発達に障害のある子どものソーシャルスキルと社会参加に関する調査・支援事業 報告書

社団法人 精神発達障害指導教育協会

理 事 長  金 子  健

別紙3(調査研究事業の場合)

発達に障害のある子どものソーシャルスキルと社会参加に関する調査・支援事業

社団法人 精神発達障害指導教育協会

理 事 長  金 子  健

(報告書 A4版 22ページ)

 

事業目的

発達に障害のある子どもの障害の状態、障害程度、社会性と、ソーシャルスキルや社会生活能力について、家族や指導者による評価を行い、その関係を明らかにすること。さらに、支援の際の留意点などについて検討する。

また、この調査によって得られた知見を、ガイドブックと映像教材に反映させる。

 

事業概要

1.調査研究の内容

以下の事項について、障害のある子どもの保護者、本人に聴取した。

◎発達障害児の性別、年齢、診断名、知能・発達指数

◎社会性の発達段階

◎社会生活力の実態

◎身辺処理能力の実態

 

2.方法

社会生活能力検討委員会を設置し、社会性の評価、社会生活力、身辺処理能力の評価とその方法について、検討を行い、調査票を作成した。東京都近郊の発達障害児・者とその家族812名に、調査票を送付し、返送してもらった。返送は、512通、63%の回収率であった。

アンケート結果の入力、集計、分析等については、株式会社教育ソフトウェアに委託して行った。

【委託先 株式会社 教育ソフトウェア  〒 192-0071 八王子市八日町6-5】

 

事業結果

1.子どもの年代

子どもの年代で最も多かったのは、小学校の高学年、次いで、小学校低学年、中学生であった(表1)。

 

2.診断種別

今回の調査においては、診断名については、診断機関での情報を元に、判断している。その結果、診断種別としては、広汎性発達障害(以下PDD)と精神遅滞(以下 MR)の合併群が最も多く、40%弱を占めていた。ついで、 PDD群、 MR群と続いている。

表1 子どもの年代の分布

全体

回答数

回答率

1

幼児

70

13.8%

2

小学校低学年

127

25.1%

3

小学校高学年

159

31.4%

4

中学生

104

20.6%

5

高校生

40

7.9%

6

社会人

6

1.2%

 

有効計

506

100.0%

 

無効回答

6

-

 

表2 診断群について

 

全体

回答数

回答率

1

MR群

110

21.6%

2

PDD群

130

25.5%

3

PDD+MR群

202

39.7%

4

ADHD群

27

5.3%

5

ADHD+MR群

9

1.8%

6

その他群

31

6.1%

 

有効計

509

100.0%

 

無効回答

3

-

 

3.知能・発達の程度について

知能、発達の程度については、知的障害の程度別に最重度・重度(知能指数、発達指数 35以下)を A群、中度(知能指数、発達指数36~50)を B群、軽度(知能指数、発達指数51~70)を C群、ボーダーライン児(知能指数、発達指数71~85)を D群、知的障害なしを N群として、 5群に分けた。その分布は以下の通りである。

表3 知能・発達の程度による分布

程度

人数

割合

最重度・重度 A群

121

23.6%

中度 B群

105

20.5%

軽度 C群

82

16.0%

ボーダーライン D群

51

10.0%

ノーマル N群

147

28.7%

空白

6

1.2%

 

512

100.0%

 

4.社会性との関係

本協会では、独自の指標に基づき、子ども達の社会性の発達段階を評価している。

その指標は、アルファベットで示され、相当する年齢は、おおむね以下の通りである。

表4 社会性の発達と相当する年齢

 

年齢

0歳

1 歳

2 歳

3 歳

4 歳

5 歳

6 歳

7 歳

8 歳

今回の対象者について、社会性から見た分布は表5の通りとなっている。

表5 社会性の発達から見た分布

社会性段階

人数

割合

A

20

3.9%

B

101

19.7%

C

108

21.1%

D

89

17.4%

E

73

14.3%

F

86

16.8%

G

18

3.5%

H

7

1.4%

I

2

0.4%

空白

8

1.6%

 

512

100.0%

 

5.本人のソーシャルスキルについて

まず初めに、「ソーシャルスキル」という用語だが、これをどのようにとらえるかについては、研究者によってその定義は異なるといってよいだろう。

ソーシャルスキルは、「社会技能」といわれたり、「社会の中で普通に他人と交わり、共に生活していくために必要な能力である」といわれることもある。しかし、社会生活のために必要な能力というだけで、具体的な内容とその範囲については、明確ではないことが多い。

たとえば、安住、三島は、ソーシャルスキルを「その人が属している集団の中で求められる適切な言動が取れる技能」としている 1)。さらに、ソーシャルスキルと、生活スキルを区別し、生活スキル(ライフスキル)とは、狭義の身辺処理だけにとどまらず、成人してほぼ自力で独居生活を営むことが可能な生活スキル項目である、としている2)。

また、一方、リハビリテーションには、社会リハビリテーションという一つの分野があり、そこに社会生活力という用語がある。社会リハビリテーションとは、「社会生活力を高めることを目的としたプロセスである。社会生活力とは、さまざまな社会的な状況の中で自分のニーズを満たし、一人ひとりに可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力を意味する( RI、1986)」ここでは、障害のある人が自分の障害を理解し、自分に自信を持ち、必要なサービスを活用して、自らの人生を主体的に生き、社会参加していく力を「社会生活力」だとしている。具体的には、25のモジュールと呼ばれる単位ごとに、内容が決められており、健康管理、食生活、セルフケア(トイレ、歯磨き、入浴など)、衣類管理、買い物などが含まれている。

