3 ケーススタディ

~よりそい支援の実際~

 ここでは、ひきこもり支援において、本事業においてよりそい支援を実施した事例について示しています。

 今後の支援のあり方や、他機関との連携を検討する際にお役立てていただければ幸いです。

 (※事例は、個人情報に配慮し、趣旨を損なわない範囲で、一部改編して作成しています。)

事例(1)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
30代後半 男性 父・母・本人・妹 就業・生活支援センター
精神科クリニック
病名 アスペルガー症候群
ニーズ 就労に向けての支援

ひきこもりに至った経緯

 高校時より周囲との違和感を覚え始め、専門学校卒業後は就職を断念し、アルバイトをする。しかし「効率が悪く、仕事にならない」と指摘されるも本人は理解できず、同僚との雑談もできなかった。その後ひきこもるようになる。

支援の経過

 保健所の紹介にて、支援センターに2週間に一度来所し、会話や雑談の練習を行う中で、周囲との違和感の原因を探したり、生活の中での困ったことの反省と予習を行なってきた。来所以前より会話や生活には余裕がみられるようになってきたが、強迫症状やうつ症状がみられ、時にパニックになることもあった。支援の中で、主治医の変更や自宅の引越しなど生活上の変化もあったが、現在では、支援センターは自分を理解してくれ、安心できるスペースとなっている。

 まだまだ周囲との違和感はあり、外出先も限られている。ソーシャルスキルトレーニング(以下、SST)でのロールプレイにおいて、コミュニケーションの練習をおこない、今後の目標を自分で考えていくことが少しずつ可能となってきた。また障がい受容には前向きで様々な支援の情報を求め、それを活用したい意欲も高まってきたため、就業・生活支援センターと連携し、就労に向けて具体的な支援を開始した。

 現在は両方の施設を利用するようになり、人間関係も広がり、就労に向けて努力しているところである。

 今後は社会性の向上や就労に向けた取り組みをおこない、生活の幅をさらに広げて自信をつけていくことが課題であり、少しでも就労することで自信を深めていけるよう支援していく。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. 自分を理解してくれる居場所ができたことによる安心感は強く、また家族も協力的で少しずつ行動範囲が広がってきている。
  2. SSTなどで自分のペースで訓練をおこない、慎重に進められたことで自信が深まった。
  3. 就業・生活支援センターと連携したことで、行動範囲や人間関係の幅も広がり、就労に向けて具体的な支援がおこなえた。

事例(2)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
20代後半 男性 父、母、弟、祖父 若者サポートステーション、
就労生活・支援センター
病名 未診断
ニーズ 社会復帰に向けての進路支援

ひきこもりに至った経緯

 中学1年から不登校となる。高校には入学するも、通学時の対人関係で電車に乗れなくなり半年で退学し、自宅にひきこもるようになる。家族との関係もうまく築けず、コンビニ、本屋などへ外出する以外は、自室で過ごすことが多くなった。本人は「コミュニケーションが下手で人と接することが苦手なので外出ができない」と訴える。

支援の経過

 母親が保健所へ相談し、一度は精神保健福祉センターへ繋がり、母親も家族教室に参加したこともあったが長くは続かなかった。数年後、母親が再度保健所に相談し、保健所の家族教室に参加。それをきっかけに本人もコミュニケーションの練習として保健所へ面接に通い始めた。半年後に、支援センターでの相談を希望、3カ月ほど両方への通所が続く。その後、本人の希望で地域活動支援センターでの相談のみとなる。

 当初、下を向いたまま顔を見せることもなく返事も出来なかったが、個別支援を開始したところ外出機会が少しずつ増えるようになり、スポーツジムへ通い始めたりバイクや自動車の免許を取得したり、資格試験を受験するようになる。その後、就労を目標と設定するも十数年ひきこもり状態で就労経験がなくイメージがわからないためSST等もとり入れた支援を行った。その後、長期アルバイトに応募し、就労に就くことになる。就労後も本人の希望で週1回の通所を行い、職場や生活での困ったことなどの相談を継続している。仕事は契約満了で退職するも、その後、新しい就労に向けて求職活動を行う中で、就業・生活支援センターや若者サポートステーションにも相談し、職業技術専門校を受験し、合格。4月より学校へ通うことになる。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. 家族以外の人との関係を築き、個別できめ細かい支援をすることにより、本人のニーズに沿った支援が可能となり、本人が自信を持つことが出来た。
  2. 本人の自己評価の低さをフォローしつつ、今後も将来の進路について一緒に話し合っていくことが必要と思われる。
  3. 本人のひきこもり状態から就労までの支援はできたが、家族への個別的な支援は今後の課題である。

