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平成22年度厚生労働科学研究費補助金
障害者対策総合研究推進事業(身体・知的等障害分野)報告書

強度行動障害の支援方法に対する評価尺度の作成

岡田 涼
中京大学現代社会学部

1.研究目的

強度行動障害の概念は,知的障害者施設などにおいて,対応が著しく困難な入所者が存在することを背景として登場した。行動障害児(者)研究会(1989)は,強度行動障害児(者)の定義を,「直接的他害(噛みつき,頭つき,など)や間接的他害(睡眠の乱れ,同一性の保持),自傷行為などが,通常考えられない頻度と形式で出現し,その養育環境では著しく処遇の困難なものをいい,行動的に定義される群」としている。その後,厚生省(1993)は,1993年より,強度行動障害判定基準表をもとに「強度行動障害特別処遇事業」を開始し,強度行動障害に対する本格的な行政的取り組みが行われるようになった。

強度行動障害特別処遇事業は,その後の支援費制度の下で廃止されるが強度行動障害判定基準表は,障害者自立支援法下においても「旧法等における基準」として用いられている。一方,現在の障害者自立支援法では,在宅の強度行動障害児(者)の支援のための行動援護基準が新たに設けられ,障害程度区分と合わせて判定が行われている。

強度行動障害の判定においては,旧法基準,新法基準のいずれにおいても,施設職員等が対象者の行動をみて,問題行動の程度と頻度から評定を行う。旧法においては,自傷や他害など11項目をもとに評定し,合計得点が10点以上で強度行動障害とされ,20点以上が厚生省による特別支援処遇事業の対象となっていた。新法においては,パニックや自傷,器物破損などの12項目について評定し,その頻度が多いほど高得点になる。合計得点について,区分3で10点以上が行動援護事業,区分6で15点以上が重度障害者等包括支援の対象となっている。

いくつかの研究で,旧法による判定基準を用いて,強度行動障害児(者)の特徴を調べた研究が報告されている。奥田(2001)は,強度行動障害に関する調査研究をレビューし,強度行動障害児(者)の特徴として,①青年・成人期の自閉症者に多いこと,②青年期に急激退行を示すダウン症者に顕著な行動障害がみられること,③強度行動障害と判例される対象者に注意欠陥多動性障害と診断される事例が多いこと,などを指摘している。また,三島ら(1999)の調査では,強度行動障害と判定された対象者は,それ以外の対象者に比して自閉性障害とトゥレット障害を合併している率が高いことを報告している。

その他にも強度行動障害児(者)に関する事例的研究がいくつか報告されている(佐藤ら,2000;佐藤ら,2001)。それらの研究の多くは,強度行動障害者が示す問題行動が改善していく経過を報告するものであるが,そこでの記述から,強度行動障害者の行動面での様々な特徴をうかがい知ることができる。

旧法と新法における強度行動障害の判定基準では,主に対象者の行動に焦点があてられていた。しかし,支援の必要度を的確に把握するためには,対象者の行動面だけでなく,環境面についてもアセスメントを行うことが必要である。特に,強度行動障害を示す対象者に対して現時点でどのような支援を行っているかという視点を含めたうえで,問題行動の困難度を把握し,支援の必要度を検討することが求められる。そこで,本研究では,強度行動障害に対する支援方法を評価する尺度を作成し,尺度項目の基礎的な情報を提示することを目的とする。また,強度行動障害判定基準項目,問題行動を評定するABC-J,知的発達の程度を測定し,支援尺度との関連を検討する。

2.研究方法

調査協力者

調査協力者は,NPO法人アスペ・エルデの会に所属する小学生から成人110名(男性89名,女性21名)であった(平均年齢17.90歳,SD=6.52)。NPO法人アスペ・エルデの会は,発達障害をもつ子どもとその保護者を支援する当事者団体であり,広汎性発達障害やアスペルガー障害などをもつ子どもとその保護者が所属している。会所属者の年齢帯は,小学生から成人まで幅広く在籍している。本研究における対象者の内訳をTable1に示す。調査対象者の知的発達の程度について,IQの情報が得られたものは87名いた。このなかで,IQ70以下を知的障害あり群(N=28),その他を知的障害なし群(N=59)とした。

