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平成22年度厚生労働科学研究費補助金
障害者対策総合研究(身体・知的等障害分野)成果発表会報告書

【シンポジウム第2部】

堀口●それではお待たせいたしました。これから第2部を始めさせていただきます。

第1部で4人のシンポジストからお話をちょうだいいたしました。皆さま方の中でご興味をもたれたことですとか、聞いてみたいこともあるのではないかと思いますので、シンポジストにご質問いただきご回答いただきたいと思っています。

その前にそれぞれシンポジストの皆様に、ご自身の発言について一つずつ付け加えることがございましたらいただきたいと思っております。高梨さんからお願いできますでしょうか。

高梨●それでは一言ということですので、先ほど言い落としましたことを申し上げます。

千葉県が条例を制定した後に各地で同様な動きがございます。特に北海道では施行されています。今後、幾つかのところでも検討されているところなんですが。

どうして千葉県ではできたのかということをよく聞かれます。先ほど、佐藤先生の方から話がございましたけども、委員会で経験したことが三つあります。そのひとつは、障害のある人にどのように対応したらよいかという共通のルールを作る必要があるという共通の理解に達したことです。

もう一つはこうした問題というのは議論が基本的に大事なことでして、県議会でいろいろすったもんだしましたけれども、私としましては、県議会での議論がすったもんだしたこと自体が条例の制定に向かっての一つの動きであり、また条例の意図した県民のあれだけの理解の促進につながっていったということだろうと思っています。

そして三つ目は、他の県でうまくいかなかった県もございまして、こういったところの取り組みを見てみますと、障害のある方、あるいはその関係者だけで議論をしていた。千葉県の場合はそうではなくて、県民の中で広く議論されていったということだろうと思っています。その推進力になったのが、今日もいらっしゃっていますけれども、県の行政の方々であり、また、野沢さん、あるいは佐藤先生を含めまして非常に熱心に聞き取りをしてくださった方がおられる。また、それを支援してくださる方。特に聴覚障害の方ですとか知的障害の親御さんの会、あるいは精神障害の方々、こういった人たちの後押しがあってできたんだろうと思っています。ですから今後新しいところで動く場合に、やはり県民の中で広く議論するということができるかできないかということが、成否に関わってくるんじゃないかなと感じております。

堀口●ありがとうございます。続きまして佐藤さんからいただけますでしょうか。

佐藤●大分話をさせていただきましたので特に付け加えることもないんですが。条例ができて3年目になります。逆に安定しちゃったというか、県民の思いというもの、あるいは住民も少し安定して議論が今、少なくなっている。そういった印象を持っています。議論できるといいかなと思っているところです。

堀口●ありがとうございました。続いて。

小川●レジメの中で飛ばしちゃったんですけど、これからの地域社会に求められる活動というのは、やはり施設を開放していくというのが、地域のつながりの中で大切かなと思っています。私たちの市街地にあるという利点もさることながら、ホール、会議室というのは基本的に学習会とか主婦の方たちのヨガとか健康クラブというような利用が多く、それ以外にもお店自体も貸しています。ダンスクラブの定例会とか、組合の飲み会とか、老人会とか市民大学の勉強会の打ち上げ。いろんな形で貸しています。それは実際上、私たちの業務外の仕事なんです。職員が無給でボランティアでやっている。私たちは積極的に施設運営、障害者に対する支援事業が自己完結しない、広がりを持って施設も含めて外に出ていくということは大切かなと思って活動をしています。

秋山●秋山です。このシンポジウムのタイトルにもありますが、「障害があってもなくても」とあります。これはとても私は大切なことだと考えています。子どもたちに障害が診断がつくとすぐに専門家がつくことになってしまいますが、障害があってもなくても支援できるところはたくさんあって、専門家に任せるだけでなく、専門家の話を聞きながら、子どもたちを自ら支援していく状況をみんなで考えていきたいと思っています。以上です。

堀口●ありがとうございます。第2部から新しくご登壇いただきましたシンポジストをご紹介いたします。田代信久さんです。三鷹市で導入されましたスクールソーシャルワーカーの第1号として試行事業の段階で関わられた功績をお持ちです。現在はハローワークで就労支援にも当たられています。