私たちは、これまでの経験から、ソーシャルスキルとは、社会参加のための言動も含めたさまざまな技能である、ととらえ、「社会生活力」とよんできた。さらに、そのベースになるものとしては、個人の「生活力」があり、本調査では、それらもソーシャルスキルに含めて、広くとらえることとした。

私たちは、上記の考え方に基づいて、以下の項目について、保護者に評価を実施してもらった。各項目について、0~5までの 6段階に分けて、表6の表現を目安に評価してもらい、その結果について、分析を行った。

 

表6 評価の 6段階

0.未実施(やらせることを思いつかなかった、年齢的に対象外)

1.まったくできない 

2.多くの援助でできる(大人の手伝いがある) 

3.多少の援助でできる(条件を整えたり、声かけもある) 

4.ほぼできる(声かけなしで行い、できたりできなかったりする)

5.完全にできる

表7 生活力に関する聴取 76項目(領域別)

Ⅰ<<食事  28項目>>

Ⅰ -1 そしゃく

Ⅰ -2 コップで飲む

Ⅰ -3 スプーンで食べる(すくう)

Ⅰ -4 フォークで食べる(さすなど)

Ⅰ -5 箸を使う

Ⅰ -6 ストローで飲む

Ⅰ -7 偏食(苦手なものでも食べる)

Ⅰ -8 器を持って食事をする

Ⅰ -9 こぼさずに食べる

Ⅰ -10 適切な食事をとる

Ⅰ -11 外食ができる

Ⅰ -12 お盆にのせて運ぶ(食べ物・飲み物)

Ⅰ -13 コップに注ぐ(500ml程度の牛乳パックなどから液体を注ぐ)

Ⅰ -14 配膳を手伝う

Ⅰ -15 食後のテーブル片付け

Ⅰ -16 テーブル拭き

Ⅰ -17 よそう

Ⅰ -18 食器拭き

Ⅰ -19 食器を洗う

Ⅰ -20 皮むき器(ピ-ラ-)で皮をむく

Ⅰ -21 包丁を使う  

Ⅰ -22 ごはんをたく

Ⅰ -23 包丁で皮をむく

Ⅰ -24 包丁の管理(扱い)

Ⅰ -25 缶切りを使う

Ⅰ -26 火を使って調理をする

Ⅰ -27 電子レンジを使う

Ⅰ -28 献立てを立てる

Ⅱ<<着脱  17項目>>

Ⅱ -1 パンツ、ズボンを脱ぐ

Ⅱ -2 靴を脱ぐ(短靴)

Ⅱ -3 靴下を脱ぐ

Ⅱ -4 トレーナー、シャツを脱ぐ

Ⅱ -5 パンツ、ズボンをはく

Ⅱ -6 トレーナー、シャツを着る

Ⅱ -7 靴下をはく

Ⅱ -8 靴をはく(短靴)

Ⅱ -9 衣服をたたむ(トレーナーの場合)

Ⅱ -10 すそを入れる

Ⅱ -11 前開きシャツを着る

Ⅱ -12 ファスナーの開閉

Ⅱ -13 ボタンをはめる

Ⅱ -14 かぎホックをする

Ⅱ -15 スナップをする

Ⅱ -16 衣服の調節

Ⅱ -17 ハンガーを使う

Ⅲ<<排泄  6項目>>

Ⅲ -1 小便をする男)(女)

Ⅲ -2 大便の始末

Ⅲ -3 排泄の意識

Ⅲ -4 排泄後の身じまい

Ⅲ -5 ペーパーカット

Ⅲ -6 和式トイレを使う

Ⅳ<<清潔  25項目>>

Ⅳ -1 手を洗う

Ⅳ -2 手を拭く

Ⅳ -3 歯を磨く

Ⅳ -4 うがいをする

Ⅳ -5 鼻をかむ

Ⅳ -6 顔を洗う

Ⅳ -7 体を洗う

Ⅳ -8 頭を洗う

Ⅳ -9 体の泡を流す

Ⅳ -10 髪の泡を流す

Ⅳ -11 シャワーを使う

Ⅳ -12 爪を切る

Ⅳ -13 耳垢を取る

Ⅳ -14 髪をとかす

Ⅳ -15 床屋にいく

Ⅳ -16 髭をそる

Ⅳ -17 整理<片付け>

Ⅳ -18 タオルをたたむ

Ⅳ -19 洗濯物を手で洗う(ハンカチ、靴下、下着などの小物)

Ⅳ -20 洗濯物を干す

Ⅳ -21 洗濯機で洗濯をする

Ⅳ -22 寝具の準備(蒲団を敷く)

Ⅳ -23 寝具の片付け(蒲団をたたむ)

Ⅳ -24 ほうきで掃く

Ⅳ -25 掃除機をかける

表8 社会生活に関する聴取 38項目

(タイプ Aとして、 1~24まで、タイプ Bでは、1~38までを聴取した)

1)慣れたところなら一人で行くことができる             

2)ぬれないように傘をさすことができる               

3)信号が分かり、状況を見て渡ることができる            

4)一人で交通機関(電車、バス)を利用することができる       

5)日用品の買い物ができる                     

6)自分の持ち物(園や学校の荷物等)の管理ができる         

7)自分のお金の管理(一ヶ月単位、お小遣い帳の記入)ができる    

8)時間を意識して行動することができる               

9)一時間以上留守番することができる                

10)電話に出て受け答えができる                   

11)手紙が書ける(住所、年賀状等)            