調査内容

1)支援尺度

支援尺度については,困った行動への対応を尋ねる16項目を独自に作成した。それぞれの項目に対して,「はい」「いいえ」「必要なし」で回答を求めた。

2)強度行動障害判定基準項目(旧法)

厚生省(1993)が定めた強度行動障害判定基準は,11の行動を示す項目からなる(Table2)。項目に示される内容は,「ひどい自傷」や「強い他傷」などであり,行動の有無とその頻度を選択する。選択肢に示される頻度の表現は,項目によって異なる。例えば,「ひどい自傷」であれば,「週に1,2回(1点)」「一日に1,2回(3点)」「1日中(5点)」である。当該の行動がみられない場合は0点となる。通常は,施設職員が入所者の行動を評定するが,本研究では保護者が子どもの行動について評定した。

3)行動援護基準項目(新法)

厚生労働省により障害程度区分をもとに定められた基準であり,各項目の頻度及び程度に応じて0点~2点で評定する(Table3)。強度行動障害判定基準項目(旧法)と同様に,保護者が子どもの行動について評定した。

4)ABC-J

異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)は,Amanら(1985)が作成した異常行動チェックリスト(Aberrant Behavior Checklist)の改訂版を邦訳し,標準化のプロセスを経て,日本において使用できる異常行動チェックリストとして作成されたものである(Aman & Singh,2006)。ABC-Jは,問題となる行動を示す項目群から構成され,各項目について,「問題なし(0点)」「問題行動の程度は軽い(1点)」「問題行動の程度は中等度(2点)」「問題行動の程度は著しい(3点)」の4段階で評定する。下位尺度は,興奮性(15項目),無気力(16項目),常同行動(7項目),多動(16項目),不適切な言語(4項目)の5下位尺度58項目からなる。

手続き

調査は,浜松医科大学倫理委員会およびNPO法人アスペ・エルデの会の倫理委員会の承認を得て実施した。アスペ・エルデの会に所属する保護者に対して質問紙を配布し,自宅で回答してもらった後に郵送で回収した。調査の依頼にあたっては,調査協力が任意であることを十分に説明した。調査結果については,希望があれば後日知ることができること,また会の活動に役立てていくことを伝えたうえで協力を求めた。研究の趣旨とプライバシーの保護について慎重に説明するなど倫理面での配慮を十分に行い,研究の趣旨を理解して同意が得られた保護者のみ質問紙に回答した。

3.研究結果

支援尺度の項目

支援尺度について,項目ごとに回答の分布を検討した(Table4)。16項目のなかで,「するべきことを伝える際,本人が理解しやすいように言葉づかいや伝えるタイミングを工夫している」(64.49%),「見通しをもって活動が行えるように,事前に内容や終了の目安を伝えている」(68.22%),「活動内容やスケジュールに変更がある場合,事前にそのことを伝えている」(75.70%),「活動や課題を与える際,本人の好みや能力に合わせて内容や分量を調整している」(53.85%),「活動や課題を与える際,本人が自分で決定や選択ができる要素を取り入れている」(54.29%)の5項目については「はい」の回答率が50%を超えていた。一方で,「日常生活動作(排泄,入浴,着替えなど)を自立して適切に行えるように,支援ツールを使うなど環境の工夫をしている」(14.02%),「するべきことを伝える際,視覚的にわかりやすい絵図や写真などを使用している」(16.82%)などの項目では,「はい」の回答率が20%以下と低かったが,これらの項目では「必要なし」の回答が多くなっていた。

強度行動障害の頻度

旧法による強度行動障害判定基準項目について,11項目の合計得点を強度行動障害得点(旧法)とした。11項目でのα係数は.64であった。旧法では,10点以上が強度行動障害とされ,20点以上が厚生省による特別支援処遇事業の対象であった。今回の対象者において,10点以上は全体の7.41%(8名),20点以上は全体の0.93%(1名)であった。項目ごとの頻度をTable5に示す。

新法による強度行動障害判定基準項目について,12項目の合計得点を強度行動障害得点(新法)とした。12項目でのα係数は.71であった。新法では,区分3で10点以上が行動援護事業,区分6で15点以上が重度障害者等包括支援の対象となる。今回,10点以上の対象者はいなかった。項目ごとの頻度をTable6に示す。

