第5章 新体系移行のモデル事例

入所授産施設から

障害者福祉サービス事業所へ

社会福祉法人 足羽福祉会

福井市栂野町20-5

(0776)41-3795

開設:昭和62年4月

移行:平成20年4月

事業所外観

事業所概観

法人の理念

理念

わたしたちは、“共に生き、共に集う、光を求めて”の理念を継承し、地域に開かれた、地域に信頼される福祉を目指します。

基本方針

『利用者の主体性を尊重し、実体験を重ね、地域で生活が送れるよう支援する』

旧事業・施設の概要

1. 足羽ワークセンター   知的入所授産施設   開設   50名  S62.4

2. 分場

①あおぞら   知的通所授産   10名   H12.4

②かがやき   知的通所授産   12名   H16.6

3. グループホーム・ケアホーム

①ひまわりの家   男子   世話人同居   一般住宅   6名   H5.10

②ひだまり     女子   世話人同居   一般住宅   4名   H10.10

③つくしの家    男子   世話人同居   寄宿舎    4名   H12.10

④ほのぼの     男子   世話人通い   一般住宅   4名   H13.10

⑤ほほえみ     男子   世話人通い   マンション  4名   H15.10

⑥そよかぜ     女子   世話人通い   一般住宅   4名   H16.12

○谷口下宿     男子   世話人同居   一般住宅   2名   H6.4

地域移行への取組み経過

(1) 入所授産施設に輝きを

入所授産施設として本来の役割を認識し、実社会に適合した自立への道筋として“段階別自立支援体制”をより具体的にいたします。

又、利用者の意志を尊重し、3グループに大別した大まかな目標を定め、それぞれのグループから自立を支援することに徹します。

A. 企業に就職し、生活をグループホームかアパートで

B. 通所授産施設で福祉的就労し、生活をGHで

C. 入所授産施設で福祉的就労し、施設入所生活で

(2) 『段階別自立支援体制の確立』

利用者の現在位置と目標段階を明確化する為に、能力に応じた5段階活動体系(通所分場通勤、施設外授産活動、自活訓練、グループホーム、就職)のなかで、段階ごとの構成因子を分析し昇格因子を明らかにする。

(3) “サテライト型”地域生活就労支援体制作り

足羽ワークセンターを母体施設とし、“通所分場”を衛星状に数ヶ所配置し、在宅からの通所利用者や、Bグループ自立者の福祉的就労部門の受け皿として置き、またその通所分場周辺に地域生活部門としてのグループホームを配置します。

それらの通所分場やグループホーム利用者の相談、支援をする地域生活就労支援センターを置き、在宅福祉サービス制度を活用しながら、地域での自立生活を永続的に支援する体制を目指します。

事業所の理念

足羽ワークセンターは、利用者の皆さんが生活の中心者として未来を選択し、「社会自立したい」という夢が実現できるよう支援しております。

その為に現実社会に則した自立支援計画を推進し、個?のレベルにあわせた体験学習の場を段階ごとに設けております。また利用者自身が達成感を味わえるよう、支援体制と受け皿をサテライト型に配置し全力で支援しております。

足羽ワークセンターサービスマップ

足羽ワークセンター サービスマップ

共同生活援助・共同生活介護事業(グループホーム・ケアホーム)

足羽ワークセンター

足羽ワークセンターの現状報告

職員配置状況

足羽ワークセンター第1事業所:就労継続支援(B型)事業

足羽ワークセンター第1事業所:自立訓練(生活訓練)事業

足羽ワークセンター第2事業所:足羽サポートセンター:就労移行支援事業

足羽ワークセンター第2事業所:足羽サポートセンター:地域活動支援事業

Aさんの場合

Bさんの場合

Cさんの場合

Dさんの場合(今後の展望)

大館嘉昭(足羽ワークセンター 施設長)

事業所名 ライフステージかりがね

種 別     障害者支援施設

法 人 名   かりがね福祉会

所 在 地   長野県上田市真田町長6430-1

        電話(0268-72-3431)

開設年月日  昭和53年7月31日

1. 法人の理念と事業・施設の概要

(1)法人の理念

・利用者の方の真のニーズを理解し、利用者の方が「自分らしく地域の中で豊かに暮らせるように支援します。

・障がいのある方たちを中心とした支援を通じて、総ての人が豊かな人生を送れるような地域づくりに寄与します。

(2)事業・施設の概要

・ライフステージかりがね(施設入所支援定員35名と生活介護 定員40名)

・アトリエFUU(生活介護 定員20名と生活訓練 定員6名)

・OIDEYOハウス(就労移行 定員10名と就労継続B 定員20名)

・風の工房(生活介護 定員20名)

・かりがね共同生活サポートセンター(ケアホーム10ヶ所 定員53名)

・憩いの家くんちゃんち

・障害者就業・生活支援センター

・上小圏域障害者総合支援センターへの職員の出向

2.事業・施設の発展の経緯と取り組み

(1)事業・施設の発展の経緯

・昭和54年 かりがね学園(現ライフステージかりがね 入所定員40名)開所

・昭和55年 敷地内にハウスを建てて独り住まいをする。

・昭和56年 地域内に家(曲尾ハウス)を借りて、共同生活をする。

・昭和56年 敷地内に自立ハウス(自活訓練棟)を設置する。

・昭和57年 施設から出て、アパート等での独り暮らしをする。

・昭和62年 管理人付きの小集団での生活=福祉ホームを設立する。

・昭和63年 職員家族との共同生活(風の工房)をする。

・平成3年 福祉ホームを出て、アパート等での暮らしをする。

・平成5年 小集団での地域内生活=グループホームを設立する。

・平成11年 上小地域療育等支援センターSHAKEを設立する。

・平成13年 OIDEYOハウス(障害者等共同作業所)の委託を受ける。

・平成14年 上小地域就業・生活支援センターSHAKEを設立する。

・平成16年 アトリエFUU(デイサービス)を設立する。

・平成18年 ケア付きの地域内生活=ケアホームを設立する。

・平成18年 アトリエFUUを生活介護と生活訓練事業所とする。

・平成19年 風の工房を生活介護、OIDEYOハウスを就労移行と就労継続B事業所、グループホーム全体をかりがね共同生活サポートセンターとする。

・平成19年 重度包括支援事業を導入する。

・平成20年 ライフステージかりがねを生活介護と施設入所支援事業所とする。

(2)地域移行と社会資源整備の取り組み

・通所形態の事業所の整備(アトリエFUU、OIDEYOハウス、風の工房)と利用定員増。

・敷地外自活訓練棟の設置。

・ケアホームの建設および設置。

(3)地域(住民)との関係づくりのための取り組み

・設置・建設については、自治会と協議し、了解のもとに実施する。

・自治会への加入(1戸としての加入)。

・自治会総会への出席。

・隣組への加入。

・道普請、清掃作業、自治会行事への参加。

・自治会役員との懇談会。

・NPO法人による定期的な交流の場の提供。

3.新体系移行に関する考え方と移行前後の事業形態

(1)基本的な考え方

基本的に職員、家族の合意がとれるならば新体系に移行していく。

(2)移行前後の事業形態

・ライフステージかりがね(知的障害者更生施設入所定員40名と通所併設 定員10名)