12)だめ、いけません、と止められた時に行動を止めることができる   

13)欲しいものを身振りやカード、言葉等を用いて伝えられる       

14)お兄ちゃん、お姉ちゃんと言われて喜ぶ

15)自分の順番が分かり、順序よく並ぶことができる          

16)「~したら**」という行動の見通しがもてる(片付けをしたらおやつ等) 

17)入れて、貸して等と言って許可を求めたり、待つことができる    

18)指示されたことや頼まれたことにすぐに応じることができる     

19)大人が側にいなくても、よいと言うまで待つことができる     

20)大人から指摘された後は、感情の自己コントロールができる     

21)全体指示で自分のするべきことが分かり、参加できる        

22)喜怒哀楽にあった表情をしたり、声や言葉で気持ちを表現できる   

23)自分のものと他人のものの区別ができ、勝手に人のものは使わない  

24)分からないときやできないとき、困ったときに援助を求めることができる

25)勝ちたい、うまくなりたいという意欲があり、練習をする      

26)特別な行事や大勢の人が集まる場所でも落ち着いていられる     

27)約束が守れる(宿題など、大人から指示されたことを意識して行動できる)

28)ルールのある簡単なゲームができる(じゃんけん、カルタ、鬼ごっこ等)

29)園や学校等での活動の際に自分の意見の提案ができる

30)仲間に声援を送ったり、喜びを共有できる             

31)場面や相手に合わせて行動することができる            

32)どうして?と聞かれ、一般的な理由を答えることができる      

33)自分のとった行動に対して、理由付けができる           

34)小さい子やお年寄りに席を譲ることができる            

35)自分のしたことがよいか悪いか判断でき、次はやらないように気をつけることができる

36)自分から挨拶することができる                  

37)教室内のルールが守れる(着席、発言)               

38)与えられた係・仕事を自発的に行える

 

結果と考察

1.生活力について

①各年代とその生活力

生活力の76項目について、記入された評価点の平均点を算出し、それらについて、検討をおこなった。評価点が、平均 4点以上、つまり「ほぼできる」以上という項目をあげ、年代ごとに、増えていく項目を表にした。

表9、表10より、幼児期には食事の基本的な項目、食器具を使うことなどができるようになり、小学校の低学年期になると、食事から着脱に広がり、さらに、排せつの項目ができるようになることがわかる。表11、表12より、洗髪、身体を洗う、歯を磨くなどの清潔面、器を持って、こぼさずに食べるなどのマナー面もできるようになる。皮むき器を使う、配膳を手伝う、などの手伝いもできるようになる。

以上のことから、年代があがることによって、獲得されていく項目、つまり生活スキルはふえていくことが明らかとなった。また、その内容は、質的にも変化が見られ、個人に直結している食事面が最も早く獲得される。障害のある子どもにとっては、実感としてとらえにくいといわれる、ばい菌や病気の予防に関連する清潔面、またマナーに関することなどについても、地道な働きかけの結果、時間をかけて、獲得されていくものであることが明らかとなったといえる。

 

表9 幼児 平均点4以上の6項目

 

No.

設問

平均点

Ⅴ -Ⅰ -06

ストローで飲む

4.48

Ⅴ -Ⅰ -02

コップで飲む

4.40

Ⅴ -Ⅳ -04

うがいをする

4.24

Ⅴ -Ⅰ -03

スプーンで食べる

4.19

Ⅴ -Ⅱ -02

靴を脱ぐ(短靴)

4.08

Ⅴ -Ⅰ -04

フォークで食べる

4.02

 

表10 小学校低学年 平均点4以上 23項目のうち、ふえたもの17項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅱ -08

靴をはく(短靴)

4.77

Ⅴ -Ⅱ -01

パンツ、ズボンを脱ぐ

4.69

Ⅴ -Ⅱ -04

トレーナー、シャツを脱ぐ

4.65

Ⅴ -Ⅱ -05

パンツ、ズボンをはく

4.59

Ⅴ -Ⅲ -03

排泄の意識

4.58

Ⅴ -Ⅱ -12

ファスナーの開閉

4.54

Ⅴ -Ⅱ -03

靴下を脱ぐ

4.51

Ⅴ -Ⅱ -06

トレーナー、シャツを着る

4.50

Ⅴ -Ⅲ -04

排泄後の身じまい

4.49

10

Ⅴ -Ⅳ -14

髪をとかす

4.48

11

Ⅴ -Ⅱ -07

靴下をはく

4.39

12

Ⅴ -Ⅱ -15

スナップをする

4.31

13

Ⅴ -Ⅱ -13

ボタンをはめる

4.30

14

Ⅴ -Ⅲ -02

大便の始末

4.19

15

Ⅴ -Ⅰ -01

そしゃく

4.17

16

Ⅴ -Ⅲ -01

小便をする

4.04

17

Ⅴ -Ⅲ -05

ペーパーカット

4.03

 

表11 小学校高学年 平均点4以上 36項目のうち、ふえたもの13項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅳ -11

シャワーを使う

4.22

Ⅴ -Ⅳ -02

手を拭く

4.20

Ⅴ -Ⅱ -11

前開きシャツを着る

4.20

Ⅴ -Ⅳ -18

タオルをたたむ

4.18

Ⅴ -Ⅰ -12

お盆にのせて運ぶ

4.17

Ⅴ -Ⅰ -05

箸を使う

4.15

Ⅴ -Ⅰ -13

コップに注ぐ

4.12

Ⅴ -Ⅳ -01

手を洗う

4.10

Ⅴ -Ⅳ -09

体の泡を流す

4.08

10

Ⅴ -Ⅰ -07

偏食(苦手なものでも食べる)

