多機能型指定障害福祉サービス事業所まんさく園
障害者支援施設名称:多機能型指定障害福祉サービス事業所まんさく園
キャッチフレーズ:移行を機に就労メニューを充実
施設概要
所在地:熊本県八代市永碇町961-1
運営法人の名称:社会福祉法人麦の会
運営法人の種別:社会福祉法人
運営法人の他事業運営状況:当該事業所以外にも障害者福祉事業を運営
施設連絡先(TEL):0965-31-7440
施設連絡先(FAX):0965-32-1400
施設連絡先(Eメール):mansaku @ tuba.ocn.ne.jp
施設及び運営法人HPのURL:http://blog.livedoor.jp/mansaku1/
事業を開始した時期(旧体系下):平成15年10月
旧体系での施設種別:知的障害者小規模通所授産施設
新体系へ移行した時期:平成19年4月
新体系での実施事業:自立訓練(生活訓練),就労移行支援,共同生活援助(グル-プホ-ム)
キーワード:自立に向けた訓練の充実に取り組む(訓練重視),個々に応じたきめ細かいサービスを提供(個別支援重視),一般企業等への就労をサポート(就労移行重視),商品開発や工賃アップで働きがいを向上(工賃・商品開発重視)
施設の事業圏域
サービス提供範囲:八代市、宇城市、氷川町
利用者の通所範囲:八代市、宇城市、氷川町
新体系事業の定員・利用者数
事業名 | 定員 (20年4月) |
新体系移行直後の利用者数 (19年4月) |
現在の利用者数 (20年4月) |
---|---|---|---|
自立訓練(生活訓練) | 6名 | 4名 | 6名 |
就労移行支援 | 15名 | 12名 | 14名 |
共同生活援助(グル-プホ-ム) | 4名 | 4名 | 4名 |
職員数
常勤職員数:9名(20年4月)
非常勤職員数:5名(20年4月)
ギャラリー&カフェ「クミン」
カフェの清掃
手織り作業
新体系事業
新事業として実施する際に留意したこと:
地域の中で障害者が当たり前に暮らすこと、個性を活かした自立を目指すことを理念としている。新事業体への移行を機に、従来の活動主体であった「手織り」を行う多目的な作業所とギャラリー&カフェを併設した施設に新築した。スタッフを増員することで、「手織り」活動を核としながら、新しい事業(ギャラリー&カフェの運営など)に取り組めるようになり、作業種目が増え、さまざまな利用者の個性に応じた活動ができるようになった。利用者が地域で暮らし続けることができる、将来に夢の持てる施設づくりを目指した。
サービスで力を入れていること:
活動の柱の一つは従来から活動主体であった「手織り」である。もともと施設長が障害者でも容易に取り組める「さをり織り」と出会い、余暇活動に取り入れたのが始まり。「手織り」は、利用者が好きな色糸で自由に柄を作って織っていくので、楽しんで作業ができる。また、その日の作業分が直に目に見える成果となるので、達成感や充実感に結びつく。さらにそれを販売することで、工賃がアップし、利用者が働くこと・給料を得る喜びを自覚することができる。 もうひとつの活動主体は、新事業体移行に伴い昨年から始めたギャラリー&カフェ「クミン」での厨房や接客活動である。ギャラリーでは、利用者の「手織り」の展示・販売だけでなく、地域の人のさまざまな創作の展示も行っている。ギャラリーの展示を見ながらカフェ利用をしてもらえる。このようにギャラリー&カフェを併設したことによって、より地域との交流が密接になった。
取り組みの工夫:
就労の基本を身につけるために、タイムカードを導入し、遅刻をしないこと、休む時は連絡することを訓練している。実習に出られそうな利用者の場合は、休む時には自分で電話をかけるようにするなど実際の職場と同じような体験をさせて、覚えてもらう。 ギャラリー&カフェ「クミン」は地域の一般の人が利用するため、訓練の場というより実地の職場と位置づけている。 個々の利用者について職員が気づいたことを、毎日些細な事でも記録する個別支援票を作り、それを3ヶ月毎に並べて見直す。そうすることで、1人1人の変化が目に見えて把握でき、以後の適切なサービスの提供につなげられる。また利用者の成長が見えることで、支援する職員の励みにもなる。
日中サービス、居住サービスについてのスタンス・考え方:
日中サービス事業では、重度の利用者もおり、薬の管理・服薬支援など健康管理に配慮を行っている。
就労移行支援、就労継続支援についてのスタンス・考え方:
