埼玉県行田市では、平成17 年に高齢者、児童及び障害者の虐待を防止する条例を全国に先駆けて施行し、包括的な虐待防止活動を展開してきた。条例施行から2 年が経過した平成19 年、それまでの事業を評価し、いくつかの改善すべき課題を見出した。課題を解決するために仮説を設定し、その仮説をもとに「トータルサポート推進事業」の実施計画案を作成した。2 ヶ月のプロジェクトチームでの検討を経て平成20 年4 月、障害者、高齢者、児童福祉の総合的な推進のための包括的連携体制構築事業(トータルサポート推進事業)がスタートした。
本研究では、まず行田市で平成11 年に始まった介護保険準備担当の活動が高齢者虐待防止に向けての取り組みにつながり、その後の虐待防止条例の施行、条例に基づく事業の実施に至るまでのプロセスを詳述し分析する。
次に、トータルサポート推進事業の準備活動について延べる。事業評価から課題を発見し、課題解決のための仮説を設定し、仮説をもとにトータルサポート推進事業計画を立案したのでこのプロセスを述べる。
そしてトータルサポート推進事業の成果について報告する。
最後に仮説を検証し、今後の課題を述べる。
これらの結果から、障害者等の権利擁護と虐待防止にも対応し、市民の参画を得た地域ぐるみの総合的な相談支援体制の構築について、実践の指針となる実務的提言を行う。