4.07

11

Ⅴ -Ⅳ -10

髪の泡を流す

4.03

12

Ⅴ -Ⅱ -09

衣服をたたむ(トレーナー)

4.02

13

Ⅴ -Ⅱ -10

すそを入れる

4.00

 

表12 中高校生以上 平均点4以上の 46項目のうち、ふえたもの9項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅳ -07

体を洗う

4.42

Ⅴ -Ⅱ -14

かぎホックをする

4.40

Ⅴ -Ⅰ -20

皮むき器(ピーラー)で皮をむく

4.31

Ⅴ -Ⅳ -08

頭を洗う

4.28

Ⅴ -Ⅰ -14

配膳を手伝う

4.27

Ⅴ -Ⅲ -06

和式トイレを使う

4.09

Ⅴ -Ⅳ -03

歯を磨く

4.06

Ⅴ -Ⅰ -09

こぼさずに食べる

4.02

Ⅴ -Ⅰ -08

器を持って食事をする

4.00

 

表13 平均点4以上の項目の領域別の傾向

領域

幼児

小学校低学年

小学校高学年

中高校生以上

Ⅰ食事

4

1

4

4

Ⅱ着脱

1

10

2

1

Ⅲ排せつ

0

5

1

1

Ⅳ清潔

1

1

6

3

 

6

17

13

9

一方で、なかなかできない項目については、平均点 2点以下をみてみると、中高校生以上まで、共通しているのが、①火を使って調理すると、②献立てをたてるの 2項目であった。

献立をたてることについては、メニューや栄養面に関する知識が求められること、また、火を使っての調理については、年齢が上がっても、「火」を使うことに対する家族の不安が反映されているのかもしれない、と考えられる。

 

②障害の程度と生活力

障害の程度については、知能指数、発達指数を参考に、5群に分類している(表3)。

障害程度の重度、最重度を A群、中度を B群、軽度を C群、ボーダーラインを D群、知的障害のない群を N群として、以下に、平均点4以上の項目を挙げる。

 

表14 重度、最重度 A群の平均点4以上の17項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅱ -02

靴を脱ぐ(短靴)

4.76

Ⅴ -Ⅰ -02

コップで飲む

4.71

Ⅴ -Ⅱ -08

靴をはく(短靴)

4.62

Ⅴ -Ⅰ -06

ストローで飲む

4.61

Ⅴ -Ⅱ -01

パンツ、ズボンを脱ぐ

4.55

Ⅴ -Ⅰ -03

スプーンで食べる

4.55

Ⅴ -Ⅱ -05

パンツ、ズボンをはく

4.40

Ⅴ -Ⅱ -03

靴下を脱ぐ

4.38

Ⅴ -Ⅱ -04

トレーナー、シャツを脱ぐ

4.36

10

Ⅴ -Ⅱ -12

ファスナーの開閉

4.31

11

Ⅴ -Ⅱ -06

トレーナー、シャツを着る

4.30

12

Ⅴ -Ⅲ -03

排泄の意識

4.25

13

Ⅴ -Ⅰ -04

フォークで食べる

4.24

14

Ⅴ -Ⅱ -07

靴下をはく

4.21

15

Ⅴ -Ⅲ -04

排泄後の身じまい

4.08

16

Ⅴ -Ⅱ -13

ボタンをはめる

4.06

17

Ⅴ -Ⅳ -14

髪をとかす

4.02

 

表15 障害程度 B群(中度)の平均点4以上の項目で、表14よりも増えた6項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅳ -04

うがいをする

4.38

Ⅴ -Ⅱ -15

スナップをする

4.22

Ⅴ -Ⅰ -01

そしゃく

4.11

Ⅴ -Ⅲ -02

大便の始末

4.09

Ⅴ -Ⅰ -07

偏食(苦手なものでも食べる)

4.03

Ⅴ -Ⅱ -11

前開きシャツを着る

4.01

 

表16 障害程度 C群(軽度)の平均点4以上の項目のうち、表14、 15より増えた 19項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅳ -18

タオルをたたむ

4.33

Ⅴ -Ⅳ -09

体の泡を流す

4.31

Ⅴ -Ⅳ -02

手を拭く

4.31

Ⅴ -Ⅰ -12

お盆にのせて運ぶ

4.27

Ⅴ -Ⅳ -10

髪の泡を流す

4.25

Ⅴ -Ⅲ -05

ペーパーカット

4.24

Ⅴ -Ⅰ -13

コップに注ぐ

4.23

Ⅴ -Ⅳ -01

手を洗う

4.22

Ⅴ -Ⅲ -01

小便をする

4.20

10

Ⅴ -Ⅳ -07

体を洗う

4.18

11

Ⅴ -Ⅳ -11

シャワーを使う

4.16

12

Ⅴ -Ⅱ -10

すそを入れる

4.13

13

Ⅴ -Ⅰ -20

皮むき器(ピーラー)で皮をむく

4.06

14

Ⅴ -Ⅰ -05

箸を使う

4.05

15

Ⅴ -Ⅱ -09

衣服をたたむ(トレーナー)

4.05

16

Ⅴ -Ⅱ -14

かぎホックをする

4.02

17

Ⅴ -Ⅳ -08

頭を洗う

4.02

18

Ⅴ -Ⅳ -05

鼻をかむ

4.02

19

Ⅴ -Ⅳ -03

歯を磨く

4.02

 

表17 障害程度 D群のうち、平均点4以上のもので、表15、16より増えた2項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅰ -27

