成人期への移行:知的障害のある若い人々の親と介護者のための情報
はじめに
「知的障害」とはどういう意味ですか?
政府は『知的障害者白書(Valuing People Paper)』の中で、知的障害について次のように説明しています。
「新たな、あるいは複雑な情報を理解し、新たな技術を習得する能力の大幅な低下、および独力で処理する能力の低下。これは成人期以前に始まり、発達に持続的影響を及ぼす。」 『知的障害者白書(Valuing People)2001年』
この定義には、広い範囲の障害者が含まれます。知的障害があるかどうか(そして本冊子で説明されている特別なサービスを利用できるかどうか)を決定するには、まず地域知的障害チームのソーシャルワーカーによる査定を受けなければなりません。
IQ(知能指数)が低いという理由だけでは、知的障害があるとは言えません。コミュニケーションスキルと、介護が必要かどうかも考慮されます。
「知的障害」には、教育に影響を及ぼす可能性がある学習上の困難を抱える人(たとえばディスレクシアの人)すべてが該当するわけではありません。
地域知的障害チームによる判断基準や査定に関するさらに詳しい情報をご希望の方は、直接、同チーム(020 7313 6843)にご連絡ください。
移行とは何ですか?
学校を卒業する前の最後の数年間、お子様は将来の進路について考え始めるよう勧められるでしょう。お子様が、学校生活から社会人としての生活へと移っていくことを、移行と呼んでいます。若い人々とその家族の皆様の意見が聞き入れられ、将来の計画を立てる上で中心となることが最も重要です。
9年生の時点での年に一度のレビュー
お子様が14歳のとき、9年生の時点での年に一度のレビューが学校で実施されます。これはお子様の「特別な教育的ニーズがあるという判定書(Statement of Special Educational Needs)」のレビューです。
通常の9年生の時点でのレビューに加えて、移行レビューも実施されます。移行レビューは、お子様の支援に関わるすべての人が参加し、お子様が卒業後に必要とするサービスについて検討する会議です。これは、教育法(Education Act)によって義務付けられています。
学校は、地域のコネクションズ(Connexions)の個人アドバイザーに、会議への参加を要請しなければなりません。個人アドバイザーは会議に出席し、情報とアドバイスを提供し、移行計画書の作成に協力しなければなりません。お子様に担当のソーシャルワーカーがいる場合は、そのソーシャルワーカーにも会議への参加を要請する必要があります。これによって確実に、お子様の教育目標、社会的ニーズおよび保健に関するニーズをすべて検討し、関係者全員がお子様の将来の進路について、検討を始めることができます。
地区教育局(LEA)は、親、校長、社会サービス部および保健関係の専門家など、その他の関係のある専門家に、移行計画書のコピーを提出しなければなりません。
ケンジントン・アンド・チェルシー王立特別区(the Royal Borough of Kensington and Chelsea)では、地域知的障害チームを拠点に活動している移行担当ワーカーに、LEAがレビューのコピーを送付します。LEAは、1985年の障害者法(the Disability Act)に規定されている障害が生徒に認められるかどうかを問うことが、法律によって義務付けられています。生徒に障害があると認められた場合、その名前が移行計画リストに加えられ、皆様はこれについて通知を受けます。お子様が16歳になると、移行担当ワーカーが皆様にご連絡し、サービスについてお知らせします。
これ以降毎年、この情報をもとに年に一度レビューが作成され、生徒が卒業する前に最終的な計画書が作成されます。
移行に関する重要な情報
お子様が14歳のとき |
学校: コネクションズ(Connexions): 電話番号:020 7938 8008 障害児チーム: 電話番号:020 7598 4930 |
お子様が16歳のとき |
移行サービス部: 移行担当チームは、児童保健、教育および社会サービスから成人サービスへの移行を支援します。 移行担当チームは、お子様が教育を修了するまで、あるいは24歳まで、このサービスを提供いたします。 電話番号:020 7313 6827 / 020 7313 6832 |
お子様が18歳以上のとき |
地域知的障害チーム: 移行担当ワーカーがご利用になれない場合は、下記の電話番号にご連絡いただければ、当番チームがこのサービスを提供いたします。 電話番号:020 7313 6843) |
知的障害移行サービス
知的障害移行サービス部は、北ケンジントン(North Kensington)セントマークスロード(St Mark's Road)の地域知的障害チーム(成人サービス)を拠点に活動しています。チームには、知的障害のある若い人々とその親および介護者に対する移行期全体を通じた支援を専門とする、ソーシャルワーカーと地域看護師がいます。
知的障害移行サービス部では、児童期から成人期への移行期にある若い人々とその親を支援します。学校とのつながりしか持たない生徒もいれば、学校以外に障害児チームの支援を受けている生徒もいます。移行サービス部の役割は、16歳の時点での生徒を理解し、皆様がお子様の進路について考え始める支援をすることです。またソーシャルワーカーは、親や若い人々、そしてその他の専門家の皆様が必要とする、以下に関する専門的な情報を提供することができます。
- 保健
- 卒業後の進路
- カレッジ
- 地域活動
- ボランティア活動
- 就職
- 住宅
- 日常生活の介護支援
- ショートブレークおよびレスパイトケア
- 余暇および友人関係
- 介護者の支援
- ダイレクトペイメント(direct payments)、個人予算(individual budgets)および手当