ABC-Jの尺度構成

ABC-Jについて,下位尺度ごとにα係数を算出したところ,興奮性が.91,無気力が.89,常同行動が.88,多動が.94,不適切な言語が.85であった。下位尺度ごとの合計得点を算出した。下位尺度間には,.36~.83の正の相関がみられた。

各尺度の記述統計量と相関係数

強度行動障害(旧法),強度行動障害(新法),ABC-Jの記述統計量をTable7に示す。また,変数間の相関係数をTable8に示す。強度行動障害(旧法)と強度行動障害(新法)との間には中程度の正の相関がみられた(r=.45,p<.001)。また,強度行動障害(旧法)と強度行動障害(新法)のいずれも,ABC-Jの下位尺度との間に有意な正の相関を示した。

井上ら(印刷中)と同様に,強度行動障害得点(旧法)に対して,性別とABC-Jの5下位尺度を説明変数とする重回帰分析を行った(Table9)。その結果,強度行動障害得点(旧法)に対しては,興奮性の高さが有意な関連していた(β=.76,p<.001)。説明率は50%であった。強度行動障害得点(新法)に対して,同様の重回帰分析を行ったところ,情同行動(β=.22,p<.05)と多動(β=.66,p<.001)の高さが有意な関連を示した。説明率は57%であった。

支援尺度と他の尺度との関連

支援尺度の各項目と強度行動障害得点(旧法),強度行動障害得点(新法),ABC-Jとの関連についてSpearmanの順位相関係数を算出した(Table10)。支援尺度については,「はい」を1,「いいえ」と「必要なし」を0としてコーディングした。その結果,強度行動障害(旧法),強度行動障害(新法),ABC-Jのいずれも,支援尺度の多くの項目と正の相関を示した。支援尺度の中の「日常生活動作(排泄,入浴,着替えなど)を自立して適切に行えるように,支援ツールを使うなど環境の工夫をしている」(項目2),「活動や課題を与える際,本人の好みや能力に合わせて内容や分量を調整している」(項目8),「困った行動が起こりやすい場面で,絶えず側に付いて1対1で対応している」(項目12)については,強度行動障害得点(旧法),強度行動障害得点(新法)のいずれとも.3以上の相関係数を示した。また,ABC-Jの下位尺度に注目すると,多動が多くの項目と有意な相関を示していた。

支援尺度と知的発達との関連

支援尺度の各項目と知的発達の程度との関連について,φ係数を算出した。支援尺度については,「はい」を1,「いいえ」と「必要なし」を0としてコーディングした。知的発達の程度については,「知的障害あり群」を1,「知的障害なし群」を0としてコーディングした。その結果,「活動や課題を与える際,本人が自分で決定や選択ができる要素を取り入れている」のみ有意な正の関連がみられたが(φ=.25,p<.05),その他の項目については有意な関連はみられなかった。

強度行動障害と知的発達との関連

知的障害あり群(N=58)と知的障害なし群(N=28)との間で強度行動障害得点を比較した。その結果,旧法と新法のいずれについても,群間で有意な差はみられなかった。しかし,強度行動障害得点(旧法)が10点以上を示した8名のうち7名は知的障害あり群であり,20点以上を示した1名もまた知的障害あり群であった。

4.考察

本研究では,強度行動障害に対する支援方法を評価する尺度を作成した。独自に作成した16項目のなかで,「するべきことを伝える際,本人が理解しやすいように言葉づかいや伝えるタイミングを工夫している」「見通しをもって活動が行えるように,事前に内容や終了の目安を伝えている」「活動内容やスケジュールに変更がある場合,事前にそのことを伝えている」「活動や課題を与える際,本人の好みや能力に合わせて内容や分量を調整している」「活動や課題を与える際,本人が自分で決定や選択ができる要素を取り入れている」などの項目については,「はい」の回答率が50%を超えており,これらの支援は比較的多くの保護者が日常的に行っているものであると考えられる。一方で,「日常生活動作(排泄,入浴,着替えなど)を自立して適切に行えるように,支援ツールを使うなど環境の工夫をしている」や「するべきことを伝える際,視覚的にわかりやすい絵図や写真などを使用している」などの項目では,「はい」の回答率が低く,あまり実施されていない支援方法であると考えられる。しかし,これらの項目では「必要なし」の選択率が比較的高かったため,今回の対象者においてはそのような支援が必要なかったのかもしれない。

