発表会
安心と安全
－在宅障害者とともに創るチームのかたち－

講演2　療養者の立場から「市井に生きるＡＬＳ」

橋本 操(日本ＡＬＳ協会)

座長

●では次に「療養者の立場から」ということで、日本ＡＬＳ協会、橋本操先生にお話 しいただきます。よろしくお願いいたします。

橋本

●日本ＡＬＳ協会の橋本操です。本人は発声ができませんので、こちらのほうで代読と いう形で進めさせていただきたいと思います。スライド、次、お願いします。

「市井に暮らすＡＬＳ」というタイトルでお話をさせていただきたいと思います。この 場でＡＬＳの説明をすることは、いかにも無粋なので、疑問などを持たれたらメールなど 頂ければうれしく存じます。では私の暮らしなどをさくっとお話しいたしましょう。

現在54歳、発症が32歳ですからＡＬＳとの付き合いも22年になります。ポカリスマップ 賞を目当てに、飲みもしないポカリスウェットを204本も買って、見事にすべて外れた普通 のオバサンであります。しかしながらＡＬＳが市井に生きることは、それほど難しいことで はありませんが、相当に面倒で時間のかかる暮らしです。日本ＡＬＳ協会の役員をしていま すので、眠いなと思う日でも仮病は使えません。10時に霞ヶ関と言われれば、訪問看護ステ ーションや訪問介護に無理を言って8時に来ていただきます。申し遅れましたが、私は私鉄の 駅近くの集合住宅に犬と暮らしています。24時間他人介護なので、訪問看護との関わりは 家族が同居している世帯よりも密になっていて、訪問看護ステーションの過度の庇護を受けて 暮らしが成り立っています。

健常者であれば自宅を40分前に出れば霞ヶ関にある厚生労働省には10時に着けますが、 車いすは不便ですね。いつもは最寄り駅のスーパーマーケットのエレベーターを利用し、自宅 近くの駅の西口改札から私鉄に乗りますけれども、開店前は中央口まで約5分プラスして歩かな ければいけませんし、乗り換えの駅でもエレベーターまで10分以上かかります。私が9時に家を 出るときは訪問看護が8時に来ることになります。彼女たちが8時に来るためには起床は5時だろう なとは思いながらもお願いしています。

移動はほとんど電車です。今回は水曜日までは飛行機の予定を組んでおりましたが、ＪＡＬとの 交渉が決裂したので電車になりました。朝が病的に嫌いな以外はとても普通の人です。 車いすが大きいので威圧感はありますが練馬区にはなじんでいます。

これは練馬区の「としまえん」という遊園地の写真です。なじんでいます。これは奈良ですね。 奈良の風景にもなじんでいます。

結構多忙なので自治体との行政交渉の時聞がなくて、重度訪問介護の支給時間が延ばせないのが悩みです。

ざっと1日の暮らしぶりを紹介したいと思います。朝8時、夜勤者と犬が起床します。10時、日勤と訪問看護1が登場。 11時、訪問看護2が登場。13時、訪問看護3が登場。16時、訪問看護4登場。17時、夜勤登場。夜動が2人のときは、 池袋にあるペット屋さんだったり練馬の西友で買い物をしたりしています。23時に帰宅して26時まで仕事をして、 睡眠薬ですね、眠剤をがっぷり飲んで3時間は意識がなくなるほど眠ります。これが大体家にいるときの タイムスケジュールというか、こんな感じで暮らしていますが、外出しているときには、先ほども言ったとおり 朝9時に出かけたりもしますし、今回青森に来るのには6時前には家を出て、5時59分の電車で来ましたし、近くに 訪問介護ステーションがあるので、訪看の方は夜中に急に呼ばれることもあったり、今日も着いて早々バイタル チェックをしていただいたりと、非常に頭が上がらない思いで生活はしております。 このように独居で暮らすときは、どうしても訪問看護ステーションとの関わりが密になってきます。何とか ならないかなと思っています。何ともならない現状だと、実際働かれる方にもいつも非常に負担をかけてい ることは重々承知をしていますが、自分の生活なのでそのへんは妥協しないで無理を言い続けるつもりではあります。 お互い無理をしないための方法を模索していければいいなと思っております。

スライドをちょいちょいと適当に見ていただければと思います。普通のＡＬＳ患者が普通に暮らすとは どういったことか、これは熊本のほうに出かけたときに、ふらっと頭が洗いたくなって近くの美容室に駆け 込んだときの写真です。頭を今から洗います。普通の方が美容室で洗われるのと同じように洗って乾かして もらい、それからちょっと切ってもらったりもしています。

これは横浜に行ったときも、ふらっと頭が洗いたくなって洗った写真です。

これは、デンマークに行ったときにも、ふらっと頭が洗いたくなって頭を洗いに行った写真です。

これは広島に行ったときに、近くにいた外人さんが話しかけてきたので、ちょっと談笑なぞを している写真です。彼は北欧のほうの方で、介護系の仕事についていたという方で、非常に気さくに 話しかけてきてくださいました。