お子様が16歳から17歳までの間に、移行担当ワーカーが皆様に連絡をとり、将来のニーズについて検討する査定を実施します。皆様は査定を受けることに同意する必要はありませんが、これは将来に備えた計画を立てる上で役立ちます。
できれば、お子様が11年生あるいは13年生のときのスクールレビューに、移行担当ワーカーを招くことを、お子様の学校に依頼されるとよいでしょう。そうすれば移行担当ワーカーが移行計画の作成に協力できます。また移行担当ワーカーには、社会サービスのレビューにも参加してもらうことができます。
お子様が17歳または18歳になると、地域知的障害チームあるいは保健サービス部内のお子様に適した関連機関に、移行サービス部から紹介することができます。たとえば、理学療法士による継続的な支援が必要な場合などがあります。
移行担当看護師は、正規の就学期間を終えるすべての生徒にOKヘルスチェックを実施します。また、保健行動計画(Health Action Plan)を提案し、複雑な保健関係の問題を抱えている生徒や、成人支援との連携が難しい生徒の、児童保健から成人保健への移行を支援します。
お子様が18歳になると、移行担当ワーカー(ソーシャルワーカー)が、お子様のケアマネージャー(地域ソーシャルワーカー)となることができます。これは、このような支援を希望する場合に適用され、移行担当ワーカーは、お子様が正規の就学期間を終え、地域で暮らすようになるまで続けてこの役割を担当することができます。お子様が18歳に達した後は、移行担当ワーカーが地域知的障害チームのケアマネージャーにお子様を紹介することもでき、この場合ケアマネージャーが支援を継続します。
知的障害移行担当地域看護師
移行担当地域看護師の役割は、若い人々の、子どもサービスから成人サービスへの移行を支援することです。移行担当看護師は、地域および病院のネットワークに参加している他のヘルスケア専門家と若い人々との関係づくりを支援します。
移行担当地域看護師はまた、
- 服薬のモニタリングとアドバイスの提供を行います。
- 困難なニーズに関連する問題に対処します。
- 排尿・排便の調節機能の評価をします。
- 個人/グループでの健康増進活動をします。
- 性の健康や性欲の問題に関してアドバイスを提供します。
- ヘルスケアに関するリソースを開発し、介護担当スタッフおよび医師を対象とした教育/研修を展開します。
地域知的障害チーム-成人
ケンジントン・アンド・チェルシー王立特別区
(Royal Borough of Kensington and Chelsea)
1-9 St Mark's Road
London W11 1RG
電話番号:020 7313 6843
知的障害移行サービス部は、ケンジントン・アンド・チェルシー(Kensington and Chelsea)成人地域知的障害チームを拠点に活動しています。そして若い人々の利益のために、適宜、メインチームへの紹介を行っています。
ケンジントン・アンド・チェルシー(Kensington and Chelsea)地域知的障害チームは、18歳以上の知的障害者に、幅広く専門的な支援とアドバイスを提供します。
- ケアマネジメント(ソーシャルワーカー)
- 地域看護師
- 言語療法士
- 理学療法士
- 作業療法士
- 臨床心理士
- 精神科医
地域知的障害チームは、ケンジントン・アンド・チェルシー王立特別区(Royal Borough of Kensington and Chelsea)あるいはその他の機関が提供するさまざまなサービスに関するアドバイスと支援を提供することができます。複雑なニーズがある方には、スタッフが総合査定を実施し、ケアマネジメントサービスを提供します。これは、当事者の最大限の自立と選択の自由を促進あるいは継続し、その介護者を支援することを目的としています。また、日常的な家事の支援や、昼間の活動と支援、ショートブレーク、介護者の支援と査定を手配し、必要に応じて適切な介護付き入所施設を探す支援をすることができます。
地域知的障害チームは、知的障害者が通常の保健サービスを使用できるように支援し、服薬のモニタリングやメンタルヘルスのモニタリングあるいはアドバイスの提供、困難なニーズに関する問題の分析、排尿・排泄の調整機能の査定の実施、そして性の健康に関する問題の分析を行うことができます。
地域知的障害チームは、他のサービス機関と密接に協力して活動し、すべての人のニーズにしっかりと取り組みます。ケンジントン・アンド・チェルシー王立特別区(Royal Borough of Kensington and Chelsea)在住または出身の知的障害者とその親/介護者、または入所施設・デイケア施設のスタッフの皆様からのお問い合わせをお待ちしております。
相談、査定、ケアマネジメントには料金はかかりませんが、サービスによっては料金をいただく場合もありますが、その際には、常に事前に皆様にご相談させていただきます。
保健
お子様に専門的な保健関係のニーズがある場合、障害児チームか地域知的障害チームのどちらかに所属する地域看護師が、必要な成人サービスへのアクセスを確保できるよう、お子様を支援することができます。
地域看護師はヘルスケアに関する一般的なニーズと特別なニーズを査定します。これは当事者の若い方々との協力により、総合検診を通じて実施され、これをもとに保健行動計画(Health Action Plan)が考案されます。この計画では、当事者の若い方々のヘルスケアに関するニーズを満たすために誰が支援してくれるかを明確に特定します。
排尿・排便用パッド
お子様にパッドが必要で、まだ就学している場合は、学校の看護師がそのニーズを査定します。お子様が学校を卒業している場合は、排尿・排便サービス部がニーズを査定します。パッドは無料で支給されます。
