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愛知県心身障害者コロニー

発達障害研究所年報 No.1

第25号

平成8年度

Annual Report 1996

Institute for Developmental Research

序文

 発達障害研究所は丁度25年前、先見愛知の英断により地方自治体としてはユニークな目的と規模を持つ研究所として、愛知県心身障害者コロニーのなかに設立されました、心身障害の成因の解明と予防、心身障害児(者)の治療と教育、心身障害児(者)の福祉の研究を行なうとする三本柱のもとに今日に至っております、
 平成4年度の創立20周年記念の行事以来、恒例となった発達障害研究所公開シンポジウムは今年度も「シンポジウム’97」として平成9年2月28日に名古屋国際会議場で開かれました。午前の篠田達明こばと学園長の基調講演に続き、午後はリハビリテーションとヒューマンサービスを中心に4つの分科会に分れ、遠来の関根千佳、落合俊郎、飯塚京子、大井英子の4先生と発達障害研究所の同僚8名が講演しました。今年はとくに障害をもつ方々が熱心に討論に参加されていたのが印象的でした。
 平成8年4月、小野、山田、上田、佐久間、岡、佐藤、渡壁、青葉、岩本を新しく迎え、吉田が転出しました。7月には久野が新たに入り、8月には鈴木が発生学部長として、10月には中村が着任し、成瀬が転出しました。年度末の平成9年3月には所長兼務の小笠原の総長専任、形態学部長の佐賀の転出が決まりました。永年勤続の後藤治子主任専門員は定年を迎えました。
 研究の方法も大きく様変わりし、あの機械一つあれば格段の飛躍ができるのにと悔しがる場面もしばしばです。そのために、私達も自己批判を厳しくし、一般経費節約の抜本案を昨年度策定いたしました。また研究活動にインターネットも不可欠の時代となりました。倍旧のご指導をお願い申し上げます。
 今年も前年度(平成8年度)の活動を振り返り、記録広報委員会が研究成果を年報25号としてまとめました。ご批判を賜りまして、今年度の励みとしたいと存じます。

  平成9年4月

発達障害研究所  伊藤宗之

目次

Ⅰ 組織構成

Ⅱ 研究活動
A部門別研究
  1. 遺伝学部
  2. 発生学部
  3. 周生期学部
  4. 生化学部
  5. 生理学部
  6. 形態学部
  7. 治療学部
  8. 能力開発部
  9. 社会福祉学部
B プロジェクト研究
C 病理解剖

Ⅲ 共同研究科

Ⅳ 委員会活動

Ⅴ 研究交流

Ⅵ 人事移動

Ⅶ 1995年度予算
(附)設備備品 (100万円以上)

Ⅷ おもな研究材料

Ⅰ 組織構成

A 研究所の組織

所長

  • 副所長
    • 遺伝学部
      • 遺伝学第一研究室(細胞遺伝)
      • 遺伝学第二研究室(生化遺伝)
      • 遺伝学第三研究室(臨床遺伝学・遺伝疫学)
    • 発生学部
      • 発生学第一研究室(発生第1)
      • 発生学第二研究室(発生第2)
    • 周生期学部
      • 周生期学第一研究室(周生第1)
      • 周生期学第二研究室(周生第2)
    • 生化学部
      • 生化学第一研究室(神経化学)
      • 生化学第二研究室(先天性代謝異常)
      • 生化学第三研究室(酵素異常)
    • 生理学部
      • 生理学第一研究室(中枢生理)
      • 生理学第二研究室(筋生理)
      • 生理学第三研究室(情報処理)
    • 形態学部
      • 形態学第一研究室(微細構造・細胞化学)
      • 形態学第二研究室(神経病理)
      • 形態学第三研究室(臨床病理)
    • 治療学部
      • 治療学第一研究室(人間工学)
      • 治療学第二研究室(臨床運動学)
      • 治療学第三研究室(精神病理)
    • 能力開発部
      • 能力開発学第一研究室(治療教育)
      • 能力開発学第二研究室(精神発達)
    • 社会福祉学部
      • 社会福祉学第一研究室(地域福祉)
      • 社会福祉学第二研究室(家族福祉)
    • 共同研究科
      • 企画担当(研究所固有の事務の処理)
      • 図書担当(図書室の管理運営)
      • 共同実験担当(共同備品の管理および試科の検査)
      • 実験動物管理担当(動物舎の管理運営)

B 所員構成

所長  小笠原信明

副所長  伊藤 宗之

部・研究室 部長 室長 研究員 研究助手
遺伝学部
  第一研究室 孫田 信一 小野 教夫 野村 紀子
  第二研究室 武藤 宣博
山田 憲一郎
中川 千玲
  第三研究室 山田 裕一
鬼頭 浩史
後藤 治子
発生学部 鈴木 信太郎
  第一研究室 竹内 郁夫 青木 英子
  第二研究室 米澤 敏 松田 素子 木村 礼子
周生期学部 大平 敦彦
  第一研究室 仙波 りつ子 青野 幸子 松井 ふみ子
  第二研究室 慶野 宏臣 時田 義人 尾関 順子
生化学部 加藤 兼房
  第一研究室 浅野 富子 上田 浩 森下 理香
  第二研究室 稲熊 裕 伊東 秀記
  第三研究室 滝澤 剛則 正木 茂夫 大橋 佳代子
生理学部 伊藤 宗之
  第一研究室 浦本 勲 渡部 眞三 犬養 尚子
  第二研究室 戸塚 武 佐久間 邦弘 渡辺 貴美
  第三研究室 橘 敏明 中西 圭子 岡 博子
形態学部 佐賀 信介
  第一研究室 谷口 雅彦 慶野 裕美
  第二研究室 佐野 護 大島 章子 北島 哲子
  第三研究室 長浜 眞人 佐藤 衛 柏井 明子
治療学部 三田 勝己
  第一研究室 青木 久 塚原 玲子 久野 裕子
  第二研究室 渡壁 誠
赤滝 久美
伊藤 晋彦
  第三研究室 西村 辨作 綿巻 徹 原 幸一
能力開発部 (兼)小野 宏
  第一研究室 望月 昭
渡部 匡隆
野崎 和子
  第二研究室 中村 みほ
幸 順子
西野 知子
社会福祉学部 渡辺 勧持
  第一研究室 島田 博祐
三田 優子
  第二研究室 大島 正彦
共同研究科 
科長  課長補佐  (兼)伊藤 宗之
企画担当 長瀬 二郎
伊藤 文子
図書担当 青葉 寿美子
武藤 裕子
共同実験担当 川端 優男
加藤 美幸
河村 則子
続木 雅子
岡本 慶子
実験動物管理担当 花井 敦子
川本 隆之
倉知 邦臣
青井 隆行
嘱託
平野 志奈子
岩本 郁子

