すべき事項について」(平成19年基発第0517001号)、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知「就労継続支援事業利用者の労働者性に関する留意事項について」(平成18年障発1002003号)、同「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」(平成19年障発0402001号)が発出されている。また、最低賃金に関しては、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課長通知「障害者自立支援法の施行に伴う最低賃金適用除外許可手続きについて」(平成18年障障発1002001号)が出されている。
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厚生省社会局長宛労働省労働基準局長疑義回答(昭和26年10月25日付基収3821号)
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親の会などによる障害者の訓練と働く場を提供するための小規模施設は1950年代、60年代にすでに散発的に存在したが、継続性と組織性を備えた小規模作業所の第1号は1969(昭和44)年に知的障害者を対象として設立された「ゆたか共同作業所」(名古屋市)であるとされる(きょうされん(2002)、「小規模社会福祉法人・通所授産施設開設のための総合ガイド」、中央法規、p.4)。
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国からの小規模作業所に対する運営補助費は平成17年度限りで廃止となり、18年度以降は障害者自立支援対策臨時特例交付金により、特別対策事業のなかの小規模作業所緊急支援事業等に置き換えられた。
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平成20年10月時点(厚生労働省・障害福祉関係主管課長会議資料による)。
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もっとも、このためには、国及び地方自治体による何らかの補助制度が必要とされる(きょうされん理事長西村直「小規模作業所及び地域活動支援センターに関する見解」(2007年10月23日付))。
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新制度への移行が困難な小規模作業所は、利用者がごく少数、かつ、事業運営者も障害者の親たちの集まり等であり、非営利性が強い、ごく零細な事業体である可能性が高い。このため、収益性が著しく低い場合は、労働基準法上の適用対象たる事業者性を欠くと判断される可能性もある(平19年5月17日付基発第0517002号厚生労働省労働基準局長通達、記の1.なお書き)。
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第33回社会保障審議会障害者部会(平成20年6月9日)提出資料による。
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この減少分は、新体系の基づく施設数及び在所者数(第 1表)よりかなり下回っているが、これは、第1表の数値には小規模授産施設からの移行や経過的に旧制度を維持しながら新体系による事業を立ち上げたところがあることによる。
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厚生労働省障害保健福祉関係主管課長会議(平成21年5月28日)配付資料による。なお、この移行率は身体障害者療護施設、更生施設、知的障害者通勤寮など直接的な就労の場の提供を目的としていないものも含んでいるので、第2表の範囲に合わせて移行率を計算すると49.7%と概ね半数の施設が新体系に移行している。
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厚生労働省障害保健福祉主管課長会議(平成21年3月12日)資料による。
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障害年金1級の額は特別加算なので、2級の額を参照額としている。生活保護の単身者基準としては13~4万円程度が想定されている。
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厚生労働省の民間企業に雇用される障害者雇用者数の統計は、重度障害者をだぶるカウントすることと、短時間の雇用者を含むので、一人当たり現金給与として「毎月勤労統計調査」の一般労働者とパートタイム労働者を合わせた一人当たり現金給与総額(産業計)を用いた。
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障害者自立支援法に基づく、就労移行支援事業を利用し就労する障害を有する者、就労継続支援事業を利用し就労する障害を有する者のうち、A型(雇用無)及びB型利用者、並びに、その他授産施設、小規模作業所等で就労する者。
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福祉的就労者に対する労働関係法規の適用の問題については、既存の労働関係法令及びその解釈を所与の前提として課題を検討するのか、あるいは、福祉的就労者を含むすべての就労者に対する保護等新たな規制を検討するのかという、出発点における方向性の大きな相違が想定される(後者の発想を有すると思われる論稿として、奥貫妃文「知的障害者更生施設入所者の「作業」をめぐる労働法的考察」季刊労働法214号(2006年)166頁、178頁以下がある。)。
条約を見ると、例えば、障害者に対する差別を是正すべく「既存の法律」等を「修正し、又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)を採ること」を締約国に課している(第4条1項(b))。このことからすれば、既存の法令等社会システムを前提として、これを条約適合的に改革する趣旨が含まれているものと理解できる。
本節はこの理解に従って、既存の労働関係法令及びその解釈を前提として、福祉的就労者に対して労働関係法令を適用するとした場合の主な法的問題を示しつつ、若干の試論的検討を行うものである。なお、本節が対象とするよりも広く障害者雇用システムの在り方を検討する先行研究として、例えば、関川芳孝「障害者の雇用政策」日本労働法学会編『講座21世紀の労働法第2巻労働市場の機構とルール』(有斐閣、2000年)208頁がある。
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この点につき、池添弘邦「セーフティ・ネットと法 -契約就業者とボランティアへの社会法の適用-」労働政策研究・研修機構『就業形態の多様化と社会労働政策(労働政策研究報告書 No.12)』(2004年)199頁以下。
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例えば、労働法における自己決定については、西谷敏『規制が支える自己決定 -労働法的規制システムの再構築』(法律文化社、2004年)。
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生存権との関連でこの点について検討する最近のものとして、西原博史「人権Ⅲ・生存権論の理論的課題-自己決定・社会的包摂・潜在能力」法律時報第80巻第12号(2008年)81頁以下。
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小西康之「勤労の権利と義務に関するメモ」(財)労働問題リサーチセンター・(社)日本労使関係研究協会『多様な雇用形態をめぐる法的諸問題』(2008年)91頁以下。
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山田省三「障害者雇用の法理」季刊労働法225号(2009年)28頁。
23
堀木訴訟・最大判 昭57.7.7民集 36巻7号1235頁。
24
朝日訴訟・最大判 昭42.5.24民集 21巻5号1043頁。
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労働関係法規全般について人的適用範囲を検討した文献として、前掲注18 池添論文 206頁以下。
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厚生労働省労働基準局編『改訂新版 労働基準法 上』(労務行政研究所、2005年)106頁。
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「授産施設、小規模作業所等において作業に従事する障害者に対する労働基準法第9条の適用について」(平成19年5月17日 基発第0517002号)。
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その基となった文書が、労働基準法研究会第1部会報告(座長:萩沢清彦成蹊大学教授(当時))「労働基準法の「労働者」の判断基準について」(昭和60年12月19日)労働省労働基準局監督課編『今後の労働契約等法制のあり方について』(日本労働研究機構、1993年)50頁以下所収である。なお、裁判例の分析については、奥野寿・池添弘邦「日本における裁判例の状況」労働政策研究・研修機構『「労働者」の法的概念に関する比較法研究(労働政策研究報告書 No.67)』(2006年)47頁以下。
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前掲注28労基法研究会第1部会報告(労働省労働基準監督課書 54頁)。
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前掲注28報告書70頁〔池添弘邦〕。したがってその分、裁判例では、指揮監督性を欠くものの、一つの使用者に経済的に依存して就労している者が、要件とはされていない経済的従属性を有すると主張しても、あるいは、裁判所が就業形態多様化に対応すべく当事者の自由な意思を尊重して法令の適用を回避する可能性があるとの一般論を立てても、否定されてきている。前者につき、労働契約性が問題となった事案ではあるが、NHK盛岡放送局(受信料集金等受託者)事件・仙台高判平 16.9.29労判 881号 15頁、後者につき、横浜南労基署長(旭紙業)事件・東京高判平6.11.24労判 714号16頁。
31
平9.9.18基発 636号。
32
関西医科大学研修医(未払賃金)事件・最2小判 平17.6.3民集 59巻5号938頁。
33
池添弘邦「アメリカ」前掲注28報告書 285-286頁。
34
前掲注28報告書 129頁〔ドイツ・皆川宏之〕、220頁〔イギリス・岩永昌晃〕。
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前掲注22山田論文27頁も、比較法の観点からではないが、全ての福祉的就労者を労働法規の適用下におくことの非現実性の反面で、福祉的就労も労働法的側面があることは否定できないとして、「福祉労働法のような、各々の特殊性に配慮した法律の制定が求められる」と述べる。
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労契法2条2項:「この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。」
37
安田病院事件・大阪高判平10.2.18労判744号63頁(同事件・最3小判平10.9.8労判745号7頁により上告棄却)。
38
「座談会・労働者性の再検討」季刊労働法222号(2008年)27頁以下における島田教授の発言。
39
最賃法7条1号は、「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」を最賃の減額特例の対象としていることから、工賃が低いことだけでは労働対償性を否定する理由にはならない。同旨、柳屋孝安「施設における障害者訓練と労働者性判断に関する一考察」季刊労働法225号(2009年)180頁、185頁。
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このような契約関係の構想は、すでに、大曽根寛・奥貫妃文「障害者自立支援法における「労働」と権利擁護の在り方 -「福祉」と「労働」を架橋する法理論の形成に向けて-」放送大学研究年報第24号(2006年)1頁、13-14頁においてなされており、同論文では、労働契約と、福祉契約及び職業リハビリテーション契約とが部分的に重なり合った契約関係が示されている。なお、労働裁判例では、東京12チャンネル事件・東京地判昭43.10.25労民集19巻5号1335頁が、タイトルデザイナーの契約を、請負と雇用の性格を併せ持つ混合契約であるとして、労働法上の保護が及ぶと判断している(ただし、結論としては解雇を有効としている。)ことを想起すれば、立法政策遂行上の困難さが多分にあるとしても、理論的に不可能な理解ではないと考えられる。
41
労基法9条の適用関係については、前掲注27の通達が、訓練等の計画が策定され、実際の訓練が計画に沿って行われている場合には、障害を有する者又はその保護者との合意により、当該作業に従事する障害を有する者を労基法 9条にいう「労働者」として扱わないという趣旨が述べられており、すでに当事者意思の尊重による政策的対応が見られ、労働法学説上、このような対応を一定程度評価する見解(前掲注39柳屋論文)が見られる。
42
菅野和夫『労働法〔第8版〕』(弘文堂、2008年)480頁。
43
日本プロフェッショナル野球組織事件・東京高決平16.9.8労判 879号90頁。
44
