第6章 計画書活用に関する現状と課題

 今回、県における障害者の地域移行の推進に資することを目的に、計画書の活用に際し、その効果測定及び妥当性について、①推進員を対象としたフォーカスグループインタビュー、②利用者を対象としたアンケート調査、③障害者自立支援法に基づく研修の見直し、④県民への啓発普及を行い、計画書の活用に関する課題等について調査及び分析を行った。
 今後の計画書活用に際しての現状と課題は以下のとおりである。

(1) 利用者主体の支援
 障害者自立支援法第1 条は「障害者及び障害児がその有する能力及び適正に応じ、自立した日常生活又は社会生活が営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことができる地域社会の実現に寄与することを目的とする」としている。
 計画書の理念は、同法同条に基づき「利用者の願いや希望」を実現するために「利用者主体の支援」の理念が貫かれていることである。
 今回、「ケアマネジメントのサイクルに基づいた計画書を作成し支援すること」により、利用者目標達成度や支援満足度も支援前に比較して上昇している。また、当事者及学生へのインタビューにおいては、「障害をマイナスイメージで捉えず、正しく理解し、個性として尊重すべき」という意見が出されている。
 以上のことからも、支援者は「利用者の願いに寄り添った支援」を行い、その支援のツールとして「計画書」を活用することが効果的な支援につながると考えられる。

(2) 支援者の資質の向上
 「推進員を対象としたフォーカスグループインタビュー」においては、作成に係る支援者の「スキル不足」「自信の無さ」が指摘されている。
 「障害者自立支援法に基づく研修の見直し」においては、研修内容や演習手法の見直しを行ったところ、受講者の研修満足度及びケアマネジメントに関する理解度が上昇した。
 また、フォーカスグループインタビューにおいては、地域自立支援協議会単位及び事業所に出向いての研修開催の必要性や圏域単位での指導者の育成も指摘されている。県では、圏域別研修及び事業者を対象とした「個別支援計画等作成・ケアマネジメント技量向上のための実地研修会」等についても、相談支援従事者初任者研修会のプログラムや演習手法を基礎とした研修を実施した。
 一過的な研修受講ではなく、研修終了後も、地域や施設等で研修受講や圏域単位のアドバイザー配置等による体制づくりが求められる。
 本年度、図のとおり、各地域自立支援協議会から推薦されたWGメンバーが、特別アドバイザーからの助言指導を受けながら、研修講師等の役割を担ってきた。次年度以降についても、県としてより一層、支援者の資質の向上に取り組む必要がある。

(3) 関係機関との連携
 フォーカスグループインタビューにおいては、障害保健福祉分野以外の医療、介護の関係者にも計画書の周知について指摘されている。今後の対策としては、計画書を「地域自立支援協議会のケア会議で活用する」、本庁からの「計画書の改訂版」の送付等により周知を図る必要性がある。
 また、各圏域研修等の対象者として、医療、介護の関係者にも拡大し、活用方法等について周知する必要もあろう。

 今回の調査では、(1)利用者主体の支援、(2)支援者の資質の向上、(3)関係機関との連携の3 点の課題が明らかになった。
 県として、以上の課題を踏まえながら、今後も、障害者の地域生活における支援についてより一層推進する必要がある。

 おわりに、今回の調査研究に際し、東北福祉大学 西尾雅明教授、安保寛明講師、日本福祉大学大学院 上原久氏の御指導、御協力に感謝いたします。

 

(研究委員)

1 検討委員

(◎印 委員長、○印 副委員長)

所 属 職 名 氏 名
のびやか丸 相談支援専門員 高橋 美香子
指定障害者相談支援事業所あけぼの 相談支援専門員 高橋 真紀子
ワークステーション湯田・沢内 主任 高橋 哲也
愛護会障害者相談支援センター 相談支援専門員 佐々木 利昌
黄金荘 ○課長 小笠原 隆
地域活動支援センター星雲 相談支援専門員 吉田 展泰
大松学園 相談支援専門員 藤原 伸哉
ウィリー サービス管理責任者 沢田 勝
ひばり障害者支援センター ◎相談支援専門員 村田 幸雄
地域生活支援センター久慈 相談支援専門員 元木澤 英典
地域生活支援センターカシオペア 所長 佐藤 慶之
岩手県保健福祉部障がい保健福祉課(事務局) 主任 工藤 一恵

 

2 研究協力者

所属 氏名
東北福祉大学総合福祉学部 教授 西尾 雅明
東北福祉大学健康科学部 講師 安保 寛明
日本福祉大学大学院博士課程 上原 久
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