                                  平成9年3月31日現在

Ⅱ研究活動

A 部門別研究

1.遺伝学部

研究の概況

孫田信一

 遺伝子あるいはその集合体である染色体の異常が原因で生じる発達障害はかなり多いことがわかっている。遺伝学部では発達障害に関わる遺伝子・染色体異常の解明、それら異常の発生メカニズム、さらに遺伝子の働きを調節する機構などについて研究している。
 第一研究室ではこのうち主に染色体異常の発生機構、および発生や器官形成などの異常に関わる染色体領域について解析し、それらの遺伝子解析に向けて実験動物のゲノムライブラリー作製と遺伝子マッピングを行ってきた。孫田、野村らはヒト染色体異常のモデルとなる異常を有する実験動物を材料にして成熟分裂における分離について調べ、早熟分裂は異常発生の主要なメカニズムではないこと、ヒトでX染色体の逆位を有する個体から不均衡な異常児の発生率が低い原因の一つは、成熟分裂で染色体不対合により異常な組換え染色体の発生抑制によることをはじめて明らかにした。また初期発生、着床時あるいはその後の発生・器官形成の異常に関与する染色体領域を特定し、その遺伝子研究のための基礎を固めた。さらに、片親性ダイソミーを示す胚の初期発生に関する解析から、発生における遺伝子発現の母性(父性)効果を一部明らかにした。孫田と小野はヒト常染色体性優性遺伝の単一遺伝子病の一つ、四肢中間部異形成(Mesomelicdysplasia)を有する大家系について、マイクロサテライト多型を利用した連鎖解析を他の研究施設と共同で行い、その遺伝子が存在する領域を特定した。小野ら は遺伝子の単離、解析にとって不可欠な実験動物(チャイニーズハムスター)の遺伝子ライブラリーとその染色体地図の作製に取り組んだ。また、周生期学部および愛知がんセンターの研究者と共同で、神経特異的に発現するヒト膜タンパクの一つであるニューログリカンC遺伝子はヒト染色体3p21.3の領域に、また活性酸素の調節に関連するグルタチオンペルオキシダーゼと一部類似の構造をもつマウス・セレノプロテインP遺伝子はマウス染色体15A2の領域にそれぞれ存在することを明らかにした。遺伝子マッピングは今後のゲノム解析にとって意義がある。
 活性酸素は癌や老化をはじめとして多くの慢性疾患の原因と考えられている。第二研究室では活性酸素に対する細胞の防御機構について分裂酵母をモデル細胞として用いて研究を進めている。分裂酵母の細胞を低濃度の過酸化水素(活性酸素の一種)にさらすと高濃度の過酸化水素に対する耐性を獲得するが、このとき過酸化水素分解酵素であるカタラーゼの活性が細胞内で誘導される。このカタラーゼ活性の誘導は遺伝子の転写レベルで起こっている。中川らはこの転写の活性化に必要なカタラーゼ遺伝子の転写調節領域の解析を行い、カタラーゼ遺伝子の上流に二つの転写活性化領域を同定した。その一つは転写因子Atf1の結合部位であり、他方はCCAAT配列を含む22bpの塩基配列であった。武藤らは過酸化水素超感受性の分裂酵母変異株を解析し、その変異株においては低濃度過酸化水素存在下ではカタラーゼ活性が野性株の過酸化水素非存在下での活性よりも低下しているが、mRNA量は酵素活性から予想されるよりもはるかに多く存在していることを明らかにした。またこの変異を相補するプラスミドの塩基配列の解析から、MAP kinaseの一つであるSpc1 kinaseの遺伝子を見い出した。山田(憲)らはカタラーゼの発現におけるmRNA量と酵素活性との不一致に着目し、カタラーゼmRNAの細胞内での局在性を調べたところ、カタラーゼmRNAは核に多く分布していることが明らかになった。カタラーゼ誘導は細胞の過酸化水素耐性において重要な役割を果していると考えられる。過酸化水素を分解する酵素としてカタラーゼ以外にグルタチオンペルオキシダーゼが知られている。山田(憲)らは分裂酵母のグルタチオンペルオキシダーゼ遺伝子のクローニングを行った。この酵素の発現はカタラーゼと異なり、低濃度の過酸化水素により誘導されることはなかった。
 遺伝子であるDNAやその転写産物のRNAを構成している塩基、AT(U)CGのうち、AとGはプリン環という化学構造をもっているが、それらおよびその代謝産物でプリン環をもっている物質はプリン体とよばれる。第三研究室の山田(裕)、後藤らは、プリン体の代謝異常を中心に、遺伝子解析を行った。プリン代謝異常の代表的な疾患は痛風であるが、痛風と同様に血中、尿中の尿酸レベルが高くなる先天性のプリン代謝異常疾患にレッシュ・ナイハン症候群がある。この疾患は重い神経症状のため重症の心身障害を示し、特徴ある自咬症により唇や指の欠失をみることが多い。この疾患はHPRTという酵素が欠損している。本年度は宮崎と岐阜で発見された2例のレッシュ・ナイハン症候群についてHPRT遺伝子変異を同定し、昨年度つくば市で発見された2塩基置換例では、その原因変異を明らかにした。また、第三研究室のグループが世界で最初に完全欠損を発見し、日本人における遺伝子変異について解析した赤血球型AMPデアミネースに関しては、ポーランドのグダニスク大のDr.Makarewiczと共同でポーランド人の遺伝子変異について研究を開始した。その結果、日本人とポーランド人では酵素欠損の頻度 は同じあるが、その遺伝子変異は異なることが明らかになってきた。一方、鬼頭らは四肢が短い小人症のなかで最も多い疾患である軟骨無形成症(ACH)や、ACHに比べ低身長と四肢変形の程度が軽い軟骨低形成症(HCH)の原因遺伝子である、線維芽細胞成長因子の受容体の一つ、FGFR3の遺伝子解析に取り組んできた。その結果、ACHとHCHは両者ともFGFR3の特定部位に限定して変異が高頻度で起こる遺伝的に極めて特異で興味ある疾患であることがわかった。
 なお、平成8年4月より第一研究室に小野教夫研究員、第二研究室に山田憲一郎研究員を迎えた。第三研究室の鬼頭浩史主任研究員は平成9年3月より米国(LosAngeles)に渡り、Cedars-Sinai医療センターのDr.Remoinと共同研究を開始した。今年度は文部省科学研究費補助金基盤研究A(2件)、厚生省精神・神経疾患研究委託費(1件)、厚生省小児医療研究委託費(1件)ほか3件の研究助成金を受けた。

胚発生における染色体・遺伝子の不活性化と片親性ダイソミーの検討

孫田信一、野村紀子

 Xの不活性化やゲノムインプリントなどで知られているように、染色体・遺伝子の不活性化は発生・分化における遺伝子発現調節の重要な手段の一つであるが、不活性化の失敗や予定外の不活性化は発生の異常を誘発する可能性がある。我々はそのようなモデルを作製し、染色体・遺伝子不活性化の発生分化に及ぼす影響とその父性母性効果について明らかにするとともに、正常発生における遺伝子発現の父性母性効果の役割解明を目指している。
 相互転座および逆位を有するチャイニーズハムスター系統を用いた。同じ転座へテロ接合の雌雄の交配によって、特定領域の父親性または母親性ダイソミー(ナリソミー)胚を作製する方法を検討した。また、片親性ダイソミー胚の発生を調査して、その父性母性効果に関して解析した。
 同一の相互転座へテロ接合のチャイニーズハムスター雌雄を用いて、隣接型分離や3:1分離など各分離様式由来の不均衡精子とそれに相補的な染色体構成の卵子との受精によって、特定領域の父親性および母親性ダイソミー胚のモデルを効率的に作製できることを示した。逆位ヘテロ接合体でも同様に作製可能であった。これらの胚の調査により、片親性ダイソミーの初期発生に及ぼす影響を解析し、同じ染色体不均衡による異常発現の差異が父親性または母親性ダイソミーの違いによって生じることを示唆する証拠を見い出した。これらの事実は正常な胚発生においてその領域の遺伝子がゲノム刷り込みを受けている可能性があるので分子レベルで検討中である。これらの染色体領域と既知の刷り込み領域が一致するかをゲノムマッピングのデータをもとに検討した。染色体不均衡による病態発現に関してはまだ不明な点が多く、胚の発生と分化に関する基礎的な情報は極めて重要になっている。
 本研究は厚生省小児医療研究委託費「成育医療からみた発生分化の基盤的研究」の分担研究として一部援助を受けた。

