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発表会
安心と安全
-在宅障害者とともに創るチームのかたち-

質疑応答

座長

●この後質疑と討論ということでお時間を頂きましたので進めさせていただきます。 本日は「安心と安全:在宅障害者とともに創るチームのかたち」ということで7名の先生方に ご講演いただきました。ちょっと本当にお時間が十分でなかったところで、フロアの皆さまからの ご質問あるいはご意見等、あるいは演者の先生方からの追加のご発言というところで、 ありましたら挙手をお願いいたします。

演者の先生方のほうから追加のご発言いかかでしょうか。よろしいでしょうか。

そうしましたらフロアの皆さまからご質問、ご質問、ご感想等ございましたら、ぜひ頂けたらと思います。

海野

●ALS協会の海野と申します。各先生方には貴重な講演、ありがとうございました。 日頃から難病の患者さんのご家族にご支援いただいている方が今日の参加者の中でも多いと思いますので、 この場を借りて厚く御礼申し上げます。

要望と質問になります。

要望が、今回の公開シンポジウムの「安心・安全」の副題にあります「在宅障害者とともに創るチームのかたち」と ありますので、ぜひとも、いろんな意味でのケアの中心に患者さん、障害者の方を据えていただければと思っています。 よく「介護者の負担軽減」という言葉がありますけれども、介護者の負担軽減とともに、もっと大事なのはやっぱり患者さん、 障害者の方がいかに自分らしく生活できるかという視点が抜けてしまうと、ひょっとしたら介護者の負担軽減という言葉が 先に踊ってしまうことが起こりかねないので、ぜひそこを中心に据えてほしいと思います。という意味では、「サービスを 受ける」という受け身の言葉自体も、ひょっとしたら受け身になりかねない部分がありますので、患者さんが主体的に関われる 部分を、場の提供をぜひ積極的にお願いしたいというのが要望になります。

あと1点質問になります。泉様にお願いしたいのですが、お話の中にありました、吸引がまだなかなか進みにくいという点の 中で、吸引は行っていない方について、もし何か要因が分かれば教えていただきたいのが1点、もう1つが、介護サービスを 介護保険で100%利用していらっしゃるかたがいらっしゃったのですが、その方については障害者自立支援法の居宅介護サービスを 使っているかどうか。もし使っていればどれぐらいの給付時間を受けているかを教えていただければ助かります。以上です。

座長

●泉先生、よろしくお願いします。

●1点目なんですけれども、吸引がなぜ進みにくいかということでありますけれども、療養者さんの中に、ちょっとアンケートを してみたところ、ヘルパーさんの吸引に関しては非常に不安があるというので、なかなかご本人、家族のほうから希望がないと いうのがいちばんの原因であります。

2点目ですが、100%介護保険でサービスを利用している方々ですが、障害者サービスのほうからの利用はまったくないのが 現状であります。よろしいでしょうか。

座長

●ありがとうございます。他にいかがでしょうか。そうしましたら先ほどの海野さんからのご提案というか、 ご意見として、患者さんご自身を支えるということを基本的に中心にということのご発言がありましたけれども、 そのことについて演者の先生方のほうからのコメントとか追加のご発言とか、いかがでしょうか。橋本先生、川口先生。

川口

●そうですか、では私の話し足りないところを後で橋本さんがフォローしてくださると思いますが、確かに今、海野が言いましたように、 当事者のニーズに答えてサービスを提供するとかじゃなく、サービスを自ら当事者が使っていかなければいけないわけで、なかなかでも、 それが現状難しいというご報告をいただきました。ヘルパーに吸引させるなんてとんでもないというふうに、うちの母も言っていましたし、 やっぱり怖いですよね。資格のない人にここから吸引してもらうわけですから。橋本さんがなぜできたか、あるいは私、今、介護事業所を していまして、11人のALS患者さんに45人のヘルパーを養成して派遣をしている派遣事業者なんですけれども、一度も事故がなく 満足したサービスを提供させていただいていると思っているんですけど、なぜできるかというと、やはり当事者が主体的にヘルパーを 自分で育てるという気持ちでいます。初めはもう全く無理です。「どうしてこんなの、付いてきた?」と必ず言われるんですけれども、 でももう猫の手も借りたいような状況になっているわけで、そうするとですね、本人も自覚をして、このままだと私は家族に殺されると 思うらしくて、本人も自覚して一生懸命他の人にああだ、こうだと、細かい所から一生懸命文字盤で注文をして、それでヘルパーを 鍛えていくということができています。