障害者団体の域内で固まるのでなく、サービス管理責任者が「異業種交流女性の会」や「青年会議所」などに入り、そこでの人脈が就労支援事業につながっている。「青年会議所」での人脈を通して実習の受け入れ先を確保できた。また、「異業種交流女性の会」の支援で、各界で活躍しているプロのデザイナーなどが、手織り布のデザインをしてくれ、昨年秋にファッションショー&トークライブのイベントを開催し、一般の人に当施設とその活動を知ってもらうことが出来た。 新事業体になって2年、就職に結びつけそうな利用者は現在3名程度候補がある。就労に結びつかない利用者については、利用期限である2年後の行き先として、新事業移行当初から県・市に申請していた就労継続支援B型を、来年4月から始める予定。 日々の生活そのものを就労訓練と位置づけており、どの職場でも必要な清掃に注力するほか、タイムカードの導入・休む時の電話連絡など、就労の基本も訓練している。バスなど公共の交通機関を利用して自分で通うのも就労訓練になるため、施設では送迎バスは用意していない。
投資内容と成果
投資の具体的内容:
移行を機に国庫補助金を受けて施設を新築整備した。
おおまかな投資額:
施設建設費2051万円 (福祉医療機構より借入1510万円、自己負担金541万円)
利用者の変化:
新制度移行に伴い、利用者・利用希望者が増えた。その理由として、新施設になり外観・設備がきれいになったことが大きい。利用者だけでなく親も、きれいな所で働かせたいという思いが強い。また、併設のカフェで接客業ができるのも魅力とされている。
サービスの質の向上におけるポイント:
ギャラリー&カフェといった新しい事業を組み込み、作業種目の幅が広がり、利用者のニーズにマッチした事業展開ができた。
運営面の状況、運営の安定におけるポイント:
新制度移行に伴い、施設を建て替えたことで、活動主体である「手織り」活動の充実、新しい事業(カフェ)展開が出来た。施設外観・設備内容も良くなり活動環境も良くなった。その結果、利用者も増え、経営はかなり安定した。以前と比べ収入が増え、職員を増強できた。
関係機関や地域等との連携
行政、医療機関など専門機関との連携状況:
市とは常に密に連携して良い関係が持てている。 近隣の精神・内科医院と連携し、救急時の受け入れ、休日・夜間対応をしてもらっている。歯科から週1回口腔ケアに来てもらっている。また治療の時は送迎してくれるので助かる。
企業や学校等との連携の状況:
新しいパンフレット等を作成し、サービス管理責任者が各学校を訪問して、当施設の特徴を説明し、利用者確保に努力している。 サービス管理責任者が「異業種交流女性の会」や「青年会議所」などに参画し、地域の企業経営者と知り合い、実習受け入れ先企業を開拓したり、プロの支援による織りのファッションショーの開催などにつなげている。
地域の交流・連携の状況:
もともと地域の親の会からのスタートで、近隣とは自然な形での交流がある。例えば家で作ったおやつを持ってきてくれ、一緒にお茶するというような家族的な付き合いがあり、地域に根ざしている。 ギャラリー&カフェ「クミン」は、地域の人の交流スペースになっている。ギャラリー部分は地域の人に無料で貸し出しており、公民館の手芸教室の展示などをしている。その他、開設当初より町内会1300戸分の広報仕分け作業を引き受けて喜ばれている。 当事業所の評議委員として地域の公民館長、地域福祉推進協議会会長、民協の会長、婦人会会長に入ってもらっており、施設長も民生委員だったこともあり、地域との関係は非常に密接である。特に、評議委員に公民館長が入っているので、公民館まつりに招待されたり、公民館の手芸などの展示を当ギャラリーで行うなど、良い関係が出来ていてやりやすい。 施設と活動内容を紹介する通信紙「まんさく通信」を年4回発行し、地域に配布している。ブログ「まんさく日記」を立ち上げて利用者の活動を詳解するなど情報発信を行っている。
課題等
移行にあたっての申請書類づくりには苦労した。現在も訓練等給付金の日額計算など、事務・経理が煩雑である。 日額計算のため、月によって収入にバラつきが大きく、また給付月が申請から2か月遅れになるのも、経営的には不安定で長期展望が立てられない。月額計算にしてほしい。 まだ移行していない小規模施設の場合は、運営費アップで職員や施設の充実が図れるので、利用者のことを考えると、早く移行する方が良いと思う。