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発表会
安心と安全
-在宅障害者とともに創るチームのかたち-

講演6 アメリカにおける看護と介護の役割分担

リボウィッツ・志村よし子(青森県立保健大学)

座長

●それでは次にアメリカにおける看護と介護の役割分担というテーマで、青森県立保健大学、 リボウィッツ・志村よし子先生、よろしくお願いいたします。

リボウィッツ

●青森県立保健大学のリボウィッツでございます。本日は、少し異なったアメリカ側から見て、今、 皆さまのお話を伺いながら、私のバックグラウンドが30年がアメリカ、30年もうちょっとが日本になって きているんで、どちらで年をとったほうがいいかなと考えながら伺っておりました。 今回、今日皆さんにお話ししたいと思っていることは少々ドライな話なんですけれども、 私が経営していた在宅ケアの中で、介護と看護ということがどのように役割分担を担ってきたかと いったことに焦点を置いてお話ししたいと思います。

看護と介護ということなんですけれども、最初に日本に戻ってきたときに「介護保険」という言葉を 聞いて、介護という言葉はどのように英語で訳したらいいのか分かりませんでした。 というのは、まずは「レンケイ」という言葉、抄録にも書きましたけれども、独立した個々の専門職種が 同じ目的に向かって連絡を取り協力し物事を行うときに、手偏の「連携」のような気がしますし、 それから「係る」という「連係」というふうにするとき、継ぎ目無く繋がり合うことというふうに解釈されると思います。 確かにアメリカの在宅看護の看護と介護の関係は、介護は看護のー部であり看護師と介護士の間は委譲関係にある ということが大きな前提であると思います。 つまり看護師は介護もするし、しかし介護士は看護はできないということで、聞こえは非常に悪いんですけれども、 看護師は国家資格を持った資格者です。介護士、一緒に働く介護士、介護する、ホームヘルスケア、在宅補助者と いった方々は国家試験を有しません。ということで、無資格者をUAP(ユーアップ)というんですけれども、 聞こえは悪いんですけど、責任は資格者が、無資格者の行為に対して取るということは、もう建前になっております。

少しアメリカの保険制度のことを話しますと、皆保険でないこと、これがまず第一です。それからアメリカの 多くの方で、3分の1は保険を持っていない方が多く、介護保険というような公的なものはございません。 公的にある高齢者保険、メディケア、メディケイドというのがありますけれども、それとともに障害者がメディケア、 公的に保険を受けることができます。しかし介護保険そのもの、介護だけの保険というものは私的に買うことは できましても公的にはありません。あと保険制度のことについて、ここではさらっと伝えますけれども、 いわゆるアメリカの中で起こったこととして、診療報酬の包括払いということが1983年に急性期病院で起こりました。 これっていうのはものすごいインパクトがありました。実際に、そんなに診療報酬にかからない在宅の中でも、 政府は定額払いを2003年から始めました。ですからクリニカル・パスとか何かは急性期病院では使いましたけれども、 今は包括払いが入りましてからはホームケアのほうでもクリニカル・パスを使い非常に厳しい状態です。 介護が入る場合は、これはまた後で説明いたします。

これがよその海の向こうのことかと、皆さん今は感じて、日本はいいなと思っていらっしゃる方がおるかもしれません けれども、実際に日本も特定機能病院に関してDPCという包括払いが始まりましたよね、既に。 日本に入ってくるのはいつなのかなという、ちょっと脅威を私は感じながら見ておりますけれども、同じようなことが 起こらなければ、また違ったような処置の仕方で対処していかれたいらいいのかなと思っております。

それで非常に悪い言い方なんですけれども「無資格者」、いわゆる看護補助者、看護師の補助者のことなんですけれども、 何でこれが増えたかと言いますと、もちろんもともと無資格者というのは病院にでも在宅にでも、アメリカの場合は いつもおりました。特に、90年代から問題になったことは、医療費の高騰と看護師不足が原因ということと、病院施設の 中で看護助手が非常に複雑な判断をするようになったということ、それから保険会社や一般市民が、費用が安い看護助手の 使用を要求してきたということ、そして、これは課題としては、安全・安心・質ということでは非常に大きな問題になって おります。1997年にはアメリカの51州の中の25州がUAPの使用を、どのように使ったらいいかという制限をするような 法的制限ということで動いております。