業務委託契約者につき、国・中労委(INAXメンテナンス)事件・東京地判平21.4.22労判 982号17頁。
45
最高裁判例としては、油研工業事件・最 1小判昭 51.5.6民集 30巻4号409頁、CBC管弦楽団労組事件・最1小判昭51.5.6民集 30巻4号437頁、近時の下級審裁判例としては、大阪府労委(アサヒ急配)事件・大阪地判平19.4.25労判 963号68頁、国・中労委(新国立劇場運営財団)事件・東京高判平21.3.25労判 981号13頁、国・中労委(INAXメンテナンス)事件・東京地判平21.4.22労判 982号17頁。
46
団体交渉拒否の不当労働行為(労組法7条2号)の場合、「雇用する労働者」であるかが問題とされることから、福祉的就労者が労組法上の労働者と解される可能性は、なおさら低くなるのではないかと考えられる。
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なお、憲法上の労働組合(労組法2条本文の要件のみを満たす労働組合)であっても、労働基本権に基づく民刑事免責及び公序設定効果による救済を、裁判手続を通じて享受しうる。前掲注42菅野書477頁。
48
なお、「によって生活する者」の「によって」とは、単に「得て」生活しているか「得ようとしている」という程度の意味に過ぎないと解されている(前掲注42菅野書478頁)ため、工賃が低額であることは福祉的就労者の労組法上の「労働者」性を否定する事実にはならないと考えられる。
49
なお、前掲注17関川論文223頁は、福祉的就労者を「労働者として位置付け、雇用関係の確立、労働法上の保護、および一般雇用へ統合できる仕組みづくりが必要ではあるまいか」と述べる。他方で前掲注17奥貫論文178頁は、「部分的に労働者としての権利が確保されるべきである」が、「福祉的な支援を捨象し、限りなく「一般雇用」に統合する方向性を志向すべきであると考えているわけではない」とする。福祉的就労者を「労働者」とする場合でも、どの程度において、また、どの事項についてどのような手法で取扱っていくべきかは論者により異なると言える。
50
なお、障害者雇用に係る具体的問題について、すでに、前掲注22山田論文24頁以下、田口晶子「障害者雇用の現状と法制度」季刊労働法225号(2009年)16頁以下がある。
51
前掲注17関川論文224頁も、助成・支援を提案する。
52
前掲注42菅野書138頁。
53
三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・会社側上告)事件・最1小判平12.3.9民集54巻3号801頁。
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なお、労働時間概念を変えるというのであれば、①有する障害の程度によっては現行規制の特例措置規定を設ける必要性(あるいは、年少者(60条61条)や妊産婦(66条)に対するのと同様の制限規定を設ける必要性)、②契約法上、労基法が定めるよりも就労者側に有利な合理的配慮を行う義務が作業所等の側にあると考えるのかどうかを検討する必要が生じよう。
55
日立製作所事件・最1小判平3.11.28民集45巻8号1270頁。
56
前掲注17関川論文224頁は、制度の存続を前提に、障害者個人に対する公費による賃金補完の仕組みを提案する。
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以上については、前掲注50田口論文16頁を参考とした。
58
労働契約上の問題は、法律制度上の概念や理論の取り扱いというよりはむしろ、実態を踏まえた実務上の取扱いをどのように仕立てていくかという問題であろう。この点筆者は、福祉的就労現場における実態や実務をつぶさにかつ継続的に観察した経験がない。したがって、以下に検討する諸問題については、その前提としての事実認識には推測の域を出ないものが多く、誤認が多分に含まれると思われ、検討結果は非常に不安定なものである。このような問題点については、本拙稿をお読み頂いた関係の方々からご指導賜り、今後の糧とできれば幸いである。なお、福祉的就労者に限らないが、障害者雇用に関する裁判例を検討した先行研究として、小西啓文「日本における障害者雇用にかかる裁判例の検討」季刊労働法225号(2009年)70頁がある。同論文は、福祉的就労者の契約上の問題を今後検討していく上でも、有益な示唆を与えてくれるように思われる。
59
採用内定取消については、大日本印刷事件・最2小判昭54.7.20民集33巻5号582頁、試用期間終了後の本採用拒否については、三菱樹脂事件・最大判昭48.12.12民集27巻11号1536頁。
60
前掲注22山田論文26-27頁も同旨であろうか。なお、職場復帰(休職)と解雇の関係については、前掲注58小西論文75頁以下を参照されたい。
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職務内容が決まっていなかった事例として、片山組事件・最1小判平10.4.9労判736号15頁。職務内容が決まっていた事例として、カントラ事件・大阪高判平14.6.19労判839号47頁。
62
アーク証券(本訴)事件・東京地判平12.1.31労判785号45頁。
63
住友生命保険(既婚女性差別)事件・大阪地判平13.6.27労判809号5頁、マナック事件・広島高判平13.5.23労判811号21頁。
64
前掲注42菅野書400頁以下。
65
陸上自衛隊八戸車両整備工場事件・最3小判昭50.2.25民集29巻2号143頁。
66
川義事件・最3小判昭59.4.10民集38巻6号557頁。
67
大石塗装・鹿島建設事件・最1小判昭55.12.18民集34巻7号888頁。
68
前掲注66川義事件。
69
このような観点から下級審裁判例を検討したと思われる文献として、前掲注58小西論文72頁以下がある。
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同旨、松井亮輔「障害者権利条約と労働」法律時報81巻4号(2009年)28頁。なお、松井は、企業内で障害者従業員代表も参加する事業所内苦情処理委員会、企業外の独立行政機関としての障害者権利委員会、人権委員会を、障害者の権利保護、救済のための装置として提案している。
71
前掲注42菅野書632-633頁。
72
中労委(西神テトラパック)事件・東京高判平11.12.22労判779号47頁。
73
さしあたり、馬渡淳一郎「集団的労働関係における使用者」菅野和夫・西谷敏・荒木尚志編『労働判例百選[第7版](別冊ジュリストNo.165)』(有斐閣、2002年)11頁。
74
朝日放送事件・最3小判平7.2.28労判668号11頁。
75
前掲注22山田論文30頁も同旨を述べているのではないかと思われる。
76
藤井克徳「対角線モデルの牽引者に -社会福祉の立場から-」(『職業リハビリテーション』Vol.22 No1,2008.9)
77
トライアル雇用は、障害者の雇用に不安を感じる事業主、就労に不安を感じる障害者のため、原則3ヵ月の試行雇用で不安の解消・軽減を図り雇用・就労を促進しようとする制度で、1人当たり月4万円を事業主に支給する。2008年度内の修了者7,720人、内常用雇用移行者6,436人、移行率83.4%となっている。
常用雇用への移行率は、2006、7、8年度と各82-3%を記録しており、効果の高い施策と言えよう。
78
2009年4月末日現在で258社。東京82社、神奈川34社、大阪22社とこの3都府県で5割を超す。
79
福祉行政と雇用行政の連携は近年次第に深まっているし、障害者自立支援法の理念の一つは、一人ひとりのニーズに応じた自立支援、就労支援をしていこうとするものであるが、福祉と労働の垣根はまだまだ高いと筆者は考えている。なお、誰もが就労ないし社会に参加できる「排除しない社会」、「包摂する社会」(ソーシャル・インクルージョン)の実現の観点からすると、障害者だけでなく、一人親家庭、生活保護家庭、ホームレス、引きこもり等「社会から疎外されがちな者」全体を包含した対応が必要である。
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国立と県立とがある。国立訓練校は、中央障害者職業能力開発校及び吉備高原障害者職業能力開発校は独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が運営。その他11校は、各都道府県が運営。県立は6校。
81
障害者と企業のニーズに応じ、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等を活用した、多様な委託訓練(3ヶ月、月100時間が標準で、1人当たり月6万円上限の助成がされる。)が平成16年度から始まり、効果を挙げている。
82
第3章の拙稿を参照されたい。
83
障害者多数雇用事業所(重度障害者を10人以上雇用し、かつ雇用を継続することができると認定されて、「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金」を受けている事業所)も対象にすべきであろう。
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施設経営者に対するインセンティブとしては、提供サービスの質に応じ額の異なる補助金、障害者本人等に対するインセンティブとしては、給付付き税額控除制度の導入の方策等が考えられる。
85
Catherine Davister, Jacques Defourny, Olivier Gregoire,” Work Integraion Social Enterprises in the European Union: An Overview of Existing Models”, European Research Network WP、2004(http://www.emes.net/fileadmin/emes/PDF_files/PERSE/PERSE_04_04_Trans-ENG.pdf
86
「フレックス・ジョブ」については、The Naional Labour Market Authority in Demark(2007)、N.D.Gupta and M.Larsen(2008)、Bredgaard=Larsen(2009)、片岡( 2009)等。
87
OECD, ”Sickness, Disability and Work .Background Paper”, High-level Forum,Stockholm,14-15 May,2009,p19
88
2003年の障害年金改革で導入された「就労能力把握手法」(the ability-to-work method)(就労経験、社会的資格、健康等12の要素を勘案し、就労可能性を探し出すもの)が適用される。また、デンマークの多くの労働協約には、就労能力の低下に応じた職を提供することの合意 -いわゆる社会憲章-が含まれることも、フレックス・ジョブの普及の背景にある。
89
中央政府からの償還率は、障害年金では35%だけなのに対し、フレックスジョブでは50%と高く設定されている。(潜在的)障害年金受給者にフレックスジョブをあっせんする強い経済的誘因を自治体に与えるためとされる(Bredgaard=Larsen,2009)。
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京極髙宣氏は、「障害者の就労支援はどうあるべきか?-新たな中間的就労の創造的開発を!」(障害者職業総合センター『職リハネットワーク』2009.9)で、①設置主体の社会福祉法人以外への自由化、②最低保障工賃を保障する訓練生制度、③上級ジョブコーチや企業 OBの派遣や報酬引上げ補助、等を提言している。
91
ここでのオランダの記述は、第2章の廣瀬氏論文及び大森正博「オランダの最低生活保障制度」、栃本一三郎・連合総合生活開発研究所『積極的な最低生活保障の確立 -国際比較と展望』、2006.3、第一法規等による。
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障害者であるか否かに関わらない普遍的制度が将来的には望ましいが、当面は低所得障害者をなくす ためにも特別障害給付金の拡充や障害者基礎年金の引上げが現実的であろう。
93
日本政府公定訳(仮)を引用。
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社会的企業(social enterprise)や協同組合は、第3のシステムといわれる社会的経済の一種で、「現在、市場や公的セクターでは十分対応することができないニーズに対して財やサービスを供給することをとおして応えるためにつくられた組織で、利益はすべてこの組織の成長、会員や社会全体のサービス提供の改善に再投資することを意図したもの」(ILO)と定義される。それには、ソーシャル・ファームやソーシャル・ビジネスなども含まれる。2004年の調査によると、英国の社会的企業は1万5000社で、同国の全企業の1.2%を占める。雇用者数は約45万人、年間売上高は180億ポンドとされる(オレイリー、A.(2008)、ディーセント・ワークへの障害者の権利、ILO技能・就業能力局、61~63頁)
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第6回特別委員会でイスラエル政府代表は、代替雇用に関連して、「一般労働市場外のあらゆる形態の雇用について、有用で、報酬を伴い、ディーセントな労働を確保し、昇進の機会を提供し、かつ、一般労働市場への移行を促進するという条件で、十分な資源が充当されることを確保すること」を提案している。 mhtml:file//F:/UN Enable . Article 27 Sixth Session . Comments, proposals and amendmentssubmitted electronically.
