今回大牟田市内における障害児の登下校見守り等調査研究事業として、地域社会でボランティアの募集及び育成、インフォーマルサービスの開拓を図るものとして平成20年度実施した。
移動支援ボランティア10名(実質的活動人数)と支援利用対象児6名に、事前の個別アセスメントで利用ニーズや双方の不安などコーディネーターが聴き取りをし、研究調査事業を実施した。インフォーマルサービスとして地域密着の移動支援を目的としたが、対象児の校区内でボランティアが少なく校区外からの支援活動となった。
支援開始ではボランティアと利用対象児及び保護者との関係性を主に重要な課題とし、コーディネーターは常に状況を把握しながらサポートに入った。支援実施中にはボランティアと保護者から支援方法の改善や実施中の不安などヒアリングを行い、状況に応じて対応ができるように連絡を取りながら支援を進めた。また、支援が経過する中で双方に良好な関係が築かれ、支援に対しても不安や戸惑いも見られなくなった。その中、支援内容が援助的な見守りから自立登下校を目指す訓練的な支援へと変化した。このことからニーズ調査と利用ニーズで要望があった自立を促進する支援が、インフォーマルサービスの移動支援で可能という結果が得られた。
年々少子高齢化が進み、本市は高齢化率が全国的に高く核家族化も伴い、人とのつながりが希薄化している中で、障害児及び保護者が孤立してしまう現状にある。しかし、少子高齢化を逆の視野から考えると、子どもを多くの大人が取り巻く地域環境であり、一人ひとりを見守ることができる。そのためボランティアを募集・育成し活動を広げることで、障害児や保護者が多く地域社会に参加できると思われる。実際に事業に参加した対象児が今まで他者と一緒に下校することができなかったのが、支援に参加しボランティアと一緒に保護者同行なしで自宅まで話をしながら下校できるようになった。このことから少しずつ子どもの可能性や環境の広がりが見られたと思われる。
今回の調査研究事業では、対象となった障害児が第三者と関わることで、子どものコミュニケーション能力や自立心の成長を促し、また、学校内の他の児童・生徒においてもボランティアやコーディネーターが支援する姿を見ることで、「自分たちも支援しなければ」という雰囲気がでてくるなど、短期間ではあったが大きな影響を与えた。また、保護者も安心して離れられたことで、子どもの新たな可能性の拡がりを発見することができた。また、実施地域へのボランティア活動が認識されたのではないかと思われる。
しかし、事業実施前に行ったニーズ調査結果と登下校見守り等支援事業内容の結果で、ボランティア数が少なかった。ニーズがあっても対応できなければ、サービスやボランティア活動の意味がない。いかにこのニーズに応えていくのかが今後の課題であり、今後のインフォーマルサービスの開拓、登下校見守り等支援でボランティアの募集・育成を図り、地域内でもボランティアの意識づけまた啓発することによって、より地域力が高まり地域づくりや街の活性化へと展開していくと思われる。