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6.質疑応答

辻井●ありがとうございました。10 分くらい、ご質問がもしあれば。ディスカッション していただいて締めくくりにと思いますが、何かご意見とか今後のことなど、こうした領 域に関しては研究例ということでいうともう少し、国家としてといいますか、頑張ってい かなければならないと思いますので。そうした意味でご意見等いただければありがたいと 思いますが、いかがでしょうか。

会場(臨床心理士)●僕が最初にやった出会いのクリニックのお話もそうなのですが、 全く支援にかかわっていない人というよりは、親の会を通じて募集した、もともとある程 度理解のある方だと思います。ほかの先生がやられたヒアリングの場合も、アスペルガー の会の会員の方が中心だったと思いますが、調査をされてみて、親の会等に所属されてい ない方と、そうでない方、うつの方ですけれども、どの程度の違いがあるのか、お感じに なられたところはありますでしょうか。

辻井●僕とか宮地先生とか野邑先生は会のやつで、永田先生のところはコミュニティで の実際のデータなので、それの違いという感じはありますね。永田先生、どう思いますか。

永田●実際、今日お示しした地域での育児支援教室は専門的な支援につながる前の方が 対象で、その方が今後どういう支援につながっていくのかということは検討していないの ですが、臨床実感としては、うつのお母さんは支援につながりにくいというのは感じてい ます。ただ支援をしていく中で、お母さんが支援を受けるということが自分にとっても子 どもにとってもいいという実感をもつことができれば、例えば教室に通うことで実感され ていくと、そのあと、他の支援に繋がっていく感じはあります。おそらくそういうことが ないと、例えば親の会に入っていらっしゃらない方たちのほうが、支援を得にくいという か、支援をうまく利用しにくいというところはあると思いますので、若干高くなるのでは ないかという印象はあります。その点、井上先生、何かあればぜひ教えていただきたいと 思いますけれども。

井上●整理していかなければならないのは、アスペ・エルデの会の活動の中で、今後ど ういうオプションを作っていかなければならないのかというのもあるのかな。もちろん、 一般的な、支援にのぼらない親御さんをどうするのか、という。相談にもいけないし、言 ってもなかなか第一歩が踏み出しにくい方に対する支援というのも考えていかなければな りませんし、例えば野邑先生の研究のように、親の会に入っていてもストレスが高くて、 うつ傾向にある。そうしたら、精神科のお医者さんに、会に入っていることで、繋ぎやす くなる仕組みというのですか、そんなものがあるといいのかなと私自身は思っています。

永田●最初に辻井先生が言われたみたいに、精神科の専門機関ということではなくて、 地域の中にそれなりの受け皿があって、地域の中での支援の枠組みの中でお母さんたちを 支える場があって、そこから支援がつながっていく、例えば親の会だとか、支援がきちん と繋がっていく会を作っていかなければならないという感じはしています。

野邑●診断の話が宮地先生からあったのですが、今から振り返ると早く診断していただ ければというのはあると思うのですが、実際に診断を受け入れられる時期というのはさま ざまだと思われます。最初の気づきから相談まで2 年、それから診断まで2年という宮地 先生の報告がありました。その間やはり、コミュニティの中で、診断には至らないのだけ れども、養育に不安をもっていて実際子どもが大変でという方を、どうやって、専門家で ないところで、一歩踏み出せないケースを支援できる、それをかなり長いこと継続する必 要があると思います。現状では、家族の支援は、就園まで保健センターがだいたい診てい て、そのあとは保育機関に移っちゃって、そして就学しちゃってとなっています。支援が 切れていく、支援する側が切れていくところをどう繋いで、専門機関に行くことができな いのだけれども支援が必要な人を地域の中でどう継続して支援していくかというシステム が一つ大事ではないかと思います。

辻井●今回のおそらく今後考えなければならない問題に、サービスをどう提供するモデ ルを作っていくのかという話がたぶん、もう一つ、誰がどういうモデルでどう提供するの かという話で、今回は研究機関であるとか、そういう意味で割と実力のある親の会などか らの提供という形でしたので、そのへんが何というか、もう一つの問題としては、ニーズ の高いというか、もっともニーズの高い人が実は相談にはこないという問題と絡めていく と、普及という意味でサービスのある種のパッケージを作ったとして、それを誰が習得し、 どこで提供していけばいいのかというような話は、もう一段たぶん考えていかなければな らないことで、それについてはやはりコストの問題が当然かかってくるので、私が一応今 取り組んでいるのは、保育園の園長補佐級がもう研修として明確に位置づけている。同じ エリアで民間幼稚園がプレスクールのような形でプログラムの一環としてやっていただけ るというようなことも、だんだん考えられています。さらに、今日ちょっとあまり詳しく は言わなかったのですが、このエリアでいうと名鉄インプレス(株)の熱田の森文化センタ ーとか、あるいは西春の名鉄のカルチャーセンターとか、岐阜新聞のカルチャーセンター などの、カルチャーセンターでペアレント・トレーニングのプログラムを展開するという、 これはどなたでもお金を払えばできるという条件です。そのような形、本当に民間の商業 ベースのところでそれが割と安価に提供できるモデルと、それから公的なモデルと、とい うことを何となく構想してこの間進めてきたのですが、井上先生はそのへんのところで。

井上●やはりエビデンスを一つひとつ作ってプログラムを開発するということはまず必 要だと思います。エビデンスというのは、効果があるということを証明したプログラムと いうことなのですが、今度はそれだけではどうしようもなくて、今回、辻井先生のプロジ ェクトで進められたように、それを消費者に伝えることが必要ですね。例えば幼児期だと こんなプログラムがあるよというのを、誰が伝えるんだろうということですね。カルチャ ーセンターというのも一つの媒体手段で、そこから入って、いろいろな新メニューがある というのを知らせていくのもそうかもしれないし、特別支援コーディネーターとか、例え ば少し年齢が上がったときにどんな支援があるのかとか、学校と付き合うにはこんな方法 がいいんだよというようなことを、やはり伝える人をつくらなければいけないなと思って います。

一つ、親の会というのは、今まであったような形ではなくて、例えば、僕はそのプログ ラムを体験したユーザー自身が媒介者になって伝えていくというのも一つだと思います。

伝えるということ、エビデンスをですね。それから、エビデンスを今度は使うという 2 段階目を考えないといけないのかな、そういう課題なのかなと思いました。

辻井●いろいろ課題があるわけなのですが、時間が近づいてまいりました。そろそろお しまいとしたいと思います。

以上