強度行動障害については,今回の対象者では旧法基準で強度行動障害と判定される10点以上の対象者は8名(7.41%)であった。項目ごとの頻度をみてみると,「パニックがもたらす結果が大変な処遇困難」と「粗暴で相手に恐怖感を与えるため処遇困難」の項目で5点がついている対象者がいずれも約10%存在した。10点以上を示した8名中7名はこの2項目にチェックがついており,パニックや粗暴な行動によって対応が難しくなることが強度行動障害の判定に強く影響するものと考えられる。新法基準では,支援の対象となる10点以上を示す対象者はいなかった。項目単位でみると,「本人独自の表現方法」において2点や1点がつく対象者が比較的多かった。旧法基準による得点と新法基準による得点との間には中程度の正の相関があるため,両基準には共通する部分があるものと考えられるが,完全に一致するものではなく,旧法基準と新法基準では異なる問題行動に焦点をあてている部分もあると考えられる。

支援尺度と強度行動障害得点との関連を調べたところ,「日常生活動作(排泄,入浴,着替えなど)を自立して適切に行えるように,支援ツールを使うなど環境の工夫をしている」「活動や課題を与える際,本人の好みや能力に合わせて内容や分量を調整している」「困った行動が起こりやすい場面で,絶えず側に付いて1対1で対応している」については,旧法基準,新法基準のいずれとも比較的高い正の相関を示した。そのため,行動障害の程度が激しい対象者に対しては,保護者はこれらの支援方法を用いて関わっているものと考えられる。また,支援尺度の多くの項目はABC-Jとも関連を示し,特に多動について多くの項目で強い関連がみられた。多動傾向を示す対象者に対しては,様々な支援方法を工夫しながら対応しているものと考えられる。

支援尺度と知的障害との関連を検討したところ,有意な関連がみられたのは,「活動や課題を与える際,本人が自分で決定や選択ができる要素を取り入れている」の1項目のみであった。そのため,今回作成した支援尺度は,知的障害の程度とは別の側面から,行動面での問題を示す対象者への支援方法を評価するものであると考えられる。

本研究では,強度行動障害に対する支援方法を評価する尺度を作成し,その基礎的な情報を提供することを目的とした。作成された支援尺度には,多くの保護者が行っている支援方法を示す項目と比較的行っている保護者が少ない支援方法を示す項目とが含まれており,日常生活における多様な支援方法を包括的に評価する尺度となっているといえる。また,支援尺度の項目の多くは,旧法基準と新法基準による強度行動障害と関連しており,行動障害の程度が重くなるほど,保護者はこの尺度で測定される支援方法を多く行っているものと考えられる。本研究の結果から,強度行動障害について支援方法という面から評価する尺度が作成できたといえる。ただし,本研究の対象者においては,強度行動障害の得点が比較的低く,また強度行動障害と判定される割合も低かった。そのため,今回の対象者は比較的問題行動が少なく,その程度も重くないサンプルであるといえる。今後,さらに強度行動障害の程度が重いサンプルにおいても支援尺度を実施し,支援方法と強度行動障害との関連を明らかにすることによって,強度行動障害の支援方法を適切に評価する方策を検討していくことが必要である。

引用文献

Aman MG, Singh MN(小野善郎訳)(2006):異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)による発達障害の臨床評価 じほう

Aman, M. G., Singh, N. N., Stewart, A. W., et al. (1985). The Aberrant Behavior Checklist: A behavior rating scale for the assessment of treatment effects. Am J Ment Defic 89: 485–491.

井上雅彦,岡田 涼,野村和代,他(印刷中):知的障害者入所更生施設利用者における強度行動障害とその問題行動の特性に関する分析 精神医学

行動障害児(者)研究会(1989):強度行動障害児(者)の行動改善および処遇のあり方に関する研究 財団法人キリン記念財団

厚生省(1993):強度行動障害特別処遇事業の取り扱いについて 厚生省通達

三島卓穂,川崎葉子,飯田雅子,他(1999):強度行動障害の臨床的研究.発達障害研究 21:202-213.