単一遺伝子病(四肢中間部異形成)家系の連鎖解析

孫田信一、小野教夫、新川詔夫1、藤本正博1、池川志郎2、中村祐輔2、石田貴文3、福嶋義光4、松尾雅文5,Piranit Nik Kantaputra6

 原因遺伝子が未知の遺伝病はまだ多く存在している。連鎖解析はそれらの遺伝子が存在する染色体上の位置を特定し、遺伝子解析へと進める手段の一つである。この研究にはこれまでRFLPやVNTRなどのマーカーが用いられてきたが、最近これらよりも染色体に多く存在するマイクロサテライト多型が注目されている。そのひとつは染色体上に広範囲に存在するCAリピートの多型である。染色体上の特定領域をPCRで増幅し、その中のCAリピート数の多型を検出できる。しかもこの多型の検出率はかなり高い。ヒト染色体上の特定領域をPCRで増幅することができる、5,264対のオリゴヌクレオチドのデザインとそのマップが既に報告されている(Nature 380:152,1996)。
 一方、連鎖解析を行うためには同一遺伝子の異常による家系だけを集める必要がある。同じ遺伝病を有する大家系は連鎖解析にはとくに有用である。このような大家系は核家族化した最近の日本ではかなり得にくい。我々は国内外の医師、研究者の協力を得て集められた遺伝病家系について検討した。今年度実施したのは、タイで見つけられた常染色体性優性遺伝の四肢中間部異形成(Mesomelic dysplasia)の一型を有する大家系である。文献的に染色体2と8の相互転座を有する同じ症例が見つけられたことから、これらの染色体上に原因遺伝子が存在することを予測した。多数のプライマーを用いて、マイクロサテライト多型による連鎖解析を6研究施設共同で行った。これまでの結果、染色体2q31の中に原因遺伝子が存在する領域が特定された。現在、その遺伝子解析が進められている。今後さらに他の単一遺伝子病5~6家系について連鎖解析を準備中である。

 本研究は文部省科学研究費基盤研究A「単一遺伝病家系の連鎖解析」の分担研究として援助を受けた。

1長崎大・医、2東京大・医科研、3東京大・院理、4信州大・医、5神戸大・医、6Chiang Mai Univ.(Thailand)

構造異常染色体の次世代への伝達について:とくにX-A転座とXの逆位

孫田信一、野村紀子、Pavel M.Borodin1

 染色体の構造的異常で量的増減を伴わない均衡型異常は少なくても400~500人に1人くらい存在するといわれている。X染色体が関わった異常は常染色体の場合と同様にしばしば見られるが、これらを有する人の生殖細胞で実際にどの様な染色体分離が起こり、どの程度組換え体が生じているかなど、その実態は十分にわかっていない。
 我々は独自に作製したXと常染色体間の相互転座(X-A転座)を持つチャイニーズハムスター3系統とX染色体の逆位を有する1系統を用いて、これら構造異常染色体の分離、受精への関与、不均衡な胚の発生と次世代への伝達について調査した。X-A転座系統が保有する転座染色体はt(X;1)、t(X;3)およびt(X;9)である。いずれの系統でも雄は不妊であり、雌は妊性を有するがその仔数は極めて小さい。t(X;3)転座を例に雌の第二成熟分裂細胞の観察により分離様式別頻度を調査したところ、常染色体と同様に各分離様式による染色体構成の卵母細胞が観察された。各染色体構成の卵子の受精関与について、正常な核型の雄と交配で得られる受精卵の染色体分析で調べた結果、各染色体構成の卵子はすべて受精に関与することがわかった。したがって不均衡胚の多くはその後の発生過程で淘汰されると考えられる。
 逆位ヘテロ接合体ではその第一成熟分裂でループ構造を形成し、その間で乗換えが起こると組換え染色体(recombinant chromosome)が生じる。組換え染色体は逆位に関わる染色体の部分過剰、部分欠失を同時に伴うが、これらを受け継いでも不均衡なXが選択的に不活性化されれば個体の生存にとくに問題はないと考えられる。ところが、実際には組換え体を有する個体はほとんど得られなかった。このことは、X染色体上でも常染色体と同様に染色体長に比例して乗換えが起こると仮定したときの予想頻度に比べ、逆位領域での乗換え頻度が極めて低いことを示唆する。電子顕微鏡によりこの領域でシナプス非形成が確認された。Xの逆位領域における乗換えの低下はヒトの例でも起こっていると思われる。

 1Inst.Cytology & Genetics(Novosibirsk, Russia)

染色体異常を有する胚の初期発生、着床およびその後の発生について

藤本和則1、谷田啓太郎1、川本隆之2、野村紀子、織田銑一1、孫田信一

 染色体異常は種々の先天異常の原因になっているが、染色体の過不足は発生過程から大きな影響を与えているらしい。例えば、染色体21が過剰なダウン症候群は出生後も生存可能であるが、受精時に存在する21トリソミーの8割以上は自然流産などで淘汰を受ける。他のトリソミーの多くは初期発生の段階から淘汰を受ける割合がさらに高いと考えられているが、その実態は不明である。一方、モノソミー胚の発生についてはよくわかっていない。本研究では、相互転座を有するチャイニーズハムスター系統T(1;3)8Idr、T(1;6)56IdrおよびT(2;6)71Idrのヘテロ接合体を用いて、染色体1、2、3および6の(部分)モノソミー、トリソミー胚を作製し、これらの染色体不均衡の発生に及ぼす影響を調査した。
 各転座のヘテロ接合(T8/+、T56/+、T71/+)雄と正常核型雌との交配で種々の染色体構成を有する胚が得られる。これらを用いて解析した結果、(1)染色体2のp24→qter領域のモノソミー胚は2細胞期で発生を停止することがわかった。以前の報告と合わせて共通する領域、すなわち染色体2のp24→q18領域に2細胞期以降の発生に必須の遺伝子の存在が考えられる。また、染色体1の部分モノソミーも2細胞期で発生を停止することが判明した。(2)染色体6のほぼ全体のモノソミーとなる(2,2,26、6)胚および3モノソミーは胎生4日目の段階で顕著に発生が遅延、もしくは停止していることがわかった。(3)染色体2のpter→p24のモノソミー胚と同領域のトリソミー胚は胎生4日目の段階で発生が遅延しているが、そのほとんどは着床に至ること、このモノソミー胚は着床後まもなく致死となること、このトリソミー胚は胎生9日目以降に発生が停止して死亡することがわかった。以上の染色体不均衡領域に相同なマウストリソミー胚とモノソミー胚の発生異常について比較したところ、相同な染色体領域の異常胚には類似の発生異常が多く見られた。ヒトの染色体異常の場合 でも同様の発生異常が起こっている可能性が高い。

