本調査研究は、端的にいえば、事務処理技術と相談支援の在り方について、訪問調査を踏まえ、どうあるのがよいかを追究することにある。
事務処理技術とは一体どのようなものなのか。これについて、明確にされてはいない。視覚障害者がパソコンを駆使するという技術レベルをどのように評価し、基準をどのレベルにおくか。働く視覚障害者自身の努力によって、パソコンスキルを向上させ、仕事上の壁を乗り越えてきていて、現状では、あえて問題として取り上げられていない。事例のなかでは事務処理技術の側面で課題や解決しなければならない点は浮かび上がってこなかった。事務処理技術といっても、バソコンスキルだけではない。業務遂行上の諸々の問題解決能力も包含されるだろう。今後の課題としたい。
また、相談支援の在り方については、諸機関の連携、協力の重要性が浮き彫りにされた。①中途視覚障害者そして本人を取り巻く周囲の視覚障害の理解と障害の受容、②早期の視覚障害リハビリテーション、③眼科医の関わり方、④適切な情報提供、⑤眼科医と雇用主・産業医・ハローワークなどとの連携協調、⑥そして当該中途視覚障害者を支援する視覚障害当事者を含む支援団体の諸機関との連携の重要性が浮かび上がった。
ハローワークにはコーディネートの役割を担うよう心がけていただきたい。『視覚障害者の雇用継続支援実用マニュアル〔関係機関ごとのチェックリスト付〕~連携と協力、的確なコーディネートのために』を参考にしていただきたい。
働き続けたいと願う中途視覚障害者は、受障当初に、ハローワークに直接相談することはまずない。まず、眼科医が受け止めて悩みや心配事を聴く立場になる。その後、本人から職場の上司等が視覚障害を来たしてきていることを打ち明けられた時に、どのようにしたらよいかをハローワークに相談するのが通常だろうと思うが、実際に相談するのはどのぐらいあるだろう。是非そうして欲しいし、それがハローワークとしても当然と受け止められるように中途視覚障害者の継続雇用支援について、積極的な取り組みをお願いしたいところなのである。参考資料「視覚障害者に対する的確な雇用支援」を巻末に掲載。
職業訓練の重要性も出てきている。受講させるための休暇制度の問題も大きな課題である。参考までに巻末に 2007 年 1 月 29 日、人事院から「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」を掲載しておく。
なお、平成 9 年に行われた「中途視覚障害者の職場復帰に関する研究会報告」(抜粋)を参考資料として掲載させていただくこととした。12 年前と現在とでは、職場環境の変化は大きいが、基本的な考え方と課題は、今とあまり変わらないし、解決が今もってなされていない事柄も多いことを改めて見直すいい機会でもあると思う。(篠島 永一)
書名 視覚障害者の就労の基盤となる事務処理技術及び医療・福祉・就労機関の連携による相談支援の在り方に関する研究報告書
発行日 平成 21 年 3 月 31 日
発行者 特定非営利活動法人タートル
発行責任者 下堂薗 保
DTP 東京コロニー・職能開発室
印刷 清和印刷
連絡先 NPO法人タートル(通称:中途視覚障害者の復職を考える会)事務局
〒160-0003 東京都新宿区本塩町10-3
電話(03)3351-3208
社会福祉法人日本盲人職能開発センター東京ワークショップ内
■URL http://www.turtle.gr.jp/
■NPO法人タートルの連絡用メール mail@ turtle.gr.jp