・アトリエFUU(知的障害者デイサービス 定員15名)

・OIDEYOハウス(障害者等共同作業所 定員15名)

・風の工房(ライフステージかりがねの日中活動の一部分として機能)

・かりがね共同生活サポートセンター(グループホームとして機能)

(3)職員体制

・総ての形態が、正職員中心に運営していく。

・必要に応じて、非常勤職員を配置していく。

・法人内の職員の身分の統一(就業規則、給与規定の統一)。

(4)課題

・障害程度区分4~6の方のケアホームでの職員の特に夜勤を中心とした勤務体制の継続(夜勤者の確保)。

・職員の意識統一。

・支援力の向上。

4.法人内の機能的連携

① 全事業所、全職員が在宅支援に関わっていく(レスパイトサービス、ホームヘルプサービス、ショートステイサービス)。

② ケアホーム利用者の意向を尊重して、法人外を含めた日中事業所の相互利用を積極的に行う。

③ ケア会議(個別支援会議)を市町村担当者、障害者総?支援センター等と連携して実施していく。

5.自治体の補助金制度など財政的バックアップ

① 長野県独自のグループホーム、ケアホームに対する建設・修繕補助。

② 長野県独自の「地域生活移行推進委員設置事業補助金」(年間5名以上の入所定員を削減した事業所に対して、基準人件費6ヶ月分の半額を補助する)の設置。

③ 新体系移行のための改修費の補助。

④ 市町村による所有住宅の提供。

6.今後にむけての提言

① いつまでも利用者の意向を尊重した取り組みを継続していく。

② 「共生」の理念のもとに地域を巻き込んだ支援体制を構築していく。

③ 看取りについて検討していく。

④ 「開かれた」福祉のあり方を検討していく。

小林 彰(ライフステージかりがね 施設長)

長野県のグループホームの年度別設置状況

西駒郷の地域生活への移行効果

西駒郷の地域生活移行支援施策は、民間入所施設・在宅者にまで波及した

長野県の入所施設から地域生活への移行

事業所名 ハスの実の家

種 別   平成21年4月よりユニット型ケアホーム3事業所

法 人 名  社会福祉法人ハスの実の家

所 在 地  福井県あわら市二面87-26-2

       電話(0776-78-6743) 

開設年月日  昭和63年4月1日

1. 法人の理念と事業・施設の概要

(1)法人の理念

① どんなに重い障害を持っていても人間らしく生きることを支援する。

② 働くことや社会的活動を通して豊かに成長・発達できるよう支援する。

③ 地域のニーズに応え、地域福祉の発展と向上のために努力する。

(2)事業・施設の概要(平成21年)

① 共同生活介護事業8ヶ所うち4ヶ所は旧入所施設を改修しユニット化。あとの4ヶ所はまちなか民家、元社宅活用のホーム。

② 生活介護事業2ヶ所

③ 就労支援事業1ヶ所

2. 事業・施設の発展の経緯と取り組み

(1)事業・施設の発展の経緯

① 無認可時代(昭和40年~62年まで)

重い障害児をかかえる親が市民に訴え福井市内に開設。その後多くの市民に支えられながらも、23年間に及ぶ無認可での運営を余儀なくされた。まちなかの小規模施設で乳幼児から高齢者まで十数人が利用し、利用形態は宿泊、通所、学童保育などさまざまであった。児童はハスの実の家から養護学校に通い、大人は小規模作業所に通う生活をするなど、地域の中にある普通の暮らしを続けてきた。しかし、無認可の運営は苦しく社会福祉法人認可の運動を5年続けて、認可施設の建設を実現した。

② 入所更生施設のスタート(昭和63年)

できるだけ小人数の暮らしを継続したいと考え、芦原温泉街から少し離れた丘陵地に30人定員でスタートしたが、生活も活動も同じ建物内で完結することへの疑問がふくらんだ。またふたつの居住棟に分かれていたものの、30人という集団の規模もそれまでの実践から照らして、人間らしい暮らしから遠ざかったように感じられた。

その後、目の前の民家を借りて自活訓練事業を開始(平成3年)。また分場としてパン工房を旧金津市内に開設し(平成9年)、入所施設利用者も働きに出かけられるようにした。この分場を開設したことで、パン工房で働くことがむずかしい仲間には、入所施設内の活動に参加してもらうなどの試みも進めることができた。

③ 通所施設を開設(平成16年)

通所で利用したい希望者が分場定員を超えてきたため、新たに通所施設を開設した。授産20名、更生20名の?築型の施設は、自宅から通う利用者だけでなく、入所施設利用者も全員利用できるよう広さを確保した。この結果、入所施設利用者の職住分離を実現することができ、生活にメリハリが生まれパニックの改善など著しい変化が見られた。

(2)地域移行と社会資源整備の取り組み

パン工房を開設してまもなく、1つめのホームをまちなかに開設した(平成9年)。彼女らは入所施設を利用してきた人たちで、自活訓練の適用を受けて「小人数の生活」を経験してきたメンバーである。療育手帳で重度と判定されていたが、日常生活動作も一定自立し、人間関係の調整力も備わっていた。しかし、家族からは猛反対にあい、ホームに出て暮らすことこそ彼女自身の願いだと粘り強く働きかけて、ようやく納得してもらった。このとき社協だよりにホームを探しているという記事を掲載してもらい、民家を安く貸してもらえる協力者が現れるなど、地域との関係はスムーズに進んだ。すでに顔なじみになっていたパン工房の存在が大きかったと思う。また、ホームで暮らし始めた仲間たちの生き生きした様子が、第2第3のホームを開設していく上で励みになった。