奥田健次(2001):わが国おける強度行動障害処遇の現状と課題 特殊教育学研究 39:31-37.

佐藤 暁,中村洋子,西 英治,他(2000):強度行動障害を示す1事例における療育経過の検討 特殊教育学研究 37:61-68.

佐藤 暁,中村洋子,田之畑保夫(2001):強度行動障害特別処遇事業終了後の施設一般棟における療育の展開 特殊教育学研究 38:71-78.

F.健康危険情報

該当なし

G.研究発表

特になし

H.知的財産権の出願・登録状況

1.特許取得
特になし

2.実用新案登録
特になし

3.その他
特になし

Table1 対象者の内訳

  小学生 中学生 高校生 大学生・成人 合計
男性 25 13 5 46 89
女性 4 4 3 10 21
合計 29 17 8 56 110

Table2 旧法における強度行動障害判定基準表

行動障害の内容 1点 2点 5点
1 ひどい自傷 週に1,2回 一日に1,2回 一日中
2 強い他傷 月に1,2回 週に1,2回 一日に何度も
3 激しいこだわり 週に1,2回 一日に1,2回 一日に何度も
4 激しいもの壊し 月に1,2回 週に1,2回 一日に何度も
5 睡眠の大きな乱れ 月に1,2回 週に1,2回 ほぼ毎日
6 食事関係の強い障害 週に1,2回 ほぼ毎日 ほぼ毎食
7 排泄関係の強い障害 月に1,2回 週に1,2回 ほぼ毎日
8 著しい多動 月に1,2回 週に1,2回 ほぼ毎日
9 著しい騒がしさ ほぼ毎日 一日中 絶え間なく
10 パニックでひどく指導困難     あれば
11 粗暴で恐怖感を与え,指導困難     あれば

Table3 新法による強度行動障害判定基準表(行動援護基準)

行動関連項目 頻度及び程度
0点 1点 2点
6―3―イ
本人独自の表現方法を用いた意思表示について
1.独自の方法によらずに意思表示ができる 2.時々,独自の方法でないと意思表示できないことがある 3.常に,独自の方法でないと意思表示できない4.意思表示ができない
6―4―イ
言葉以外のコミュニケーション手段を用いた説明の理解について
1.日常生活においては,言葉以外の方法(ジェスチャー,絵カード等)を用いなくても説明を理解できる 2.時々,言葉以外の方法(ジェスチャー,絵カード等)を用いないと説明を理解できないことがある 3.常に,言葉以外の方法(ジェスチャー,絵カード等)を用いないと説明を理解できない4.言葉以外の方法を用いても説明を理解できない
7のツ
食べられないものを口に入れることが
1.な
い2.ときどきある
3A.週1回以上 3B.ほぼ毎日
7のナ
多動又は行動の停止が
1.ない
2.希にある
3.月に1回以上
4.週に1回以上 3B.ほぼ毎日
7のニ
パニックや不安定な行動が
1.ない
2.希にある
3.月に1回以上
4.週に1回以上 5.ほぼ毎日
7のヌ
自分の体を叩いたり傷付けたりするなどの行為が
1.ない
2.希にある
3.月に1回以上
4.週に1回以上 5.ほぼ毎日
7のネ
叩いたり蹴ったり器物を壊したりなどの行為が
1.ない
2.希にある
3.月に1回以上
4.週に1回以上 5.ほぼ毎日
7のノ
他人に突然抱きついたり,断りもなく物を持ってくることが
1.ない
2.希にある
3.月に1回以上
2.週に1回以上 3.ほぼ毎日(ほぼ外出のたび)
7のハ
環境の変化により,突発的に通常と違う声を出すことが
1.ない
2.希にある
3.月に1回以上
4.日に1回以上 5.日に頻回
7のヒ
突然走っていなくなるような突発的行動が
1.ない
2.希にある
3.月に1回以上
4.日に1回以上 5.日に頻回
7のフ
過食,反すう等の食事に関する行動が
1.ない
2.希にある
3.月に1回以上
4.週に1回以上 5.ほぼ毎日
てんかん発作の頻度が 1.年に1回以上 2.月に1回以上 3.週に1回以上