移行計画プロセスのまとめ
年齢
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14歳
(9年生) |
16歳
(11年生) |
18歳
(13年生) |
19歳
(14年生) |
21歳以上
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学校関係 ⇒ |
学校外交計画の見直しを要求 | 学校外交計画の見直しを要求 | 学校:大学体験日を企画 | 生徒が卒業 | 大学入学又は地域活動に参加 |
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コネクションズ (Connexions) ⇒ |
レビューと会議への参加の義務 | 将来の選択肢に関する助言を主導 | 大学への入学願書提出を支援 | 情報提供の継続 | 24歳まで助言を提供 |
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↓
+ ↓ |
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児童社会サービス ⇒ |
ソーシャルワーカーが分かっている場合、毎年のレビューへの参加を要請 | ソーシャルワーカーおよび/または移行担当ワーカーにレビューへの参加を要請 | ソーシャルワーカーが生徒を成人チームに移行 | ||
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↓
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成人地域サービス ⇒ |
レビューの詳細を成人社会サービスに転送 | 移行担当ワーカーが成人としてのニーズ審査を実施 | 生徒が18歳のとき移行担当ワーカーがケアマネージャーになる。 生徒が卒業する3ヶ月前に18歳の時点で必要な支援を示したケアプランを完成 | 生徒が卒業後も移行サービスが移行計画を継続 知的障害チーム、成人保健チームおよび地域看護師へ移行 | 地域ケアマネージャーにケアマネジメントを移行 6から12ヶ月ごとにケアプランの見直し |
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教育法:コネクションズ(Connexions) に生徒の情報を通知 ⇒ |
教育法:学校は特別な教育的ニーズ(SEN)のある生徒に関する情報を社会社会サービスに提供する義務 | 1990年国民保健サービス及びコミュニティケア法で18歳の時点でニーズの査定を測定 | |||
14歳 9年生 レビュー |
学校は、9年生の時点でのレビューに先立ち、青少年をコネクションズ(Connexions)サービスに紹介し、コネクションズ(Connexions)にレビューへの参加を要請する。 9年生の時点でのレビューの際、特別な教育的ニーズがあるという判定書を持つ生徒は、移行計画書を受け取る。移行計画では、その後数年間の生徒のニーズを16歳以降利用可能な選択肢を含め検討する。 情報は、校内の職員および校外の専門家等から収集される。レビューには、親とともに、コネクションズ(Connexions)の個人アドバイザー(参加が義務付けられている)と社会サービスの参加も要請される。 レビューに引き続き、特別支援教育部は地域チーム(成人社会サービス)に、特別な教育的ニーズがあるという判定書と移行計画書を所持する生徒について通知する。 詳細については、コンタクト・ア・ファミリー(Contact a Family)参照。 www.cafamily.org.uk |
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16歳 | 移行計画の見直しは毎年続けられる。11年生の時点で、親および生徒に関わりのある専門家が、レビューへの参加を要請される。学校はまた、移行サービスの参加も要請する。 生徒が、教育あるいは訓練を引き受けたいという意向を示した場合、卒業後のニーズを個人アドバイザー(PA)に査定してもらう。これは「140査定(140 Assessment)」(学習技能法セクション140)としてよく知られている。PAは生徒のニーズと生徒が利用できる支援策を明らかにした行動計画を記す。この情報は生徒が関心を持つ大学に送付される。 送料については、PAまたは移行担当ワーカーと話し合う必要がある。 1986年の障害者法(Disabled Person's Act)および1990年のNHS・コミュニティケア法(NHS Community Care Act)に従い、生徒には複数の機関による査定を受ける権利があるが、この査定は、18歳以降の生徒のニーズと、すべての機関からの必要な支援を確認するために、移行担当ワーカーによって照合される。これはニーズ査定(Need Assessment)と呼ばれる。また、16歳の時点で新たに申請できる手当てもある。 |
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18歳 | 移行サービスは、児童サービスから地域知的障害チームへの移行を支援する。 保健サービスの移行は、地域の移行担当看護師による支援を受ける。保健行動計画(Health Action Plan)は、生徒が卒業する前に、学校の看護師が作成しなければならない。 |
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19歳 | 移行サービスは、生徒が正規の就学期間を終えた後も移行計画を継続する。 コネクションズ(Connexions)のワーカーは、青少年が25歳になるまで、引き続きサービスを提供する。 |