今日のテーマは地域づくりということで、成功事例ということで先生方にお話しをいただいているのですが、田代さんから、初めて教育の分野に福祉職として入り込んでいったときにいろいろなご経験があったと思うのですが、その辺りを少しお話しいただければと思っております。お願いいたします。

田代●教育支援はなかなか目的が分散しています。また、教育の分野は保守的な面もあります。堀口さんからご説明がありましたが福祉職として教育分野に関わりを持ちましたが、教育側の福祉との連携については意識改革も必要だと考えております。その辺は短期的に解決することは難しいと思いますので、5年とか10年とかでひとつの形になるくらいの時間が必要です。福祉職が教育に入ってきて、最近やっとその認知を得ることができるようになってきました。

堀口●ありがとうございます。皆さま方もご存じのとおり最近はICFと言いまして国際生活機能分類と日本語に訳していますが、いろいろな要因でものごとをとらえていくという考え方になっていまして、その中で環境因子というものがありまして、プラスに働く要因とマイナスに働く要因というものがあります。

地域づくりといった視点で見たときに、プラスに働く要因というのは何かということでシンポジストの皆様からお話をいただきたいんですが、これがプラスに働いたのではないかというご意見がありましたらお願いします。

まずは高梨さん、いかがでしょうか。条例づくりのところで今、お話しいただいたことと重なりますが、これが地域づくりにとってプラスに働くのではないかということで何かご意見をちょうだいできれば。

高梨●大変難しいお話ですね。私たち基本的には、まず問題認識が大事なんだろうと思っています。先ほど、佐藤先生のご説明の中にもございましたけれども、実際に生活されていて、何ら問題意識を持たない方って多数ございます。世間一般の方たちは自分たちの生活のことは考えていても、他人のことはほとんど関心がない。あるいは障害のある方にとっても、自分がどんな生活をしていてもそれが生活の質という点で望ましい状況になかったとしても、あまりご本人がそれについて問題性を感じていないという場合もございます。ですからどちらにせよ、自分の生活だけではなくて、地域の人たち、あるいはもっと広く地域社会の人たちに目を向けて、その中で何が必要なことなのか、何を解決しなければならないのかという問題意識をまず持つということが一つ目に大変大事だと思っております。

二つ目には、その問題意識に対してどうアプローチしていくのかという方向だと思います。とかく最近の社会というのは、なかなかチームで何かをするとか、あるいは地域で何かをするというのは非常に難しくなっています。大変人間関係が希薄になっているからだと思いますが、やはり地域の中でみんなでどう取り組むのか。地域にある課題を行政任せにするのではなくて、自らの課題として解決に向かう組織体あるいは運動というものを巻き起こしていかないといけない。そのために私ども社会福祉の現場では、地域組織化活動とか、あるいは社会福祉活動法とか言うんですけど、そういった技術も含めまして地域で何かみんなの共通認識のもとで改善する目標をもってやっていくというのが大事。その結果として地域の中の福祉力と言いましょうか、福祉で解決する力が蓄えられていって、その地域が発展していくんだろうと思っています。

三つ目に、私自身取り組んでいることで大事なことは、子どもたちをどう育てていくかということだと思っています。障害のある方の問題に関わっていますと、どちらかと言うとこれまで障害のある方というのはサービスの受け手という立場でおりました。しかし事例となる背景を考えてみますと、多くの場合が、先ほど申しましたように、障害を知らないということから起こっています。障害を知ってもらうにはどうするか。障害のある方が問題を知っているわけですね。障害のある方が自らの生活を周囲の方たちに知ってもらう努力というのが、障害のある方にとって大変大事でありますし、それを知っていただくことで社会が改善されていけば、障害のある方が誰もが望む地域社会づくりのための主体者として大きな役割を果たす。

私はよく、「受ける福祉から作り出す福祉へ」というお話をするんですけど、まさにそれがこれからの障害のある方にとって大変期待される役割ではないかと考えています。

堀口●ありがとうございます。次に佐藤さん、ご活動がうまく運んでいる、プラスに働いている要因は何だとお考えでしょうか?