96
ILO(2004), Views of the ILO on the Draft Text of a Comprehensive and Integral InternationalConvention on the Protection and Promotion of the Rights and Dignity of Persons with Disabilities.
97
IDCは、保護雇用に関連して、「こうした雇用が障害者の労働の権利を実現することを示唆する、保護雇用または他のいかなる用語の言及をも拒否する。多くのところで、“保護雇用”は、通常の労働法や権利が適用されない、分離と経済的搾取によって特徴づけられる職場を意味する。こうした措置は、われわれの労働の権利の保護や自由に選択する労働によって生計を立てることというよりも、むしろ制約を意味する。」 Mhtml:file//F:/UN Enable . Article 27 Sixth Session . Comments, proposals and amendmentssubmitted electronically.
98
ILO(1985), Basic Principle of Vocational Rehabilitation of the Disabled, p.36
99
Peter David Blanck, Employment Integration, Economic Opportunity, and The Americans with Disabilities Act: Empirical Study from 1990-1993, 79 Iowa L. Rev. 853 (1994).
100
職業リハビリテーションプログラムには、職業に関するカウンセリング・指導・推薦、OJTを含む職業訓練、個人がサービスを受けている間に生じる追加的なコストの補助、サービスに関連する輸送、聴覚障害者への手話通訳者の提供、学校から就労への移行支援、援助付き雇用サービス、職業紹介サービス等が含まれる。
101
ただし、FLSAは日本の労働基準法のような包括的労働保護法とは性格を異にする。
102
102 29 U.S.C. §§201-219.
103
なお、最低賃金の額は 5ドル程度であったが、「2007年米軍整備、退役軍人支援、カトリーナ復興支援、イラク責任予算法(U.S. Troop Readiness Veterans’ Care, Katrina Recovery, and Iraq Accountability Appropriations Act, 2007)」の制定により、年々引き上げられることになり、現在の額に至っている(北澤謙「第 2章アメリカ」『JILPT資料シリーズ No.50欧米諸国における最低賃金制度』(2008年)7-8頁)。後述する障害者に対する最低賃金以下の賃金額をみるときには、この点に注意する必要がある。
104
http://www.azleg.gov/FormatDocument.asp?inDoc=/ars/23/00326.htm&Title=23&DocType=ARS
105
National Council on Disability, The Impact of the Americans with Disabilities Act: Assessing theProgress Toward Aching the Goal of the ADA, p89 (2007).
106
Special Minimum Wage Program: Centers Offer Employment and Support Services to WorkersWith Disabilities, But Labor Should Improve Oversight. GAO01-886. Washington, D.C.: September 4 2001.
107
就労センターにおいても、FLSAの最低賃金の減額適用がなされていることから、福祉的就労の障害者にも、FLSAの適用が行われているといえる。
108
5.15ドルは、当時の最低賃金額である。
109
(1)及び(2)の記述は、百瀬優「アメリカ障害年金の形成過程と現状-日本への示唆を求めて」勝又幸子編『障害者の自立支援と「合理的配慮」に関する研究-諸外国の実態と制度に学ぶ障害者自立支援法の可能性-』(厚生労働科学研究費補助金障害保健福祉総合研究事業平成 20年度総括研究報告書)107-147頁によるところが大きい。
110
実質的有償活動の審査は、月額 830ドル(2005年)を得る活動を目安とする。なお、その所得の算定では、機能障害に関連する経費は控除される。
111
野田博也「アメリカの補足的保障所得(SSI)の展開 -就労自活が困難な人々に対する扶助の在り方をめぐって-」海外社会保障研究160号(2006)130-135頁、百瀬優「欧米諸国における障害給付改革-障害年金を中心に」大原社会問題研究雑誌570号(2006)23-32頁。
112
社会保障障害年金と同様、月額830ドル(2005年)以上の所得があれば、実質的有償活動に従事しているとみなされ、SSIは支給されない。
113
Supra note 106, at 24-25.
114
Loi n°2005-102 du 11 fevrier 2005 pour l’egalite des droits et des chances, la participation et la citoyennete des personnes handicapees, JO n°36 du 12 fevrier 2005, p.2353.
115
CDAPHは、従来の COTOREP(職業指導・職業再配置専門委員会)とCDES(県特別教育委員会)とを統合する形で 2005年法により創設された委員会である。各県のMDPH(県障害者センター)内に設置され、各種給付の支給決定や障害労働者認定等、障害者の権利に関するあらゆる決定を行う(社会福祉・家族法典L.241-6条)。委員会のメンバーには、県の代表、国の代表だけでなく、労使代表や障害者施設の運営機関の代表、障害者団体の代表等も含まれる(L.241-5条、R.241-24条)。
116
障害労働者の生産活動の必要に応じて、適応企業・CDTDは、全従業員の20%まで、障害を持たない被用者を雇用することができる(R.5213-64条)。
117
適応企業・CDTDは、公共団体や公的機関、民間機関により設立される。営利企業(societes commerciales)による設立も可能であるが、その場合には、設立を取り仕切った法人とは別法人で組織されなければならない。適応企業・CDTDは、3年毎に地方圏知事と目標契約(contrat d’objectifs)を締結しなければならず、この目標契約の締結が、適応企業・CDTDの承認となる(L.5213-13条)。
118
通常の企業で働く障害労働者については、L.5213-7条で、最低賃金の保障が定められている。ただし、最賃の保障による使用者側の負担を考慮して、雇用により負担の生じる重度障害者を雇用した場合には、Agefiph(障害者職業参入基金管理運営機関)から、「雇用助成金(aide a l’emploi)」支払われる。雇用によって生じる負担の総額が、SMIC年額の20%以上になる重度障害者を雇用した企業に対しては、原則、フルタイムの1ポストにつきSMICの450倍の助成金(年額)が支払われ、負担総額がSMIC年額の50%以上になる重度障害者の雇用の場合には、SMICの900倍の助成金(年額)が支払われる。ただし、これらの助成金は、重度障害者の雇用により納付金の割引を受けている場合には、支給されない。なお、Agefiphは、雇用義務を満たさない企業から徴収される納付金の管理・運営を行う機関で、障害者の雇用促進のために多様な支援を提供している。
119
Arrete du 13 fevrier 2006 relatif aux conditions d'attribution de la subvention specifique aux entreprises adaptees et centres de distribution de travail a domicile, JORF n°38 du 14 fevrier 2006, p2266.