国の施策も地域移行に重点が移っていったことを職員だけでなく、利用者や家族にも伝え理解を求めてきた。そしてなによりもホームに移った仲間の元気な様子、家族の安心した声、そして全国の先進的なホームの様子を集会などで見聞きし、いずれは自分の番が回ってくるとほとんどの家族の方が思えるようになって来た。

(3)地域(住民)との関係づくりのための取り組み

ホームだけでなくパン工房があることで、住民の受け入れ感情はとてもスムーズだった。また後援会活動が活発で、バザーやコンサート、リサイクル活動などを通して、法人事業や障害者への理解の輪が作られている。またホーム独自に地域のまつりや行事、清掃活動への参加など、一住民として当然のご近所づきあいを大切にしている。なかには、自閉的傾向のある利用者の行動が地域とのトラブルに発展することも多々あるが、ホームの世話人だけでなく、法人職員が機敏に対応するように努力している。最近の不安な社会状況の中、ときには不審者情報として流れ、パトカーに取り囲まれたりするが、共同募金の補助事業を活用し、作成したパンフレットを住民に配布するなどの活動も行っている。

3. 新体系移行に関する考え方と移行前後の事業形態

(1)基本的な考え方

施設入所支援事業では対象からはずされる利用者が多数になる予測があったため(認定調査の結果では1人のみであった)入所施設を廃止し、全面的にケアホームに移行したいと考えた。日中活動の場を隣接地の通所施設に移していたので、法人内の機能連携を進めれば、ケアホームへの移行が可能という条件も整っていた。

そこで入所施設を居住機能にしぼり、住まいとしての環境整備を図りたいという長年の念願を実行に移すチャンスととらえた。2人部屋や10数人の居住棟という生活環境では、個人のプライバシーを守れず、利用者のストレスやトラブルを解消できなかった。今回の基盤整備事業を活用し、個室化と6~8人のユニット化を実現した。

また、ケアホームに移行することで、個人の尊厳を尊重した支援への職員の意識改革を進めたい。同時に施設での抱え込みの考え方から脱却し、地域の社会資源を活用していきたい。

(2)移行前後の事業形態

【移行前】入所施設(定員32名)自活訓練事業の民家に7人が移っていたので、本棟には25人が住んでいた。昼間は隣接した通所施設に通い活動していた。

【移行後】4つのケアホームに27人、まちなかの新設ケアホームに5人が移る。

1ホームをひとつの事業?位としている。ホームごとに居室とトイレ、浴室、食堂が配置されている。ただし、食事は調理員が厨房で調理したものを各ホームに運ぶ形をとっている。ホームにはミニキッチンの設備があり、簡単な調理や温め直しができるようになっている。

昼間の活動はどうなるかというと、通所施設も新体系に移行するので、今までの所属と同じ事業の利用者になる。実態に沿って進めてきたことなので、支給決定上利用する事業が変更されたに過ぎない。

(3)職員体制

移行前の入所施設では、看護師、栄養士、調理員を含む常勤職員が17人、パート職員が7人で32名の利用者の支援に当たっていた。

ケアホームに移行するにあたって、職員体制が最大の課題である。現時点では、次のような体制でホーム支援にあたりたいと考えている。

① 夜間支援体制は生活支援員と世話人の4人で泊まり勤務(平均月8回)。

② 生活介護事業職員によるカバー

③ 朝夕のパート職員による食事、入浴、起床就寝時間帯の応援

(4)課題

しかし、ケアホームに移行して何も問題がないというわけではない。施設入所支援よりもややましな選択をしたにすぎない。自立支援法という制度上の制約からまぬがれようがない。以下、ハスの実の家の事業を通して課題を整理してみる。

① 利用料について

まず、真っ先にあげたいのが、ケアホームの利用料の問題である。入所施設や施設入所支援の利用料と比較しても明らかに高くなり、6万円前後になる。食費人件費分を法人で補填し食材料費に限定してもである。メンテナンス料や光熱水費が意外と高くなる。これでは2級年金しか収入がないひとは利用できなくなる。家族が補充するか、多少貯蓄がある人は取り崩していくしかない。

地域移行をしたいと本人が希望しても、利用料の問題で断念せざるを得ない人もいるのではないだろうか。事業者側も不可能と断定してしまっていないだろうか。

今回の3年見直しで居住関連の補助給付が新設されることに期待したいが、今後の地域生活移行推進のカギを握る課題だ。

② 経営の課題

「収容施設」という表現はなくなったものの、大勢の入所者を1ヶ所に集めて、昼も夜も同じところでみる生活形態は、運営上「効率的」なのであろう。逆に職住分離を進め、暮らしの場も小規模分散化をはかれば、それぞれに職員を配置せざるをえない。入所施設時よりも多くの職員の手が必要になる。

ハスの実の家の場合、職員総数では増員となるが、正規職員を増やすわけにはいかず、世話人や短時間パート職員の比率を高くせざるを得ない。

また、ケアホームの運営費収入も、大幅な減収となり、生活介護事業など日中活動系の事業から繰り入れするなど、法人全体でやりくりするしかない。

3年見直しの中で、ケアホームの報酬?価がアップされたが、ホーム経営が?独で成り立つには程遠い。これでは「効率的」な施設入所支援からケアホームへの切り替えは進まないであろう。

③ 運営の課題

4~8人のケアホームになっても、実践上の課題が減少するわけではないので、チームケアをする上での運営上のしくみが必要である。たとえば個別支援計画にそった実践、スタッフの意思統一のための会議、金銭管理や健康管理など、それまでの入所施設で複数の職員が分担していたことが、ホーム単位になることで、なんでもやりこなさなくてはならなくなる。

また、日中活動事業所との連携や他機関とのやりとりなどもホーム単位で必要になってくる。職員のチームマネジメント力量が求められる。ハスの実の家では、ケアホームに移行する方針を出して以来、何がどう変わるのか意識改革を進めてきたが、実際はこれからの課題である。

④ 利用者の支援が困難になった場?の対応

入所施設が家族に根強い人気があるのは、「いつでも職員がいて、死ぬまで面倒を見てくれるところ」だからと言われている。

ケアホームでは安心できないという不安をどのように払拭できるのだろうか。

不安の中身は次のように分類される。ひとつは障害の重い人、特に医療的ケアが必要になった場合や行動障害の激しい人への支援が可能か。2点目は病気やけがでの入院時や終末期の看取りができるのか。この2点は入所施設もしくは施設入所支援なら可能と言い切れない状況にある。しかし、それでも「みてもらえる」という期待は根強い。