 1名古屋大・農、2共同研究科

脳形成異常および発生異常に関与する染色体異常:早熟分裂と不分離の検討

野村紀子、孫田信一

 ヒトにおける染色体異常の成立とその淘汰に関する種々の問題について、流産胎児や出生児などのデータだけから明らかにすることはできない。生殖細胞から初期発生までの段階における直接的なデータが重要である。本研究では実験動物(チャイニーズハムスター)を用いて、発生異常や脳を含む器官形成異常の原因となる染色体異常の発生メカニズムを検討すること、また脳形成異常に関与する染色体領域を特定することを目的にして研究を進めている。今回は前者について述べる。
 第一成熟分裂における分離異常のメカニズム、とくに早熟分裂の関与について、生殖細胞の染色体研究に有用なチャイニーズハムスター雌における成熟分裂の詳細な観察に基いて調査した。とくに無処置雌とホルモンによる排卵誘発で得た卵子の成熟分裂における染色体を詳細に調べ、性腺刺激性ホルモンの成熟分裂に及ぼす影響および早熟分裂が分離異常の主要なメカニズムかを引き続き検討した。
 チャイニーズハムスター雌を用いた我々の成熟分裂分離の観察ではヒト卵子の場合とは異なる結果を示した。すなわち、自然排卵によって得られた高一倍性卵子がもつ過剰なものは単独の染色分体ではなくほとんどが染色体であり、早熟分裂の証拠は見られない。このことは、第一成熟分裂における異常は染色体不分離によるものであることを意味する。一方、ホルモナルな刺激によって早熟分裂の誘発が観察されたが、その頻度は極めて低く、早熟分裂を示唆する証拠(単独の染色分体)よりも動原体開裂を示すものの方が圧倒的に多かった。しかも、この動原体開裂は卵子の培養によって消失した。したがって、動原体開裂は染色体の数的異常の誘発とは無関係である可能性が高い。ヒトでは性腺刺激性ホルモンが関与しない自然排卵の卵子のデータはまだ不十分であり、さらに調査が必要である。

 本研究は厚生省精神・神経疾患研究委託費「脳形成異常の発生機序に関する臨床的・基礎的研究」の分担研究として一部援助を受けた。

染色体異常モデルの開発とその特性

川本隆之1、野村紀子、孫田信一、川端優男1、青井隆行1、水谷浩樹2、織田銑一2

 染色体不均衡と胚発生・発達障害との関連などを研究するため、目的の染色体異常を有する胚・胎仔・動物を効率よく作製する方法を検討した。
 (1)X線照射で誘発した異常のうち、不安定あるいは不均衡な異常は成熟分裂、受精あるいは発生過程で淘汰され、生存仔に受け継ぐ異常の多くは均衡型異常である。この方法で今年度新たに13種類の構造異常(相互転座:11種類、逆位:1種類、複雑転座:1種類)を有する動物を得た。これら構造異常のヘテロ接合体やホモ接合体には発生異常や脳を含む器官の形成異常などを示すものがある。この異常は各染色体の切断点遺伝子の欠失や構造変化によるためと推測されるので、各異常の原因遺伝子解析の材料になる。一方、実験動物の染色体異常の自動解析装置について、チャイニーズハムスターの染色体をモデルにして解析精度を上げるためのプログラム開発を今年度も共同で行った。(2)相互転座を有するチャイニーズハムスターの交配から得た特定の染色体異常をもつ桑実胚あるいは胚盤胞を、透明体除去後にフィーダー層を有するマイクロウェルプレートで培養し、ES(胚幹)細胞株(6株)を作製した。また、胚へのES細胞注入法あるいは胚融合法でキメラを作製した。完全なトリソミーに比べて正常細胞を含むキメラはより長期の生存が可能であり、染色体異常の発生・器官形成に及ぼ す影響などの調査に用いた。(3)チャイニーズハムスターの染色体10トリソミーはこの動物のトリソミーのうち唯一生存可能なものである。このトリソミーは器官形成異常や発達障害などにおけるヒト・トリソミーとの類似性、染色体不均衡と老化促進の関連などの研究にとって有用な研究材料である。このトリソミーを効率よく作製する方法として、No.10が関わる相互転座の3:1分離による第三次的トリソミー(tertiary trisomy)による方法を検討した。この方法で得た染色体10のトリソミー4個体に関して調査を進めた。

 本研究は文部省科学研究費試験研究A「汎用性(動物用)染色体画像解析システムの開発」の援助を受けた。
 1共同研究科、2名古屋大・農

FISH法によるヒトおよびマウスの遺伝子マッピング

小野教夫、安田陽子1、時田義人2、大平敦彦2、安井善宏3、小祝 修3、孫田信一

 FISH(Fluorescence in situ hybridization)法は蛍光標識したDNA断片を直接染色体標本上でハイブリダイズし、そのDNA断片と相同性のあるDNA配列が存在する染色体部位を、蛍光シグナルとして検出する方法である。この方法でヒトおよびマウスの遺伝子マッピングを行った。
 神経特異的に発現する膜タンパクニューログリカンC(NGC)は、マウスで胎生14日から発現が見られ20日でピークを示すコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの一つである。このタンパクは、外部からの刺激で脳における発現パターンが変化するなど、正常な脳機能の発達に関与していることが示唆されている。この遺伝子のヒトcDNAプローブを用いて、direct R-banding FISH法によりマッピングを行い、NGC遺伝子はヒト染色体3p21.3の領域に位置することを示した。
 セレノプロテインP(SelP)はセレンを含むグリコプロテインであり、システインはセレノシステイン(SeCys)の形で取り込まれている。このSelP遺伝子のマウスゲノムDNAプローブを用いてFISHを行ったところ、マウス15番染色体A2の領域にシグナルのピーク(85%)が観察されたが、同じ15番染色体のCの領域にも低い頻度ながら(15%)シグナルを認めた。この結果は、マウスSelP遺伝子は15A2領域に位置するが、この遺伝子とかなり相同性の高いDNA配列が15C領域にも存在することを示している、また、これまでの比較マッピング研究からマウス染色体15番はヒト染色体5p,8q,12q,22qに対応することが知られている。ヒトSelP遺伝子は5q31にマップされていることから、今回の結果はマウス染色体15A2領域が、ヒト染色体5qにも対応していることを示唆する。
 今後、ヒト以外の実験動物のリンパ球を用いたdirect R-banding FISH法等を確立し、正確かつ迅速な遺伝子マッピングを行いたいと考えている。

 1大阪大・理、2周生期学部、3愛知がんセンター・研

コスミドベクターを用いたチャイニーズハムスターのゲノムライブラリーと染色体地図の作製

小野教夫、孫田信一

 当研究室では染色体構造異常を有するチャイニーズハムスター系統を多数保存している。これらの染色体異常の中には初期発生から各器官形成まで、種々の異常を引き起こすものが見い出されている。これらの発生異常のメカニズムを遺伝子レベルで解明するためには、チャイニーズハムスターゲノムのライブラリーと、染色体の特定の位置にマップされる多数のDNAマーカーが必要である。発生異常や特定疾患の原因遺伝子を探る場合、染色体地図をもとにしてポジショナルクローニングによる方法が実際にとられている。このような戦略のもとで、ヒトやマウスにおいて多くの遺伝子、DNA断片が染色体上にマッピングされ、世界的にゲノムプロジェクトが進んでいるが、他の実験哺乳動物ではゲノム解析研究はあまり進んでいない。
 我々はコスミドをベクターとしたチャイニーズハムスターのゲノムライブラリーを作製した。このライプラリーからは、およそ30~40kbpのインサートを持つコスミドクローンが多数得られた。これらの幾つかを用いてFISHを行ったところ、チャイニーズハムスター染色体の特定の位置にマッピングすることができた。今後、さらに多くのコスミドクローンのマッピングを行い、チャイニーズハムスターの精密な染色体地図を作製したいと考えている。これまでにマッピングしたコスミドクローンの中には、FISHによって全染色体にごく弱いRバンド様のシグナルが観察されるものがある。これは散在性の反復配列がチャイニーズハムスター染色体にかなり高頻度で存在する可能性を示す。また、チャイニーズハムスター染色体の動原体近傍やXおよびY染色体に構成ヘテロクロマチン領域が存在するが、この散在性反復配列の密度からみるとそれぞれ異なる特徴を持つものに分けられる。このうち動原体領域のヘテロクロマチンはテロメア(TTAGGG)nプローブを用いたFISHによって強いシグナルが観察され、チャイニーズハムスター染色体には、染色体末端以外にもテロメリックな配列が存在することが示唆さ れた。