在宅看護助手、ホームヘルスエイドの必須条件は何かということなんですけれども、UAPというのは無資格者の、 そういう補助者のことですけれども、病院の場合は搬送者もそうですし、時にはこのUAPは「テクニシャン」と言って 採血だけをする方もいますし、在宅では看護助手として看護師の指導のもとに動く人です。この在宅助手を便う場合は スタンダード、基準がないといけないということと、委任される内容が明確化されていなければならない。 看護師の責任が明確化されていなくてはいけないということと、その看護助手というものは看護師のもとに行うこと ですから、スーパービジョンとフォローアップをされなければいけない、そしてその看護助手のコンピタンシー、 有能性というものを必ず確かめなくてはいけないということと、これは、そこらの人を連れてきて「はい、看護助手にする」 というわけではございません。教育をして評価していくということで、そのシステムが各訪問ステーションの中にポリシーとして なくてはいけないということです。

それでは、看護師っていったい何をする、看護の定義は何なのかということなんですけれども、これが少し日本よりも アメリカの場合ははっきりしております。アメリカの場合は各州少しずつ異なりますけれども、これはペンシルバニア州の 場合ですけど、大体同じようなことです。要するに、こういった看護診断のことですね。実在・潜在する健康問題に関する さまざまな人の反応を症例から診断・治療し、健康教育、カウンセリング、回復、維持、促進をし、指示する。 医師の処方のもとに医療分野を遂行するということで、かなり医行為を行います。RNとは登録看護師として州での資格を有する 者のことをいっております。これが看護実践の定義です。

では看護師の責任は何かということですけれども、これらがはっきりと州の規定の中に、看護師はこういう責任がありますよ、 ということを言っております。つまり患者さんの反応をアセスメントし、計画・介入・許価といった一連の看護プロセスを行う、 これが看護師の責任なんだということです。また、安全で効果的な実践を行うためには適切な機関で作成された看護基準、 専門職業人としての看護のコード、日本で言ったら看護協会のコードでも結構ですが、決まりというものを使用するということが、 はっきり各州に書かれているということがあります。

在宅助手の条件なんですけれども、これは日本も似たようなことなんでしょうけれども、このような当たり前のことがしっかり と明文化されているということは、日本とは異なっているのかなと思います。例えばメディケア、メディケイドの在宅助手の場合は、 これは国で公的に払ってくれるもので、メディケア、メディケイドが設立したのが1965年ですけれども、そのときに初めて法的なこと で在宅助手の者について、パティシペーション・イン・コンディション、ちょっと横文字で申し訳ないんですけれども、診療報酬を 国からもらうのに、こういうことを守ってないともらえませんよ、というのが規定されました。在宅助手の条件は、教育としては 16時間の講義、最低75時間の実践を行っているとか、コンピタンシー、有能性の評価と継続教育を受けているとか、業務分担と責任が 各エージェンシーで、すなわち訪問看護ステーションではっきり書いてあるかとか、スーパービジョンを本当に受けているのかどうかと いったことが法的に規約として書かれていますので、これがされてなくてはいけないということが理解していただけると思います。

ではどんな教育内容かと言いますと、要するにコミュニケーションその他、日本の方でも同じようなことをやっているのではないかなと 思いますけれども、このような教育、バイタルサインのこと、いつ看講師に報告しなければいけないかといったようなことが書かれており ます。

非常事態と緊急事態の対応の知識の獲得とか、あとプライバシーのこととか感染のこと、その他ADLのケアのことで、 あとはほとんど日本と同じではないでしょうか。

ではその看護助手の方を実際に採用する就職時の能力評価をどうやってするかというと、まず就職時に試験をします。 各訪問看護ステーションに基準がありますので、まず試験に80%とか85%通らないと雇ってもらえません。 面接、それから犯罪記録を取ってもいいかということを聞きます。というのは、もうほとんど在宅に出たときには、その人の後ろで 物が盗まれたとか何とかって言ったときに誰も見ている人がおりませんので、犯罪記録を見ます。あとは州によっては助手としての 認定をされているところもありますし、経験をどのくらいしているかということ、あとは皆さんも同じように6か月、12か月の評価と いうこととか、能力を維持するための継続教育といったようなことは、ずっと続けてやっていきます。

これが1つ日本にないなと思うのは業務分担と責任ということで、業務ディスクリプション、業務内容ですね。 それは、あまり日本では書かれたものはありません。病院でもあまりないし大学の組織でもないようです。 皆さん何となく分かっているというようなことのようですけれども、それは何かというと、各職種の概要、責任、教育、経験、 労働条件といったようなものがまとまって「これがあなたの仕事ですよ」というものを、面接時に初めから分かっていただく、 それを理解して入っていただくというような、こういったものがこれから出てきたらいいのかなとも思います。

