身体障害では年代が高くなるほど、平均退所者が多くなるが、若年層の平均退所者は少ない。一方で知的障害は年代が若いほど、平均退所者数が多かった。入所期間より、むしろ年齢に応じて平均退所者数が変化した。身体障害と知的障害の間では、地域生活支援の対象者の年齢が異なることが示唆された。
知的障害では55%が地域生活移行に積極的であるが、身体障害では約5 割が「どちらともいえない」であった。訪問サービスを実施している施設の場合は、約63%が積極的に取り組んでいた。身体障害が知的障害に比べて地域生活移行において積極的でないことが示唆された。
移行先の施設として最も多いのは他の社会福祉法人、次に医療機関等と死亡であった。また、地域生活を支える関係機関と施設の関係を課題としている施設が74.1%を占めた。これらのことから、退所者の多くは地域に戻るよりむしろ他の社会福祉施設に入所するか、医療機関等に入院する、または死亡が主であることが示唆された。
移行後の生活においては、「健康管理・医療・服薬等」、「身の回り・日常生活全般」、及び「就労の場の保証」が課題とされていた。
これらのことから、地域における医療機関等の存在や、就労の場、身の回り・日常生活に関する福祉サービスの供給が重要な課題であることが示唆された。
施設の平均年齢は50 から54 歳が最も多い。また、平均入所期間は全体の約半数が10 年以上、20 年未満であった。身体障害に比べて知的障害は入所期間が長かった。また、施設入所者のうち25.7%の入所者が、平均障害程度区分5.5 以上であった。これらのことから、施設における入居者の多くは比較的高齢であり、障害程度区分も高いことが示唆された。
また、身体障害の場合は一人部屋が占める割合が19.0%であった。一方で一人部屋なしは37.9%であり、知的障害に比べて一人部屋なしの割合が大きかった。一人部屋の存在で見た場合、知的障害に比べて身体障害の場合は一人部屋の占める割合が大きいが、一人部屋無しの割合も大きく、施設によって一人部屋設置形態が大きく異なることが示唆された。
身体障害者が地域で生活を送るにあたり、身体障害者施設の一人部屋設置状況等から、さらに詳しい 身体障害の内容(視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、内部障害等)に応じた地域支援のあり方をみる必 要がある。
また、今回の分析では明らかにできていない、「施設における短期入所、グループホーム・ケアホー ム、福祉ホームと地域生活移行の関連性」、「施設における職員数等と地域生活移行の関連性」を調べ、 より精緻に地域生活移行を実現するための要因を分析する必要がある。
さらに、地域における福祉事務所、民生委員、や社会福祉協議会等の関わり方についても移行後を踏まえたあり方を検討する必要がある。