普通に買い物とかをしたり、頭を洗ってばっかりだと、ちょっと社会貢献が足りないので、 介護系・看護系の学生さんの前でお話をさせていただく機会もあります。皆さん非常に熱心に聞いていただきます。

それから厚生労働省のほうに交渉に行ったりなどもしております。このように、どこが交渉しているのか ちょっと分からないんですけど、国会のほうにも行って、国会議員さんのほうに訴えたりもしてます。 そのときの記念撮影ですね。私の目には誰が国会議員かよく分からないんですけど。

それから、お隣の秋田県のほうに先月行きまして、同じ患者の方のお祝いの会に出席をしたりもします。 ババヘラ・アイスを食べました。おいしかったです。

それから7月、秋田県に行ったときの写真ですね。このようにお友達付き合いも大事にしております。 移動するときは、車を使うときはリフトカーを使い、航空機に乗るときは飛行場に行き、それから優先搭乗を 使って乗ってきます。今回は、乗ってこれませんでした。なぜならＪＡＬが呼吸器を止めろと言ったからです。 ＪＡＬの関係者の方いたらごめんなさい。でも怒ってます。いちばん最初に乗せていただいて、 いちぱん最後に降りるというのが基本です。

非常に人相が悪い状態になっておりますが、頭を押さえるためのベルトを訪問看護の方がお手製で作って くださいました。首の筋力がなくなりますので、これをしないとむち打ちになったりします。 サングラスをしているのは人相が悪いからもあるんですけれども、まぶたの筋力が落ちているので、 思うように瞬きもできないのでまぶしいというのがあります。この出で立ちで飛行機に乗っていると、 大抵の方が非常によくごらんになってくださいます。通路を挟んで隣の席の方なんかは、一挙手一投足が 気になるようで、昔、島根県に行ったときに、コンドウさんとおっしゃる、まったく知らない方が、 2時間近くのフライト中、ずっとこちらを見ていたことがありました。話しかけてくださればいろいろ説明を するんですけれども、最後まで話しかけてはくれませんでした。そんなこともありました。

先ほど話にもありましたＳＭＡＰとか大好きです。このへんも普通のオバサンと変わりません。 ヨン様はあまり好きではないんですけれども。なのでＳＭＡＰのコンサートに行ったりもします。 新幹線に乗ったりもします。東海道新幹線だったら多目的室ありますので。

これも仲縄に行ったときのモノレールの写真ですね。車いすスペースを使って。

これは北海道に行ったときの・・・あ、違う、ヒョウだから、あれだ。白鳥に乗ったときの 写真でしたね、今の。岡山駅で車いす用のベルトコンベアみたいな、何か草刈り機みたいなやつに 乗せられて移動もしたりしましたし。ホテルの中は自分たちで持ってきた荷物とか送ってある荷物で。 1泊とはいえ、やはりしんどいので、しんどくないような状況を作って暮らしております。次、どうぞ。

啓発広報ですね。ＡＬＳというのは専門職の方はご存じなんですけど、ー般的にはだいぶマニアックな 病気ですので、いろんな方に知っていただくために、いろいろな機会を利用して啓発広報しております。 これは日米野球でのアメリカのメジャーリーグの、ロジャー・クレメンスという方なんですけれども、 アメリカではＡＬＳは「ルー・ゲーリック病」とも呼ばれていて、メジャーリーガーが発症したことで 知られています。ということで、そちらの方と、日米野球の際にご協力いただいて募金等をさせていただいて、 東京都の患者さんとー緒にお話をしました。画面左手上段奥のほうをごらんください。 何か人影が見えます。「あれは何か、あれ、何やろ、ああ、クレメンスや、クレメンスおるんやったら、 オレもちょっとー緒に写真撮ってほしいなあ」って言って出てきたのが古田さんでした。 古田さんはこのときのことを覚えているかは、ちょっと分からないんですけれども、この写真はたくさん 使わせていただいております。

国際シンポジウムみたいなものもありまして、国際的にも活動をしております。その折りに何故か 分からないですけれども人道賞という賞をいただきました。人道的に優れたことをした方が頂けるみたい なんですけど、本人たちは優れているつもりはまったくありません。頂いてちょっと困っています。 国際シンポジウムですので、いろんな方の、海外、モンゴルとかアメリカはもちろん、ブラジルからも 今回いらっしゃいました。台湾、それから韓国、というふうにやっていて、アイルランドの患者さんですね、 そちらの大きなカナダの方とお話をしたりもしました。スヌーピーが大好きです。そんなふうに普通に暮ら しております。以上です。

座長

●ありがとうございました。今日も、今回も、本当に体を張って来てくださって、先ほど、本当に、朝早朝、 暗いうちから出て来てくださいました。本当ありがとうございます。