齧歯類の散在性反復配列 ID elementのゲノム構造と染色体上での分布

小野教夫、近藤恭光1、鍵山直人1、吉田廸弘2

 染色体を構成する反復配列には、ゲノム中に散在するものがある。代表的な散在性反復配列としてヒトAlu配列があるが、これは一旦RNAに転写された後、染色体の別の部位に挿入され(レトロポジション)コピー数が増加したと考えられている。また、種や属の間でも増幅した散在性反復配列の種類が異なる点は、各染色体の分子レベルの特性となるとともに、核型進化の過程が刻まれているともいえる。さらにヒトでは、Alu配列の挿入による遺伝子構造やRNAのスプライシングの異常が見い出されており、遺伝病を引き起こす原因ともなっている。
 我々は実験動物としてよく用いられているマウス、ラットおよびチャイニーズハムスターを用いて、齧歯類に広く見られる散在性反復配列Identifier(ID)elementのゲノムにおける構造と各染色体上の分布について調べた。サザンブロットによる分析から、ID elementはラットにおいて最も増幅していることが示され、その相対コピー数はラットを100としたときマウスは20、チャイニーズハムスターは2であった。PCRならびにその構造解析から、ID elementのコア配列は3種間で保存されていることが示された。特にラットにおいては、コア配列が繰り返し出現するdimericタイプのID elementが2種類確認された。ID elementはラット染色体上のR-band領域に豊富に存在していることがFISHにより示されたが、マウスやチャイニーズハムスター染色体では特定のパターンは得られなかった。これらのことから、ID elementは進化の過程でラットとマウスが分岐してから、ラットで爆発的に増幅し、その挿入部位はR-band領域が優勢であったこと、急激な増幅に伴ってdimericタイプが出現したと考えられる。ヒトAlu配列も染色体上のR-band領域で主に増幅したことやdimer構造をもつものが主要なタイプであることが知られており、ラットゲノムのID elementの特徴はヒトAlu配列と共通している。したがって、今回の結果はID elementの増幅においてAlu配列と共通するメカニズムが働いたことを示唆する。

 1アイシンコスモス研究所、2北海道大・理

カタラーゼ遺伝子のプロモーター領域の解析

中川千玲、山田憲一郎、武藤宣博

 真核生物のストレス応答における遺伝子の発現調節機構を調べる目的で、分裂酵母の活性酸素ストレスで誘導されるカタラーゼを指標にして研究を行っているが、今までに次のことを明らかにしてきた。活性酸素、UV及び高浸透圧等のストレス条件下ではカタラーゼの誘導合成が起こり、それは転写のレベルで調節を受けていた。カタラーゼ遺伝子の転写は翻訳開始コドンより370塩基上流からスタートし、さらにその50~300塩基上流に、種々の転写活性化因子の結合配列に類似した配列が存在した。そこで分裂酵母カタラーゼ遺伝子のプロモーター領域にさまざまな欠失を導入した株を作成し、それらの株のカタラーゼ活性とmRNA量を測り、転写活性化に関与するDNAエレメントを調べた。その結果、転写開始点上流-111~-55までの領域がストレス条件下でのカタラーゼ遺伝子の転写調節にとって重要であることが明らかになった。その領域には2つの転写調節因子の結合する配列が存在する。1つは最近分裂酵母の浸透圧ストレスでの転写調節に関係していることが明らかにされたAtf1結合配列に類似した配列である。この領域を一部欠損した株ではmRNAの転写及びストレスによる誘導は観察されず、酵素 活性もほとんどなかった。このDNA配列をプローブにしてゲルシフトアッセイを行ったところ、この配列に特異的に結合する蛋白質の存在を確認できた。またもう一つは、Atf1結合配列より上流に存在するCCAATを含む22塩基の配列であり、この領域が欠損した株で転写レベルの低下と酵素活性の著しい低下が見られた。しかしストレス条件下でmRNAの誘導はみられた。この領域は活性の基本的な発現調節に関係していると示唆された。この領域をプローブにしたゲルシフトアッセイでも特異的に結合する蛋白質の存在が確認できた。

Schizosaccharomyces pombe(S.pombe)の過酸化水素耐性におけるカタラーゼの役割

武藤宣博、中川千玲、山田憲一郎

 S.pombeの細胞を低濃度の過酸化水素にさらすと高濃度の過酸化水素に対する耐性を獲得する。このとき、カタラーゼをはじめとして少なくとも15種類のタンパク質の合成が誘導されてくる。カタラーゼは過酸化水素分解酵素であることから、過酸化水素耐性の獲得に大きな役割を果たしていることが予想される。しかし、その酵素学的性質から、生理的条件下においてはカタラーゼの過酸化水素分解能は弱く、細胞の過酸化水素耐性には関与していないのではないかとの説もある。そこで、カタラーゼの過酸化水素耐性に果たす役割を明らかにするために、カタラーゼ活性を欠くS.pombeの変異株を作成し、その株の過酸化水素耐性を調べた。中川らによってすでにクローニングされているS.pombeのカタラーゼ遺伝子のなかにura4遺伝子を挿入することによってカタラーゼ遺伝子の遺伝子破壊を行った。ura4を挿入されたカタラーゼ遺伝子をウラシル要求性S.pombeに形質転換し、ウラシル非要求性株を選択することによりカタラーゼ遺伝子の活性を失ったS.pombeの変異株を得た。この株はカタラーゼ活性を全く示さなかった。この株の過酸化水素感受性を調べたところ野性株よりも10倍以上感受性が高くな っていた。低濃度過酸化水素処理による高濃度過酸化水素耐性の獲得におけるカタラーゼの役割については、カタラーゼ欠損変異株が低濃度過酸化水素処理によって死滅するため、低濃度過酸化水素処理に代えて、同じようにカタラーゼ活性を誘導し、高濃度過酸化水素耐性を誘導することが知られている高浸透圧処理による、高濃度過酸化水素耐性を調べた。その結果、カタラーゼ欠損変異株は高浸透圧処理によって無処理細胞よりも高い濃度の過酸化水素耐性を獲得した。このことは、ストレス条件下における高濃度過酸化水素耐性の獲得にはカタラーゼ以外のタンパク質が大きな役割を果たしていることを示唆している。