ハスの実の家では次のように考えている。ひとつはユニットケアホームのよさを最大限生かす。つまり単独ホームでは難しい看護師などの配置。また緊急時はホームを越えて支援を集中させるなどが考えられる。今の時点では、法人あげての応援体制を組んで支えるとしか言いようがない。もうひとつは、ホームが在宅と位置づけられている以上、在宅ケアの拡充を求めていく姿勢で臨んでいくしかない。

⑤ 社会資源の不足

ケアホームになったら、今まで使えなかった居宅サービスが仕える。介護保険の対象者のかたは、介護保険のサービスも使えないだろうか。行動援護の対象者にはサービスを利用して外出の機会を増やしたい。

「抱え込み」の考えから転換し、使えるサービスをどんどん使って「ふつうの暮らし」に近づけていくのだ。と考えてきたのに、県内のサービス事業所をさがしても、行動援護やっている事業所は皆無に過ぎない。入所施設の充足率の高い福井県だから、居宅事業が広がらないと言われている。しかしこのことは在宅の障害者にとっては地域生活を継続していく条件が厳しいということになる。共通の課題として、これから取り組んでいきたい。

4. 法人内の機能的連携

最初に述べた法人内の各事業が新体系移行により、居住系サービスと日中活動系サービスに整理された。利用者は朝晩はケアホーム、日中は生活介護もしくは就労移行支援の事業を利用という形になった。それぞれの事業の独立性や機能を追及しつつ、ひとりの人間をトータルに支援する上で、今までどおり、必要に応じて連絡を取り合い、ケア会議を開催していくことになる。

法人内の連携という点でいえば、財政的な繰り入れ、および人的な応援体制の2点にある。言いかえれば、財政的な繰り入れや人的な応援体制を組まなければケアホームの事業が成り立たない。

5. 自治体の補助金制度など財政的バックアップ

福井県では20年度までグループホームケアホーム支援事業という補助制度があった。ホームの防災・防犯対策等に要する設備、および初度備品に対する補助であり、250万限度額の4分の3が補助枠であった。民家を借りてホームに活用するケースが多く、この制度自体は関係者にとってありがたかった。21年度より国の制度にとって変わり、県単独事業はなくなることになった。ほかには補助金制度は全くない。

6. 今後にむけての提言

「誰もが地域の中で普通に暮らせる社会」をめざす上で、欠かせない居住の場としてケアホームの役割はますます大きくなろう。ケアホームの報酬単価水準を大幅に上げることで、地域生活移行の流れは本流になるに違いない。同時に障害者本人の願いや本音を聴き取り個別支援計画に反映するしくみを整えないと、「施設希望」という職員や家族の思い込みからの脱却が図れないと思う。しかし、日本の現状からみても、施設入所支援の利用者がいっきに地域に移行することはむずかしい。施設でなければ心配という声の背景や要因を探り、地域の中にその不安を取り除くしくみや社会資源を整備していかない限り、流れは変わらない。ケアホームか、施設入所支援か、利用者が選択できる時代をつくる上で、まだまだ課題は山積みである。事業所の立場から言えば、ケアホームであろうと、施設入所支援であろうと、人間らしい居住空間として最低個室と小人数の生活規模を用意する構えがほしいと思う。

渡辺登美子(ハスの実の家 施設長)

事業所名 あかね寮

種 別      知的障害者更生施設(入所)

法 人 名    社会福祉法人蒲生野会

所 在 地    滋賀県東近江市小脇町2089

         電話(0748-23-6776)

開設年月日  昭和63年5月1日

1. 法人の理念と事業・施設の概念

(1)法人の理念

別添(資料1)を参照してください。

(2)事業・施設の概要

・あかね寮(資料2)

知的障害者更生施設(入所)50名

短期入所(男性4名、女性3名)

・ケアホーム

ホーム雪野山(4名)

ホーム明歌里(4名)

・東近江地域障害者生活支援センターれいんぼう

相談部(本体とサテライト)

デイセンターれいんぼう(生活介護)

ヘルプセンターれいんぼう(24時間)

セイフティーネット(県単独事業)自立支援給付に乗らない支援をおこなう

みんなの家(単独型短期入所)

通所施設や在宅者のホーム体験事業(圏域独自事業)

2. 事業・施設の発展の経緯と取り組み

(1)事業・施設の発展の経緯

別添(資料3)を参照してください。

(2)地域移行と社会資源整備の取り組み

2003年度よりはじめて自活訓練事業に取り組む。2004年敷地外自活訓練事業を経て2005年よりグループホームへ(現在ケアホーム)。2006年度再度自活訓練に取り組み、2007年ふたつ目のケアホーム誕生。

社会資源の展開は圏域内のサービス調整会議にもとづいておこなってきている。当法人は圏域唯一の入所施設として、生活に関する様々な要望を担うよう期待されてきている。

(3)地域(住民)との関係づくりのための取り組み

地元自治会に所属。毎年施設敷地内で納涼祭・祭りをおこなってきたが、2003年より、地域住民を巻き込んだ行事に展開。納涼祭では、グランドで花火師による花火の打ち上げをおこなうことが恒例になり、若者も浴衣姿で立ち寄るようになった。秋の祭りは「がもうの祭り」と名前をかえ、地元自治会や個人ボランティア、圏域内の関連事業所とともに実行委員会をつくり、地域の人と創りあげている。

また、あかね寮大規模修繕をおこなうにともない、人のつながりを広げ、合わせて資金づくりの取組みをおこなっていくための市民の会「みんなのあかねを創る会」を結成。寄席や、映画会などの活動をおこない、特に自治会が積極的に関っていただけるようになってきた。

3. 新体系移行に関する考え方と移行前後の事業形態

(1)基本的な考え方

① 利用者主人公の暮らし

② ひとりぼっちの障がい者をつくらない

③ 地域のニーズに応じて圏域として必要な事業(他法人ではできない事業)について積極的におこなう

④ 経営については、地方自治体との共同を進めること、および社会福祉事業からの収入を主として、自己資金づくりをすすめていく。

(2)移行前後の事業形態

移行前:知的障害者更生施設(入所)

移行後:障害者支援施設(生活介護)・就労継続事業B型、生活訓練

(3)職員体制

完全な職住分離の職員体制。児童短期には独自の配置をおこなう。

(4)課題

① 障害程度区分の判定

② 重度障害のある人が暮らせるホームのあり方

③ 財産管理(成年後見等)

④ 地域生活のための総?支援システムづくり

4. 法人内の機能的連携

① 月に1回の事業管理会議(管理職会議)