佐藤●条例に関してですか?(いえ、PACガーディアンズについてです)あのー、そんなに比較的に運んでいるわけでもないんですが。やはり楽しいというところに着目して動いているということと、それからうちの法人のPACはですね、連携というとおこがましいんですけれども、障害者団体、千葉県内の知的障害者の団体の方々と連携をしながら走っておりまして、そこへまたその仲間の方々が次々と入ってくるというような形で進んでおりまして。まぁ地道でありますけど、それがじわーっと地域に広がっていっているということです。今日パンフレット入れておきましたけれども、まだまだしかし、地道に広がっているとはいえ、現在、40組程度しかコミュニティフレンドの活動をできておりませんので、これはもっと数を飛躍的に伸ばすということを考えているところです。

で、あの、コミュニティフレンドの活動とちょっと側面を変えて申し上げてよろしいですか。コミュニティフレンドの方は楽しいという形でいて活動しておりますけれども、条例の関係で少し一点、高梨さんの話と関わるところでお話しさせていただきますと、一番変わったのは教育の関係が変わったんだろうというふうに、私、認識をしておりまして。

この条例を作る前にアンケート調査をしたときに、一番差別の事例として出てきたのが、教育関係の差別が多い。で、親御さんて、今日の私の話にも出ましたけど、教育関係者に対する、何ていうか被差別意識がひじょうに高い人が多いですね。アンケート調査、事前のアンケート調査でもそれが多かったんですが、条例を作ってそのあと相談ということになると、そういう教育差別の相談というのはほとんど出てこなくて、むしろ地域サービスの相談というものが多いといことで、これは一体どういうことなんだろうかということが出ているんですが。

あの、条例を作る過程で、今日の私の話の中で議論がないと言いましたけれども、教育関係者の方は母親というのは何かちょっと、親御さんというのは怖いと、今でもそういうふうに思っている人はいると思うんですけれども、なかなか話をしにくいと思っている人がいて。で、親御さんの方も何か先生方の中には何かひどい考え方の人が多いというふうに思っている人が多かったんですが。それがこういう議論をするという中で、実は先生方も困っているし、親御さんもそんなに訳のわからんことを言う人たちばっかりではないというような、お互いのその人間性というのが見えてきていて。まぁこれは楽観的な見方なのかもしれませんが、条例をつくる過程の中で互いの人間性というのが見えて、いろんな地域の中での保護者と教育者、特に教育委員会、えー今日は秋山先生が教育委員会なんですが、教育委員会の中での、親御さんたちに対する見方というのがやわらいだというようなところがあってですね。本当に共通の土壌で話ができるということが、これでできたのではないかと思っているんです。

むしろ、今、問題なのは、就学期のお子さんをめぐる教育関係者の問題というよりも。まぁこれは秋山先生のお話ですけれども、就学前のところでのですね教育行政をはじめとしたところでちょっとそういう話し合いの土壌が失われてかけているのかなぁというふうな感想を、実は持っておりまして。で、そういうところをうまく、あちこちトラブルは出てきているんですけども、そのトラブルをうまくきっかけにして、その教育なりの環境をよくしていくという動きが見えてこないというのがあってですね。それはやっぱり関係者、特に行政関係者の方、市町村レベルでの行政関係者の方なんですけれども、なかなかあのトラブルというものを前向きにとらまえないでそれを覆い隠そうとするというようなところがあるので、どうもうまく回らない、というようなところがあるんじゃないかなというふうに思っています。

で、なので、市町村レベルでのそういった差別、あるいは障害をめぐるトラブル、それから教育関係をめぐるトラブルといったものをうまくこう、地域づくりに生かせるような調停者なり、話の場なり、というものをつくっていくということがこれから必要なのではないかと思っているところです。

堀口●ありがとうございます。今、佐藤さんのお話の中で出てまいりました、行政職ではありませんが教育委員会に携わられているということで、秋山さんのお話しをいただいてよろしいでしょうか?