事例(3)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
20代後半 母、姉、弟
病名 アスペルガー症候群
ニーズ 他者との関わりと社会性の向上(友達がほしい)

ひきこもりに至った経緯

 高校2年に「人に見られている」と感じ始め不登校となり、自宅にひきこもるようになる。数年後、アスペルガー症候群と診断される。本人はその診断を受入れ、施設を利用するも人間不信から他者を信用できないと継続利用できず、通院も「医師と合わない」と行かなくなった。

支援の経過

 保健所の紹介で支援センターでの相談に至る。相談時、緊張が強く本人がパニックになることもあり、母親が代弁し「友達はいらない」「親友がほしい」とのことであった。本人はサッカーファンで、興味のあることについてはコミュニケーションが可能であった。しかし、父親が他界し葬儀等もあり対人的な緊張と長男としての責任感から、調子を崩していくようになる。緊張状態が高まり、人間不信も相まって、外に出られなくなった。手紙や趣味のことで連絡をとり、来所を呼びかけることにより、少しずつ来所できるようになり、現在信頼関係の構築中である。

 自宅での生活は、昼夜逆転し外に出られない生活となっており、依然緊張感も高い状態である。しかし定期的な来所と活動は継続できている。本人の外界とのつながりは支援センターだけになっているため、本人より過度の期待が増しており、支援者との関係を壊さない付き合いが必要となっている。信頼関係を築くことが大切であり、趣味の話題の共有やゲームで交流を図ってきたが、他者との関わりに少しずつ興味を持つようになってきている。SSTを取り入れ会話の練習などをおこない、不安・緊張を軽減し、自分の居場所として感じられるよう支援をおこなっている。今後も生活リズムを取り戻すこと、社会性を向上させることを目標に支援を継続していく。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. SSTを取り組むなど、積極的になってはいるが、緊張感・不安感は強く、活動によっては調子を崩すこともあり、本人の状態を見極めながら、慎重な対応が必要であった。
  2. 睡眠やイライラ感など医療的な支援も必要な時期もあったが、初めての場所・人に会うのが苦手であり受診につなげられなかった。
  3. 「今の状態をなんとかしたい」と思う本人の気持ちを大切にしながら、心の整理を支援し、支援センターが居場所となり、来所が外界や人とつながりをもつきっかけとなるよう支援することが必要である。

事例(4)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
30代前半 男性 父・母・姉 精神科医療機関
病名 アスペルガー症候群
ニーズ 相談場所・居場所の確保

ひきこもりに至った経緯

 中学の頃からしばしば学校を休むことがあり、高校に進学するもすぐに退学となる。その後コンビニ等でアルバイトをするも強迫症状や自殺企図もあり、ひきこもるようになる。将来への不安から自殺未遂をし、後遺症で視力が落ちている。家で音をたてられないなどの訴えがあり、保健所の嘱託医相談を経て、医療機関を受診し、アスペルガー症候群と診断される。

支援の経過

 保健所の紹介にて支援センターを居場所として通所し利用するようになる。親戚のアパートで一人暮らしをする機会があるもすぐに自宅にもどる。精神症状も悪化し、将来への不安が強く「死にたい」と訴えることが多くなる。その後、受診先を転々とし、その間も自殺企図があり体調が不安定となった時期もあり、現在は、電話相談や訪問支援が中心となっている。

 受診先の変更による主治医の変更で少し精神症状は落ち着いてきている。本人は興味の偏りがあり、考えすぎてパニックになり、「死にたい」と訴える。障害年金の受給を希望し、受給できるようになったが、一方で、「障がい者になってしまったため一般的な就職ができなくなった」と悩み、依然将来への不安は強く残っている。

 現在、主治医と支援センターが唯一の社会との繋がりとなっている。支援センターは、電話相談と訪問にて支援をおこなってきた。昨年、手術を受けてから、調子を崩していたが少しずつ外出できるようになってきている。最近になり支援センターへの来所もできるようになり、今後も居場所としての利用を呼びかけ、精神症状の安定と生活目標設定の設定を支援していく。また希死念慮の軽減のための相談活動をしていきたい。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. 希死念慮が強く精神症状の安定を図るため、本人が信頼している主治医と連携を密にして、無理のない支援を心掛ける。
  2. 定期的な訪問ができなかったことが反省点である。
  3. 継続した支援センターの利用を呼びかけ、居場所として他者との交流も図っていきたい。