Table4 支援尺度の項目と回答の割合(%)

項目 はい いいえ 必要なし
1 ①本人が言葉で意志を伝えられる場合に,意志表出を適切に行なえるように,指導している 49.52 29.52 20.95
②本人が言葉で意志を伝えられない場合に,意志表出を適切に行えるように,絵カードやジェスチャーなど言葉を補うコミュニケーション方法を教えたり,使ったりしている 11.96 30.43 57.61
2 日常生活動作(排泄,入浴,着替えなど)を自立して適切に行えるように,支援ツールを使うなど環境の工夫をしている 14.02 19.63 66.36
3 するべきことを伝える際,本人が理解しやすいように言葉づかいや伝えるタイミングを工夫している 64.49 12.15 23.36
4 するべきことを伝える際,視覚的にわかりやすい絵図や写真などを使用している 16.82 32.71 50.47
5 するべきことの順序がわかりやすいように,スケジュールを提示している 34.58 32.71 32.71
6 見通しをもって活動が行えるように,事前に内容や終了の目安を伝えている 68.22 13.08 18.69
7 活動内容やスケジュールに変更がある場合,事前にそのことを伝えている 75.70 6.54 17.76
8 活動や課題を与える際,本人の好みや能力に合わせて内容や分量を調整している 53.85 16.35 29.81
9 活動や課題を与える際,本人が自分で決定や選択ができる要素を取り入れている 54.29 20.95 24.76
10 トークンシステム(決められた目標を達成するとポイントがもらえ,ポイントがたまると欲しいものがもらえる)を実施している 24.30 37.38 38.32
11 適切な行動を教える際に,まずは本人の現状に合わせた達成しやすい目標を立て,少しずつ目標をステップアップさせながら指導するよう工夫している 46.73 31.78 21.50
12 困った行動が起こりやすい場面で,絶えず側に付いて1対1で対応している 16.82 37.38 45.79
13 緊急に普段の対応では手に負えなくなったときに,応援を要請できる人がいる 24.30 46.73 28.97
14 困った行動が起こるのを予防するために,苦手な刺激を取り除いたり,和らげたりするなど周囲の環境を調整している 33.64 30.84 35.51
15 困った行動が起こるのを予防するために,好みの活動や余暇活動ができるような時間や場所を用意している 38.32 25.23 36.45
16 疲れたり,調子が悪くなったりしたときなどに,一人で過ごすことができる場所(パーソナルスペース)を用意している 35.51 28.97 35.51

Table5 強度行動障害(旧法)の項目ごとの頻度

項目 0点 1点 3点 5点
ひどい自傷 頻度 106 0 2 0
% 98.15 0.00 1.85 0.00
強い他傷 頻度 101 6 1 0
% 93.52 5.56 0.93 0.00
激しいこだわり 頻度 102 2 0 4
% 94.44 1.85 0.00 3.70
激しいもの壊し 頻度 102 5 1 0
% 94.44 4.63 0.93 0.00
睡眠の大きな乱れ 頻度 107 1 0 0
% 99.07 0.93 0.00 0.00
食事関係の強い障害 頻度 105 1 2 0
% 97.22 0.93 1.85 0.00
排泄関係の強い障害 頻度 107 0 0 1
% 99.07 0.00 0.00 0.93
著しい多動 頻度 104 3 1 0
% 96.30 2.78 0.93 0.00
著しい騒がしさ 頻度 102 2 3 1
% 94.44 1.85 2.78 0.93
パニックがもたらす結果が大変な処遇困難 頻度 98 10
% 90.74 9.26
粗暴で相手に恐怖感を与えるため処遇困難 頻度 97 11
% 89.81 10.19

