3障害者の地域活動の拠点として

(1) 地域活動の拠点として

  小規模作業所の機能を継続していくためには、小規模作業所がこれまで果たしてきた役割を評価し、その課題に対応していくことはもちろんのこと、特に、それぞれの地域の中にあることを地域住民に知らしめ、あてにされる存在になることをめざしていくことが必要である。

  小規模作業所の運営に関係する者には、「誰のために、何をするのか」という設立当初の目的を再確認し、「誰とともに、どこに向かうのか」というこれからの目標を話し合い、地域で担うべき役割を見つけ出していくことが求められる。
新体系事業に移行することは、小規模作業所として実践してきた様々な役割を、将来に向けて伸ばしていくことに他ならない。

  新体系事業への移行にチャレンジしていくことで、これまで展開してきた活動をさらに強化し、障害者の活動の場としての役割を地域の中で継承していくことが求められている。

(2) 小規模作業所の移行状況

  兵庫県下では、平成20年10月時点で438か所あった小規模作業所が、平成21年3月末時点で42.5%にあたる186か所が移行しており、252か所の小規模作業所が地域で活動を継続している(平成21年4月時点の移行予定調査では、約6割の小規模作業所が移行する予定となっている)。

  未移行の小規模作業所は、移行について検討を進めているものもあるが、主として利用者の確保が困難だというほか、様々な要因により移行困難な小規模作業所が残されているものと考えられる。

  移行困難な小規模作業所について見てみると、その移行困難要因として、

①利用者を特定の障害等に限定していることから、利用者確保が困難であるもの。
→ 盲ろう、脳血管系の難病、強度行動障害、高次脳機能障害等を有する障害者を対象に小規模作業所を運営し、対象の障害者に対しては専門的支援を実施している。小規模作業所の機能として高い専門性に基づいたサービスの提供を行っていることから、対象者を広げることは、小規模作業所のサービス対象から外れた者を受け入れることにつながるおそれがある。
②小規模作業所の運営、障害者への指導方法等に対する独自の方針を持って運営をしているもの。
→ 小規模作業所の運営方針について独自性を主張するものの、運営そのものは自治体からの補助金に依存している。独自性を保ちながら運営を継続していくためは、自治体の財政状況に左右される補助金よりも安定した財源を確保することが必要である。
③法の施行等の情勢に無関心、あるいは理解の乏しいもの。
→ 小規模作業所で受け入れている障害者への支援に終始し、運営の継続性等について無関心である。また、障害者に対する支援方法等について、効果的な手法を取り入れるといった取組が希薄な場合もある。

  の3要因に大別されるものと思われる。

  ①については、数は少ないものの最終的に移行が非常に困難だと予想される。②については、小規模作業所を運営してきた経緯や独自性を十分に評価しながら事業の継続性を確保するために新体系への移行が必要であることを説明する必要がある。③については、他の小規模作業所の動向を見ながら移行時期を探っているものの、小規模作業所の運営に関する公共性の認識に乏しい点を踏まえて将来展望を描くために新体系への移行の意義を説明することが必要である。

  特に、②、③については、新体系事業への移行について、個別相談会等の方法により、移行の意義や具体的手法を説明することをとおして、移行への取組を進めていく必要がある。

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