この調査では、必要な時に必要な人がガイドを利用できるのか、その必要な時とは例えばどんな時を想定しているのか、等を考慮して質問項目を設定している。その結果は、ニーズに合ったサービス提供が確保できていない様々な要因が、前述の「事業所運営は成り立っているのか?[Ⅳの1]」で示された経済的、人的等の要素に直結していることが浮き彫りにされた。
自由回答方式で示された意見としては、まず次の意見が多く見られた。
ある事業所は、「外出目的の範囲について解釈が漠然としているため、すべてを事業所の判断任せになっている」ことに、疑問を投げかけている。
「利用できる内容が狭すぎ」たり「支給量の制限があって」満足できるサービスが提供できないと考えている事業所の訴えは、必要な人が利用できているとは思えない現状を鋭く指摘しているように思える。
また一方で、全国盲人福祉大会での当事者による要望事項には、活動範囲の拡大や時間制限の撤廃、通勤時の利用、ニーズに合ったサービスができるようにガイドヘルパーの資質向上を要望する声も上がってきている。いずれも、アンケートでの各事業所からの回答と対になっていることを考えると、ニーズへの対応が現状では不十分と思える。
報酬単価の低さの問題、身体介護を伴わない単価しか算定できない自治体が多い現状では、事業からの撤退を考慮する事業所もある。そうした現状では、多くの事業所でガイドヘルパーの確保の難しさ、派遣の難しさを訴えている。
「ガイドヘルパーが減少していることもあり、移動支援のコーディネートが困難となってきている」とのコメント、さらには高齢化、人材不足を挙げる事業所もあり、総じてヘルパーの不足が強く表れている。
65歳以上については介護保険を優先させる自治体、通院そのものについては介護給付を優先させる自治体、つまり、移動支援での対応をしない自治体が過半数を占めているが、そのうち、院内介助を伴う場合にはガイドの利用を認める自治体が半数ほどある。また、同様に、通院に買い物等他の行く先が連続している場合にはガイドの利用を認める自治体も半数ほど見受けられる。
一方、目的に関係なくガイドヘルパーでの対応を可能としている自治体は4割弱である。
ただ、回答を詳細に見ていくと、年齢・目的に関係なくガイドを認めていると回答しながら、65歳以上は介護保険優先であったり、介護給付が優先されたりとの回答が同時に寄せられている。このことから現場の対応の難しさが見て取れる。
外出時の代読代筆を行っている事業所は8割ほどであるが、断ることがある自治体が2割あることは逆に言えば特筆すべきことである。
自宅内での代読代筆については、自治体が認めている場合もいない場合も過半数の事業所が実施しているが、これも、行っていない事業所が少なくないことは驚くべきことである。
ただ、事業所のコメントからは、現場で柔軟に対応せざるを得ない難しさが感じ取れる。
8割ほどの事業所では車での移送を実施していない。実施している場合は、自治体や事業所所有の公用車を利用している場合と、公的な手続きをした上でガイドヘルパー個人の車を利用している場合が、ほぼ同数である。また、個人の車を公的な手続きをとらずに利用しているケースも散見される。
少ないケースであるが、事業所が、移動支援ではなく、独自事業として車を利用している場合もある。
7割以上の事業所は、宿泊を伴う場合には派遣していないが、2割強の事業所は、宿泊の場合でも派遣している。
しかし、派遣をする場合でも、夜間についてもヘルパーに手当を出している事業所は1割強。その手当も少額であることが多いようである。ほかは手当てを払わずに派遣している状態だが、ボランティアとしての対応であったりして、事業としては考えられない状況も見られる。
1か月当たりの支給量は多岐にわたっている。個別に対応し、上限がない自治体も10前後見られるが、月50時間以下が過半数を占めている。このうち20時間台が全体の約2割、10時間台が全体の1割強であり、1日1時間にも満たない移動支援が全体の3割を占めていることになる。
この支給量を、必要不可欠の社会参加や余暇活動に分け、それぞれの支給量を決定する自治体もあり、自治体による違いは非常に大きくなってきている。
ほとんどが月毎に支給量を決める中、月毎に支給量を変える自治体も僅かではあるが見ることができる。
緊急時、たとえばお葬式であったり、急病であったりする場合については、事業所がヘルパーの調整がつけば対応しているとのコメントが少なからず見られる。
移動支援が地域支援事業に位置づけられた理由の一つは、こうした緊急時の対応が強く求められたことによるものであるが、はたしてそれが実現されているのか否かは、本調査からは十分読み取ることはできなかった。