120
http://www.agefiph.fr/index.php?nav1=entreprises&nav2=toutes&action=search&id=86295
121
ESATの設立は、県知事のアレテにより認められる。設立主体は公的機関でも民間機関でも良い。
122
CDAPHの決定が、自らの権利を侵害していると判断した場合、障害者本人又はその法定代理人は、決定の日から2カ月以内であれば、調停の提案権限を有する有資格者(apersonne qualifiee)の介入(=調停手続きの実施)を請求することができる(社会福祉・家族法典L.146-10条)。
123
この契約が、就業活動や医学・福祉的、教育的支援に関する権利や相互の義務を定める。契約期間は1年で、黙示に更新される(社会福祉・家族法典 Annexe3-9)。
124
ESATで働く障害者は、商工業の被用者を対象とする一般制度(場合によっては農業制度)に加入する。なお、国が負担する保障報酬部分(ポストへの助成金)にかかる保険料は、国が負担する(L.243-6条、R.243-9条)。
125
ESATに受け入れられて1ヶ月が経つと、1ヶ月に2.5日の年次有給休暇が支給される(R.243-11条)。
125
その他、結婚に際し4日、子の誕生・養子縁組に際し3日、配偶者(事実婚、PACSを含む)及び子の死亡に際し2日、子の結婚に際し1日、両親(義理の両親を含む)・兄弟姉妹の死亡に際し1日の欠勤も認められる(R.243-12条)。なお、PACSは、1999年11月15日の法律により創設された「異性または同性の、成年に達した2人の自然人によって締結される契約」であり、法律婚をしていないカップルの共同生活を公認する意義を持つ。PACSを締結したカップルは、税制や社会保障制度、賃貸借において一定のメリットを享受することができる。サビーヌ・マゾー=ルヴヌール/大村敦志(訳)『個人主義と家族法』ジュリスト1205号79-83頁。
127
免状や職業資格証明書の取得のために、職業経験を承認してもらう制度。VAE手続きの開始前に、その職業計画を明確にし、適切な資格を選択する必要がある。http://www.travail-solidarite.gouv.fr/informations-pratiques/fiches-pratiques/formation-professionnelle/validation-acquis-experience-vae.html
128
労働災害・職業病に起因する障害は、労災補償制度により保障される(社会保障法典第4編)。なお、被保険者の故意に起因する障害に対しては、障害年金の支給はない(L.375-1条)。
129
被保険者期間が10年に満たない場合には、被保険者期間中の平均賃金。
130
保険料の計算の基礎になった賃金。
131
最低保障額は、月額258.10ユーロ(2008年1月1日現在)。
132
自営等による所得。
133
これらの数値よりも年金額の方が大きい場合には、当該年金額が上限となる(R.341-16条3項)。
134
ただし、年金の支給が停止・廃止される場合であっても、再配置や職業再教育の観点から講習や研修等を受けている場合には、所得の多寡に関わらず、年金の50%までを受給し続けることができる(L.341-14条、R.341-18条)。
135
60歳になると、原則として、AAHに代えて老齢給付(aavantage vieillesse)が支給される。しかし、本人の障害率や状態がAAHの支給を正当化する場合、老齢手当と満額のAAHの差額分が、差額手当として家族手当金庫から支給される(L.821-1条6項)。差額手当を受け取りたい場合には、県障害者センター(MDPH)に請求し、障害者権利自立委員会(CDAPH)の決定を受けなければならない。
136
上限は、カップル(法律婚・事実婚・PACS)の場合は2倍となる。また、扶養すべき子供1人につき、この上限の0.5倍が加算される(D.821-2条2項)。
137
2007年7月10日のデクレ(Décret n° 2007-1080 du 10 juillet 2007)3条により挿入。
138
AAHを含む最低所得保障の受給者の雇用への復帰を促進することを目指す支援付き労働契約。CA(労働法典L.5134-35条以下)は、非営利企業や公的部門の使用者と締結できる原則2年の有期契約で、AAH受給者らのパートタイムでの就労を可能にするものである。使用者には、一定額の助成金(月額454.63ユーロ(=単身者に支払われるRMI(参入最低限所得)の額:2009年1月1日現在)や社会保険料の使用者負担分の免除等が認められる。他方、CI-RMA(労働法典L.5134-74以下)は、失業保険に加入している全使用者と締結できる契約で、契約形態としては、無期契約、6ヶ月以上の有期契約、派遣契約が認められている。AAH受給者らのパートタイム(週20時間以上)又はフルタイムでの就労を可能とし、使用者には、一定額の助成金(CAの場合と同額)が与えられる。なお、CA及びCI-RMAは、2010年1月より、2008年12月1日の法律(Loi n° 2008-1249 du 1er décembre 2008)が創設した「統一参入契約(contrat unique d’insertion)」制度に移行する。http://www.travail-solidarite.gouv.fr/を参照。
139
この上限は、同居する配偶者がいる場合(事実婚、PACS(民事連帯契約)を含む)には+30%、扶養すべき子がいる場合には、子1人につき+15%の加算がある(D.821-5条2項)。
140
実際に、この上限を超えることは、ほとんどないと言われている。
141
「手引き(Anhaltspunkte)」という名称のつく最も古い鑑定指針は、1916年に作成され、1920年に増補されて以降、そのときの労働・社会分野を管轄する省庁により刊行されてきた。この手引きは、医学の発展等の成果を反映するため、定期的に改訂されてきた。なお、最後の 2008年版の手引きについては、(独)高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター編『欧米諸国における障害認定制度』(2009年)の資料4(207頁以下)に翻訳が掲載されている。
142
Gesetz zur Aenderung des Bundesversorgungsgesetzes und anderer Vorschriften des sozialenEntschaedigungsrechts vom 13.12.2007(BGBl.Ⅰ2007,2904ff)。
143
障害の程度が20以上の場合にのみ認定が行われるため(社会法典第9編69条1項)、「障害者」とは障害の程度が20以上の者をいうと説明されることがある。
144
障害の有無およびそれに基づく稼得能力の低下に関する認定が、年金決定通知などによって既になされている場合、障害認定は行われないが、障害者が認定の利益があることを信じることが無理からぬ場合には、この限りではないとされている(社会法典第9編69条2項)。
145
ドイツにおける障害者差別禁止法制の展開については、廣田久美子「ドイツにおける障害差別禁止と『合理的配慮』をめぐる動向」(独)高齢・障害者雇用支援機構・障害者職業総合センター編『障害者雇用にかかる「合理的配慮」に関する研究-EU諸国及び米国の動向』(2008年)129頁以下、指田忠司「差別禁止法制の展開と割当雇用制度の変容」(独)高齢・障害者雇用支援機構・障害者職業総合センター編『EU諸国における障害者差別禁止法制の展開と障害者雇用施策の動向』(2007年)42頁以下によっている。
146
4つの EC指令とは、①人種・民族差別禁止指令(2000/43/EC)、②雇用差別禁止指令(2000/78/EC)、③男女差別禁止指令(2002/73/EC)、④財・サービス供給契約上の男女差別禁止指令(2004/113/EC)のことである。一般平等取扱法の立法過程・内容については、斉藤純子「ドイツにおけるEU平等待遇指令の国内法化と一般平等待遇法の制定」外国の立法230号1頁、山川和義・和田肇「ドイツにおける一般平等立法の意味」日本労働研究雑誌18頁参照。
147
一般平等取扱法の制定の背景には、EC指令の国内法化が急務であったことが指摘されるが、立法理由書によれば、障害者の失業率が平均より高い等のドイツ国内の事情から、不十分な差別禁止法制の補充・強化を図ることも目的であったと説明されている(山川和義・和田肇「ドイツにおける一般平等立法の意味」日本労働研究雑誌574号22頁)。
148
就労ポストが60未満の使用者については、負担調整金の算定も含め特別規定がある。
149
詳しくは、小西啓文「ドイツの障害者雇用の現状と検討課題-日本法への示唆」労働法律旬報1696号26頁以下参照。
150
制度の概要は、春見静子「各種保護雇用の取組み」『EU諸国における障害者差別禁止法制の展開と障害者雇用施策の動向』2007年、65頁以下による。
151
労働生活への参加が困難として、作業所での活動を行う前提条件を満たさない障害者については、作業所に併設された施設等(Tagesfoerderungsstatt)の対象となる。
152
本制度の概要については、福島豪「ドイツ障害年金の法的構造(1)-障害保障と失業保障の交錯」法学雑誌53巻1号87頁以下、同「ドイツ障害年金の法的構造(3・完)-障害保障と失業保障の交錯」法学雑誌53巻3号88頁以下、Bundesministerium fuer Arbeit und Soziales(BMAS),Erwerbsminderungsrente,2009による。
153
ドイツでは、毎年、約16万人の労働者が、老齢年金の支給開始年齢到達前に健康上の理由に基づき職場を失っているとされる(Bundesministerium fuer Arbeit und Soziales(BMAS),Erwerbsminderungsrente,2009,S.5)。
154
福島豪「ドイツ障害年金の法的構造(1)-障害保障と失業保障の交錯-」法学雑誌53巻1号93頁。
155
法的には自営業者であるが、その就労スタイルが労働者(被用者)に類似していることから、労働者と同様の保護を及ぼすために設けられた類型であり、当該自営業に関連して、社会保険加入義務のある(月額400ユーロを超える)労働者を雇用しておらず、継続的に1人の使用者のためにのみ活動する者をいう。
156
現在は65歳であるが、2012年から2029年にかけて段階的に67歳に引き上げられることとなっている。
157
Bundesministerium fuer Arbeit und Soziales(BMAS),Erwerbsminderungsrente,2009,S.23
158
この年齢は、2012年より段階的に満65歳に引き上げられる。ただし、減額幅の上限(10.8%)に変更はない。
159
たとえば、作業に対する報酬は、業績に応じた適切なものでなければならないとされてはいるものの、規定されている最低報酬額は、一般労働市場における最低賃金とは異なるものである。なお、障害者作業所において作業に従事する障害者の多くは、作業に対する対価である報酬を受けるほかに、稼得不能状態にある者として基礎保障給付の受給要件を満たすと思われるため、基礎保障給付が賃金補填機能を果たしていると考えられる。
160
Australian Bureau of Statistics, “Disability, Aging and Carers: Summery of Findings 2003,”http://www.abs.gov.au/AUSSTATS/abs@.nsf/Lookup/4430.0Main+Features12003?OpenDocument at 3-4.