元を正せば、看護とか医療の流れではなくて、どちらかというと障害者の自立生活運動というのが日本独自にありました。 それもやはり30年、40年の歴史があるんですけれども、彼らが施設から地域に出て、すごく脳性麻痺なんかで体が麻痺して いる人たちが、ヘルパーを手足のように使って自分で生活をしたいという望みがあって、それで東京を中心に広がってきた 運動があるんです。それに、はっきり言えば便乗して、東京の患者さんたちがヘルパーを使い出したという経緯があります。 それはもう、まったく医療とは別の流れがあって、こういうふうになってきているので、ちょうどそれを考えると、橋本さん とか私たちのやっていることというのは、医療、あと看護のケア、あと障害者の培ってきた在宅での自立生活というものの ちょうど接点、ものすごく針の穴を通すぐらいの狭い所ですけど、そこで何となくできているということなんです。 だから日本全国でできるわけではなく、本当にまだ東京の一部の患者さんたちが、幾つかの制度を使ってやってきていること なんですけれども、ただ、やはり知恵を寄合えばできるし共通理解があります。協約の可能性があるということで、 それをさっき私は上手に言えなかったんですけど、ただ、ああいうへたくそな絵をお見せしてごまかしたんですけど、 そうじゃなくて、みんなで何とかこの人と一緒に生きていたいという思いがあって、それが結実したのが、正に今橋本さんの この生き方です。橋本さんが厚生労働省に行くと、厚生労働省の役人は何とかして医療費削減とか福祉のほうも削減・縮小と いうふうに思っていても、橋本さんに関しては「好きなだけ使ってください」というような意見になるんですね。 やはり皆さんもそうだと思いますけれども、何とかしてこの人と一緒に生きていたいと思えば、できるはずなんです。 そんなに難しいことではないと思います。橋本さん、どうですか。

橋本

●橋本のほうからも、介護を受ける側の人に、介護者は看護者にはなり得ないということを自覚させる必要があるのでは ないでしょうかという発言があります。

座長

●はい、ありがとうございます。

川口

●もう1つだけ、今の、付け加えるんですが、私もヘルパーよりもむしろ利用者のほうに言うんですけれども、 看護師に要求することをヘルパーに絶対要求しないでほしいと。素人ですから、本当に猫の手のつもりで使ってほしいと いうふうに言っています。だから、それはやはり当事者教育をもうちょっときちんとすることが必要だと思いますけれども、 それは先生方に私のほうからお聞きしたいんですが。

座長

●今の、もしよろしければ、リボウィッツ先生、アメリカでのいろいろなサービス提供等との関係から、今の川口先生、 橋本先生の発言等に加えて、何か状況等、お伝えいただくことがあったらお願いしたいんですけど。

リボウィッツ

●私は他の学会で、医事学会か何かに出たときに、ヘルパーさんの団体から、看護師がヘルパーさんにモルフィンの タイトレーションですよね、多くしたり少なくしたり、それをやってほしいとか、そういうことを頼まれて自分たちは 非常に迷惑しているとか、ああいったことを伺ったことがあります。やはりこれはできないということはありますよね。 ですから、してはいけないこと、していいことを明確にすることだと思います。痰の吸引は、これはいろいろだと思います。 というのは在宅で家で暮らせるような方たちは、ある程度落ち着いていて、もし吸引をしないことで窒息死すると言ったらば、 そのヘルパーさんは立っていて何もしなかったということになりますよね。ということで将来的にはどこまでヘルパーが できるかということを、その訪問看護ステーションの中でポリシーとしてないと、誰が責任を取って、誰がその有能性を見るかと いうものは、やはりないといけないのではないかと思います。アメリカの場合は、看護・介護が一緒になって動いているので、 ちょっと違った話なんですが、今、こちらは、全然、関係というものは、自分のところで働いているわけでも、そういう 所もありますけど、そういうわけではないんですよね。ということは、非常に危険なことだと私は思います。連携というのは 先ほど出したように、専門で独立した者が連携していくのであって、「係わる」連係は誰かにスーパーバイズされなければいけない という点だと思うんですけれども、そんなに簡単に言えませんよね。システムが違うので。

座長

●泉先生、あるいは柴崎先生も、今のことについて、何かご意見とか追加のご発言、あるいは寺田先生もありましたら お願いしたいと思いますが。

寺田

●先生の先ほどのスライドを見て、アメリカではケースマネージメントというのが確立されていて、ドクターと同等の立場で 橋渡しというか、中立的立場でマネジメントしているというお話を聞いて素晴らしいなと思いましたが、日本では如何せん、 今のような現状があるので、私たち、やはりソーシャルワーカーとしてもきちんと両方にマネジメントできる役割を担っている わけなので、もっともっと、そのへんの部分で私たち、頑張っていかなきゃいけないなって、すごく感じました。

柴崎

●連携の面で、ちょっと追加をさせていただきますと、最後にアンケート調査の結果をご報告しました。 あれは訪問看護ステーションに対して行ったんですけど、介護事業所を併設しているところに対してやったんですね。 それは常日頃からそういうスーパービジョンとかをする関係があるんではないかという前提のもとで行ったものです。 実際、同行訪問や所内での研修がある程度行われていた、けれども100%は行われていないというのも結果だと思うんですね。 ですから、そういう近しい関係でも、そういうスーパービジョンをしあうような関係がないという中で、実際は別法人からの サービスを入れている方のほうが多いと思いますので、先生がご心配されるような状況に日本があるというのも一面なのかなと いう気がします。

