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ニュージーランドのメンタルヘルスサービス計画 ニーズ対応方法について

付録ⅰ

精神疾患罹患者が平等と尊敬と権利を得るために

メンタルヘルス委員会は、1998年6月に『旅の地図』を発行した。
旅の地図には、精神疾患罹患者が平等と尊敬と権利を得るために、ニュージーランド国民が個人、政治および社会レベルで起こさなければならない変革について示されている。地図には、我々が到達すべき目的地とその目的地にどのようにして到達することができるかについても書かれている。

『旅の地図』完全版と別冊『トラベルガイド』 (メンタルヘルス委員会から入手可能) には、この問題の複雑性と範囲が示されている。したがって、我々は安易な解決策を取ることのないよう気をつけなければならない。

『旅の地図』には差別の実際的分析が含まれている。メンタルヘルス委員会は差別を経験した多くの人々の話を聞き, また、それに対処した人々の話も聞いた。メンタルヘルス委員会はまた、差別の実例を直接取り扱い海外での事例に関する情報も集めた。この問題の分析は、他のグループの人々に対する差別と、差別に対処する解決方法について最初に取り扱った研究論文を参考にして行った。この研究論文は、差別がどのような働きをするかについて論じ、この問題に対処しようとする誰でもが直面する特有の危険とリスクを特定している。

『トラベルガイド』はまた、人々にこの「旅」の旅人になるよう誘っている。誰でもが旅人になれるのであり、旅がどんなに小さなものであろうと大きなものであろうと問題ではない。差別的な言葉を何気なく発する人へのただ1回の挑戦ですむかもしれないし、差別をこの世から無くすためのライフワークになるかもしれない。

大旅行が大体そうであるように、 この旅では自分たちを取り巻く外部環境からと自分の世界の中からの様々な難題を克服していかねばならない。
このことは、我々が恐れと向き合い、極めて難しい問題を解決する方法を見つけ、さらに過ちを犯したときにお互いを責めないようにしなければならないことを意味する。それよりも、我々は、そこから学び、前へと進み、認識を深めていかなければならない。
この旅の成否は、創造的であり、強固な信念から出た勇気を持ち、協力し合い、お互いに助け合い、自分たちの発見したものを分かち合うことにかかっている。メンタルヘルス委員会は部門全体と協力して差別を正すため活動し、差別に対処するため「チーム」として行動し戦略を分担し、努力を結集する。
それには何にも増してお互いの助け合いが重要である。

『トラベルガイド』は、ニュージーランドが精神疾患罹患者の平等、尊敬および権利を獲得する「旅」にでるのであれば、自己の役割は何であるかを理解する必要のある人々と機関を掲げている。

このリストは 次のようなヘルス部門を含んでいる。
サービス利用者/タンガタ・ファイオラ(Tangata whaiora:幸福や回復を求めている人々)および遺族の団体, 家族団体、保健省、保険金局、病院・医療サービス, 精神衛生委員会、 精神衛生財団, 職業訓練校および協会、アルコールおよび薬物機関 医薬管理局、 医学校, 職業訓練機関およびNGO

他の部門の人々および機関
教育省、社会福祉局、雇用、住宅供給、青少年団体、女性関係省、財務省、コミュニテイトラスト、警察、法曹、議会、人権団体、芸術団体、スポーツ団体、マスコミ、金融機関、商業界、サービス提供者、コミュニティ社会奉仕団体、教会、マオリの人々団体、太平洋地域の人々の組織

さらに、とりわけ個人、つまり我々一人一人

下記の「地図」抜粋は7つの目的地とそれに至る道筋を示している。

各道筋を旅する方法の例は『トラベルガイド』完全版に掲げられている。「ガイド」と「地図」では、サービス利用者/タンガタ・ファイオラという言葉は、精神疾患を持っているかまたは持っていたことがあり、メンタルヘルスサービスを現に受けているか受けた経験のある人を指すために使用している。

目的地1:
精神疾患罹患者が平等と尊敬と権利を得るために個人の力を発揮できる国

このことは次のような精神疾患罹患者のことを言っている。:

  • 自己の経験、強みおよび能力を重んじる。
  • 自己の権利を理解し、差別から自己を守る方法を理解している。
  • 充実した人生を送る機会を見つけ、創造する方法を知っている。
  • 自己のニーズを満たすヘルスサービスを利用することができる。

道筋
精神疾患罹患者に対して、自己の力を増強し、差別と戦い、差別の悪影響から自身を守るための手段を装備する。
精神疾患を持った人々に対して、自己の健康、福利、人間関係、住居、仕事、レジャーおよび収入を維持し改善するための手段を装備する。
サービス利用者/タンガタ・ファイオラの、差別を減らすためのイニシアティブを支援する。
サービス利用者/タンガタ・ファイオラが、他の精神疾患罹患者を差別することがないことを確保する。
サービス利用者/タンガタ・ファイオラ個々人への差別の個人的影響および差別削減の成功例にについて調査し文書化し議論する。

目的地2:
精神疾患罹患者を尊重し公平に扱うヘルス部門

このことはヘルス部門の人々が、そのシステム、プロセスおよび従業員がどのように精神疾患罹患者を差別することがあるかを理解し、次の事項を確かなものにする措置を講じることを意味する。

  • 十分なリソースを持ったメンタルヘルスサービス
  • 精神疾患罹患者の、すべてのヘルスサービスへの公正なアクセス
  • 精神疾患罹患者への尊敬
  • 精神疾患罹患者の権利の承認と増進
  • サービス利用者/タンガタ・ファイオラの意思決定への影響

道筋
精神疾患罹患者が、すべての公共ヘルスサービスを公正に選ぶことを確保する。
政策開発、資金提供およびサービス提供のすべてのレベルと段階においてメンタルヘルスサービス利用者/タンガタ・ファイオラの参加を積極的に推進する。
精神疾患罹患者への差別を無くすために、メンタルヘルス労働者を動員する。
差別の認識と差別関連問題を、メンタルヘルス労働者のすべての教育、訓練および能力開発に組み入れる.
ヘルス部門内において、メンタルヘルスサービス利用者に対する差別に取り組む太平洋地域の人々を支援する。
ヘルス部門内において、差別をうまく減らす方法も含めて、差別に関する調査、文書化および議論を行う。
最も差別のない活動を認め顕彰する。
すべての公共ヘルスサービスにおいて、サービス利用者/タンガタ・ファイオラのために十分な擁護サービスと苦情処理手続きを確保する。

目的地3:
精神疾患罹患者の権利を守る法律とその施行

これは、精神疾患罹患者の権利を守る様々な法律が制定されており, それらが差別に対処するために十分で、理解され、推進され、さらに効果的に利用されることを意味する。

道筋
法的保護と権利におけるギャップを見いだし、法改正を推進する。
法律専門家に対して、精神疾患罹患者へ有用なサービスを与えるため に必要な手段を装備する。
現行法と苦情処理手続きのよりよき運用を推進し、 地域社会の精神疾患罹患者の法的保護を図る。
現行法と現在の苦情処理手続きのよりよき運用を推進し、 メンタルヘルスサービス従業員の法的保護を図る。
精神疾患罹患者のために、その権利に関する法律上の問題の情報を作成する。

目的地4:
精神疾患罹患者が利用できる公正な公的機関

これは、公的機関 (例えば警察, 労働税収局、刑務局) が、精神疾患罹患者のニーズと権利を認識し, そのサービスは次のことを確保する措置を講じることを意味する。

  • 精神疾患罹患者への尊敬
  • 精神疾患罹患者の権利の承認
  • 精神疾患罹患者への差別が及ぼす影響の理解

道筋
公的機関に対し、精神疾患罹患者への差別に関する情報を広めアドバイスを与える。
公平なサービスの提供を確保するために、公的機関内に差別反対の意識およびイニシアティブを発展させる。
公的機関間に、差別問題に関する協力と情報の共有を増進する。

マオリの人々が、精神疾患を持つマオリの人々に対しての公的機関による差別に対処するのを支援する。

太平洋地域の人々が、 精神疾患を持った太平洋地域の人々への差別に対処するのを支援し積極的に援助する。

目的地5:
精神疾患罹患者が利用できる公正な民間団体

これは、民間団体 (例えば保険会社, 小売業者、地主、地域厚生施設) が、精神疾患罹患者のニーズと権利を認識し, 次のことを確保する措置を講じることを意味する。

  • 精神疾患罹患者に対する尊敬
  • 精神疾患罹患者の権利の承認
  • 精神疾患罹患者への差別が及ぼす影響の理解.