161
R. Willkins, “Labour Market Outcomes and Welfare Dependence of Persons with Disabilities in Australia,” Melbourne Institute Working Paper No.23 (2003).http://melbourneinstitute.com/wp/wp2003n02.pdf at 4.
162
オーストラリアにおける労働条件の規制のあり方については、R. Price, Employment Law in Principle, (Riverwood: Thomson, 2003) at Chapter 10 to 12.
163
Ibid. at 163.
164
オーストラリアの労使関係の管轄について、Queensland, Western Australia, New South Wales, Tasmaniaの各州では連邦管轄と州管轄が並存しており、Victoria, Northern Territory, Australian Capital Territoryにおいて州レベルの管轄が存在せず、これらの州および準州には連邦システムが適用されている。連邦法と州法が並存する場合においては、使用者が、連邦法の下で設立され、主に商取引や金融業をおこなう団体、そして連邦法の下で法人化されている組織や生協、には連邦法が適用される。一方、商取引、信託、慈善事業などを行っていても、法人化されておらず、雇用関係が、連邦法が適用される団体とは異なる場合には、州法の適用となる。
165
SWSについては、see, 2006 Australian Government Submission Chapter 11, “Minimum Wages for Employees with A Disability,”http://www.workplace.gov.au/NR/rdonlyres/A180F6A9-E52E-46AA-A5C3-F8C08222C894/0/Chapter11Minimumwagesforemployeeswithadisability.pdf(2006).
166
AUTCは、180万人の労働者が加入する46の加盟労働組合を統合する全国労働組合センターである。AUTUについては、http://www.actu.asn.au/を参照のこと。
167
AIRCは、労使紛争問題の解決、その結果としてのアワードの決定、アワードの定期的再審査、労働協約の承認、労働組合の登録、不当解雇問題の解決などにおこなう行政委員会Tribunalである(Tribunalは、裁判所と訳されることがあり、また従前の組織は裁判所(Commonwealth Court of Conciliation and Arbitration)と呼ばれていたが、AIRC自体は司法的な権限を有しているわけでない)。AIRCは、オーストラリア労働法の主要な機関であったが、2006年のWork Choicesによる労働法改革によってAIRCの権限の多くは、Australian Fair Pay Commission に移管されることとなった。AIRCは、2010年1月からFair Work Australiaの1つの課となり、権限が大きく制約されることとなった。AIRCについては、http://www.airc.gov.au/を参照のこと。
168
Supra note 149 at 343-349.
169
Supra note 149 at 354-355.
170
DENは、障害を有する求職者および労働者に対して、雇用の機会や維持のための専門的サポートをおこなう機関である。詳しくは、http://www.workplace.gov.au/workplace/Individual/DisadvantagedJobseekers/DisabilityEmploymentNetwork/を参照こと。
171
SWS査定人は、2007年7月の段階で138名存在し、会社や団体に属している。SWS査定人になるためには特別な訓練を受けなければならず、最低2年間の障害者雇用領域での実務経験、およびサービス提供における学歴(ディプロマ以上)が必要である。SWS査定人の登録情報は、SMWUによってコンピューター管理されている。SWSの査定は、SWS査定人だけがおこなうわけではない。第1に障害を有する労働者との話し合いのうえ、使用者と教育・雇用・労使関係者と契約をしたSWS査定人が決めるかたち、第2に障害を有する労働者との話し合いのうえ、使用者と労働者の代表が決めるかたち、第3に障害を有する労働者との話し合い(SWS査定人が協力する場合あり)のうえ、使用者と協定やアワードを締結した労働組合が決めるかたちである。
172
SWSの申請手続きについては、Dept. of Employment and Workplace Relations, Australian Government, “Overview of The Supported Wage System,” (2008), “Applying for Supported Wage System,” 2009) at http://jobaccess.gov.auを参照している。
173
“Job seekers unable to work at full productivity” (2009) at http://jobaccess.gov.au
174
Supra note 165 at 350-351.
175
See, National Disability Services (NDS), “Australian Disability Enterprises,” http://www.nds.org.au/national/facts/FactSheet-Enterprises.pdf (2007).
176
障害企業については、M. Pointon et al, “Australian Disability Enterprises: Sector Profile,” (2009), Australia Fair Pay Commission, “Employees with Disability,”http://www.fairpay.gov.au/NR/rdonlyres/FF63305F-9CBD-4DAB-8962-BEDF4681DAAD/0/Australian_Disability_Enterprises_Sector_Profile_interim_report.pdf (2009)を参照している。
177
Ibid. at 14-15.
178
See, NDS, supra note 158.
179
LHMUは、オーストラリアにおけるもっとも規模の大きい労働組合のひとつであり、接客、児童ケア、高齢者ケア、クリーニング、警備、ビル管理、医療、工場、救急医療、地域サービスの業務をおこなう労働者 13万人が加入している。LHMUについては、http://www.lhmu.org.au/を参照のこと。
180
Supra note 159 at 17-20.
181
2001年のLHMUアワードにおけるグレード1からグレード7の最低賃金基準は、週給で、$484.40, $501.10, $534.60, $544.50, $578.20, $638.80, $667.90,であり、時間給で、$12.75, $13.19, $13.78, $14.33, $15.22, $16.81, $17.58,となっている。
182
See, Appendix B11: Wage Provisions of the Australian Liquor, Hospitality and Miscellaneous Union Supported Employment (Business Enterprises) Award 2001, supra note 149 at 375-378.
183
Supra note 149 at 365-367.
184
オーストラリアの障害支援年金の障害者の判定に関しては、三木ひろみ「オーストラリアにおける Work Ability Tablesに基づく障害判定方法(試案)」日本障害者雇用促進協会障害者職業総合センター『諸外国における職業上の障害に関する情報』 http://www.nivr.jeed.or.jp/download/shiryou/shiryou20.pdf#search 29頁以下、を参照のこと。
185
オーストラリアの障害年金制度については、http://www.centrelink.gov.au/internet/internet.nsf/payments/disability_support.htmを参照のこと。
186
丸尾美奈子「オーストラリアの老齢年金制度について:資力調査と税制優遇で自律的な準備を促進」ニッセイ基礎研 REPORT, August 2009,17-18頁。
187
See, Centrelink, “Disability and Carer Payment Rates,”(2009) at 4 of 6.
188
「保護雇用」と「労働保護」という専門用語の区別を明瞭にするため、本節では「労働保護」を「労働者保護」と表記した。
189
正式名称:雇用・就業と職業における均等待遇のための一般枠組設定に関する指令 2000/78号(Council Directive 2000/78/EC of 27 November 2000 establishing a general framework for equal treatment in employment and occupation
190
正式名称: EC条約87,88条の適用上の共同市場に矛盾しない補助の一定範囲を示す2008年8月6日規則800号(Commission Regulation(EC) No800/2008 of 6 August 2008 declaring certain categories of aid compatible with the common market in application of Article 87 and 88 of the Treaty (通称、 GBER: General Block Exemption Regulation))
191
正式名称:請負・供給・サービス契約の調達手続きの調整に関する指令2004/18号((Directive 2004/18/EC of the European Parliament and of the Council of 31 March 2004 on the coordination of procedures for the award of public works contract, public supply contracts and public service contracts), 2004/17/EC・2004/18/EC指令の改正および防衛・安全分野の契約当局・事業所による請負・供給・サービス契約の手続の調整における指令2009/81号(Directive 2009/81/EC of the European Parliament and of the Council of 13 July 2009 on the coordination of procedures for the award of certain works contracts, supply contracts and service contracts by contracting authorities or entities in the fields of defence and security, and amending Directives 2004/17/EC and 2004/18/EC.
