視覚障害者の移動支援は、身体を支えるなどする介護とは内容が大きく異なる支援である。視覚障害者への移動支援は情報支援であって、歩行においても、必要な情報伝達が支援者の手や肩を通して、及び会話によって行われる。このことについての知識と訓練がないと、特に階段やホームなどにおいては命に関わる事故にもつながりかねない危険性がある。
ガイドヘルパーは、養成講習等において、事前にこのような知識を得て訓練が行われなければならないし、質の維持・向上や状況の変化に対応する定期的な現任訓練も不可欠であるが、今回のアンケート調査の結果は次のとおりであった。
事業所で自治体の制度として実施 | 14( 6.2 %) |
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事業所で自主的に実施 | 32( 14.2 %) |
事業所のある都道府県が実施 | 123( 54.4 %) |
事業所も都道府県も実施なし | 19( 8.4 %) |
その他 | 15( 6.6 %) |
回答なし | 23( 10.1 %) |
合計 | 226(100 %) |
事業所で自治体の経費保障で実施 | 15( 8.0 %) |
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事業所で自主的に実施 | 63( 33.5 %) |
事業所も都道府県も実施なし | 110( 58.5 %) |
回答なし | 23( 16.8 %) |
合計 | 226(100 %) |
今回のアンケート調査の結果の中で、養成研修の実施について、「その他」の中には、「現在は行っていない」「ガイドヘルパーが含まれていない」と思われる事業所も加えると、全体の12%がまったく実施していなかったことになる。「事業所も都道府県もなし」とした事業所の都道府県数は5(10.6%)であるが、事業所で自主的に実施とした中には、実施していない都道府県が存在している可能性がある。
また、現任研修になると実施しているのは42%にすぎず、質の維持が図られているとは言えない結果である。なお、年間実施回数は、年1回が38.1%、2回が28.6%、3回以上が7.6%の事業所である。
養成講習による質の維持・向上については、平成18年(2006年)の第59回全国盲人福祉大会の代表者会議で、「ガイドヘルパーに対し、外出時の移動介護に必要な知識と技能を有するため、厚労省において基準を定め、養成研修をすることを義務づけるよう要望」、また、翌平成19年(2007年)の第60回全国盲人福祉大会の代表者会議でも、「制度の変更によりガイドヘルパー研修が行われなくなってしまったので、研修を再開するよう」と強く要望されている。
また、平成20年(2008年)6月から8月にかけて全国対象に行われた「移動支援従事者資質向上研修会」では、多くの参加者から、次のように、「統一したレベルの研修の必要性」が述べられている。
「質の向上に関しても全国的に統一してレベルアップを図る必要性があることが、他の県の参加者を見て初めて分かった。」「質の向上のための講習会を定期的に開催しないと維持すら図れない。」「少なくとも従来行ってきた養成講習会が全国で行われる必要がある。」「全国で統一された技術的な資格が必要。」「誰でも同じようなガイドヘルプができるようなマニュアルを作り、定期的に研修を行いたい」、など。
なお、内容については、この「資質向上講習会」のカリキュラムにも含まれていたように、弱視者(ロービジョン者)の移動支援に関する知識と技術も当然なければならない。視力や視野が大きく制限されていることや夜間はもちろんとして低照度における順応時間が極端に長いことなど、「弱視者は見える」と言っても、晴眼者とは大きく異なることを理解していないと、大事故に結びつく危険すらある。一方、増加しつつある中高年期からの中途視覚障害者については、若年からの失明者がいわゆる「勘の良い視覚障害者」であるのとは大きく異なり、常に不安感がつきまとっていることに対する移動支援であること、そして利用者の個人差が極端に大きいことなど、視覚障害者のガイドヘルパーとして必要な知識や技術が明確に含まれる講習でなければならない。