Schizosaccharomyces pombe(S.pombe)の過酸化水素超感受性変異株の性質

武藤宣博、山田憲一郎、中川千玲、川端優男1

 S.pombeの低濃度過酸化水素処理による高濃度過酸化水素耐性の獲得機構を明らかにする目的で、過酸化水素超感受性変異株の分離を行った。得られた超感受性変異株の一つMN510株のカタラーゼ活性はほとんど検出できないレベルにまで低下していた。しかし低濃度の過酸化水素処理により、カタラーゼ活性は上昇し、野生株の未処理細胞の半分ほどの活性を示すようになった。この株は過酸化水素超感受性の他に、細胞が異常に長くなる性質や37℃で生育できない温度感受性を示し、細胞の生育に重要な機能を持つ遺伝子に変異が起こっていることが示唆された。カタラーゼmRNA量をノーザンブロット法で調べたところ、野生株に比べると少ないものの、未処理のMN510株においても酵素活性から予想されるよりもはるかに多くのmRNAが検出された。また、MN510株においては低濃度過酸化水素処理によるカタラーゼmRNAの増加も認められ、その量は未処理の野生株におけるmRNA量の2倍以上となった。このようなmRNA量と酵素活性の不一致は、カタラーゼ遺伝子の転写調節部位の欠失変異株の一つでも見いだされており、カタラーゼ遺伝子の発現において興味の持たれる問題である。MN510株の過酸化水素超 感受性と温度感受性を相補するプラスミドをS.pombeのゲノムDNAライブラリーより分離した。このプラスミドはおよそ7kbのS.pombe DNAを持っていた。その塩基配列を決定したところMAP kinaseの一つであるSpc1 kinaseの遺伝子が見いだされた。このプラスミドによる変異の相補が、正常遺伝子の導入によるものか、多コピーのspc1遺伝子が導入されたことによるサプレッションによるものかを検討している。

 1共同研究科

カタラーゼmRNAの細胞内局在について

山田憲一郎、中川千玲、武藤宣博

 我々は、生命の酸化ストレスに対する応答を、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeをモデルとして用いて解明しようとしている。分裂酵母を低濃度の過酸化水素で処理すると、過酸化水素を消去するカタラーゼが誘導される。中川はこのカタラーゼ遺伝子の上流配列の欠失変異体を作成し、発現及び誘導に必要な部位を特定した。その際、誘導されるmRNAの増加分に対し、最終的なカタラーゼ活性の上昇が対応しない欠失変異体が得られた。この変異体のカタラーゼのDNA配列を確認したが異常は認められなかった。そこでカタラーゼmRNAが翻訳されるまでの間の、細胞内における挙動及び分布に注目した。分裂酵母を低濃度の過酸化水素で処理しカタラーゼを誘導させた後、novozymeで細胞壁を壊した。得られspheroplastを低浸透圧下で破裂させた。この抽出液を10,000×gで10分間遠心分離し、核を含む沈殿画分と上清に分画した。それぞれの画分のRNAとDNAについて、カタラーゼの遺伝子をプローブとして用いたhybridizationを行った。DNAはほとんどが沈殿画分に得られ、Northern hybridizationのマーカーであるrRNAは上清画分に得られた。一方カタラーゼmRNAは核を含む沈殿画分に得られた。またその際、過酸化水素による誘導もみられた。しかしこのカタラーゼmRNAの分布は欠失のない親株でも観察されたので、カタラーゼ活性とmRNAの量が一致しないことを直接説明するものではないと考えられた。本研究ではカタラーゼmRNAが他のRNAと分布が異なることを示した。今後、カタラーゼmRNAの細胞内局在をin sith hybridizationにより詳細に調べる予定である。

分裂酵母Schizosaccharomyces pombeのグルタチオンペルオキシダーゼのクローニング

山田憲一郎、中川千玲、武藤宣博

 我々は生命の酸化ストレスに対する応答を分裂酵母Schizosaccharomyces pombeを用いて解析している。酸化ストレスの一つの因子である過酸化水素は外部環境の酸化ストレスだけでなく、ミトコンドリアにおける電子伝達系のリレーミスからも発生する。生命は発生する過酸化水素に対する防御系を持っている。過酸化水素を消去する酵素の一つであるカタラーゼは過酸化水素によって誘導されることが示されている。しかしカタラーゼの過酸化水素に対するKm値は数mMであり、ミトコンドリアの電子伝達系のリレーミスで生じる数μMの過酸化水素に対応できない。哺乳類などではグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)がこれに対応している。分裂酵母ではGPxの遺伝子配列が決定されていないため、そのクローニングを行った。
 哺乳類で知られているGPxより相同性の高い部分を二ヵ所選び、分裂酵母のゲノムを鋳型としてPCRを行った。得られたDNA断片をpUC19ベクターにつなぎ配列を決定した。哺乳類のGPxとのアミノ酸レベルでの相同性は75.4%であり、分裂酵母のGPxをとらえていると考えられた。このDNA断片をプローブとして、分裂酵母ゲノムのλライブラリーから相同性のあるクローンを得た。このクローンのDNA配列を決定している。
 また今回得られたDNA断片をプローブとして用いて、分裂酵母のmRNAについてhybridizationを行ったところ、約1200bpのバンドが得られた。mRNAの長さも予想されたものと一致し、分裂酵母のGPxであることを支持している。一方カタラーゼは過酸化水素によって誘導されるが、この遺伝子は過酸化水素刺激の有無に関わらず発現しており、誘導や増加は見られなかった。遺伝子の上流配列に興味が持たれる。

レッシュ・ナイハン症候群におけるHPRT遺伝子解析

山田裕一、後藤治子、丸田恭子1、渡辺宏雄2、鬼頭浩史、小笠原信明3

 ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)がほぼ完全に欠損すると、レッシュ・ナイハン症候群になり、部分欠損では高尿酸血症から、若年で発症する重症の痛風となる。我々は欠損症における遺伝子変異を,ゲノム遺伝子の各エクソンのPCR増幅による分析と,mRNAからのRT-PCRによるcDNAの分析の2面から解析している。本年度も新たに2例のレッシュ・ナイハン症候群家系で,新しい遺伝子変異の同定に成功した。
 宮崎で発見された例は、ゲノムDNA,cDNAの両分析で、エクソン3の209番目の塩基GがAに変わる単塩基置換が発見され、HPRTの70番目のアミノ酸であるグリシンをグルタミン酸に変えるミスセンス変異(G70E)であった。変異によって新たに生じる制限酵素MnlI切断部位を利用したPCR-RFLP法とdirect sequencingの結果、母方の祖母、母親、姉が発見された変異のヘテロ接合体、保因者であることが明らかになった。G70Eはすでに欧米で異なった3家系での報告があり、日本人と欧米人で同じ変異が見つかった例としては、R51Xに次ぐ点変異であった。
 岐阜で発見された例では、エクソン6の中央部で、TTTG4塩基が重複するように挿入されていた。この変異により147番目のコドンから、フレームシフトが起き、155番目が翻訳停止コドンに変わる。GCNNNNNNNGCのMwoI部位が消失し、これを利用したPCR-RFLP法と、direct sequencing法で母親はヘテロで保因者、妹は正常と診断された。この変異ではRT-PCRの結果、HPRT cDNAの増幅が見られず、mRNA量の極端な低下が示唆された。この変異の報告はこれまでになく、新しいものであった。