電子レンジを使う

4.17

Ⅴ -Ⅳ -21

洗濯機で洗濯をする

4.00

 

表18 障害程度 D群のうち、表15、16より点数の下がった3項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅰ -07

偏食(苦手なものでも食べる)

3.93

Ⅴ -Ⅱ -14

かぎホックをする

3.90

Ⅴ -Ⅳ -08

頭を洗う

3.79

 

表19 障害程度 N群のうち、表15,16,17より増えた1項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅳ -08

頭を洗う

4.16

 

障害程度が最重度、重度の群(表14)と、幼児(表9)と比較したところ、障害が重くても、できる項目はかなりあることがわかる。このことから、障害が重いことと、年齢が幼いこととは、質的に意味が異なることが明らかとなった。

また、障害程度が最重度・重度群と中度群を比較すると、できるものがそれほど増えるわけではない。ただ、障害程度が軽度になると、できるものが増える傾向が認められる(表16)。さらに、障害の程度が軽度とボーダーライン、ノーマルな群を比較すると、できるものに、それほど大きな差は認められない。平均点4以上の表からは外れたとしても、平均点を見ると3点台の後半であり、それほど大きな差とはいえない。

また、多くの援助が必要であるか、あるいはできないという平均点2点以下の項目についてみてみると、障害が最重度、重度のグループでは、16項目と項目数が多い。次に、中度のグループでは、9項目とやや少な目となる。また、軽度、ボーダーライン、ノーマルの群では、順に、5項目、4項目、6項目となっている。ただ、内容については、すべての群で共通なものが多く、どの群でも、火を使う、包丁を使うなどの項目の平均点が低い。

これらのことから、障害程度に関しては、最重度、重度、中度というグループと、軽度から知的障害なしのグループによって、何らかの差異が認められる可能性がある。ただ、障害の程度と、生活力との関係については、単純に関係がある、とはいえず、さらに、詳細な検討が必要であると思われる。

 

③社会性の発達と生活力

前述の通り、社会性の発達については、当協会独自の評価基準に基づいて、8段階評価を行っている。その分布は、表4で示したとおりだが、8群では人数のばらつきが大きいため、 AB群、 CD群、 EF群、 GHI群の4群に分けて、各項目の平均点について、検討を行った。

 

表20 社会性の発達段階 AB群の平均点4以上の9項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅰ -06

ストローで飲む

4.62

Ⅴ -Ⅰ -02

コップで飲む

4.56

Ⅴ -Ⅱ -02

靴を脱ぐ(短靴)

4.45

Ⅴ -Ⅰ -03

スプーンで食べる

4.40

Ⅴ -Ⅱ -08

靴をはく(短靴)

4.30

Ⅴ -Ⅰ -04

フォークで食べる

4.15

Ⅴ -Ⅱ -01

パンツ、ズボンを脱ぐ

4.09

Ⅴ -Ⅱ -12

ファスナーの開閉

4.04

Ⅴ -Ⅱ -05

パンツ、ズボンをはく

4.03

 

表21 社会性の発達 CD群の平均点4以上の31項目のうち、表20より増えた22項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅱ -04

トレーナー、シャツを脱ぐ

4.81

Ⅴ -Ⅲ -03

排泄の意識

4.80

Ⅴ -Ⅱ -06

トレーナー、シャツを着る

4.70

Ⅴ -Ⅱ -03

靴下を脱ぐ

4.66

Ⅴ -Ⅲ -04

排泄後の身じまい

4.63

Ⅴ -Ⅱ -07

靴下をはく

4.60

Ⅴ -Ⅱ -13

ボタンをはめる

4.60

Ⅴ -Ⅳ -04

うがいをする

4.53

Ⅴ -Ⅳ -14

髪をとかす

4.49

10

Ⅴ -Ⅲ -02

大便の始末

4.40

11

Ⅴ -Ⅱ -15

スナップをする

4.37

12

Ⅴ -Ⅱ -11

前開きシャツを着る

4.20

13

Ⅴ -Ⅲ -05

ペーパーカット

4.18

14

Ⅴ -Ⅰ -01

そしゃく

4.18

15

Ⅴ -Ⅳ -02

手を拭く

4.13

16

Ⅴ -Ⅳ -09

体の泡を流す

4.07

17

Ⅴ -Ⅲ -01

小便をする

4.07

18

Ⅴ -Ⅱ -10

すそを入れる

4.06

19

Ⅴ -Ⅳ -01

手を洗う

4.06

20

Ⅴ -Ⅳ -18

タオルをたたむ

4.04

21

Ⅴ -Ⅳ -11

シャワーを使う

4.03

22

Ⅴ -Ⅰ -12

お盆にのせて運ぶ

4.01

 

表22 社会性の発達 EF群の平均点4以上の45項目のうち、表 21よりふえた 14項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅰ -13

コップに注ぐ

4.39

Ⅴ -Ⅳ -10

髪の泡を流す

4.39

Ⅴ -Ⅳ -05

鼻をかむ

4.34

Ⅴ -Ⅳ -07

体を洗う

4.29

Ⅴ -Ⅳ -08

頭を洗う

4.29

Ⅴ -Ⅱ -09

衣服をたたむ(トレーナー)

4.26

Ⅴ -Ⅰ -05

箸を使う

4.23

Ⅴ -Ⅰ -07

偏食(苦手なものでも食べる)