② 職員の複数集団化(担当職務+委員会活動)

5.自治体の補助金制度など財政的バックアップ

① 相談部の事業への圏域独自補助。

6.今後にむけての提言

① 地域生活総合支援ネットワークの実現

② 人材育成

③ 地域の人に「蒲生野会があってよかった」と思ってもらえるような事業体を目指す

松村 優子(あかね寮 主任)

(資料1)

(福)蒲生野会のめざすもの

社会福祉法人蒲生野会は、1987年に東近江圏域の障がい児者・家族の願いの実現のために設立されました。障がいのある人の「親亡き後」の不安や「地域生活」の困難などを解決してほしいという願いからでした。

「あかね寮」や「東近江地域障害者生活支援センター」が設置されて以後、障がいのある人を支援する拠点として期待を受けてきました。今、地道な実践で地域に信頼を築きつつあります。

私たちは、今日まで忘れてはならないいろいろな経験を積み重ねてきました。この歴史を踏まえた「めざすもの」を未来を切り拓く「志」とします。

私たちは、生活のしづらさをもつ人の願いを大切にして、その人のその人らしい人生を築く支援を地域を舞台に行います。一人ひとりの生活が大切にされるよう、設立時に求められた役割と使命を胸に刻み、「ひとりぼっちの障がい者をつくらない」ために地域とともに歩み続けます。

私たちは、障がいのある人もない人も同じ地域で暮らす人として大切にされて生きるために、次のことをめざします。

1.誰もが安心安定の生活ができることを願い、とりわけ、障がいのある人が主人公として、生活できるよう、暮らしの場づくり・中日活動の場づくり・社会参加づくりをめざします。

2.障がいのある人の夢や願い・地域の願いを叶えるために、一人ひとりの声を大切にし、力をあわせて事業を創造していきます。

3.社会の一員として誇りをもって生きられることを願い、地域の人たちと手を携えて、理解と協力の輪づくりを拡げていきます。

4.人間としての権利や尊厳が尊重されることをめざします。

「(福)蒲生野会のめざすもの」の実現をめざし、心をひとつにして歩み続けます。

■ スローガン(大切にしたいこと)

○ あかね寮・ホーム

(暮らしの場)    「わたし」の生活をつくる!

 

(日中活動の場)   誇りをもって働きたい! 笑顔がたえない活動を!

○ れいんぼう

ひとりぼっちの障がい者をつくらない!

■ 大切にすること(職員が利用者に対して)

1.あなたの気持ちを大切にします。

2.やりたいことはチャレンジできます。

3.言いたいことは自由にいえます。

4.したくないことはしなくてもいいです。

5.自分だけで考えられないことはいっしょに考えます。

事業所名 太陽の里

種 別      障害者支援施設

法 人 名    社会福祉法人みぬま福祉会

所 在 地    埼玉県南埼玉郡白岡町小久喜450番地

         電話(0408-93-1101)

開設年月日  平成4年4月1日

太陽の里の概観の写真

1.法人の理念と事業・施設の概要

(1)法人の理念

① 県南各地にどんな障害を持っていても、希望すればいつでも入れる社会福祉施設作りをめざします。

②入所者は障害の種類や程度、発達段階等が十分に考慮され、一人ひとりのニーズに応じた生活、労働、教育、医療が受けられ、ともに生きる仲間として、その自主性が尊重され、人権が最大限守られるような社会福祉施設作りをめざします。

③ 社会福祉施設は、その地域の仲に存在し、その地域と共によりよい社会づくりをめざし、入所者は地域の人々と助け?いながら、ともに生きることをめざします。

(2)事業・施設の概要

施設種別:障害者支援施設

実施事業:生活介護・施設入所支援共に定員60名(現員62名)

主な対象者:知的障害者

併設事業:短期入所 定員4名 日中一時支援事業

入所者状況:現員62名(平均38.7才)女性18名、男性44名

障害状況:最重度46名、重度11名、中度 3名、軽度 2名、身体障害手帳 20名

障害状況:精神障害6名、自閉症18名

平均障害程度区分:5.8(うち区分6-54名)

重度障害者加算対象:18名

暮らしの場:3つの生活棟に18~22名、居室は個室と2人部屋

日中活動:6つの日中活動グループ「白岡太陽の家にじ」の実習

*太陽の里は重度重複障害や自閉症、強度行動障害の仲間が多い施設です。

2.施設・事業の発展の経過と取り組み

(1)事業・施設の発展の経緯

① 施設作り運動により太陽の里が開設

親亡き後ではなく、親が元気なうちに家から離れて仲間と共に働き暮らし、週末は自宅で過ごす生活施設として、太陽の里(以下、「里」と記す)をみんなで作りました。

里は、当初から重症心身障害の仲間や自閉症の仲間などが一緒に暮らすことを想定していました。しかし、麻痺の進行や車椅子の仲間が増えたこと、自閉症を持つ仲間の取り組みから、「みんな一緒の生活」から「一人ひとりにあわせた生活」へと実践の課題が変わってきました。また、法人内の通所施設でも重複障害や重症心身障害の仲間が増え、障害に視点をあてた取り組みが実践の課題となってきました。

そのため、第1期将来構想委員会を開催し、2000年から「身障療護施設づくり」など4つの事業に取り組み実現しました。

② 制度激変と太陽の里改善事業

さらに、身障療護開設後の将来構想を検討する第2期将来構想委員会を開催し、2003年6月から「太陽の里改善」など3つの事業をはじめました。しかし、制度激変などにより事業の推進は遅れています。

里改善は、日中活動の充実・支え手の確保・障害への対応・環境整備・暮らしの場の改善・短期入所の拡充の6つの課題があります。この間、職住分離、作業棟の建て替え、日中活動の拠点作り、居住棟のフローリング化とキッチン設置の試み、強度行動障害加算枠10名などを実現し、現在は、居住棟の増築改修などの暮らしの場の改善に取り組んでいます。

(2)地域移行と社会資源整備の取り組み

① ホームの開設

里の仲間Oさんの「(身体が元気な)いましかできないから、外で暮らしたい」という要求と長期の短期入所者の暮らしの場の検討から、2000年4月に生活ホームサンライズを開設しました。その後、定員増と第2サンライズ開設を行い、現在、2つのホームに16名が暮らしています。

② 生活支援事業から相談支援事業へ

短期入所の支援相談や近隣施設との相談ネットワークの連携などの実績により、2001年から知的障害者生活支援事業を開始しました。2006年の自立支援法施行に伴い相談支援事業に移行し、ホームや地域の仲間の生活支援と相談を行っています。

