今回の訪問調査では、休職または病気欠勤後、復職した事例 5 人、同じ事業所に継続して就労した事例 3 人、視覚障害者として新規に就職した事例 3 人、退職後、別事業所に再就職した事例 4 人を取り上げた。復職した事例は、中途視覚障害という困難を乗り越えて、企業側の理解を得ながら再び職場に戻った人たちである。そこには、厳しい企業環境の中で自らの仕事を確立していくため、大変な努力を払っている視覚障害者の姿が浮かび上がってくる。特に、事故で失明した後、早期のロービジョンケアに出会ったおかげで、わずか 3 年間で事務職として復職できた藤田さんのケースは、医療と行政、 そして視覚障害リハビリテーションや職業訓練との連携がいかに大切かを示している。また、休職せずに継続して働き続けている事例もそれぞれ状況は異なるが、会社に貢献しながら働き続ける道を必死になって探った、本人たちの努力の結果であることを示している。
視覚障害者として新規に就労した事例や再就職した事例では、採用した事業所側が合理的配慮をしつつも、入社した視覚障害者が生き生きと働いている姿に、事前に予想したほど受け入れは大変ではなかったという担当者の安堵感が伝わってくる。本人たちも努力を重ねて、定着するために頑張っているが、一定の配慮をすれば、視覚障害者の受け入れは十分に可能であるということを示している。継続就労と再就職の事例には、1 例ずつ在宅就労が含まれているのも興味深い。視覚障害者の在宅就労の事例は余り多くなく、今後、在宅就労の方策を探る上でも、貴重な情報を提供している。
もちろん、全てがうまくいっている訳ではなく、中には改善して欲しい問題を抱えているケースも含まれている。そうした要望を上司や同僚にうまく伝えられているケースもあれば、なかなか伝えられなくて困っているケースもある。そこには、互いに気持ちよく働き続けるために、そして視覚障害者の能力をさらに引き出すためにもコミュニケーションをとりながら、問題解決にあたっていくことの大切さが浮かび上がってきている。人事担当者とのより一層の面談を希望しているケースも含まれていた。企業側の担当者が職場に定着していることを喜びつつも、より一層のキャリアアップを望んでいることも注目に値する。それは、働いている視覚障害者が職場のお荷物などではなく、貴重な戦力と捉えられていることを示している。調査させていただいた皆様 のより一層の奮闘と活躍を期待したい。
今回の訪問調査の対象は重度視覚障害者が多く、その方々が営利を求める民間企業の事業所で自らの仕事を確立して働いていることが調査で明らかになった。報告した事例は、受け入れる事業所側の「合理的配慮」さえあれば、視覚障害者でも戦力として共に働けることを示している。これらの報告事例が、一人でも多くの企業側担当者の目に留まり、今後の視覚障害者の雇用促進や雇用継続に役立つことを念じてやまない。
最後に、今回、訪問調査にご協力いただいた視覚障害者と企業側担当者に深く感謝いたします。貴重な時間を割いて、最終確認いただいた報告書原案から一部、紙面の都合で割愛した部分があったことをお詫び申し上げます。
①氏名、性別、生年月日
②視覚障害の状況:視力と視野、障害程度、障害発生年月、障害の原因・眼疾、障害者手帳所持の有無と取得年月、白杖または点字の使用の有無
③視覚障害に伴う休職の有無、有の場合は休職の時期・期間
④視覚障害に伴う離・転職または職種転換の経験の有無、有の場合はその時期
⑤視覚障害または就労について相談したことのある支援機関
⑥社会復帰のための訓練(歩行訓練や生活訓練等)または職業訓練の受講経験の有無、有の場合は訓練内容、受講した施設と期間
⑦現在の所属、職種(事務職、技術職等)、現所属での在職期間
⑧現在の雇用形態(雇用契約の有期・無期、フルタイムとパートタイムの別)
⑨最終学歴、所有している資格
⑩業務で利用している視覚障害者用機器・ソフトウェア
①業務の具体的内容
②業務に関する指示・命令系統、他の人との業務上の連携
③出張の有無、頻度
④職場における人的支援の状況と必要性(専門のアシスタント、周囲の自然な支援、外部ボランティアなど)
⑤利用している視覚障害者用機器・ソフトウェアへの満足度、そのマスターのための研修の必要性、更に望まれる機器・ソフトウェアの機能
⑥社内研修の受講状況、その他の研修の受講、研修の必要性
⑦業務遂行上工夫していること、必要と感じる支援、課題と感じること
⑧業務面で会社が配慮してくれる事柄
⑨業務面で相談する相手
⑩視覚障害者として勤務するようになって以降に、業務内容の変更があったかどうか。変更ありの場合は前の業務内容、変更することとなった理由