事例(5)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
30代前半 男性 母・叔父・祖父 精神科医療機関(主治医)
病名 選択性緘黙症
ニーズ 家族以外とのコミュニケーション

ひきこもりに至った経緯

 高校3年から学校を休みがちになり、なんとか高校を卒業したが、その後ひきこもるようになる。家族とのコミュニケーションは可能であるが、それ以外の人との会話は出来ず、言葉を発することが難しい。外出も一人では出来ないが家族とであれば可能である。自動車とアイドルグループが好きでブログを開設し情報を発信している。

支援の経過

 児童相談所の紹介で支援センターでの活動を開始するも緊張感強く、下を向いたままで、顔を見せなかった。会話することが難しいため、メールにて相談を行ったところ毎日数十通のメールが届くようになる。しかし薬の副作用から頭痛、発熱、突発的な行動があり、服薬を中止した。その後、通院する医療機関が変更となるも、会話が難しく医師とコミュニケーションが取れないため、医師から出された話題に添ってメール交換をおこない、メール内容を受診でのコミュニケーションの手段として利用し受診の援助をおこなった。

 少しずつ本人に前向きな気持ちが出てきてはいるものの不安、心配、さみしさが強く、コミュニケーションの方法が限られているため治療は難しいものとなっている。

 また母親のストレスなどについても医師と連携をとりながら、定期的な支援を行なっている。その後も不安定な時期はあるものの毎日のようにメール交換をおこない関係を築き、少しではあるが支援者とは会話が可能になってきている。

 現在は主治医や医療・福祉関係者などとの、会話や相手の顔を見るなどの直接的なコミュニケーションも少しずつ出来るようになっている。今後も活動を通してメールや行動面でも家族以外の関わりとして支援をおこないコミュニケーションの向上を図っていきたい。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. コミュニケーションの方法が限られており、メール交換や個別活動を通じて支援をおこない、少しずつ家族以外との会話が出来るようになっているが、買物の支払いが出来なかったりと、まだまだ行動面でも課題は多い。
  2. 本人が話せないため、本人が意思表示をする前に家族が保護的に先走ってしまうことがある。本人と家族の適切な距離をとる必要がある。

事例(6)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
20代後半 男性 父・母・祖母
病名 アスペルガー症候群、統合失調症、強迫神経症
ニーズ 家族以外とのコミュニケーション

ひきこもりに至った経緯

 高校卒業後、大学に進学し下宿するも、第一志望でない大学であったこともあり、退学し自宅に戻るもひきこもるようになる。強迫症状があり精神科病院への入院歴あり。外出は本屋やコンビニに行ったり、食事は母親の作ったものを食べないためスーパーで買物や外食もしている。外食も食べ物に偏食が強い。またお小遣いはお札の重なりが気になるため、すべて硬貨で渡している。

支援の経過

 支援センターにて支援をおこなうようになるも、毎回同じ服を着てきたり、荷物はスーパーの袋をカバンにしたりするなどのこだわりと強迫症状が見られた。活動としてはパソコンを利用してコミュニケーションを図り、インターネットで趣味について調べたり、日常生活の社会性を向上できるよう支援してきた。

 数ヶ月後に、医療機関より診断があり、その後は精神保健福祉センターに通院することになった。色々なこだわりがあり家族内では言うことを聞かないこともあるが、支援センター内では穏やかに過ごされている。最近は活動日以外にも来所し、パソコンを利用したり、くつろがれたりして、1日過ごすこともあり、本人の居場所となりつつある。支援するにあたり、活動時に伺われる日常生活の出来事に対する認知の歪みやコミュニケーションスキルの乏しさ、知的能力のアンバランスさをその都度採り上げ、本人の気持ちをくみながら、行動面の具体的なアドバイスをするようにしている。

 今後:本人の弟もひきこもっており、家族のストレスは大きいものと推測される。今後も家族への声掛けと、本人には家族以外の人のかかわりが必要で、社会性やコミュニケーションについて問題点が多く、今後も支援が必要だと思われる。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. 本人のこだわりや認知の歪みがあるため、具体的アドバイスをおこなってもすぐには受け入れられないことが多い。繰り返し説明することで少しずつ改善できるよう支援したい。
  2. 対人への関心は高いが、コミュニケーションスキルの低さが感じられる。今後はSSTなども取り入れるよう考えていきたい。

事例(7)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
30代後半 父、母 保健所
病名 軽度知的障がい
ニーズ 社会との繋がり