看護助手は、看護師のスーパーピジョンのもとに業務を行う、これは看護師のスーパーピジョンがなければ何もできません。 看護師は、その患者に対する技術的な支援の訪問の他に、2週間に1回必ず看護助手をスーパーバイズするために家庭を訪問しないと いけない。これがもし1回でもしていなかったら、その訪問看護ステーションは閉鎖されます。それほど厳しい規則ですので、 看護師はいわゆる看護助手の責任を取るということでは、こういった決まりがあります。

では無資格者、UAPについて、日本看護協会と同じように米国看護協会はどういうふうに考えているかというのを申しますと、 米国看護協会では、実際に看護助手の職能団体と、それから看護師の団体で、実際に国会のような所で話し合って、お互いに合意、同意 を得たということがあります。教育された看護助手はRN(登録看護師)の責任監督下において看護師から委託された業務を行うとしており、 UAPをこのように定義しております。

アメリカには異なった51州の州のトップのNCBNという、州がー定の、一貫性をもって行うための統合する機関があり、ここでも 同じようなことを見解としては言っております。その中で5つの正しいこと、「RIGHT」として、適切な仕事、適切な状況、適切な人、 適切なコミュニケーション、適切なスーパービジョンということを示し、在宅看護助手に、どういう仕事を委譲するかということを 述べております。

では米国看護弁護士協会。看護師の弁護士の協会がいったいどんなことを提言しているかと申しますと看護助手をRNで教育をすること、 看護師は委任に関して、あまり委譲するという教育が看護教育の中にないから、もっとそういうことをやるべきだということや、各州 同じ基準で、その無資格者を教育したらよいのではないかということ、患者ケアの再構築ということで、UAPを下げる、下に下がった という感じじゃなくてチームの一員として考えていったらいいんじゃないかということなどです。 後は、モニタリングと継続教育については、他のところと同じようなことを申しております。

これが私の作った在宅ケアなんですけれども、もう国で初めから、ケースマネージャーは看護師か理学療法士と認められて おりますので、こういった感じで動いておりました。これは小さな在宅訪問ステーションの組織図です。もっと大きな組織図の中で 看護助手が一員として働いていますし、ホスピスと別々になって分かれております。

実際に、在宅看護と介護がどういうふうに連携しているかといいますと、まず在宅看護に入ったときには、患者の権利と義務の 説明から、患者の責任、それから生前指示、記録、個人情報、災害プラン、こういったものは看護師がいろいろ説明しますけれども、 介護者も、その在宅看護助手も、よく周知していなければいけないことです。

私が対象にしたメディケア、メディケイドの対象者は、状態が改善する可能性がある人か障害者ということで、ホームバウンド、 自宅での生活で、もう1ブロックしか安全に1人で歩行できないという患者さんでした。看護技術を必要とする人しか、公的に払っても らえません。ですから介護保険だけというようなものはございません。

これはペンシルバニア州のエージェンシーの例ですけれども、これも在宅をする前に患者の意思を聞きます。

非常にここが大切なんですけど。実は法をうまく使うと介護を使えることがあって、この方は、施設、在宅、施設、在宅、 ホームというのを3か月ごとに更改しなげれば公的に保険で払ってもらえなかった方で、ぜひ在宅でやりたいと言った方を引き受けた ときの話です。それで、非常にうまく介護の人を朝と夜に入れたことによって、介護予防ということで全介助の方でしたけれども、 3年間入院することもなく、施設に行かなくて本当に非常にうまくいっている例です。これをまた後で説明できたらいいなと思います。

これが看護助手への、看護計画を説明して看護師が作る、看護助手のために作る看護計画です。

そして看護助手が記録する看護記録の1週間分の記録のー部です。

まとめとしては、UAPというのはもう前々からいたということと、アメリカの場合は看護助手の位置づけは高齢者医療で 明確にされたことと、そして在宅看護助手の拡大した役割の可能性ということです。痰の吸引については今日たくさん出てきましたけれども、 これについてもいろいろ変わっていくところです。今のところでは、看護助手は急性期の場合、吸引はできません。でも慢性期の場合で、 その訪問看護ステーションによって教育をした上でオーケーしているところもございます。UAPについてということで、共通点は 教育業務の分担、責任、スーパービジョン、それから有能性、そういったことを明確化することで非常にいい関係がつくれるという ことだと思います。在宅では、これから非常に療養依存度の高くなってきている方達が在宅に戻ってくるので、日本でもうまく いくんではないかなというふうに思っております。以上です。

座長

●リボウィッツ・志村よし子先生、ありがとうございました。業務分担と責任、役割ということで、日本でいろいろ考えて いくにも非常に大事な示唆をいただきました。