①通勤と職場での移動:通勤時間、慣れるまでの歩行訓練の必要性、安全性確保のための工夫、苦慮する点、設備面で望むこと
②上司・同僚・外部関係者とのコミュニケーションや電話対応、回覧文書の処理で工夫していること、課題と感じること
③昼休みなどの休憩時間の過ごし方、勤務時間後の宴席、親睦会等への参加の状況
①視覚障害による業務遂行上の困難さを感じた時期(在職何年目ころか、その期間)、感じた困難の状況
②その困難に関する相談の有無、相談した相手(職場の上司や同僚、眼科医、公的機関、障害者団体等)、受けた助言
③復職に向けて準備したこと(各種訓練の受講等)
④休職した場合は、休職する必要があると判断した理由
⑤復職するまでに会社側が配慮してくれたこと
⑥復職前後での業務内容変更の有無、有の場合は変更前の業務内容
①現職に就くまでに求職活動に要した期間
②就職のための支援を受けた機関、その機関の支援の状況と課題
③就職のための面接時に工夫したこと、面接した会社の対応に関する感想
④離職経験がある場合は、前職の業務内容、前職に就いていた期間、離職年月、離職と視覚障害の関係
ご協力ありがとうございました。
なお、冒頭の「1 確認させていただきたい基本的な事柄」については、事前にお答えいただき返送もしくは当日頂戴できればありがたく存じます。
事業所名
本人との関係(上司、同僚、人事担当者)
役職名
氏名
(1)本人の仕事面での状況はどうでしたか。
(2)本人が仕事以外の状況(通勤や所内での移動、社員間や上司とのコミュニケーション、文書などの読み書き等)で、何か困難な状況に陥っていると感じましたか。
(3)眼科医(医療機関)や就労支援機関(公共職業安定所、障害者職業センター等)と、本人の状況について相談しましたか。
(4)視覚障害者に対する生活訓練(歩行・パソコンの訓練等)や職業訓練等の情報を得ていましたか。
(5)視覚障害となった社員が生活訓練、職業訓練を受けることについて、病気休暇、休職、研修制度が適用されますか。されるとすれば、どのように適用されていますか。
(1)休職の理由は何でしたか。
(2)休職に対して、産業医や会社側の考えはどのようなものでしたか。
(3)休職に際して、会社側が本人に配慮した点はありますか。
(4)休職する際に、復職させることは決まっていましたか。
(5)休職中、本人の眼の状況や復職への準備状況について、本人から報告を受けましたか。
(1)本人の復職を認めた理由は何ですか。
(2)復職に際して、眼科医(医療機関)や就労支援機関(公共職業安定所、障害者職業センター、職業訓練施設等)と相談しましたか。
(3)復職後、担当させた業務は休職前の業務と違っていましたか。
(4)復職に当たって或いは復職後に、会社側として本人に配慮した事項はありますか。
(5)復職後の業務遂行に関して、拡大読書器やスクリーンリーダ、画面拡大ソフトウェアなど必要な機器やソフトウェアを購入しましたか。また、それらの購入に際して、助成金を申請しましたか。
(6)復職後、本人から相談を受けたことはありますか。また、その内容は何でしたか。
(7)復職後、本人の処遇に関して、何か困ったことはありましたか。
(8)今後、本人に期待することは何ですか。
3 新規に視覚障害者を採用された事業所にお訊ねします。
(1)どのような経緯で本人の面接をしましたか(求人に対する応募、就職相談会など)。
(2)本人を面接した印象はどうでしたか。
(3)視覚障害者を採用するにあたって、不安な点は何でしたか。
(4)採用に当たって、就労支援機関(公共職業安定所、障害者職業センター、職業訓練施設等)と相談しましたか。
(5)採用の決め手となったことは何でしたか。
(1)入社後、担当させた業務はどのような経緯で決まりましたか。
(2)入社後、会社側、職場の同僚などが配慮したことは何ですか。
(3)入社後の業務遂行に関して、拡大読書器やスクリーンリーダ、画面拡大ソフトウェアなど必要な機器やソフトウェアを購入しましたか。また、それらの購入に際して、助成金を申請しましたか。
(4)入社後、本人から相談を受けたことはありますか。また、その内容は何ですか。
(5)入社後、本人の処遇に関して、何か困ったことはありましたか。
(6)今後、本人に期待することは何ですか。
(1)本人の仕事面での状況はどうでしたか。
(2)本人が仕事以外の状況(通勤や所内での移動、社員間や上司とのコミュニケーション、文書などの提出など)で、何か困難な状況に陥っていると感じましたか。
(3)本人から相談を受けたことはありますか。また、その内容は何でしたか。
(4)眼科医(医療機関)や就労支援機関(公共職業安定所、障害者職業センター等)と、本人の状況について相談する必要性を感じましたか。