③ 日中活動の場、作業所づくり

ホームに移り住んだ仲間は、日中の場がなく里に通っていました。ホームの仲間が増えたため、2004年、里の外作業所をデイケア施設「白岡太陽の家にじ」(県単独補助適用)に切り替えました。ホームの仲間や地域の仲間も通う作業所にしました。

(3)地域(住民)との関係づくりのための取り組み

① 働くことを通じた関係づくり

職住分離をすすめ、日中は6グループと「にじ」実習の7つの仕事班に分かれ、それぞれ独自の取り組みを行っています。町の特選品に認定されたガーデニング用肥料、微生物を活用した環境浄化剤(えひめAI-2)、ウエス、さをり織りなどを作り販売しています。自主製品は商工会のショップで委託販売などを行っています。

② 地域の施設事業・障害者団体との連携

2006年に13の障害者団体・施設事業所で「白岡町の障害児者の福祉を考える連絡協議会」を結成し、要望書に基づく町との懇談、障害者基本計画等のパブリックコメント提出、精神障害に関する講演会開催など、障害者の現状と理解を地域に広げる取り組みを行っています。

③ 催し物を通じた関係づくり

太陽の里まつりの開催や白岡まつりなどの地域イベントに参加し、地域への理解と協力をすすめています。

3.新体系移行に関する考え方と移行前後の事業形態

(1)基本的な考え方

① みぬまの仲間の生活を守ること

仲間を守るために、「仲間を制度に合わせるのでなく、制度を仲間にあわせる」ことを視点に移行検討を行いました。障害状況から、わかりやすい生活、日中活動と居住が細切れにならない支援、制約が?なく幅広く活動できることなどから、事業移行は施設入所支援と生活介護にしました。

② 職員の雇用を維持すること

仲間の生活を後退させないために職員雇用の維持ができるように、報酬の想定などを検討し新体系へ移行しました。

③ 新たな要求への対応は今後の検討

生活介護と施設入所支援は事業制約があり就労継続などの要求に対応できないため、「にじ」の移行時の検討課題としました。

④ 移行する中で自立支援法見直しを訴える障害程度区分や、

(2)移行前後の事業形態

① 移行前の事業形態

知的障害者入所更生施設(定員60名、現員60名)、短期入所事業(定員4名)

*強度行動障害加算枠  10名

*3障害加算対象者  13名

② 移行後の事業形態

生活介護、施設入所支援、短期入所事業

(3)職員体制(2008年4月現在)

施設長(管理者)       1人

サービス管理責任者    1.2人(1人は兼任)

看護師            1.3人(1人非常勤)

機能訓練指導員      0.2人(看護師兼任)

生活支援員         34.1人(人員41人)

栄養士            1.0人

医師             0.1人(非常勤)

事務職員          2.0人

調理職員          6.5人(人員9人)

*上記の他に強度行動障害支援として非常勤の医師1名と心理担当1名を配置。

(4)課題

① 里の暮らしの場の改善をめざして

身障療護・大地の設計者松村氏の協力を得て、里の居住棟の増築改修の準備を行っています。新しい居住棟は一人あたり6畳のスペースを確保した居室、5~10人での暮らし、生活設備機器を備えた「家」にします。どんなに障害が重くとも、人として生きていくための基礎である暮らしの場をしっかり作っていきたいと考えています。

暮らしの場の改善は法人全体の取り組みとして職員、家族、仲間が参加し、現在、最終図面づくりをすすめています。

里の暮らしの主体者である仲間たちは職員と「仲間検討会」を組織し、きょうされん県交渉で里改善の訴え、住宅展示場や国際福祉機器展、他の入所施設見学を行い、お風呂や玄関、二人部屋や男女一緒の暮らし方などを話しあっています。仲間の意見を増築改修に反映しています。

② 暮らしの場改善の公的補助の確保

暮らしの場の改善事業をすすめていますが、居住棟の増築改修に対する公的補助の獲得は厳しくなっています。公的資金による増築改修を求め、居住面積新基準の公的保障をすすめる全国的な運動が必要です。

③ 困難な職員の確保

日中活動と短期入所支援の充実に必要な職員募集は、応募がほとんどない状況です。

④ 日中活動の場の施設外への移転

居住棟の増築改修に伴い、日中の活動拠点の移転が早急な課題となっています。

⑤ 短期入所要望の対応のための定員増

短期入所の利用が多く、要望に応えるために、短期入所の定員増を計画しています。

⑥ 新たな暮らしの場づくり

長期間の短期入所や通所施設の仲間のために、ケアホームなど新たな暮らしの場の設置がみぬま福祉会の今後の課題の一つとなっています。このことは、里の仲間の暮らしの場の選択肢拡大の意味もあります。

4.法人内の機能的連携

① 法人の事業と相談支援事業との連携

法人は川口市、さいたま市、蓮田市、白岡町で14ヵ所28事業を運営しています。障害者支援施設は2ヵ所あり、法人や県内、さいたま市の相談支援事業と連携し、短期入所や日中一時支援を行っています。

② ホームのバックアップ

サンライズ、第2サンライズのバックアップとして、里では緊急時支援や運営協力、施設会計や行政申請などを担っています。

5.自治体の補助金制度など財政的バックアップ

埼玉県と県内自治体による太陽の里の運営及び入所者に対する通年の補助金制度はありません。

6.今後にむけての提言

(1)「どんなに障害が重くともあたりまえの生活を支援する」ことを視点に持つ

① 障害者施設の機能

健康で文化的な最低限度の生活は権利であり、障害者福祉は障害者が生活に必要なときに利用できる社会的支援です。障害者施設は社会的支援を行う役割を担い、生活全般または一部を支援するための機能を持っています。それの支援は本来、障害の重さや抱えている困難さは関係ないはずです。

② 地域の実情と入所施設の課題

しかし、その現実は施設未整備等により支援状況や障害者理解には地域で違いがあり、地域福祉の充実が課題となっています。

こうしたことから、入所施設はその地域の実情と要求に基き、障害の重さや困難さも含めて受け止め、社会的支援の実践力を深め、必要な事業を地域ともに作ることが当面の課題であると言えます。

(2)障害者の居住をめぐる問題とその改善

① 居住が守れる制度の実現と公的保障を

障害者自立支援法は、応益負担や利用の制限など多くの問題を持つ制度です。また、障害基礎年金では生活することが困難な施設入所やホームの実態、居住系事業の低額報酬など、貧困な居住支援の制度です。

