本システムでは、数人が入力した手書き文字の文章の断片を、順序通りに、一つにまとめ、プロジェクタなどで表示して、情報保障を行う。手書き文字は、タイプ入力された文字と異なり、画像情報であり、タイプ入力の場合と異なる処理が必要になる。
タイプ入力された文字は、入力した順番にワープロソフトに放り込んでいけば、そのままで文章を構成していくので、特別の工夫が必要ないが、手書き文字は画像情報であり、それを順番通り、レンガを下方に積み重ねるようにして、文章を作って行くには、新しい技術が必要である。
本研究で構築すべきシステムは、次のような過程を組み合わせることによって実現できるので、それぞれの過程に分けて検討を行った。
1)、2)については、Windows Vistaとオフィス2007の連携による「デジタルインク機能」を用いることで、処理が可能である。この機能は、オフィス文書に手書き文字を書き込むことができ、かつそれを操作することができる。例えば、スニッピングツールを用いれば、囲んだところを切り出して、別の手書きメモに追加したり、編集が可能である。
それぞれが手書きで書いた文字を、一定の大きさの矩形画像として、レンガを下方に積み重ねるような形で、一つの文章に組み上げる。
更に、Vistaの操作機能である「ジェスチャー機能」を使うことにより、ペン先をタブレットの軽く付け、そのまま任意の方向にはじく(フリックという)ことにより、コピー&ペーストなどの操作が可能であり、書いたものを素早く別の場所に貼り付けることが可能である。
3)のスクロールについては、一般にペンタブレット自体がその機能を有しているので、それを活用する。
4)については、すでにIPtalkやtachなど、タイプ入力の場合に実現されている既存の技術を使うことで、処理できる。
5)については、構築した仕組みを、シミュレーション・プログラムを作成して、その有効性を確認した。タイプ入力では、一般に2人で連携して入力するので、次は誰が入力するか分からなくなることはない。しかし手書き入力では、3人以上(4人程度)の入力を想定している。その場合、入力順番や、入力されたものを正しい順番で積み上げていくには、工夫が必要である。
今回、この点が解決可能かどうかをシミュレーション・プログラムを作成することにより、どのような方法を用いれば解決できるかを検討した。その結果、誰が入力するかが明確に分かり、かつ入力されてものを正しい順番で並べていくことができることを確認した。
6)について、おおよその形を決めた。
7)については、多くのアイデアがあるが、タイプ入力の場合の設定画面に加え、a)手書き文字による単語の登録、b)手書き文字による前ロール入力 などを可能とすると共に、改訂版では、手書き文字を認識して、活字に変換する機能なども搭載する予定である。