(5)本人が働き続けられるように特に配慮したことはありますか。
(1)現在、本人が担当している業務は、視覚障害になる前と違っていますか。違っている場合、どのような経緯で担当業務を割り当てましたか。
(2)本人が働き続けるために必要な拡大読書器やスクリーンリーダ、画面拡大ソフトウェアなどの機器やソフトウェアを購入しましたか。また、それらの購入に際して、助成金を申請しましたか。
視覚障害者の就労について、支援制度や施策面で何かご意見はありますか。あればお聞かせ下さい。
貴事業所について
①事業所名
②ヒアリングでお答えいただく方の所属、役職名、氏名
③事業所の規模(社員数)、視覚障害社員が所属する部署の規模
④事業所が携わる主な業種
⑤視覚障害社員の採用または復職について相談した機関等(ハローワーク、医師、カウンセラーなど)
⑥視覚障害社員の雇用・職場定着のために利用した支援制度(各種助成金、機器の貸出、雇用管理サポートなど)
ご協力ありがとうございました。
なお、末尾の「貴事業所について」は基本事項として事前にお答えいただき、返送もしくは当日頂戴できればありがたく存じます
表 2.3 調査報告内のソフトウェア製品名または機器名一覧(順不同)
ソフトウェア名 | 製造元または販売元(2008 年現在) |
XP Reader ま た は 95 Reader ver.6.0 | 株式会社システムソリューションセンターとちぎ |
JAWS for Windows | 有限会社エクストラ、Freedom Scientific, Inc. |
FocusTalk | 株式会社スカイフィッシュ |
PC-Talker XP または PC-Talker | 株式会社高知システム開発 |
MyMail、MyWord V、MyRead | いずれも株式会社高知システム開発 |
NetReader | 株式会社高知システム開発 |
ZoomText Magnifier またはZoomText Xtra または ZoomTextc | 日本電気株式会社、Algorithmic Implementations,In |
ホームページ・リーダー | 日本アイ・ビー・エム株式会社 |
Lotus Notes、Lotus 1-2-3 | 日 本 ア イ ・ ビ ー ・ エ ム 株 式 会 社 、 International Business Machines Corp. |
ALTAIR for Windows | 財団法人日本障害者リハビリテーション協会 |
Adobe Reader | Adobe Systems Inc. |
一太郎ム | 株式会社ジャストシステ |
サイボウズ | サイボウズ株式会社 |
Microsoft Access または Access | マイクロソフト株式会社、Microsoft Corporation |
Microsoft Excel または Excel | マイクロソフト株式会社、Microsoft Corporation |
Microsoft Word または Word | マイクロソフト株式会社、Microsoft Corporation |
Microsoft PowerPoint またはPowerPoint | マイクロソフト株式会社、Microsoft Corporation |
Windows Messenger | マイクロソフト株式会社、Microsoft Corporation |
SharePoint Portal Server | マイクロソフト株式会社、Microsoft Corporation |
Office OneNote | マイクロソフト株式会社、Microsoft Corporation |
ラベルライタ「テプラ」PRO | 株式会社キングジム |
ブレイルメモ BM24 またはブレイルメモ | ケージーエス株式会社 |
アシストビジョン・ネオ AV-100 | 株式会社タイムズコーポレーション |
イージーアイポケット | 株式会社ベスマックス |
らくらくリーダー | アイネット株式会社 |
らくらく予定帳、名刺の助っ人 | アイネット株式会社 |
よみとも | 株式会社アイフレンズ(開発元 株式会社 IRI ユビテック) |
ものしりトーク | パナソニックコミュニケーションズ株式会社 |
プレクストーク PTR2 | シナノケンシ株式会社 |
docomo らくらくホン | 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ |
IC レコーダ ICR-S310RM | 三洋電機株式会社 |