4.22

Ⅴ -Ⅰ -20

皮むき器(ピーラー)で皮をむく

4.21

10

Ⅴ -Ⅳ -03

歯を磨く

4.18

11

Ⅴ -Ⅱ -14

かぎホックをする

4.15

12

Ⅴ -Ⅳ -06

顔を洗う

4.08

13

Ⅴ -Ⅲ -06

和式トイレを使う

4.08

14

Ⅴ -Ⅰ -14

配膳を手伝う

4.03

 

表23 社会性の発達 GHI群の平均点4以上の
53項目のうち、表22よりふえた8項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅴ -Ⅰ -08

器を持って食事をする

4.29

Ⅴ -Ⅳ -24

ほうきで掃く

4.20

Ⅴ -Ⅰ -18

食器拭き

4.19

Ⅴ -Ⅰ -24

包丁の管理(扱い)

4.17

Ⅴ -Ⅰ -17

よそう

4.13

Ⅴ -Ⅰ -09

こぼさずに食べる

4.08

Ⅴ -Ⅰ -11

外食ができる

4.00

Ⅴ -Ⅰ -19

食器を洗う

4.00

 

表20から23を比較して、できる項目数は着実に増加していく。これは、社会性がのびることによって、生活力もついていく、ということを意味しており、社会性と生活力には関係があるといえる。その内容は、年代のところで指摘したことと同様に、食事の基本的な内容から、着脱や排せつに広がり、徐々にマナーやお手伝いについても、獲得していくという傾向は似ている。

社会性が発達すれば、家族や社会の中での人との関係は、良好になっていく。そのことが、学ぶ機会を増やしていく可能性があり、結果として、生活力が高まるのではないかと思われる。

また、平均点が4点以上の項目を、領域別にみてみると、以下のような表になる。

 

表24 社会性の発達段階と平均点4以上の項目の増加

領域

AB群

CD群

EF群

GHI群

Ⅰ食事

Ⅱ着脱

Ⅲ排せつ

Ⅳ清潔

 

22

14

 

また、多くの援助を必要とする平均点2点以下の項目については、以下に、項目数だけを示す

表25 社会性の段階別2点以下の項目

 

項目の数

AB 群

35

CD 群

EF 群

GHI 群

多くの援助が必要とされる項目の内容としては、包丁を使うものや火を使っての調理などであり、年代による傾向と同様のものであったが、GHI群となると、それらの項目も平均点が3点台になり、多くの援助がなくてもできるものになっていく。この傾向がはっきりと示されたのは、社会性の発達段階との関係について、だけであり、社会性が伸びることが生活力を上げることにつながっていることを示唆するものといえる。

 

④診断群と生活力について

表2に示した診断群と生活力との関係について、項目の数だけを以下の表に示す。

 

表26 診断群と平均点4以上、2以下の項目数

 

4点以上

2点以下

MR群

20

PDD+MR群

22

ADHD+MR群

27

ADHD群

43

PDD群

42

その他群

29

 

平均点4点以上の項目について、 MRが合併している群については、その項目数が少ない傾向がある。 MRは、当然のことながら、その障害特性として、状況などを含めた理解力の問題があり、経験だけではカバーしきれない問題が隠されているのかもしれない。生活力と MRの有無には、なんらかの関係がある可能性があるが、ここについては、さらに詳細な検討が必要と思われる。

 

2 .社会生活力について

社会生活力については、前述の通り、表8に示した項目について、生活力と同じように0から5までの 6段階で聴取を行った。生活力のような個人に属する技能だけではなく、社会との関係の中で作られている、ルールの理解やそれに基づく行動のコントロール、社会関係を築く上で必要なコミュニケーション能力、道徳、マナー、買い物、時間の意識などの項目が入っている。

 

①年代と社会生活力との関係

各年代ごとに、平均点 4点以上の項目の数と、平均点 2点以下の項目の数を示した。

 

表27 年代と平均点 4以上、 2以下の項目数

年代

4 点以上

2 点以下

幼児

20

小学校低学年

14

小学校高学年

10

中高校生以上

この表で見ると、年代があがってくると、 4点以上の項目がわずかながら、ふえていくのがわかる。逆に、 2点以下の項目も年代があがるとともに減ってきているのもわかる。社会生活力は、年代とともに変化していくといえる。ただ、獲得していく時期については、生活力よりも、遅い傾向があるようだ。そのことは、社会生活力の獲得には、時間がかかるということなのか、獲得についての困難さがあるのかについては、さらに検討が必要なところであろう。

具体的には、以下のような項目が、平均点 4点以上であり、少しの援助でできるようになっていく。

 

表28 小学校高学年の群の平均点 4以上の3項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅱ -13

欲しいものを身振りやカード、言葉等を用いて伝えられる

4.18

Ⅱ -03

信号が分かり、状況を見て渡ることができる

4.03

Ⅱ -02

ぬれないように傘をさすことができる

4.01

 

表29 中高校生以上の群の平均点 4以上の5項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅱ -03

信号が分かり、状況を見て渡ることができる

4.29

Ⅱ -13

欲しいものを身振りやカード、言葉等を用いて伝えられる

4.13

Ⅱ -02

ぬれないように傘をさすことができる 

4.13

Ⅱ -01

★慣れたところなら一人で行くことができる

4.07

Ⅱ -09

★一時間以上留守番することができる

4.04

★が新たに加わった項目

 

②障害の程度と社会生活力との関係

 

表30 知的障害の程度と平均点 4以上、2以下の項目数

年代

4点以上

2点以下

最重度・重度 A群

31

中度 B群

16

軽度 C群

ボーダーライン D群

ノーマル N群

 

