「私の希望するくらし」は、具体的にどのように記載され、支援計画が進んでいくのでしょうか?2つの例を紹介します。
記載例 ①
事例提供者 高橋 美香子
《概要》
先天性の聴覚障害をもち、20代後半に統合失調症を発症した40代女性の事例です。
発症以前は、聴覚障害をもちながらも、一般企業に10年間勤めた経験を持ちます。発症後、激しい不安・緊張・興奮状態の再発を繰り返してきました。数年前から陽性症状は安定し、通所授産施設とグループホームを利用していました。利用当初から、一人暮らしへの移行を目標としていましたが、実現せず数年が経過していました。そのような折、就労移行支援事業の利用をきっかけに、「私の希望するくらし」を用いて、支援チーム体制を整えることになりました。
《 支援の経過》
平成20年 | 5月×日 | 相談。 |
5月×日 | 面談。B シートを記入。 | |
5月×日 | 面談。記入したB シートを確認しながらC シートを作成。 | |
6月×日 | 話し合い(D シート)にてE シートを作成。次の話し合い日時を決める。 | |
6月×日 | 万国市相談支援事業所の相談支援専門員より、不動産情報と万国市の資源マップのFAXを受け取る。 | |
6月×日 | 受診。サービス管理責任者同行にて主治医に相談。 ハローワーク検索機にて、求職情報検索。 |
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6月×日 | 不動産屋同行。物件情報収集。 | |
6月×日 | ホームセンターで、家電製品の値段を調べる。 | |
7月×日 | ハローワーク検索機にて、求人情報検索。 | |
7月×日 | 平和地区合同面接会に参加。 | |
8月×日 | 面談。合同面接会の感想を確認。 ホームセンターで、家電製品の値段を調べる。 |
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8月×日 | 面談。生活支援員と1ヶ月分の生活費の計算。 | |
8月×日 | 就労支援員と「事業所ゆめ」見学。 | |
9月×日 | 振り返りのための話し合い。とりくみの様子を確認しながらE シートに記入し、次の「私のくらし応援プラン」を作成する。 | |
※ 本人とは筆談の面談を行いました。記載要領を一緒に読み、出来るだけ本人に記入してもらうよう心がけました。 |
《 利用者の声》
わかりやすくてよいと思います。
自分だけで考えるのではなくて、お話を一緒にしてみて助けになりました。
不動産、職安に支援員さんと一緒に行って考えてみて勉強になりました。
会議に参加したのは初めてですが、皆さんが1人1人質問してくれてうれしかったです。
消極的にではなく、積極的になってみて実行してみて良かったと思っております。
顔のマークについて、自分の気持ちがどんなだったか、わかりやすくて良いと思います。
明るくなった。
※利用者本人が、筆談にて記入した言葉です。
記載例 ②
事例提供者 小笠原 隆
《事例の概要》
興味の偏りが「こだわり」になる知的障がいの30代男性です。将来はケアホームに住み、好きな仕事をして暮らしたいという希望を持っています。利用者さんの一番の興味は、車がバックするときのアナウンスを録音し、別のカセットテープにダビングすることです。
《支援の経過》
平成21 年 | 7月下旬~8月中旬 | 相談(支援者が、それとなく生活の合間を見ながら利用者さんの最近の様子を聞く。) | |
9月×日 | 面談 A・B シートの作成 | ||
9月×日~×日 | 面談 C シートの作成。サイン確認。 | ||
10 月×日 | ケア会議(利用者さん、家族さんも参加) | ||
10 月×日 | 面談 D シートサイン確認。E シート作成。 | ||
10 月×日 | 面談 E シートの説明。 | ||
11 月×日 | 時計の学習材料を作る。 | ||
11 月×日 | 白ねこあくとに協力をお願いする。 | ||
11 月×日 | 図書館へ行く。 | ||
11 月×日 | ケアホームについてパンフレットや地図から説明。 | ||
12 月×日~1月×日 | 出発時間の支援を生活・作業支援員が連携して行う | ||
12 月×日 | 白ねこあくとについて調べる | ||
12 月×日 | ケアホームと連絡調整 | ||
12 月×日~×日 | 挨拶の練習をする | ||
12 月×日 | ドライバーにお願いする | ||
平成21 年 | 1月×日 | 白ねこあくとの見学 | |
1月×日 | 白ねこあくとで録音 | ||
1月×日 | 振り返りの話し合い。取り組みの様子を確認しながらE シートに支援者が記入。次の「私のくらし応援プラン」についての話し合いも行う。 |
* 利用者さんの思いを丁寧に受け止めていく面談をしました。取り組みは、計画書を確認し合いながらすすめていきました。
《利用者の声》
支援の中で次のような話しを聞けました。「バックしますが止められるのかと思ったが、安心してやれるようになった。」「『白ねこあくと』で働きたいことを話せて満足だ」「職員がいろんなことを聞いてくれるようになって、しゃべりやすくなった。」振り返りでは、「自分のいいところを教えてもらえ、少し自信がついた。」というようなことを話してくれました。