 本研究の一部は痛風研究会の研究助成によった。
 1日南病院、2豊橋東病院、3所長

HPRT遺伝子変異:2塩基置換を有するレッシュ・ナイハン症候群例の原因変異の同定

後藤治子、山田裕一、岩崎信明1、小笠原信明2

 レッシュ・ナイハン症候群の原因となるヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)の遺伝子変異において、昨年度イントロン1の5’末のG→T置換(M1)、と5’末から8番目の塩基のG→T置換(M8)、2つの塩基置換をもつ(27+1G→T、+8G→T)例が発見され、それぞれの変異のmRNA発現に及ぼす影響を哺乳動物細胞発現ベクターを用いて検討したが、本年度さらに研究を進め、イントロン1の5’末の2つの塩基置換のどちらがレッシュ・ナイハン症候群の原因変異かを明らかにした。
 HPRT cDNAにイントロン1の1部(5’末約300bpと3’末約100bp)を導入し、pCIベクターに組み込んだ。イントロン部分は正常(NC)、患者由来の2つのG→T変異を導入したMT、PCRで導入した5’末にのみG→T変異をもつM1と、8番目にのみG→T変異をもつM8の4種とし、それぞれの変異をもつイントロン1が、どのようにスプライシングされるかを確かめる実験を行った。それぞれのベクターをHPRT mRNAの細胞に導入し、RT-PCRでmRNAの発現を観察した。その結果、M8変異では正常のイントロン1を組み込んだ件と同様に正常のmRNAが発現し、M1単独では発現量は明らかに低いが、M1、M8両変異を組み込んだ系と同様に、患者で見られた異常mRNAの発現が確認された。したがって、この家系の原因変異は5’末のG→T置換(M1)であり、スプライシングドナーのコンセンサス配列GTがTT変化することにより,正常なスプライシングが起こり得ず,49-bp下流のGTを認識してスプライシングが起こり,異常mRNAが形成されると考えられた。

 本研究の一部は痛風研究会の研究助成によった。
 1筑波大・医、2所長

赤血球型AMPデアミネース完全欠損の1例-複合型ヘテロ接合体-

山田裕一、後藤治子、小笠原信明1

 ヒトの赤血球型AMPデアミネースの遺伝子(AMPD-3)の染色体遺伝子構造が明らかになり、ゲノムDNAサンプルから全翻訳領域の塩基配列が分析できるようになり、酵素欠損の遺伝子変異の同定も可能になった。これまでに我々は、日本人における赤血球型AMPデアミネース欠損の遺伝子変異を同定し、約75%にみられるR573Cと9種のマイナーな変異(600delT,N310K,A320V,M324T,R331C,R402C,Q434X,W450R,P585L)を明らかにしている。完全欠損例は4例の分析を終えているが、すべてR573Cのホモ接合体であった。しかし、赤血球型AMPデアミネースの完全欠損1例にR573Cがいずれの遺伝子対にも存在しない例が発見された。そこでこのゲノムDNAサンプルの分析を行った。
 まず、これまでに発見されているマイナーな変異からスクリーニングしていくと、一方の遺伝子に部分欠損1例に見つかっているW450Rが確認された。すなわち、cDNAの1348番目の塩基TがAに変わり、トリプシンからアルギニンヘのミスセンス変異である。さらに、もう一方の遺伝子変異を同定するため、PCRで各エクソンを増幅し、ダイレクトシークエンシングで翻訳領域の解析を進めて行くと、2134番目の塩基がAからCに変わり、712番目のコドンでグルタミンがプロリンに変わるアミノ酸置換(Q712P)が発見された、この新しく見つかった変異により酵素蛋白の親水性や2次構造の変化が推定されるが、発現ベクターに組み込み、酵素活性への影響を確認する必要がある。また、この変異はまだ変異の同定されていない他の欠損例中には発見されなかった。
 以上、この完全欠損例はマイナーな変異W450RとQ712Pの複合ヘテロ接合体と考えられる。

 本研究の一部は痛風研究会の研究助成によった。
 1所長

ポーランドにおける赤血球型AMPデアミネース欠損の遺伝子変異

小笠原信明1、山田裕一、後藤治子、Wieslaw Makarewicz2

 ヒトの赤血球型AMPデアミネースの遺伝子(AMPD-3)が明らかになり、酵素欠損の遺伝子変異の同定も進み、日本人における赤血球型AMPデアミネース欠損の遺伝子変異は同一の変異遺伝子R573Cが約75%を占め、残りの25%は異なった遺伝子変異をもつと考えられている。酵素欠損の頻度がほぼ同じである欧米人での遺伝子変異の分布が日本人と差があるかどうかは、大変興味深いが、本年度7例の酵素活性が約半分でヘテロと考えられるポーランド人部分欠損例のゲノムDNAを得たので、これらの遺伝子変異の解析を開始した。
 先ず日本人の75%に見られた変異R573Cのスクリーニングを、変異により形成されるPstⅠ部位を利用したPCR-RFLP法で行ったが、7例中1例にも見つからなかった。また日本人で見つかった他の変異(600delT,N310K,A320V,M324T,R331C,R402C,Q434X,W450R,P585L,Q712P)も発見できなかった。そこでPCRで各エクソンを増幅し、ダイレクトシークエンシングで翻訳領域の解析を進めて行くと、エクソン6の931番目の塩基GからTへの単塩基置換で、311番目のコドン,バリンがロイシンに変わる単アミノ酸置換(V311L)が発見された。変異遺伝子でのTaiⅠ制限酵素部位の消失を利用して、他のサンプルを分析すると、7例中3例にこの変異が見つかった。このアミノ酸置換は酵素蛋白の親水性や2次構造の変化から酵素活性に影響することが推定されるが、今後、発現ベクターに組み込み、影響を確認する必要がある。残りの4例の遺伝子変異については現在、塩基配列を検討中である。
 以上、日本人とポーランド人では、欠損の頻度は同じでも、その遺伝子変異には差異があると考えられた。

 本研究の一部は痛風研究会の研究助成によった。
 1所長、2グダニスク大・医

軟骨無形成症(ACH)および軟骨低形成症(HCH)におけるFGFR3の遺伝子解析

鬼頭浩史、山田裕一、後藤治子、野上 宏1、Sei Won Yang2、小笠原信明3

 四肢短縮型小人症を呈する代表的な疾患である軟骨無形成症(ACH)における遺伝子変異がfibroblast growth factor receptor 3(FGFR3)の膜貫通領域に発見され、ACHに比し低身長と四肢変形の程度が軽く、重症から軽症まで連続的で多様な病態を呈す軟骨低形成症(HCH)では、FGFR3のチロシンキナーゼ領域に同一の単アミノ酸置換が発見された。また致死性骨異形成症(TD)でもFGFR3上にいくつかの遺伝子変異が見つかり、FRGR3がこれら疾患の原因遺伝子であることが判明した。この3つの疾患は重症度に差があるものの、いずれも四肢短縮型の小人症であり、これらの疾患どうしの、あるいは他の四肢短縮型小人症との鑑別においても、FGFR3の遺伝子解析は重要である。
 我々はこれまでにACH患者の日本人15例、韓国人16例についてFGFR3の膜貫通領域の遺伝子解析を行い、それぞれ、14例、15例に欧米で95%に観察される同一の変異(G380R)を確認した。またHCH2症例のチロシンキナーゼ領域を分析し、米国のHCH患者の70%に見られる変異(N540K)と同様の塩基置換を明らかにした。したがってACH,HCH両者ともに人種間で変異に差がなく、FGFR3の特定部位に限定して変異が高頻度で起こる極めて遺伝的に特異な興味ある疾患であることがわかった。
 さらに、FGFR3のゲノム遺伝子構造の解析を行い、まだ変異の確認されていないACH2例やHCHの疑われる症例の遺伝子解析を進めている。現在のところ、FGFR3の免疫グロブリン様領域、膜貫通領域およびチロシンキナーゼ領域等に変異が認められないことを確認しており、今後さらに未知の領域の分析を進めて行く。

