4 成果と課題 実践報告

成果と課題

社会とつながる第一歩としての役割を、モデル事業のような「居場所」が担っている。しかし、「居場所」は場を用意すればいいというものではなく、そこにつながるまでの手厚い支援が必要である。さらに、つながってからも再びひきこもろうとする傾向は続くので、丁寧な声かけを続けることが不可欠となる。

⇒綿密な個別支援が必要で、相談支援と居場所支援の多重的な連携が重要となる。

安全で安心できる「居場所」は、就労や外出など、本人が自分に合う生き方を見つけていくための良いきっかけに繋がる。

⇒電話やメールを使った相談や家庭訪問に加え、本人が安心できる場所での相談支援を行うなど、本人によりそい、細やかな支援ができる体制が必要である。

「居場所」の利用を希望する人には、大きく分けて精神疾患が背景にある人、発達障がいがベースにある人と、広い意味で「社会への適応不安を抱える」人の3層が存在する。

⇒本人や家族の目的やニーズ・支援ステージに応じた、いくつもの少人数のグループ活動が有効

細やかな支援が可能な「居場所」においては、低下した自己価値を高め、存在感や役割を持てるようになる。

⇒様々な人と触れあい、自然に人や社会に慣れ、そこから社会に役立つ活動につながるような支援が望ましい。

社会経験の少なさから、就労に対するイメージなど、本人の中の社会と現実の社会との間にギャップが存在することがある。

⇒社会参加に向けて、ギャップを少しずつ解消する支援が必要である。

実践報告

社会的ひきこもりよりそい支援事業を実施して

 障害者地域生活支援センターみずまでは、社会的ひきこもりよりそい支援事業において社会的ひきこもりの方々を支援してきた。

 当初、ひきこもり状態への支援については、家族支援が中心で本人への支援は難しいであろうと推測された。しかし事業を開始してみると相談のきっかけは家族からの相談であるが、家族と共に本人が施設へ来所し相談したケースが意外と多く、本人達もこのままではいけないという思いと自分の居場所を捜しているからこそ来所相談に至ったものと思われる。

 来所できるようになってからは、それぞれのケースに合わせて来所しやすい環境をつくるように心掛けた。出来る限り同じ周期の決まった曜日の同じ時間に約束するなど、見通しの立ちやすい環境になるようにした。また活動や相談でも本人に話を進めるにあたって視覚化(ホワイトボードやメモに整理する)したほうが良いかどうかなどを確認した。

 本人との活動としては、個別支援を中心によりそう活動を行うアプローチで取り組んできた。個別支援で安心、安定した環境をつくることにより、本人の居場所をつくることができたのは大きな収穫であった。今回、よりそい支援事業にて支援を行った集大成として、よりそい支援で自信をもった次のステップとして、利用者の方へグループ活動への参加を呼びかけグループ活動を実施した。個人差はあるが他者への関わりについて自信をもち、お互い情報交換ができるよう活動を行った。まだグループ活動を定期的に開催するには至ってないが、今後も個別での支援を中心に活動し、不定期ではあるがグループ活動も取り入れて、他者との関わりをもてるような活動をおこなっていきたい。

 事業は終了となるが、社会的ひきこもり支援継続の要望は強く、各機関の協力を得ながら相談、活動を継続していく予定である。

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