表30より、知的障害の程度が重いと、 4点以上の項目はなく、 2点以下の項目が多い傾向がある。障害の程度と、社会生活力は関係があるとも考えられるが、軽度以上の群では、 4点以上の項目数にはあまり差がなく、ただ、 2点以下の項目が減ってくる、という傾向が認められる。ここについては、この 5群を、さらに 2群かあるいは、 3群に分けての考察が必要と思われる。

具体的には、軽度 C群と、ボーダーライン D群、ノーマル N群では、以下の項目ができるようになっていっている。

 

表31  障害程度 C群で、平均点 4以上の9項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅱ -13

欲しいものを身振りやカード、言葉等を用いて伝えられる

4.29

Ⅱ -37

※教室内のルールが守れる(着席、発言)

4.16

Ⅱ -03

信号が分かり、状況を見て渡ることができる

4.16

Ⅱ -01

慣れたところなら一人で行くことができる

4.13

Ⅱ -16

「~したら**」という行動の見通しがもてる

4.10

Ⅱ -28

※ルールのある簡単なゲームができる

4.05

Ⅱ -14

お兄ちゃん、お姉ちゃんと言われて喜ぶ

4.04

Ⅱ -02

ぬれないように傘をさすことができる

4.04

Ⅱ -09

一時間以上留守番することができる

4.03

 

表32  障害程度 D群で、平均点 4以上の7項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅱ -13

欲しいものを身振りやカード、言葉等を用いて伝えられる

4.59

Ⅱ -09

一時間以上留守番することができる

4.35

Ⅱ -03

信号が分かり、状況を見て渡ることができる

4.25

Ⅱ -14

お兄ちゃん、お姉ちゃんと言われて喜ぶ

4.22

Ⅱ -02

ぬれないように傘をさすことができる

4.16

Ⅱ -01

慣れたところなら一人で行くことができる

4.02

Ⅱ -16

「~したら**」という行動の見通しがもてる

4.00

 

表33  障害程度
N群で、平均点 4以上の9項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅱ -13

欲しいものを身振りやカード、言葉等を用いて伝えられる

4.61

Ⅱ -01

慣れたところなら一人で行くことができる

4.46

Ⅱ -14

お兄ちゃん、お姉ちゃんと言われて喜ぶ

4.40

Ⅱ -03

信号が分かり、状況を見て渡ることができる

4.37

Ⅱ -09

一時間以上留守番することができる

4.31

Ⅱ -28

※ルールのある簡単なゲームができる

4.30

Ⅱ -02

ぬれないように傘をさすことができる

4.25

Ⅱ -15

※自分の順番が分かり、順序よく並ぶことができる

4.16

Ⅱ -16

「~したら**」という行動の見通しがもてる

4.12

 

表31から33を比べたとき、※印のついている4項目は、共通ではないが、それ以外の 7項目はほぼ共通しており、獲得しやすい項目といえる。

また、平均点 2点以下の援助を必要とする項目として、ノーマル群でも残っている一つは、 C群、 D群でも共通であり、「時間を意識して行動することができる」という項目であった。この項目については、獲得するまでにかなりの時間を要するか、あるいは、獲得がかなり困難な内容なのか、今後の検討が必要な点である。

 

③社会性の発達と社会生活力との関係

③でも述べた通り、社会性の発達については、表4の分布をさらに、 AB群、 CD群、 EF群、 GHI群の4群に分けて、各項目の平均点について、検討を行った。

 

表34 社会性の発達と平均点 4以上、2以下の項目数

社会性の発達

4点以上

2点以下

AB群

35

CD群

15

EF群

12

GHI群

25

 

表34より、社会性が発達している群については、 4点以上の項目が増え、援助を必要とする 2点以下の項目は減っていく、という傾向があるといえる。 社会性の発達と社会生活力には、大きな関係があるといえそうである。

具体的な項目については、以下の通りである。

 

表35 社会性の発達 CD群の平均点 4以上の1項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅱ -13

欲しいものを身振りやカード、言葉等を用いて伝えられる

4.10

 

表36 社会性の発達 EF群の平均点
4以上の12項目のうち、表35より増えた 11項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅱ -03

信号が分かり、状況を見て渡ることができる

4.47

Ⅱ -09

一時間以上留守番することができる

4.41

Ⅱ -01

慣れたところなら一人で行くことができる

4.41

Ⅱ -14

お兄ちゃん、お姉ちゃんと言われて喜ぶ

4.31

Ⅱ -02

ぬれないように傘をさすことができる 

4.30

Ⅱ -15

自分の順番が分かり、順序よく並ぶことができる

4.24

Ⅱ -28

ルールのある簡単なゲームができる

4.21

Ⅱ -16

「~したら**」という行動の見通しがもてる

4.21

Ⅱ -23

自分のものと他人のものの区別ができ、勝手に人のものは使わない

4.05

10

Ⅱ -37

教室内のルールが守れる(着席、発言)

4.04

11

Ⅱ -17

入れて、貸して等と言って許可を求めたり、待つことができる

4.00

 

表37 社会性の発達 GHI群の平均点
4以上の25項目のうち、表36より増えた 13項目

 

No.