リボウィッツ

●それに関してなんですけれども、在宅のほうにも第三者評価がありまして、例えば別の、自分のところで足りなくて、 よその法人から連れてきて助手を使った場合は、自分のところのポリシーを説明して、オリエンテーションして、サインして、 きちんと分かってやっているかというチェックがあるんですよね。ですから、いくら他のところを使っても、自分のところの ポリシーに基づいてやっていただきますよ、というふうになっていました。

先ほど、ケースマネージメントを看護師が頑張ってすごいというご意見がありましたが、まあ在宅の場合は、 アメリカの場合は、ドクターヘの診療報酬があまりついていないこともあってか、ドクターよりもナースの ケースマネージャーが主導的に計画を立ててやっていっている状況でした。

座長

●ありがとうございます。泉先生、あるいは川村先生も。あ、どうぞ。

会場参加者

●質問したいんですが、アメリカで在宅で人工呼吸療法、TPPVの患者さんってどれぐらいの割合でいらっしゃるんですか。

リボウィッツ

●あの、私、ちょっと統計的には分かりません。レベルによって、持っていても歩ける方もいますよね。自分でサクションできる、 吸引できる方もいるし。数的には統計は私はちょっと分かりませんけれども、今1つ違うことは、介護負担や何かも皆さん おっしゃっていましたよね。家で安全でないと判断した場合は、そういった施設にむしろ入ることを勧めます。

会場参加者

●それは費用はどこが負担を?

リボウィッツ

●それもその人の保険によって違いますし、メディケア、メディケイドの場合はカバーされます。ですけれども例えば在宅に 連れてくるときには、本当に在宅で安全にできるということが証明されてから在宅に移しますので。

座長

●泉先生、よろしいですか。何か今の追加のご発言は?よろしいですか。

●訪問看護の現場からの意見なんですけれども、私も昨年度ヘルパーさんの研修会に行ってきまして、ヘルパーさんのほうの 吸引指導のほうをしてきたんですけれども、なかなか基礎の部分でご理解していただくことに時間がかかっていました。 そして実際にやってもらった手技を見ていますと、非常に危なっかしくて、やはりそういったところの基礎をしっかり やるということと、あとは現場に行って、その場でやはり何回も経験を踏んでもらうということと、最後はやはり チェックリストを用意して、この方はどこまでできて、どこの部分がまだ不安なのかということを明確にして、 そこの不足の部分はまた新たな機会を設けて訓練していただくというふうな過程で、今ヘルパーさんのほうの吸引の指導に も協力している現状にあります。やはりどこまでしていいか、どこをしてはいけないか、こういった緊急事態があった場合には、 どこにどういうふうな形で連絡をするかといった、そういった連絡体制もきちんとした中で、やはり進めていくべきだという ふうに考えます。

司会

●ありがとうございます。川村先生?

川村

●一言だけです。また長くなるかもしれませんが。責任を誰がどうとるのかということが、いろいろな話の中に、 私はいつも抜けているような気がするのです。例えば医行為を医療資格のない方にお願いをして、もし間違いが起こっても、 自分はそれを問わないというふうに責任を自分自身が引き受けるということであれば、それはそれで成立するという部分が あるのかもしれません。けれどもそうでないということであれば、国が法制度として定めているやり方に沿って、 法制度を理解したやり方をしていくということは、法治国家である以上は必要なこと、必要というか、もう前提条件では ないかというふうに考えます。

それから痰の吸引の6条件、これはよく読み込んでいきますと、先ほどリボウィッツ先生が説明をされたような中身、 それが実際に盛り込まれているものだというふうに考えています。実態としては、先ほどリボウィッツ先生がおっしゃったように みんなが一緒になってやっている、そしてお互いに責任をとる部分や委譲する部分をきちんと整理して、「責任を持つからここを やってください」、「こういうやり方でやれば自分が責任を持ちます」という、または「私たちのほうはここのところに 責任をもっていたしますから、ここについてはあなたたちのほうでお願いします。問題が起こったときは責任を持ってくださいね」 「分かりました」、というような、そういう関係性をしっかり持ってやってくださいという内容のものです。そんなふうに、 私は理解をしております。

流れの違いという考え方もあるとは思いますけれども、責任の問題というものをディスカッションしていくと、 だんだんはっきりしてくるのではないかと思っております。

それと実態として、まだまだ私たちが「連携」ということを十分に身につけていない未熟さがあると思います。 お互いに話し合って、訓練をし合って成長して行くことが大事だと思います。そうすれば流れがどちらであろうと、 支援する側と、支援を活用する側、両者がー緒になって、これからの在宅ケアシステムを作っていくんだというふうに考えて おります。以上です。

座長

●予定の時間がまいりました。シンポジストの皆さま、フロアの皆さま、本日はありがとうございました。いろんなご意見、 課題が出されました。この場で出されましたことを、今後在宅で障害を持ちながら生活される方に安全で安心な生活が 送ることができますよう、今後考えていかなければと思っております。本当に今日はありがとうございました。