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発表会
安心と安全
-在宅障害者とともに創るチームのかたち-

当日資料

訪問看護の立場から
「難病療養者支援における看護と介護の連携」

泉 美紀子(青森県看護協会訪問看護ステーションあおい森)

当ステーションが訪問している療養者の中で、難病療養者の占める割合はおよそ2割で、 疾患別では、ALS6名、多発性硬化症3名、脊髄小脳変性1名、脊柱後縦靱帯骨化症1名と なっています。なかでも、ALS療養者は6名全員が人工呼吸器を装着し、日常生活全般に 全介助を要する状態です。専門医・かかりつけ医の往診、訪問看護、訪問介護、訪問入浴、 保健師の訪問指導、青森県在宅重症難病患者家族支援事業など保健・医療・福祉のサービスを 受けていますが、公的サービス以外に自費で家政婦さんを雇っている方もいます。 こうした療養者・家族が抱える問題は多岐にわたっていますが、とりわけ24時間365日を 家族介護に委ねた苛酷な現状に目を向けていくことが必要です。 療養者の安全を確保し、介護者の負担を軽減するには、ALS療養者の個別性に配慮した ケアの提供、看護職の主体的な係わりと呼吸管理技術の提供、地域の支援体制が 必要ですが、看護と介護の連携もより重要になってきます。人工呼吸器を装着し、日々身体機能が 低下していく不安な生活を、より安全に安心して過ごすには、ケアの中心となる看護と介護がお 互いの垣根を越えて、療養者・家族を中心にしたチーム体制の中で、連携を強化していく必要が あります。

近年、「看護と介護の仕事の違いは何か」と、問いかけられることがよくありますが、 医療と福祉の教育課程の違いそのものが、大きな違いであると考えます。つまり、看護師は 医療の担い手であり、療養者への適切なアセスメント、高度医療の提供、予測される事態への 対応ができます。 在宅という常時医療とつながっていない環境において、予防的行動が取れるという事は、医療の 安全面からも療養者の安心を確保する意味でも大変重要なことです。このような診療の補助業務 の部分と、療養上の世話という介護と重複する部分とを分けて考える必要があると思います。重 複する部分においては、療養者の状態や介護力・ニーズに合わせて役割分担をして、柔軟に対応 していけばいいのではないでしょうか。

これまで、当ステーションでは、ALS療養者への訪問は、看護師とヘルパーが別々の時間帯で したが、ケアの安全性、介護者の負担軽減、ヘルパーの吸引問題の現状などを考慮し、同じ時間 帯に訪問する形態に変えています。清拭、寝衣・寝具交換などの身体ケアは一人では困難なため 家族の協力を得ていましたが、体制を変えてからは介護者がこれまでより休養の時間を多くとる ことができ、外出も可能になりました。また、介護幟が吸引などの医療行為の実際を目の前で体 験でき、基本的な手技や緊急事態への対処方法を学ぶ機会にもなります。介護職が緊急事態に遭 遇した時に、看護と介護が協働してケアをしている事が優位に作用することになるでしょう。今 後も看護と介護が連携を深めることによって、療養者の安全と介護の負担軽減につながり、療養 環境が改善されることを願っています。