はじめに

退院促進支援事業の背景・課題

 1950年代に全国で乱立した日本の精神科病院は、精神衛生法の時代及び精神保健福祉法に法が変化した後も、根強く日本の精神科医療を支えて来た。結果として、国際的にも先進国と云われる中では、飛び抜けて大きい入院ベッド数・平均在院日数を生み出している。
 このことは、結果として、精神科病院という密室に拘束されている心の病を持つ人たちへの人権侵害を引き起こしてきた。
 1997年、病院を廃院にいたらせた大和川病院事件は、長い年月の中で起こった精神科病院における出来事のひとつではあるが、1988年に精神保健福祉法への改正による様々な変化もあり、2000年(平成12年)大阪府精神保健福祉審議会では、この出来事を心の病を持つ人への人権侵害と位置付け、今後同様のことが引き起こされない為の具体的な取り組みとして大阪府退院促進支援事業を開始し、2003年(平成15年)には精神医療オブズマン制度をスタートさせた。
 府の退院促進支援事業は(財)精神障害者社会復帰促進協議会(復帰協)に事業委託を行い、圏域の保健所に医療機関・地域の資源との調整を役割として課し、自立支援促進会議を設置した。対象として医療スタッフからあげられてきた方々に対し、ほとんど地域から医療機関に入り込むことのなかった様々な目が入り込み、医療にとっても受け入れる地域の資源にとっても、新鮮で刺激的であった。
 独自に府が取り組み始めてから、国事業として全国でも試行的に実施され、自立支援法成立後は、市町村の障害福祉計画の中に地域移行への数値目標が取り入れられることとなった。

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