ひきこもりに至った経緯

 小さい頃からこだわりが強く、一人遊びが好きで、予定外のことや決まったこと以外のことをするのは苦手だった。小学校時は算数が苦手で特殊学級(当時)に在籍していた。高校卒業後、就労するも人間関係がうまくいかず、臨機応変な対応が苦手で、本人の言葉では「いじめられた」ため退職。以後、人が信じられなくなり、いろいろなことに不安を感じ、両親と買物くらいの外出はするが、自宅にひきこもっている。

支援の経過

 公営住宅建替えに伴って部屋を転居したが、以後ほとんど家からでることもなく、いろいろなことに不安を感じて過ごしている。特に、転居に伴う各種の手続きについて、説明を理解できず、字義通りにしか理解できないため、不安が増大して、郵便物を取りに行ったり、必要な買い物以外は身の回りのこともしなくなっており、ほとんど外に出ることはない。両親も高齢で認知症や体調を崩すこともあり理解力も乏しいため、親子喧嘩が絶えない。そのためセンターへ父親が興奮状態で相談があるときもあり、また大声で喧嘩するため近所からの苦情もあることから、保健所とも協力し訪問と相談を継続している。最近は保健所の嘱託医も訪問し、連携して支援している。

 本人は両親が高齢のため支援について「見捨てないで!」という思いが強く、支援者の転勤や退職の心配を今もしている。現在もひきこもり中で、今後も外出できる環境を整え、医療へも結びつける必要があると思われる。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. 本人は、状況の変化に弱く理解力にも乏しく、不安が強くなると両親も高齢で理解力なく、結論のない口論をしてしまうことがある。社会と繋がりをもち社会性をもつことで生活力をつける支援を考えていきたい。
  2. 両親が高齢で、将来的なことも不安要素となっている。障がい者手帳を取得して、社会資源の活用ができるよう本人に説明しているが理解に至ってない。今後も保健所等と連携しながら、支援をおこなっていく必要がある。

事例(8)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
20代後半 男性 母、妹 保健所
病名 アスペルガー症候群
ニーズ 自宅からの外出、社会性の確保

ひきこもりに至った経緯

 小学校中学年より友達関係や父親との不和から不登校となる。その後、中学校も不登校となり適応指導教室に通うようになるが、他の生徒にバカにされたと自宅にひきこもるようになる。また父親との関係から自室から出られなくなった。この頃、精神科医療機関を受診し、アスペルガー症候群の可能性が高いと言われたが継続した受診にはならなかった。

 その後、家庭内暴力もあり、自宅を出てアパートでの一人暮らしとなるも、自宅から一歩も出ることができずに生活していた。その後両親が離婚する。

支援の経過

 両親の離婚後、アパートから一歩も出ることもなく家族に頼った生活をしていたが、不安やこだわり、強迫症状も強く、母親に暴力をふるうこともあった。母親が保健所へ相談したことをきっかけに、保健所からの紹介で支援することとなり、訪問支援を開始する。

 容姿に強いこだわりがあり、過去のことや生い立ちなどについても不安やストレスを感じた生活をしていた。母親以外の人と接することはなかったことから、訪問することで社会との接点をつくるよう心掛けた。また保健所とも連携し、保健所相談員の訪問や嘱託医訪問をしてもらうことで多くの人と接する機会をつくり、医療にも結びつけられるように働きかけている。また電話やメールも利用しコミュニケーションを図るよう努力している。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. 特にこだわりとそれに伴う不安がある。支援者が一つ一つ一緒に確認を行うなど、本人のニーズに合わせて対処方法を工夫している。
  2. 強い不安や強迫症状、幻聴が疑われる症状を訴えることがあり、医療的ケアの必要性があると感じられるが、本人は自宅から出ることが出来ないため受診に至ってない。今後も保健所と連携しながら、精神症状の安定を図るため、医療導入への働きかけも続けていきたい。

事例(9)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
30代後半 父、母 若者サポートステーション
就業・生活支援センター
精神科医療機関
病名 広汎性発達障がい
ニーズ 社会との接点をつくり、就労へ結びつける。

ひきこもりに至った経緯

 高校は進学校に入学するも友達関係が築けず高校2年から不登校となりひきこもるようになる。在学中、精神科医療機関への受診歴あり。テレビで観たひきこもり相談機関から月1回の訪問を1年間受け、その後、民間支援機関の入所支援施設を利用し、数年間を過ごした。入所中は対人関係の訓練や食品加工などの就労も経験するも対人関係が続かず自宅へ戻る。その後、専門学校へ通うも集団活動に対応できずに退学になり、自宅にひきこもるようになる。