192
EASPAD、http://www.easpd.eu/等参照。EASPADは、(the European Association of Service Providers for Persons with Disabilities:欧州障害者へのサービス提供者協会)は、欧州34カ国における障害分野の8,000近い社会サービス提供者を代表するNGOである。EASPADの主な目的は、障害のある人および家族への効果的で質の高いサービス制度を通じて、障害のある人々の機会の均等を目指すことにある。保護雇用の定義等については他に、アーサー・オレイリー(松井亮輔、川島聡、工藤正、香山千加子、佐藤宏訳)「ディーセンと・ワークへの障害者の権利」国際労働事務局(ILO)2008(原語は、 The right to decent work of persons with disabilities、ILO 2007)p.54-60参照
193
保護雇用で就労する障害者数については、 EASPAD, ‘EASPAD Response to the Green Paper ‘Modernising labour law to meet the challenges of the 21st century’, p.5
194
2002年に実施された、The special ad hoc module of the EU Labour Force Survey (LFS) on people with disabilities and long tern health problemsの調査結果への言及等を参照。
195
正確には、6ヶ月以上長期に継続する健康問題または障害を有する、または有する見込みの者。
196
Applica & CESEP & Alphametrics, ‘Men and Women with Disabilities in the EU: Statistical Analysis of the LFS Ad Hoc Module and the EU-SILC’, Study financed by DG Employment, Social Affairs and Equal Opportunities (Contract no. VC/2005/0320-EUR266.745,65), April 2007
197
ANEDは、欧州委員会障害政策部に高度な支援や助言を提供するために、雇用と EUの社会連帯プログラム(PROGRESS 2007-2013)の基金を得て、欧州委員会によって 2008年に立ち上げられた。ANEDは、今後の障害行動計画(DAP)や、国連の障害者権利条約の実質的な施行への支援を中心に、その活動を行っている。
198
Report prepared for the Academic Network of European Disability experts by professor Bent Greve (University of Roskilde, Denmark), The labour market situation of disabled people in European countries and implementation of employment policies: a summary of evidence from country reports and research studies’, University of Leeds, April 2009.同報告書の対象国はルクセンブルグを除く加盟国およびノルウェーとアイスランドである。障害者の労働市場への統合に関わる研究と勧告、特に労働市場政策と成功事例に焦点をあてることを目的とし、統計的なデータ評価を行うものではない。
199
LFS(Labour Force Survey: 労働力調査 )は、2002年実施の、EUの障害者および長期的な健康上の問題を有する人に関わる調査である。EU-SILC調査(EU-Statistics on Incomes and Living Conditions:EU収入生活状況統計)は、EU初の収入と生活状況におけるEU統計である。2つの調査の対象国には若干の相違がある。LFSは、ラトビア、ポーランド、ブルガリアを除くすべてのEU加盟国および、EU非加盟国のノルウェーが調査対象国である。EU-SILC調査は、EU加盟13カ国が対象となっている(ドイツ、オランダ、英国を除くEU15カ国に、エストニアとEU非加盟国のノルウェーを加えた国々が調査対象国)。両調査は加えてサンプル数(LFSのサンプル対象はEU-SILCよりもかなり多い)、LSFが“制限”に関する質問事項(複数)は就労・雇用を対象とするのに対して、EU-SILCは一般的な活動における制限として質問を設定している点、調査対象国の所得と収入に関する質問の有無(EU-SILCは対象とし、 LFSでは多くの国が対象外)等でも相違がある。
200
Inclusion Europe: the European Association of Societies of Persons with Intellectual Disabilities and their Families,欧州の知的障害者とその家族による団体が集まる欧州レベルのNGO。‘Key demands from the perspective of persons with intellectual disability and their families’(発行年未記載)
201
アーサー・オレイリー、前掲書 p.57
202
Inclusion Europe, ‘Fighting for Our Rights! Using non-discrimination law to protect people with disabilities’, Council Directive 2000/78/EC, ‘Legal Interpretation Guidance Note’,(発効年未記載 ), p.2
203
正式名称:欧州構造基金規則1080/2006号および、欧州構造基金・社会基金・結束基金の一般規定を行う規則1083/2006号の施行規定を示す規則1828/2006号を改正する2009年9月1日規則846・2009号((Commission Regulation (EC) No 846/2009 of 1 September 2009 amending Regulation (EC) No 1828/2006 setting out rules for the implementation of Council Regulation (EC) No 1083/2006 laying down general provisions on the European Regional Development Fund, the European Social Fund and the Cohesion Fund and of Regulation (EC) No 1080/2006 of the European Parliament and of the Council on the European Regional Development Fund
204
of secondary legislation relevant to "disability", http://ec.europa.eu/social/main.jsp?catId=529&langId=en参照
205
Regulation(EC) No1107/2006 of the European Parliament and of the Council of 5 July 2006 concerning the rights of disabled persons and persons with reduced mobility when traveling by air
206
Commission of the European Communities, Proposal for a council Directive on implementing the principle ofequal treatment between persons irrespective of religion or belief, disability, age or sexual orientation, COM(2008) 426 final, July 2008
207
European Commission, Directorate-General for Employment, Social Affairs and Equal Opportunities Unit G.2, 'Beyond Formal Equality .Positive Action under Directives 2000/43/EC and 2000/78/EC, 2007等参照
208
雇用均等枠組指令については、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター「障害者雇用に関わる「合理的配慮」に関する研究 -EU諸国および米国の動向」調査研究報告書No.87 2008年3月、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター「EU諸国における障害者差別禁止法制の展開と障害者雇用施策の動向」 2007年3月、引馬知子「EU社会政策の多次元的な展開と均等待遇保障 -人の多様性を尊重し活かす社会の創造へ向けて」福田耕治編『EU・欧州統合研究―その現状と課題』成文堂2009年、引馬知子「EU均等法と障害のある人・家族・支援者の雇用 -英国コールマン事件を契機とする均等待遇保障の新展開」『労働法律旬報特集障害者の権利条約と障害者雇用』No.1696-2009.5.25旬報社の“EUの均等(差別禁止)法制と合理的配慮の一覧表”等参照
209
KMU Forschung Austria, Austrian Institute for SME Research, “Providing reasonable accommodation for persons with disabilities in the workplace in the EU .good practices and financing schemes .Contract VC/2.7/0315 Final Report”, Vienna, November 2008
210
Inclusion Europe, op.cit, p.3
211
EU(厳密にはEUのなかのEC)およびEU全加盟国は2008年7月までに、国連の障害者権利条約を署名済み。2009年10月現在、EU加盟27カ国のうち12カ国が批准した(選択議定書の署名は8カ国)。
212
European Commission, ‘Proposal for a COUNCIL DECISION concerning the conclusion, by the European Community, of the United Nations Convention on the Rights of Persons with Disabilities’, Brussels, 29.8.2008,COM(2008) 530 final
213
日本障害フォーラム(JDF)「みんなちがってみんな一緒! 障害者権利条約」日本リハビリテーション協会 2008年 p.37
214
Council of Europe:欧州評議会/欧州審議会(欧州会議とも呼ばれる)。1949年、欧州の経済・社会的進歩、欧州統合の促進を目的として設立。現在、欧州地域の47カ国が加盟し、その半数以上はEU加盟国でもある。
215
同議定書は、イギリスと・ポーランドが欧州司法裁判所によるEU基本憲章の適用を免れることを定める。
216
安江則子「EUリスボン条約における基本権の保護 -ECHRとの関係を中心に-」『立命館法学』2009年1号(323号)p.185-205、山本直「欧州人権条約へのEUの加入についてのノート -欧州憲法条約における展開-」『同志社大学ワールドワイドビジネスレヴュー』第10巻 2009年3月p.1-17、中西優美子「ECの欧州人権条約への加盟 Opinion 2/94[1996] ECR Ⅰ-1759.」、中村民雄・須網隆夫『 EU法基本判例集』日本評論社 2007参照。ちなみに、EU全加盟国が欧州人権条約に署名している。
217
渡辺豊「欧州人権裁判所による社会権の保障 -規範内容の拡大とその限界-」、『一橋法学』、7(2)p.447-487、2008年7月等参照
218
Official Journal of the European Communities, ‘Charter of Fundamental Rights of the European Union’(2000/C 364/01), 18.12.2000
219
企業(施設)特殊訓練および一般訓練の別が難しい、あるいは両者に分類できない場合は、企業(施設)特殊訓練に用いられる補助インテンシティの規定が有効となる。
220
Commission Regulation(EC) No2204/2002 of 12 December 2002 on the application of Articles 87 and 88 of the EU Treaty to State Aid for employment
221
註5参照
222
EDF(the European Disability Forum: 欧州障害フォーラム)は、障害のある人々や家族等により運営されるプラットフォーム(NGO)。障害のある人々の機会の均等や人権の促進、すべての障害団体の共通の関心事を擁護し、EU諸機関等に対して障害のある市民のために独立した、かつ確固たる声を表明することを目的とする。
223
EASPAD ‘STATE AID the New General Block Exemption Regulation Booklet’ (刊行年未記載)
224
同指令は、保護就業施設(sheltered workshops)や保護雇用プログラム(sheltered employment programmes)の定義を示していない。障害と保護就業施設・保護雇用プログラムの規定については、2004年同指令(第19条)のpublic contract award procedureの文言が、2009年改正指令(第14条)で、contract award proceduresに変更されたが、その他の文言には変更がなかった。
225
http://www.europa.eu.int/comm/internal_market/en/pubproc/general/01-1418.htm
226
The European Commission Discussion Paper, ‘Mainstreaming disability in the European EmploymentStrategy’, The European Day of People with Disabilities 2005, European Commission, ‘The employment situation of people with disabilities .a study prepared by EMI Business and Policy Research' 2001, Eurostat, 'Disability and social participation in Europe’, Population and social conditions, theme 3, 2001等参照
227
Report prepared for the Academic Network of European Disability experts by professor Bent Greve, op.cit.
228
European Council, ‘Lisbon European Council Presidency Conclusions’, 2000
229
European Council, ‘Brussels European Council Presidency Conclusions’, 2005
230
Council Resolution on promoting the employment and social integration of people with disabilities.
