当日資料
発達障害の家族支援の新しいパラダイム
スライド3
高機能広汎性発達障害児・者の母親の
精神的健康への対応について
分担研究者 / 名古屋大学 発達心理精神科学教育研究センター 准教授 野邑 健二
アスペ・エルデの会所属のPDD児・者の母親への質問紙調査
- BDI(抑うつ)
- 対照群:一般の母親にも依頼
- ピッツバーグ睡眠質問票(不眠と睡眠の質)
- エドワード眠気スケール(日中の眠気)
- SDQ(こどもの行動障害)
- 対照群:アスペの会スタッフにも依頼
- FAS(子どもに対する感情表出)
家族の支援準備態勢づくりのモデルの開発
(ASDの子どもを持つ母親の抑うつ;対照群との比較)
アスペ母親群と一般母親群の棒グラフ
・・・ASD母親群では40%が抑うつ状態(一般母親群は20%)
重度抑うつは10%(一般母親群では1%)
まとめ1(母親の抑うつ)
- PDD児の母親には抑うつ状態を呈している方が非常に多く見られた
(軽度も含めて約40%、重度は約10%) - 母親のストレスの原因はPDD児以外のことも多い
- 抑うつ状態となることで、客観的な子どもの行動障害の程度に関わらず、母親の感じる育児負担感が増大する
- 抑うつ状態が強いと、育児負担感が増大し、児への批判的な感情表出が強くなる
↓ - 家族メンタルヘルスへの支援と心理教育は、児童への治療の観点からも重要である
まとめ2(母親の睡眠障害)
- PDD児の母親には、一般と比べて高率に睡眠障害が認められた
- 養育の問題が直接の原因ではなく、育児負担感が抑うつと関連し、抑うつと関連して、睡眠障害が起こりうる
↓ - 抑うつおよび睡眠障害への対応が必要なケースがあることを留意すべき
抑うつへの対策
母親の脆弱性
気質
養育体験
↓ 育児負担(感) [環境要因 家族機能の低下 周囲からのサポート不足]← 親の会などによる家族サポート
母親の抑うつ ← うつの治療
↓
育児負担(感)→ 不適切な感情表出 → 二次的な情報障害 → PDD児の要因[児の行動障害] → 育児負担(感)
ペアレント・トレーニング → 育児負担(感)
ペアレント・トレーニング → 不適切な感情表出
母親の精神的健康への配慮
- 子どもが望ましい発達をしているほど、母親の育児に対する自己評価は好ましいものになりがちである。逆に、そうでなければ、自己評価が低くなる。
- 発達障害児の保護者、特に母親の精神的健康に関しては大きく留意をする必要性が大きく、抑うつ状態や自己評価の低下が、発達障害児に子育てのうまくいかなさ感と結びついている。