はじめに

 2005年10月に成立した障害者自立支援法では、障害種別を超えて、サービス体系全体を地域生活支援という観点から再編するとともに、市町村に障害福祉計画の策定を義務付けるなど分権的な制度運用の役割を求めている。これまで多くの障害福祉施策は都道府県(政令市を含む)が事務権限を掌握していたため、基盤整備について市町村は必ずしも関心をおいておらず、むしろ民間法人の自発的かつ開拓的な事業展開に依拠してきた。
実施主体が市町村へ一元化されることで、市町村の基盤整備への関心は否応なしに高まっている。そうしたなかで策定された第1期の障害福祉計画では、財政的な制約の中で地域生活支援の保障範囲を市町村が独自に設定し、地域の特性に応じた支援体系を書き込むことが期待された。しかし実際には大幅な制度変更に行政自身が戸惑い、多くの市町村で、国が示すワークシートに機械的に数値を書き込んだ画一的な計画策定がなされた感が否めない。
障害福祉計画は3年を一期としており、今年度は第2期計画の策定時期にあたる。今回の計画策定について、国は数値目標の考え方を基本的には変更しないとしながらも、第1期計画の進捗状況等を踏まえ、市町村が独自に目標値を補正(上方・下方)することを求めている。加えて、障害福祉圏域単位で必要となるサービスの見通しとそれを担保する整備計画(「圏域ビジョン」)を提案し、基盤整備に関する都道府県の役割を強化している。
こうした背景を持ち、われわれ日本福祉大学福祉政策評価センターは、『障害者自立支援給付分析ソフトVer.1.0(以下、「分析ソフト」とする)』の開発し、その実用化に向けた機能強化に取り組んできた。分析ソフトは、市町村が自ら自立支援給付の実績を把握し、分析できるようにすることで、障害福祉計画の策定とその進行管理を支援するツールとして開発した。そして、2008 年7 月には、「障害福祉計画の策定支援ツール」として、厚生労働省を通じて全国自治体に紹介された。自治体への配信は、当センターのホームページからのダウンロード方式であり、2009 年2 月末現在で653 市町村の自治体がダウンロードしている状況にある。
本書は、『障害者自立支援給付分析ソフト』の改訂・試行事業」(平成20 年度厚生労働障害者保健福祉推進事業)の報告書として、分析ソフトの内容とその活用方法について取りまとめたものである。ただし、本事業は『障害者自立支援給付分析ソフト』の開発・試行事業」(平成19 年度厚生労働省障害保健福祉推進事業補助事業)を継承するものであり、報告書の一部はその内容を含んでいる。
最期に、2年間に渡る分析ソフトの開発・試行において、多くの自治体および厚生労働省企画課の協力を頂いたことを感謝申し上げたい。


平成21年3月
日本福祉大学福祉政策評価センター


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