231
European Commission, ‘Situation of disabled people in the European Union: the European Action Plan2008-2009’, Brussels, 26.11.2007, COM(2007)738final
232
その後のポーランド大統領(10月10日)の同条約の批准書署名、チェコ大統領による署名(11月3日)を最後に全加盟国の批准手続きが終了した。
233
リスボン条約については、鷲江義勝 編著「リスボン条約による欧州統合の新展開EUの新基本条約」ミネルヴァ書房 2009等参照
234
EIRO(The European Industrial Relations Observatory), ‘Minimum wage in Europe’ 2005 07
235
EIRO, ‘Minimum wage for workers in sheltered workshop finally agreed’ 1999 01, ‘New law adopted on people with disabilities’ 2003 10
236
Unice/UEAPME, CEEP and ETUC, ‘Joint declaration on mid term review of Lisbon Strategy: Social Partners agree on the way forward’, 2005.3.22
237
アーサー・オレイリー、前掲書p.ⅴ-ⅶ7
238
ILO(1985),Basic Principles of Vocational Rehabilitation of the Disabled, p.36
239
本研究の一環として昨年 8月欧米の 14カ国を対象に実施した「保護雇用分野における労働法の適用に関するアンケート調査」への米国コーネル大学産業労働関係学部雇用・障害研究所長 Bruyene,S.からの回答。
240
この通達が出されるきっかけとなったのは、2007年4月神戸東労働基準監督署が、神戸育成会が経営する3か所の小規模作業所に立ち入り検査をした結果、その実態が「訓練」の範囲を超えた「労働」に当たり、労働法規を適用すべき状態にあると判断し、改善指導を行ったことである。これらの作業所では、16人の知的障害者が職員の指導や援助を受けながら、クリーニングと菓子の製造・販売を行っている。利用者一人当たりの平均工賃は、月額約2万円で、小規模作業所の全国平均工賃約7300円を大きく上回っている。こうした高い工賃を実現するため、タイムカードで出退勤を管理したり、作業員のやる気を促すため、生産性や作業能力に応じて工賃を支払う一方、指導員を安定的に雇用するため、作業収入の一部を指導員の賃金にあてていた。多くの授産施設等では同様な実態があることから、2007年5月17日付の通達は、「訓練計画」に基づき実施されるという条件で、そうした実態を追認したものといえる。しかし、この通達では、就労の場としての福祉的就労の課題解決にはつながらない。
241
第2回「労働・雇用分野における障害者権利条約の対応の在り方に関する研究会」に厚生労働省から提示された参考資料2「最低賃金の適用除外制度から減額措置制度への移行について」
242
就労継続支援A型やB型事業などに対する発注額を前年度より増額させた企業について、企業が有する固定資産(減価償却資産)を割り増しして償却することができる制度。それによりこれらの事業所等への仕事の発注や物品の購入を促進することを意図したもの。
243
現在の授産施設等における工賃をめぐる問題は、利用者の生産能力にくらべ、たとえ工賃が不当に低くても、それをチェックし、改善措置を求めることができないことである。しかも、国が就労継続支援B型事業に求める工賃の最低基準額は、月額3000円以上ときわめて低い。
244
フランスでは、保護雇用施設(適応企業や労働支援機関・サービス(ESAT))と請負供給契約または役務給付契約を締結する企業は、発注額に応じて雇用率(6%の法定雇用率の半分まで)としてカウントできることになっている(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構・障害者職業総合センター(2008・11)、「欧米諸国における障害者権利条約批准に向けた取り組み」、資料シリーズNo.42、98~99頁。
245
独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構・障害者職業総合センター(2007)、「EU諸国における障害者差別禁止法制の展開と障害者雇用施策の動向」、調査研究報告書 No.81、66~68頁。
246
ドイツの社会法典第9編「障害者のリハビリテーション及び参画」では、「この法律に規定する重度障害者とは、少なくとも50%以上の機能障害のある者をいう。」(第1条)と規定している。また、「障害の程度が30%以上50%以下で、その他の点で第1条の前提条件を満たす者は、その障害のため同等の扱いを受けなければ第7条第1項所定の適切な雇用につくことができず、または維持することができない場合には、職業安定所への申請に対する第 4条による認定に基づいて、重度障害者と同等の扱いを受けるもの」(第2条)とされる。
247
独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構・障害者職業総合センター(2008・ 3)、「障害者雇用にかかる「合理的配慮」に関する研究 -EU諸国及び米国の動向-」、調査研究報告書 No.87、135頁。
248
永野仁美(2008)、フランスの障害者雇用政策、季刊福祉労働121、現代書館、70~72頁。
249
1944年に制定された「障害者(雇用)法」に基づいて設置された、公営の全国的な保護雇用組織。
250
独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構・障害者職業総合センター(2007)、前掲書、108~109頁。レンプロイ公社は、かっては全国に配置された90か所以上のワークショップで1万人以上の障害者を保護雇用していたが、2008年現在では54か所のワークショップで約3500人の障害者を保護雇用する一方、インターワークとして一般企業で就労する約6500人の障害者を支援している。レンプロイで保護雇用されている障害者は、インターワークで企業に派遣されているものも含め、最低賃金以上の賃金を保障されている。レンプロイは、2010年度までにワークショップを45か所に削減する一方、2012年度までにインターワークで支援する障害者を2万人に増やすことを目標として掲げている。
251
厚生労働省によれば、2008年度解雇された障害者数は2774人で、前年度(1523人)とくらべ1000人以上増えている。解雇者数は2008年度上半期787人に対し、下半期1987人で、とくに秋以降の悪化が目立つ。
252
第1章第1節で述べたように、いわゆる福祉的就労のうち障害者継続支援A型事業及び旧制度の福祉工場は雇用関係の成立を前提としている。したがって、労働法の適用に関して「福祉的就労」という場合は、もっぱら、非雇用型の就労継続支援B型事業、就労移行支援事業、授産施設等の利用者を指している。
ただし、本稿では、広い意味で(雇用型福祉的就労を含めて)、単に福祉的就労といっている場合もあるが、いちいち注記していない。
253
例えば、全国福祉保育労働組合「日本の障害者政策に関するILO159号条約違反に関する国際労働機関規約24条に基づく申立書」(2007年8月15日提出)。これに対するILOの回答は、わが国の制度は「条約に違反している」と明言しているわけではないが、問題解決に向けて今後の検討が求められているといえよう(全国福祉保育労働組合「障害者の就労支援と国際基準」、2009)。
254
現行労働法においても年少者、妊産婦あるいは企業規模等対象によって各種の例外または特別規制がある。
255
社会福祉法は福祉サービスの受益者を「利用者」と位置づけ(同法第3条)、福祉サービスの提供者は、「利用者の意向を十分に尊重」しなければならない(同第4条)と定めている。これは、従来、「援護、育成又は更生」されるべき対象であった福祉サービスの受益者が、「自らの意志と選択により「自立」し ていく主体としてとらえられる」こととなった(社会福祉法令研究会(2001)「社会福祉法の解説」、中央法規、pp.109-110.)ことを意味する。ただし、利用者と事業者との対等性についてはとくに謳っていない。
256
障害者自立支援法では、指定福祉サービス事業者が「基準」に反し、「適正な運営をしていない」と認めるときは、都道府県知事に勧告・命令権がある(障害者自立支援法第49条)。また、社会福祉法では、利用者の保護規定として、福祉サービス事業者に、情報開示(社会福祉法第44条第4項)、情報提供(第75条第1項)、契約締結時の事前説明(第76条)、契約書面の交付(第77条)、適切な苦情処理(第82条)、苦情処理のための運営適正化委員会(第83条)などの規定をおいている。しかし、これらの規定は、利用者の消費者性の観点からの規定であって、労働者としての側面を考慮したものではない。
257
労働調査会出版局編(2009)「最低賃金法の詳解」、労働調査会、p.34.