「住居は生存の基盤」と言われています。居住を守る障害者福祉の制度が必要です。

② 居住空間の最低基準を全額公費保障を

居住の基礎は居室であり住宅です。知的障害者の入所施設の居室面積は、一人9.9㎡になりました。大切なのは実現することです。「最低限度の生活」を保障するために、国は公費で新基準に作り直すべきです。

③ 安定した支援と専門性を持つ職員集団

入所施設やホームの暮らしを支える ために、障害を理由とした制限を設けないことと支える専門性を持つ職員雇用が必要です。

④ 当事者参画による居住環境の改善を

暮らしの主人公は障害を持つ当事者であり、当事者参画による居住環境などの検討は共に暮らす仲間の理解を深め、共同の 暮らしを作ることができます。

障害が重く 困難な仲間たちがいきいきと暮らすことのできる地域社会は、だれでも安心して暮らすことができる地域社会です。みんなで実現していきましょう。

澤田 透(太陽の里 施設長)

事業所名   北部複合施設(仮称)

種 別     多機能型施設(生活介護・就労移行支援・生活訓練)、ケアホーム、短期入所、発達障害者相談支援センター

法 人 名   おおつ福祉会

所 在 地   大津市 伊香立

        電話(077-579-5950)

開設年月日  1991年5月

1. 法人の理念と事業・施設の概要

(1)法人の理念

「わたしたちのめざすもの」

① わたしたちは障害のある人やお年寄りが、地域の中で安心して働き暮らせるように取り組みを進めます。

② わたしたちは障害の種類や軽重に関わりなく、一人ひとりが大切にされる取り組みを進めます。

③ わたしたちは市民の理解と協力のもとに、福祉の充実をめざして、運動を進めます。

④ わたしたちは障害のある人やその家族など多くの関係する人たちが参加する共同の事業として運営を進めます。

⑤ わたしたちは全国のすぐれた経験に学び、研究や研修活動を積極的に進めていきます。

2. 事業・施設の発展の経緯と取り組み

(1)事業・施設の発展の経緯

大津市は人口32万人 琵琶湖南部から西北部にかけ南北50㎞の細長い地域にわたっている。

2009年4月 中核都市へ移行

おおつ福祉会は大津市中、北部を中心に養護学校卒業後の労働、日中活動の保障、とりわけ障害の重い人たちを受けとめる取り組み進めてきた。その間、家庭生活を支えるための居宅介護事業や家庭での介護が困難になった人たちを受けとめるためにケアホームの整備を進めてきた。ニーズに応えた結果として近年、事業展開を急激に拡大してきた。しかし、障害の重い人たちの生活支援に関して緊急のケースでは一時的に体勢をつくり対応してきたものの安定した支援システムは懸案であった。

実施事業

・知的障害者通所授産施設  3施設 定員 112人

・多機能型施設          1施設 定員 29人

・小規模作業所          3施設

(4月 新体系 継続B、生活介護へ移行~継続Bのうち一部をA型に移行準備中)

・単独型短期入所事業 定員 10人

・グループホーム・ケアホーム 11ヶ所

・居宅介護事業

・日中一時事業 2ヶ所

・相談支援事業

(2)新規施設整備の背景と経緯

1971 近江学園の他圏域に移転し大津圏域に入所~生活施設がなくなる。

(圏域~ 1981 「滋賀県社会福祉計画」で県内を7圏域に分け障害者施設整備などの施策を推進)

1983 「大津にみんなで障害者の生活施設をつくる会」

1997 新設法人による入所更生施設

定員50人大津市南部に開設「大津市北部にも生活施設を」という家族の運動として「大津にみんなで障害者の生活施設をつくる会」を「大津市北部生活施設建設推進協議会」に発展継承。

「滋賀県障害者計画」及び「大津市障害者計画」に掲げられる。

2007 大津市よりおおつ福祉会に施設整備及び運営を委託され受託。

2008 大津市建設用地買収。一期国庫補助決定

(3)整備内容

第一期 ’09年事業 国庫補助決定

多機能型施設    定員 60人

生活介護       30人

生活訓練       20人

就労移行支援    10人

発達障害者相談支援センター

‘09年10月開所予定

第2期 ‘10事業 民間補助申請

ケアホーム    30人

          8人 4棟

短期入所     10人

‘10年4月開所をめざす

長年の生活施設~入所更生施設を作るという運動が結実することになったが、障害者自立支援法が施行され、県・市との調整により同一敷地で、多機能型施設とケアホーム併設を行うことになった。

3. 施設整備に関する考え方

(1)計画の基本的コンセプト

大津市は、今回の整備を最後に大型の居住福祉整備の計画は持たないと言明。そこから今回の計画は、単に30人の「終の棲家」の建設ではなく、重い障害のある人たちも含め、安心して地域生活をおくれるための支援の拠点づくり~仕組みづくりを目指すものとする。

そのため、ここでの日中活動や生活は、ここを出て、地域のケアホームで生活するための準備期間と位置づける。

(2)生活支援のための拠点施設づくりに関して

安心して地域生活ができりよう支援する仕組みをつくる。短期入所事業の実施と地域のケアホームでの生活が一時的に困難になった人がいた場合、受けとめられる居室をケアホーム各棟に1室配置する。当初 計画されていた24時間のホームヘルプ事業、日中一時支援、夜間の緊急対応のための職員配置をできる限り早い時期に実現するよう努める必要がある。

(3)建築に関して

① 多機能型施設

生活介護、生活訓練、就労移行支援それぞれ独自の活動の想定と同時に、それらの枠を離れた質の異なった集団による活動も可能となるよう活動空間は目的を固定したものでなく柔軟に利用できるものとする。

② ケアホーム

生活単位は4人(居間、浴室、便所)×2を1棟とし8人単位の食堂を持つ。それを4棟建設。全室個室とする。管理的側面を排除しながら安全を守る生活空間をつくるよう工夫する。

4.利用者に関して

(1)利用対象者

① 生活介護

家族介護に困難をかかえる行動障害などの障害の重い人、親が高齢で本人自身も高齢の人や永年ひとりぐらしをしてきたが高齢でそれが困難になった人を受けとめる。平均障害程度区分を4.2を想定

