障害者の福祉サービス利用の仕組みに係る国際比較に関する調査研究事業
我が国では障害者自立支援法の理念である「障害者が地域で普通に暮らせる地域づくり」を進めており、3障害一元的な福祉サービスの充実が図られてきている。
一方で、今後とも増大が見込まれるサービス需要に対応するための財源確保や障害の状況に応じて適正に提供するサービス量を決定する仕組みづくりが求められているが、今後の検討を進めるに当たっての十分な情報が得られていない状況にある。
そこで、本事業は、障害者が日常生活上の利便を図るために利用する介護サービスをはじめとする福祉サービスのサービスメニューや利用の仕組みについて、欧米等の諸外国のデータを収集し、現状や課題の比較・分析を行うことにより、我が国の障害福祉サービスの利用に係る仕組みづくりの検討のための有用な情報を提供することを目的とする。
平成20年7月1日 から 平成21年3月31日
ヨーロッパ(イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー)、アメリカ(各州)、カナダ、オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド)より、専門家による検討委員会が、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデン、デンマーク、アメリカ(カリフォルニア州)の7カ国を選定した。
現地調査研究担当者に調査票を送付し、障害者に対するケアについて、「検討委員会が作成した4種類の障害モデルへの対応」と「介護要否判定方法」を中心としたレポートの作成を依頼した。
A.障害者介護サービスに関する調査
先行研究
『介護保険の被保険者・受給者の範囲に関する外国調査報告書』
(財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構、平成18年度老人保健健康増進等事業研究報告書、2007年3月)
B.モデルに関する調査
4種類の障害モデル(視覚障害、頚髄損傷、知的障害、精神障害)への対応(相談・判定・サービス供給までの流れ)についての調査を行なった。
本調査は、同じような状態像の人へのサービスが具体的にイメージでき、かつ、各国間で比較できるようにということで設定した。
自治体の窓口、ソーシャルワーカー、モデルの障害に近い当事者などから具体的にお話を伺い、どのような介護サービスが受けられるのか、どういう手続きで申請して、どんな判定が出るのか、その基準や根拠が具体的にわかる資料として記述してもらえるように、各調査員に依頼した。
なお、介護サービスには、身体介護だけでなく、見守りや指導のようなサービスも含むとした。
提示したモデルは、次の通りである。
モデル1:全盲 性別:男性 年齢:45歳 家族:単身 視力:左右とも0 病歴:糖尿病性網膜症のために失明 ADL: IADL: 移動能力: 職業:なし。 社会活動: |
モデル2:頸髄損傷 性別:男性 年齢:45歳 家族:単身(24時間介護を希望している) 障害程度: 病歴:スポーツ事故により頸髄を損傷。 ADL:食事、衣服の着脱、排泄、入浴など全介助。嚥下は、介助なしで可能。 IADL:基本的に不能。 移動能力: 職業:なし。 社会活動: |
モデル3:知的障害 年齢:男性21歳 家族:父48歳(会社員)、母47歳(パートタイム)、姉23歳(派遣会社) 地域:人口20万人の地方都市 障害名:広汎性発達障害(自閉症)、精神遅滞 経過: 療育手帳:4歳で取得。重度。 年金:障害基礎年金1級(月額88,000円) 自己負担:生活介護及びホームヘルプ等月額3,000円 サービス: その他: |
モデル4:精神障害 性別:男性 年齢:40歳代 家族:単身 病歴:統合失調症 ADL: IADL: 移動能力: 職業:なし。 社会活動: |
各モデルについては、次のことを留意点とした。
モデル1:
ガイドヘルパーは介護サービスとして提供されているか。
また、ガイドヘルパーはどのような場合に派遣されているか。病院や市役所に行くときなどに限定されているかどうか。
視覚障害者は要介護度が低く評価されることはないか。低く評価されていないとしたら、何か工夫をしているのか。
モデル2:
このモデルの場合、日本では24時間のパーソナルアシスタントの費用を行政機関が負担しているため、夜間でも介助者をそばにずっと待機させることもできる。対象国ではどのようになっているか。(ずっと待機するのではなく、緊急時に駆けつけられる体制になっている・・・など。)
同じような制度がある場合はどのように手続きをするか。
モデル3、モデル4:
日本では、このモデルは、デイサービス、ホームヘルプ(家事援助)、ショートステイのサービスを行政機関から受けられる。対象国ではどうか。
C.障害児に関する調査
各国の障害児に関する施設について概観するために、補足的に以下の項目を調査した。
a)障害児施設の種別と数
どのような障害児施設があるか。(介護に限らない。)
b)利用の条件
その施設を利用できるのはどのような障害児か。
c)予算
施設の運営に使われる国または地上自治体の予算はいくらか。
専門家による検討委員会により、収集したデータの比較・分析を行い、我が国の障害福祉サービスの支給決定プロセスの仕組みの見直しに係る政策提言をまとめた調査研究報告書を作成する。