258
(独)労働政策研究・研修機構(2008)「欧米諸国における最低賃金制度」(JILPT資料シリーズ No.50,)
259
中川論文(本報告書第2章第8節)による。
260
本研究委員会による各国の「保護雇用」分野における労働法適用に関するアンケート調査結果による(本報告書第2章第9節)。
261
地域別最低賃金は、「地域の生計費」を考慮に入れ(同法第9条1項)、健康で文化的な最低限度の生活を営めるよう(同3項)定めることとなっている。障害者に関して、この原則に満たない賃金支払いを認めることが許されるかという疑問がある。したがって、最低賃金の減額特例を認める場合には、何らかの形での所得保障が求められる。
262
障害者雇用企業の全部を一律に賃金補填対象とするのではなく、特に重度の障害者を雇用する企業など特定の事業に対して永続的な賃金補助を行うことは考えられる(例えば、イギリスのレンプロイ(第2章寺島論文)やフランスの適応企業・CDTD(第2章永野論文)では、最低賃金の適用を行った上で、これに要する公的資金の援助が行われている。ただし、わが国でこうした制度を導入するに当たってはいわゆる保護雇用制度の導入の可否を含めて制度のあり方を検討する必要があろう。)。
263
労働者の生産性が最低賃金水準に達していない場合に、その差額が公的資金から事業主に対し補填される場合には、事業主側に労働者の生産性向上を図ろうとのインセンティブが働かない等のモラルハザードが生じる可能性もある。
264
なお、事業主に対して賃金補填を行う場合は、事業主が法定最低賃金額を支払うことが前提となるので、減額特例制度は理論上不要となる。減額特例制度を活用するのであれば、本人への所得保障方式とならざるを得ない。
265
第1章の出縄、岩田論文等で示されている「対角線モデル」に即していえば、対角線の中間段階にあたる制度の具体化であるといえよう。
266
雇用関係と職業訓練生の両立例としては、試用期間中の者、認定職業訓練・実習併用職業訓練生(能開法)がある。福祉分野において賃金収入を得ながら受講している職業訓練について労働政策サイドからの支援があっても良い。
267
第1章の拙稿を参照。
268
多くのEU諸国には障害者を対象とした永続的ないし長期的な賃金補填制度がある。他方、アメリカ、オーストラリア等には障害者を対象とした最低賃金の減額特例制度がある。ドイツの「障害者作業所」就業者も労働法そのものは適用されないが、「労働者に類する法律関係」があるとされ、年金・疾病・介護・労災の各社会保険の加入が義務付けられ、その保険料は国等が負担している。このようにやり方は異なるが、多くの先進諸国では福祉的就労分野の多くの就業者が労働者ないし労働者に類する法律適用を享受している。
269
厚生労働省は雇用労働者を約 50万人と推計しているが、この50万人に対する労働法の適用状況も把握する必要があろう。
270
本節及び次節において、労働法の「ほぼ」全面適用としたのは、個別の法律の趣旨・目的に即して検討した結果適用除外することが適切な法領域が一部残る可能性があるからである。
271
「労働能力に基づく差異」については、「合理的配慮」が提供された上で、労働能力が適切に評価されたものであるならば、結果として賃金等の処遇に差が生じても差別には該当しないと考える。厚生労働省「労働・雇用分野における障害者権利条約の対応の在り方に関する研究会」でも、東俊裕委員等から、「合理的配慮を提供した上で、労働能力と賃金や勤務形態(嘱託での採用等)の評価が真に釣り合うならば、格差があっても仕方がないが、問題は労働能力をどう評価するかということではないか。」(第2回)等の意見が出ており、特に反対はなかったようである。
272
EU規則においても、2002年12月採択の「国の雇用補助金へのEU条約適用規則」及び、2008年7月採択のその改定規則「EU共同市場と両立する各国雇用補助金一括適用免除規則」により、障害者に対する永続的な賃金補填が認められている(新規則第41条)。詳しくは第2章引馬論文参照
273
「労働・社会保障政策の総合的展開をめざして」、『季刊年金と雇用』第17巻第2号(樋口美雄、宇野裕両氏との共著。障害者関係は主として筆者執筆。)(1998.9)
274
8割までとする根拠は、以下の通りである。本論文当時は除外認定と称し、精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者について使用者が都道府県労働局長の許可を受けた場合、最低賃金の適用が除外されていた。現在では、「減額特例」に見直されているが、当該事業場の同一又は類似の職種で就業し、最低賃金以上の給与を支給されている労働者のうち最も低い賃金を受けている者と比較して、「労働能力」が80%程度にも達しないと判断される場合に適用、という基準は踏襲されている。なお、下限は5割程度であろうか。
275
現在、日本での最長助成期間は、特定求職者雇用開発助成金として、中小企業事業主が重度障害者や45歳以上の障害者をハローワーク等を通して雇い入れた場合の2年間である。スウェーデンでは、永続的な賃金補填が行われる公共部門や国家所有企業サムハルでの保護雇用の他に、最長 4年(延長可能性あり)の民間企業に支給される雇用助成金がある。なお、フランス、オランダ、デンマーク、アイルランド等では、永続的な賃金補填制度が一般民間企業にも適用される。
276
“Definition of Disability in Europe . A Comparative Analysis”(Employment & Social affairs, European Commmission、2002.9)Appendix1( The assessment of incapacity of or inability to work.))
277
各国の制度は、本報告書各論文及び障害者職業総合センター『欧米諸国における障害認定制度』(2009)と注8資料から。
278
介護保険法では、要介護認定申請を受けた市町村が、被保険者宅(あるいは、入院・入所先)に調査員を派遣し、その調査結果と医師意見書の内容をコンピュータに入力し、全国一律の基準により介護にかかる時間(要介護認定等基準時間)を一次判定結果として算出する。その後、市町村に置かれた専門家からなる介護認定審査会が医師意見書や特記事項も踏まえて二次判定を行う。 障害者自立支援法の障害程度区分認定においても同様の手続きを取っている。障害者の就業能力評価においても、コンピュータによる簡略な一次判定と医療専門家、地域障害者職業センターの職業カウンセラー、各施設のジョブコーチ等の評価を組み合わせた仕組みを検討する必要があろう。実際、オランダでは、こうした方式を取っている。
279
英国、スウェーデン等では、「保護雇用」(sheltered employment)内では永続的な賃金補填(英国はレンプロイ公社での保護雇用下にありながら一般企業で就労する「インターワーク」を含む)、民間企業への雇用助成は期間限定となっている。他方、フランス、オランダ、デンマーク(Flex-job)、アイルランド(Employment Support Scheme)等には、保護雇用制度とは別途、最低賃金を保障し一般労働市場での雇用を促進するような永続的賃金補填制度がある。筆者は、日本においても一般労働市場での雇用を促進するメカニズムを含む賃金補填制度が望ましいのではないかと考えているが、今後詰めた検討をしたい。なお、”sheltered employment”は、国によっては労働者保護法制で保護されない就業形態が含まれるので、「保護雇用・就業」と訳した方がいい場合がある。
280
障害者一人当たり一定額の補助金を支給(英国のレンプロイ公社)、産業別労働協約で設定された最低賃金の半分か3分の2の二区分だけの補助を行う(デンマークのフレックスジョブ)等の方法を取っている国もある。なお、日本の「特定求職者雇用開発助成金」(最長2年)も、2009年2月から支払賃金の一定割合から半年ごとに賃金額には係らず一定額を支給する方式に変わった。
281
日本の高齢化は急速に進み、今や高齢化率(65歳以上人口/総人口)は世界一の水準となった(2006年で20.8%)。また、2008年度末時点での国及び地方の長期債務残高は780兆円に達している。わが国も否応なく高福祉高負担国にならざるをえないと筆者は考えている。但し、障害者の就業増(人×時間)による生産・消費の増加や税・社会保険料のアップもあり、制度設計を丁寧にすれば、長期的な賃金補填制度の新設による財政負担の増加は大きくならないのではないかと考えている。
282
最低賃金実施国で、障害者を対象とした減額特例がある国はアメリカ、オーストラリア(産業別労使協定)、ニュージーランド、ポルトガル、ルクセンブルグ等、特例措置を取っていない国はイギリス、フランス、スウェーデン(産業別労使協定)等であるが、イギリス、フランス、オランダ、スウェーデン等多くのEU諸国には保護雇用の障害者に対する永続的賃金補填制度(最低賃金を保障)がある。なお、ニュージーランドでは、2007年に障害者雇用促進法が廃止され、ワークショップでの就労に対する最低賃金の適用除外が一律適用から個別認定になった、すなわち、労働検査官が「当該障害者の障害が本当に最低賃金を稼ぎ出すことができないものなのかどうか”the employee's disability really stops them from earning the minimum wage”」を確認する手続きを取るようになったという(http://www.ers.dol.govt.nz/pay/disabilities.html)。日本においても参考にすべき事例であろう。
283
なお、佐藤氏が本報告書の別論文で言うよう、最低賃金制度は、「労働者の生産性の如何を問わず、事業主に対し、最低賃金以下で雇用することを禁ずるものである」。確かにそうであるが、あくまで、「雇用している」間だけの賃金を規制するものである。事業主に対する労働生産性が最低賃金以下の労働者を「雇い入れる」義務、労働生産性が最低賃金以下の労働者を「雇用し続ける」義務は、最低賃金法から直接には生じない。従って、(賃金補填措置の導入なしに)最低賃金の減額特例措置を撤廃すると、これまで最低賃金の減額特例措置が適用され、かつ実際にも労働生産性が最低賃金水準より低い水準で留まっている労働者は多くの場合職を失うことになろう。また、新規雇用も抑制され、現在保護的就業にある者への労働法適用の拡大も困難となろう。
284
例えば、アメリカの状況を報告する第2章の長谷川論文。
285
連合「雇用における障害差別禁止法(仮称)制定について」(第20回中央執行委員会確認、2009.5.21)には、「現行の減額特例については、使用者が許可を申請するにあたって労働者代表委員会等からの意見聴取および意見添付を義務付けることも検討すべきである」とある。こうした方策の併用が必要であろう。
286
報奨金の充当は強制ではなく、賃金原資+年金額で確保すべき金額の目安として報奨金額を出したものである。なお、 301人以上企業の調整金(障害者雇用率を超過した1人当たり月額2.7万円)は報奨金よりやや高いのでその分支給賃金額を引上げるべきであろう。
287
1級は重い障害のある者に対する生活経費を加算しているので、基礎的生活経費だけを勘案している2級に対する額でみるのが適切であろう。
288
本節の記述に当たり、出縄氏(第1章第2節)の問題指摘から大いに刺激を受けた。
289
現在は、就労継続支援A型事業所における雇用による利用定員の半数未満かつ10人以内であれば、雇用によらない者のA型事業所の利用が認められている。
290
ドイツの「障害者作業所」就業者には労働法が適用されないが、「労働者に類する法律関係」があるとされ、年金・疾病・介護・労災の各社会保険の加入が義務付けられ、その保険料は国等が負担する。また、作業所経営者と処遇等を交渉する「重度障害者代表制度」がある。フランスのESAT(労働支援機関・サービス。稼得能力の喪失が3分の2以上だがESATでの就労可能な者が対象。)も労働法典ではなく社会福祉・家族法典が適用されるが、保障報酬制度(最低賃金の55%から110%が保障される)、休暇への権利、職業訓練へのアクセス権等が保障される。
291
但し、賃金、解雇、定年など、雇用労働者ないし雇用的自営に限定すべき事項もある。
292
岩田(2004)参照。