秋山さんはまさにその相談の場を提供するということで、最近、お子さんや親御さんをご覧になって気になったこと、最近こんなことが気になっているんだというようなことを。

秋山●今日、お話の中でもありましたように、「気づき」ということが一番相談の中で大事にしていますが、佐藤先生がおっしゃった、問題ということを、誰が問題にしているかというのが、相談の場では明らかにすることが一番のカギになります。

保育者が困っているのか、子どもが困っているのか、保護者が困っているのかというところで、誰が困っているのかということを整理するところから相談が始まります。そうすると、誰が困っているのかというところですぐ対応を始めるわけなんですけれども、結構それが保護者とかが認識していなくて、学校もそうなんですけど、学校から相談に行きなさい、教育委員会から相談に行きなさいと言われて相談に来るがために、問題意識がはっきりしなくて、私のところで行っている子ども相談室では、問題の箇所がはっきりしないということがあります。

ですから現場現場で、何が問題なのかということをきちんと整理をしていく必要があるのではないかと思います。それは保育現場でも教育現場でも同じだと考えています。

堀口●次に小川さん、精神に障害のある方の地域生活を広げていくという視点から見て、先生がなさっているご活動の成功の要因というのは何だったのかというところを。こんなことが必要ではないかということでご意見をいただければと思います。

小川●自慢することはいっぱいあるんですけど。その自慢の中でも一番の自慢は何かと言いますと、やはりオープンスペース・トマトハウスというのを作って、町の市街地に始めて何年後かに道路の拡張をしなくちゃいけなくなったときに、今建っている場所に移転して、建物を建てるためには社会福祉法人として設立されなきゃいかん。この社会福祉法人の設立のときに、その建物を建てるのを地域住民に説明して反対者がいたら建てられないんですね。いわゆる補助金を出す以上、地域から反対が起きたら建てられないというのが今の状況で、厳しい社会の中で、例えば老人ホームを住宅地に作ることでさえ今反対が起きて、なかなか建てづらい。非常に根回しが大切だということなんですが。私たちは町の真ん中、しかも109(東急デパート)の並びの一等地に建てるという計画を地域に発表して説明を開いたんですけど、1人の反対者もいなかった。この奇跡は自慢だと思います。しかも精神障害者の通所授産施設を作る。精神の障害を持った人たちが集まってきてそこで仕事を提供するサービスをやる、福祉施設を作るんだよと言って、1人の反対者も出なかったのは何だったのかなということだと思うんですね。それは、先ほども言いましたけど、私たちが共同作業所という全く任意の団体の中でフリーに活動していて、しかもフリーだけど地域に打って出る。その時点から落語会を開いたり施設を利用して陶芸教室とかパン教室をやりましたけど、ライブをやったり餅つきをやったり。例えば製造も含めてですけど、地域の人と常に触れ合って活動して、施設を全くオープンにした。そのことが地域社会の中で権利を主張するとかしないとかいう議論も全く抜きにして、地域の中の人たちに承認されたということも実績なんですね。

僕は難しいことはわからないんですが、日常の活動が、施設として自己完結することの恐ろしさをなくすこと。施設は施設であるけれども地域の資源であり、地域の人たちにとって交流サービスというか、こういう利用の仕方もある。単に障害者だけが来て楽しむだけじゃなくて、地域でこういう催し物をやれば近所の人たちも参加できるし利用もできる。そんなことの中から、反対の人が起こらなかったという奇跡が生まれたんじゃないかなと理解していただいて、その辺の価値をご紹介することでイメージしていただければなと思います。

堀口●ありがとうございます。それでは今日、ご来場の皆様からご質問ですとか、また就労支援ということに関しまして田代さんにもご登壇いただいていますので、ご意見ですとかご質問ですとか、ちょうだいできればと思いますがいかがでしょうか?

……よろしいでしょうか?本日は私の司会の不手際で随分と時間が押してしまいましたが、皆様方、お手元にアンケート用紙をお渡ししておりますので、各シンポジストへのご質問も含めて、またご意見をちょうだいできればと思っております。また今後とも皆様方のご支援をちょうだいすることになると思いますが、また引き続きよろしくお願いいたします。シンポジストの皆様方、今日はありがとうございました。

以上