道筋
精神疾患罹患者への差別に関する知識を広めアドバイスを与える。
人権委員会と協力して精神疾患罹患者への差別に取り組む。
民間、商業および地域社会団体での差別問題を取り上げる機会を特定し利用する。

目的地6:
精神疾患罹患者に対し、公正かつ包括的にふるまう地域社会

このことは、ニュージーランドの人々が次のことを行うことを意味する。

  • 精神疾患罹患者の経験を尊重する。
  • 精神疾患罹患者の価値観を認める。
  • 精神疾患罹患者への差別の悪影響を理解する。
  • 差別的でない行動をとることに個人的責任を取る。

道筋
差別を理解し差別的な行動に挑戦する個人旅行を行う。
精神疾患および回復に関する正確で利用できる情報と精神疾患罹患者との親交を通して教育する。
マスコミとともに精神疾患の表示を改善することに努める。
社会に統一見解を提示するために、メンタルヘルス部門の人々の間の連携をつくり出す。
「メンタルヘルス意識高揚週間」を創造的に利用する.

メンタル ヘルス メンタルヘルス委員会
メンタルヘルス問題につき、差別的でない平易な言葉を開発する。
精神疾患を持つマオリの人々の人々への2重の差別を認識し、これに反対する。
精神疾患を持つ太平洋の人々への2重の差別を認識し、これに反対する。

目的地7:
アロ キテハ オ テタンガタ(ARO KI TE HA O TE TANGATA:利用者の尊重に向けて)

はじめに
この目的地は、精神疾患を持つマオリの人々を公正に扱う国を描いている。
それは、マオリメンタルヘルスの専門家グループが開発した。このグループの作成したリストには、差別に関する、さらにマオリの人々への公正と自治の必要性を含む広範囲にわたる問題が掲げられている。
この旅の旅行者は、タンガタ・ファイオラに権限を与え支持し傾聴する必要があり、かつ、マオリの人々のプロセスとプラクティスを認識することにつき前向きに先を見越して行動する要がある。

道筋
7A マオリの人々の能動的な参加
このことは、マオリの人々がマオリの人々のメンタルヘルスサービスを決定し管理し実施するのを確保することを意味する。全てのタンガタ・ファイオラに対する文化的評価は、マオリの人々によって行われることを可能とする。
政策決定およびサービス提供の全てのレベルと段階にマオリの人々が参加することを促す。
イウィ(iwi :部族)と都市部のマオリの多様性を認識したサービスを提供する。

7B マオリの人々による積極的な開発
これは、マオリの人々へのサービス提供に的をしぼった、適切な標準、政策およびプラクティスの必要性を認識することを意味する。

マオリメンタルヘルスの概念とサービス提供の知識の集大成をつくる。
マオリメンタルヘルス提供者の成功を認め激励する。
タンガタ・ファイオラに最善のサービスを提供するためにカウパパマ オリと主流のサービスとの間に良好な関係をつくる。
カウパパマオリのメンタルヘルスサービスの必要性を認識する。
マオリメンタルヘルス問題の情報を広め教育を提供する。

7C 格差の是正
このことは、マオリの人々の優先事項がメンタルヘルス部門で平等な考慮を受けるのを確保することを意味する。

タンガタ・ファイオラが受けるサービスの質を測定する手法を開発し適用する。

マオリの人々が所有し運用するメンタルヘルスサービスの強化に努める。
マオリメンタルヘルスの労動力の開発を促進する。
タンガタ・ファイオラのニーズを満たすサービスを提供する。