Table6 強度行動障害(新法)の項目ごとの頻度

  0点 1点 2点
本人独自の表現方法 頻度 83 21 4
% 76.85 19.44 3.70
言葉以外の説明理解 頻度 90 16 2
% 83.33 14.8 1.85
異食事 頻度 106 1 1
% 98.15 0.93 0.93
多動・行動の停止 頻度 98 5 5
% 90.74 4.63 4.63
パニック・不安定な行動 頻度 97 10 1
% 89.81 9.26 0.93
自傷 頻度 103 3 2
% 95.37 2.78 1.85
他害 頻度 102 6 0
% 94.44 5.56 0.00
だきつき・ものとり 頻度 108 0 0
% 100.00 0.00 0.00
環境の変化 頻度 105 3 0
% 97.22 2.78 0.00
突発的行動 頻度 106 2 0
% 98.15 1.85 0.00
食事関係 頻度 105 1 1
% 98.13 0.93 0.93
てんかん 頻度 107 1 0
% 99.07 0.93 0.00

Table7 強度行動障害とABC-Jの記述統計量

  Mean SD
強度行動障害(旧法) 1.71 4.02
強度行動障害(新法) 0.93 1.78
興奮性 4.17 6.11
無気力 6.21 6.61
情同行動 1.31 2.63
多動 5.51 7.71
不適切な言語 2.17 2.68

Table8 変数間の相関係数

  1 2 3 4 5 6
1.強度行動障害(旧法)            
2.強度行動障害(新法) .45***          
3.興奮性 .62*** .51***        
4.無気力 .43*** .46*** .56***      
5.情同行動 .19* .50*** .45*** .53***    
6.多動 .51*** .62*** .83*** .63*** .53***  
7.不適切な言語 .32*** .50*** .66*** .36*** .49*** .73***

*p<.05,***p<.001

Table9 強度行動障害得点に対する重回帰分析の結果

  強度行動障害得点
  旧法 新法
性別 -.11 .03
興奮性 .76*** -.06
無気力 .13 .07
情同行動 -.20 .22*
多動 .07 .66***
不適切な言語 -.19 -.06
説明率(R2 .50*** .57***

*p<.05,***p<.001

Table10 支援尺度と強度行動障害,ABC-Jとの順位相関

  強度行動障害 ABC-J
旧法 新法 興奮性 無気力 情同行動 多動 不適切言語
項目1 .17 .21* .20* .04 .18 .17 .13
.25* .24* .19 .19 .39*** .19 .13
項目2 .36*** .51*** .23* .20* .21* .34*** .16
項目3 .18 .18 .27** .16 .25** .34*** .26**
項目4 .21* .16 .22* .30** .41*** .29** .23*
項目5 .18 .11 .13 .25** .28** .25** .10
項目6 .26** .26** .27** .15 .27** .30** .17
項目7 .28** .33*** .32** .33*** .28** .40*** .17
項目8 .38*** .38*** .45*** .34*** .31** .38*** .30**
項目9 .28** .16 .21* .16 .22* .30** .10
項目10 .39*** .20* .29** .25* .29** .35*** .18
項目11 .29** .13 .15 .29** .17 .27** .13
項目12 .42*** .37*** .38*** .24* .24* .35*** .21*
項目13 .23* .23* .09 .16 .18 .27** .12
項目14 .26** .16 .23* .23* .11 .28** .09
項目15 .25* .25* .30** .16 .20* .27** .13
項目16 .07 .17 .12 .20* .10 .11 .11

※支援「はい」=1,「いいえ」「必要なし」=0
 *p<.05,**p<.01,***p<.001

Table11 支援尺度と知的発達の程度との関連(φ係数)

  r N
項目1 -.05 85
-.11 71
項目2 .04 86
項目3 -.02 86
項目4 .01 86
項目5 .01 86
項目6 -.03 86
項目7 .10 86
項目8 -.09 83
項目9 .25* 84
項目10 .20 86
項目11 -.03 86
項目12 -.03 86
項目13 -.16 86
項目14 .16 86
項目15 .19 86
項目16 .14 86

※知的障害あり=1,知的障害なし=0
 支援「はい」=1,「いいえ」「必要なし」=0
 *p<.05

Table12 知的障害群ごとの強度行動障害得点

  知的障害あり群 知的障害なし群
Mean SD Mean SD t値
強度行動障害得点(旧法) 2.36 4.96 1.36 2.83 0.99
強度行動障害得点(新法) 1.09 2.08 1.04 1.60 0.11