支援の経過

 精神科医療機関において広汎性発達障がいと診断され、対人関係のとり方が難しいが知的能力が高く、個性を活かせられる職業を探すよう助言がある。しかし、すぐの就労は難しく、保健所の紹介にて、日中の居場所として支援センターへ週2回来所するようになる。

 支援センターでは、他の利用者と行事やゲーム等で交流するようになってきており、若者サポートステーションや就業・生活支援センターとも連携し、就労訓練にも参加し、少しずつ自信を深めているところである。最近はハローワークへも一緒に行くなどの活動もしている。

 しかし、現実的に現状では職場での対人関係を考えると一般就労は難しいと主治医からも言われており、障がい者枠での求職を視野に精神障がい者保健福祉手帳の申請を検討中である。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. 本人の障がい受容の整理が難しく、就労について一般就労で求職するのか障がい者枠で求職するのかも含め本人と話し合いが必要である。
  2. 対人関係について、最低限度のコミュニケーションは可能であるが、自己評価は低く自信もない。今後は就労を目標に対人関係で自信を深められるよう支援が必要である。

事例(10)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
50代後半 男性 単身 市生活保護担当課
病名 アスペルガーの疑い、神経症
ニーズ 社会との繋がり

ひきこもりに至った経緯

 中学生の時いじめにあい不登校となり、自宅にひきこもるようになる。両親と生活していたが両親とも他界し、現在は生活保護を受給しながら単身生活となっている。市役所に行ったり、買物をするなどの最低限の外出は可能であるが、ほとんど外出することなく自宅でパソコンをして過ごしている。

支援の経過

 今回、市生活保護担当課より相談があり、単身生活で社会との繋がりもなく、対人関係が苦手で就労もできずにひきこもり状態であるとのことで、訪問支援を開始する。

 まだまだ緊張が強く、訪問予定日の前日は眠れなかったりと不安定であり、訪問支援を重ねることにより、まず信頼関係を築き、短期的には支援センターの利用を目標に支援をおこなっている。

考察(支援のポイント、反省点等)

 訪問してもまだまだ緊張が強く、視線も合わせられない状況。今後も訪問を続けることで信頼関係を築き、支援センター利用へ結びつけていくことが必要である。

事例(11)

年齢 性別 家族構成 連携した機関
30代後半 男性 両親 保健所
病名 未診断(対人恐怖症)
ニーズ 社会との繋がりと社会性の向上

ひきこもりに至った経緯

 中学より不登校になり、高校に入学するも退学となる。その後、周りの目が気になると自宅にひきこもるようになる。不安感強く、保健所の嘱託医相談などを経て、精神科医療機関の受診歴ありが、本人がひきこもり状態のため通院が続かず、確定診断にはいたらなかった。コミュニケーションが苦手で自分の気持ちを伝えることができず、ストレス、不安感が強くなることがある。

支援の経過

 当初は、本人の希望により家庭訪問を開始するも顔を合わすことなく扉越しの会話をする。半年後、顔を見せるようになり、支援センターまで一緒に外出できるようになり、活動をおこなうようになる。その後、散髪へ行く約束をし、支援は必要であるが十数年ぶりに散髪をおこなった。しかし、新年になり買い物や医者への通院への同伴外出支援をおこなっていたが、一人で外出した際、自宅に戻れなかったりするなど、社会の流れに乗れないと実感し、再度、自宅にひきこもるようになる。

 定期的に家庭訪問をおこない扉越しに呼びかけるも返事なく、しばらく呼びかけだけの訪問支援をおこなった。パソコンでチャットすることがあり、こだわりや自己主張を通してしまったりと、他の利用者とトラブルになることが度々あったようで、イライラ感も強くなり部屋で暴れたこともあった。支援者との関係は保たれており、訪問をしているが扉越しの呼びかけには再び返事ができるようになってきている。

考察(支援のポイント、反省点等)

  1. 引き続き、訪問と呼びかけを行い、対面できるように働きかける必要ある。
  2. 前回外出した時には、自主的に動き過ぎて無理をしてしまったと考えられるため、今後、活動期に入っても慎重な支援を心掛け、細やかな支援や指導を進めることが重要である。
  3. イライラ感、強迫症状など自身でコントロールできる時はよいが、暴れたりする時には医療的なケアも必要だと思われる。
  4. 社会性の向上や対人不安の軽減への支援は必要であり、細やかな援助や指導が必要である。
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