② 生活訓練、就労移行支援

主として養護学校(特別支援学校)卒業生の進路保障を担う。原則2年の「有期限」利用であるため、それぞれ定員20人、10人のうち毎年その半数を受けとめる。

③ ケアホーム

概ね、2/3をここの「生活介護」利用者である障害の重い人とし、1/3は高齢障害者と青年期における親からの自立をめざす人をうけとめる。この利用者比率を堅持する。

この計画は、1法人の事業にとどまらず、大津市とりわけ中北部の障害のある人たちのサービス資源として利用されなければならない。そのために自立支援協議会において利用者の調整をおこなう。

(2)退所に関して

ここを退所したあとのケアホームや日中活動の場の利用調整やそのための施設やホームの整備についても自立支援協議会の課題とするよう提起している。

① 多機能型施設

生活訓練、就労移行支援は2年の有期限となるが、ここでの生活介護利用者についても、ケアホーム利用者が地域のケアホームに移行した場合、それに?わせて他の日中施設へ移行する。

② ケアホーム

地域のケアホームへの移行を追求し移行が可能となる条件を切り開く。その条件として、本人の自立度、介護職員の力量、ケアホームを受け入れる地域の障害者理解、地域環境、ホームのハード面での配慮、職員配置数を保障する財政的手当等など、障害のある人たち一人ひとりがどのような条件があれば安全に安心して地域のケアホームへ移行できるかそれらの条件の相関関係を分析し、必要な条件を整えて地域のケアホームへの移行をめざす。また、青年期の親からの自立課題を持って利用している人は、法人の現事業である、自立生活支援ホーム(2年の有期限)との連続した利用で、就労、グループホーム(あるいは「ひとりぐらし」)をめざす。

5.計画している職員体制

事 業      正規     非正規    計

生活介護     8      2      10

生活訓練     5      2      7

就労移行支援   3             3

発達障害相談支援 2      1      3

ケアホーム    5      3      8

ショートステイ  2      1      3

管理者・調理・事務2      3      5

計        27      12      39

※ それぞれの事業の主たる担当は定めるが、生活場面への参加は避けられない。

※ 支援費収入は‘08を想定したため、改訂により職員数が若干増える可能性あり。

※ 初年度、最低配置基準にとどめる。

6.整備費用と資金計画 行政の財政的バックアップ

建築費(本体、設計管理、備品、外構、税)

一期     295,000千円

二期     288,000千円

計      583,000千円

資金計画

国・県補助金   157,000千円

民間補助     57,000千円

自己資金     369,000千円

計         583,000千円

大津市の財政的援助

① 自己資金のうち230,000千円の借り入れの元利償還負担。

② 建設用地 無償借受

③ 初年度限定運営資金 30,000千円

開設 10月(0.5年 職員雇用 4月)

生活訓練、就労移行支援は1年目 50%

生活介護もケアホーム開設との関係で初年度定員を充足できない対策として。

④ 「大津市重度障害者地域生活支援事業費補助金交付」事業

「重心」「要医療」の障害者のケアホーム利用100,000円/月・1人加算

⑤ ケアホーム整備(新築、改修)

県1/3 市 1/3(上限あり)

※ 国庫補助の対象となったことによる見直しも?

自己資金の大津市による元利償還負担以外の負担軽減と第3次計画ともいえる拠点機能を強化するための資金調達と市民理解を深めてもらうため後援会とは別に「つくる会」が立ち上がり活動を始めている。

7.計画に関する検討すべき意見とその対応

「重い人たちのケアホーム利用は無理」、「移行する施設・ケアホーム整備がすすまないのでは? 結果として家族介護に戻らなければならなくなるのでは」など親亡き後の安心としての「終の棲家」づくりの運動を進めてきたのに、「終の棲家」を別に求めることへの不安。

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・「つむぎの家」の試行 ‘08.10~

「ケアホーム」を新たに起ちあげ、こだわりが強く

家庭での介護が困難になった2人(近日中1人増)を受けとめ重い人たちのケアホームでの生活に必要な条件を明らかにするとともに不安を持つ親に安心感を持ってもらうための試行を始めた。(現状 職員2人、世話人以外に配置)

・自立支援協議会で「障害の重い人たちのケアホーム利用推進についての手だて」について政策提言をまとめるプロジェクト会議を起ちあげ決定。

・この計画の理解を深めてもらえるような「Q&A」の作成と説明会の実施。

財政問題

整備の法人負担を削減すべきであるという強い意見がだされ、併せて法人借入財源としてケアホームの「ホテルコスト」分(家賃)の一定部分を償還財源に充当することへの疑問。

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居宅介護事業所、日中一時事業の空間を実施設計で削除。地域生活をおくれるための支援の拠点づくりという機能が充分果たせない恐れがあり、できるだけ早い時期に計画を実現させる必要がある。

人材確保

「法人は近年事業量が拡大し、一定の経験を積んだ職員がそちらに異動し、現事業の利用者は落ち着かず不安だ。」「福祉職の求人に応募はあるのか。」

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法人研究研修部での初任者及び中堅職員研修のプログラムにそって。

今回は、4月職員採用で10月開所という時間的余裕を有効に利用。

8.計画と今後の課題

・入所施設・長期入院から地域生活への移行は漸増しているが、退所・退院者数に相当する人数が新たに入所・入院しているという統計をどうみるか?大津市でも唯一の入所更生施設の入所待機者が50人いることと「地域移行」を推進しようとするそのギャップを埋めることが、今回のこの計画の目標を達成させることである。

待機者50人が何故ケアホームでなく入所施設なのかを分析し、どうすれば地域のケアホームを選択することができるのか先にあげた自立支援協議会のプロジェクト会議であきらかにしていくことに試行事業「つむぎの家」~北部複合施設(仮称3月27日正式名称決定予定)を通して貢献したい。先進的な取り組みをしている、いくつかの地域生活支援のための財政的措置は今回の支援費単価改定による増収よりもはるかに上回っている。「むぎの家」の職員配置でも同様のことが明らかである。(北部複合施設でもケアホームの職員配置では対応できず、多機能型施設の職員に頼らざる得ない現実も同様)家族の不安もそこに起因しているのではないか。

同様の問題として、今回の整備事業をすすめていて?独型短期入所事業の施設整備の国庫補助や民間補助事業が存在せず全額自己負担となった。入所施設に併設する短期入所事業のみを整備補助の対象とすることは入所施設建設を抑制する施策のなかで、「地域移行」をバックアップする短期入所事業に国は責任を負わないと表明したものであり「地域移行」をスローガンにとどめない財政的措置を望みたい。

日元久勝(おおつ福祉会 常務理事

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