設問文

平均点

Ⅱ -12

だめ、いけません、と止められた時に行動を止めることができる

4.46

Ⅱ -19

大人が側にいなくても、よいと言うまで待つことができる

4.38

Ⅱ -26

特別な行事や大勢の人が集まる場所でも落ち着いていられる

4.31

Ⅱ -36

自分から挨拶することができる

4.27

Ⅱ -27

約束が守れる

4.15

Ⅱ -30

仲間に声援を送ったり、喜びを共有できる

4.12

Ⅱ -04

一人で交通機関を利用することができる 

4.09

Ⅱ -18

指示されたことや頼まれたことにすぐに応じることができる

4.04

Ⅱ -24

分からないときやできないとき、困ったときに援助を求めることができる

4.04

10

Ⅱ -25

勝ちたい、うまくなりたいという意欲があり、練習をする

4.04

11

Ⅱ -05

日用品の買い物ができる

4.00

12

Ⅱ -06

自分の持ち物の管理ができる 

4.00

13

Ⅱ -22

喜怒哀楽にあった表情をしたり、声や言葉で気持ちを表現できる

4.00

 

表35より、自分の要求を伝えることができるというコミュニケーションが、最も早く獲得される項目であることがわかる。ついで、移動に関する項目や見通し行動、簡単なルールなどの項目にひろがり、より複雑なルールへ、また、一人での行動範囲が広くなっていくという傾向が見られる。

 

④診断群と社会生活力との関係

1-④と同様に、診断群と平均点 4点以上の項目と2点以下の項目の数を表32に示す。

 

表38 診断群と平均点4以上、2以下の項目数

診断群

4点以上

2点以下

MR群

16

PDD+MR群

16

ADHD+MR群

ADHD群

PDD群

10

その他群

10

 

1-④の結果と同様に、MRの有無によって、何らかの傾向があるように思われるが、診断名による違いなどについては、より詳細な検討が必要である。

 

まとめ

本調査では、ソーシャルスキルを広くとらえ、自分のことを自分でする、という生活力もソーシャルスキルの一部として、検討を行ってきた。

まず、生活力も社会生活力も、年齢が上がるとともに、確実に身につき、できることはふえていく、ということが明らかになった。ただ、社会生活力については、低年齢ではなかなか獲得される項目はふえていかない。このことは、社会生活力という内容は、長期にわたっての指導、支援が必要な可能性を示している。

また、障害の程度との関係において、社会生活力は、障害程度との関連が示唆されたが、生活力については、障害が重度であっても、できる項目はかなりあることがわかった。生活力は、障害の程度よりも、むしろ生活年齢のほうが、その能力を決める要因になる可能性がある。年齢を重ねることは、毎日の経験を繰り返し、積み重ねるということであり、特別な場や特殊な方法よりも「生活」を重視することが必要であるといってよいのではないだろうか。これらの結論は、これまでの指導実感とも一致している。

これまで、このような本人の生活能力全般について調査した研究は、ほとんどみられない中で、貴重な結果が得られたと思う。

また、今回の調査対象は、本協会で何らかの指導、支援を受けている家族と本人である。本協会の指導、支援の内容として、生活力、社会生活力をつけるプログラムにも積極的に取り組んでいる。武蔵らは、行動の定着までには、定期な支援が不可欠であることを指摘している4)が。支援者としても、適切な項目を提案したり、それらの進め方について、家族を支援し続けている、ということも、これらの能力の獲得に際しては、プラスの影響を与えていることが推測される。

発達に障害がある子どもの子育てでは、子育てへの負担感は、標準的な発達をしている子どもの場合に比べ、大きいと思われる。その負担感の要因にはさまざまなものがあるだろうが、しかし、年齢が高くなった子どもの保護者は、「必ず笑えるときが来るから・・・」とよく話す。「笑えること」の一つには、「楽になった」という実感があるだろう。それを実感できるとき、それは、「手」がかからなくなったときであり、つまり自分のことが自分でできるようになるときが必ずくる、ということでもあろう。ただ、発達に障害があると、ほおっておいても、できるようになる、とは言いがたく、できるようになるまでには、地道で根気のいる働きかけが欠かせない。垣谷も、知的障害者の地域生活移行を推進する中では、施設内訓練よりも、実際に地域生活を送りながらのプログラム実施こそが効果を挙げることを指摘している5)。毎日の暮らしは、専門職ではなく保護者が担うものであり、支援者は、その生活の重要性を認識するとともに、その家族を支える視点も忘れてはならない。

さらに、本調査の結果から、年齢を重ねること、つまり、働きかけを続けることで、獲得できるものがあることが明確になり、その順序性の一端が示された。支援者は、それらを知り、内容の選定とともに、継続的、持続的な支援を続けることで、障害のある子どもや大人の社会参加の機会と可能性を広げることに寄与できる、ということを、知っておく必要があると感じる。

なお、今後の課題としては、生活力と社会生活力との関係や、それらの育ちが、本人の主体的な生活とどのように関係していくのか、支援者のあり方、支援の方法などとの関係について、検討していきたいと考えている。

 

【参考・引用文献】

1)安住ゆう子 三島節子
2007「ソーシャルスキルトレーニングの実際」社)発達協会 月刊「発達教育」  VOL.26 No.4
316号  P22~ 24

2)特定非営利活動法人フトゥーロ
2006「自立のための LD指導プログラムチェックリスト」
2006,1

3)奥野英子 関口恵美 佐々木葉子 大場龍男 興梠理 星野晴彦
2006 自立を支援する社会生活力プログラムマニュアル 中央法規  2006,4

4)武蔵博文 高畑庄蔵  1996 知的障害者の地域生活の組織的支援をめざして―「生活技能支援ツール」を活用した「地域生活支援教室」のあり方 富山大学教育学部紀要
A No. 50,33-45

5)垣屋稲二良  2005 知的障害者施設における「社会生活力プログラム」の取り組みについて
リハビリテーション研究 125,12,13-16

 

事業実施機関

社団法人 精神発達障害指導教育協会

〒115-0044 東京都北区赤羽南2-10-20

TEL 03- 3903- 3800

menu