 1中央病院、2ソウル国立大、3所長

ヒトEC-SODの遺伝子変異に伴う血清での増加とそれに関連した遺伝子多型

山田晴生1、山田裕一、佐久間正人1、深津敦司1、普天間新生1、各務伸一1、小笠原信明2

 酸素は好気生物の最終電子受容体として重要であるが、生化学反応の様々な段階で生成される分子状の酸素種は細胞に障害を与える。酸素ストレスより細胞を防御する消去酵素として、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)がある。そのアイソザイムの一つで細胞外で酸素ラジカルから細胞を防御するEC-SODは、血管内皮細胞表面のヘパラン硫酸に結合し、活性化された好中球より血管壁を防御している。我々は以前に、EC-SODの血清濃度が平均値の10-20倍の高値をとる集団が存在することを確認し、これがEC-SODのC末端近傍のヘパリン結合部位のアミノ酸置換(R213G)に起因する事を明らかにし、透析患者でその変異頻度が高いことから、透析患者の臨床的背景と変異頻度との関連を解析している。
 この変異を検討する過程で、EC-SODの蛋白をコードする領域のN末端近傍に遺伝的多型を示す2つの部位を見出した。1つは241番目の塩基におけるAとGで、アミノ酸はThrとAlaに分かれるが、酵素活性等には影響しない、また1方は280番目の塩基におけるCとTであるが、アミノ酸の変化はない。多型241Gの頻度は0.55、280Tは0.37であり、281Tの遺伝子対ではすべて241Gで、241C281Tのハプロタイプは存在しなかった。C末端近傍のヘパリン親和性を低下するアミノ酸置換(R213G)を起こす遺伝子変異760C→Gとの関連を検討した結果、変異(760C→G)をもつクローンはすべて241G281Tのハプロタイプであり、760C→Gは241G281Tの遺伝子対に生じた変異であることが推定された。

 1愛知医大、2所長

研究業績

著書・総説

小笠原信明:Ex vivoとin vivo遺伝子治療.検査と技術 24:870-872,1996.

小笠原信明:出生前遺伝子診断。出生前診断セミナー News 2:1-2,1996.

小笠原信明:ヒポキサンチン-グアニン-ホスホリボシールトランスフェラーゼ(HPRT).日本臨床 54:25-30,1996.

小笠原信明:HPRT完全欠損症、部分欠損症。日本臨床 54:133-138,1996.

大石英恒:母子の健康と遺伝.後藤節子、足立恵子(編),テキスト母性看護Ⅰ,名古屋大学出版会,pp.107-117,1996.

大石英恒:染色体診断に必要な基礎知識-異常染色体の子孫への伝達.古庄敏行他(編),臨床染色体診断法、金原出版,pp.75-81,1996.

大石英恒:染色体診断に必要な基本技術-皮膚紋理の分析,古庄敏行他(編),臨床染色体診断法,金原出版,pp.198-206,1996.

孫田信一:検体採取法と利用-生殖細胞.古庄敏行他(編),臨床染色体診断法,金原出版,pp.269-273,1996.

孫田信一:染色体不均衡を伴う配偶子の成立とその初期発生への関与と淘汰-実験動物による調査から学ぶもの-. 臨床遺伝研究18:20-27,1996.

山田裕一:Lesch-Nyhan症候群の遺伝子診断,「特集:痛風と高尿酸血症,トピックス;プリン代謝の分子生物学的進歩」,臨床成人病26:1785-1790,1996.

Ogasawara,N.,Yamada,Y.,Goto,H. :Human erythrocyte AMP deaminase deficiency.W.Makarewicz(ed.),Wlodzimierz Mozolowski 1895-1975 W 100-LECIE URODZIN.pp.409-416,1996.

孫田信一:遺伝、染色体.太田美智男(編),テキスト「医学生物学」.名古屋大学出版会、pp.2-8,1997.
小笠原信明:変異と遺伝病.太田美智男(編),テキスト「医学生物学」.名古屋大学出版会,pp.25-30.,1997.

原著論文

Kawamoto,T.,Kohmura,N.,Sonta,S.:Establishment and karyological analysis of embryonic stem cell stock in the Chinese hamster. Chrom. Inform. Serv. 60:15-17,1996.

Sonta, S., Kawamoto, T., Nomura, N. :Developmental arrest at the two-cell stage of Chinese hamster embryos monosomic for chromosome 1. Chrom. Inform. 61:15-17. 1996.

Sonta, S., Nomura, N., Fujimoto, K.1, Ono, T., Kawamoto, T., Aoi, T.(1Nagoya Univ.):Chinese hamster stocks with X-ray-induced chromosome rearrangements and their ferti1ity. Chrom. Inform. Serv. 61:18-20. 1996.

Yamada, Y., Suzumori, K.1, Tanemura, M.1, Goto, H., Ogasawara, N. (1Nagoya City Univ.):Molecular analysis of a Japanese fami1y with Lesch-Nyhan syndrome:Identification of mutation and prenatal diagnosis. Clin. Genet. 50:164-167. 1996.

Yamada, Y., Goto, H., Shiomi, M.1, Yamamoto, T.2, Higashino, K.2, Ogasawara, N. (1Osaka City General Hosp., 2Hyogo College Med.):A novel de novo mutation in HPRT gene responsible for Lesch-Nyhan syndrome (HPRTosaka). Jpn. J. hum. genet. 41:427-430. 1996.

山田裕一,後藤治子,鈴森 薫1,小笠原信明(1名古屋市大):Lesch-Nyhan症候群におけるHPRT変異遺伝子の出生前診断.プリン・ピリミジン代謝20:99-105,1996.

Kitoh, H., Yamada, Y., Goto, H., Ogasawara, N., Nogami, H.1(1Central Hosp.):A common mutation in the tyrosine kinase domain of the fibroblast growth factor receptor 3 gene in two Japanese patients with hypochondrop1asia. Cong. Anom. 36:257-261, 1996.

Yonezawa, S., Nodasaka, Y.1, Kaneda, T.1, Fujita, S.C.2, Kato, K., Yamada, Y., Ogasawara, N., Shoji, R. (1Hokkaido Univ., 2Mitsubishi Kasei Inst. Life Sci.): Cochlear histopathology of the mutant bustling mouse, BUS/Idr. Acta Otolaryngol. (Stockh.)116:409-416, 1996.

その他の印刷物

孫田信一、幸村紀子、北島哲子、川村則子、新川詔夫11長崎大):実験動物の脳形成異常に関与する染色体領域および遺伝子座位とその種間相同性.厚生省精神・神経疾患研究委託費平成7年度総括研究報告書 pp. 83-88. 1996.

孫田信一:胚発生におけるゲノム不均衡と不活性化の影響に関する検討.平成7年度厚生省小児医療研究委託費研究報告集 p.93, 1996.

藤本和則1,織田銑一1,孫田信一,山村英樹11名古屋大):生殖細胞、受精卵、発生初期胚の染色体標本作製法-染色体不均衡胚の初期発生研究の試み.環研年報47:189-192.1996.

小笠原信明,山田裕一,後藤治子,鈴森 薫1,田村昭蔵21名古屋市大,2田村クリニック):レッシュ・ナイハン症候群の出生前診断.厚生省特定疾患酵素障害調査研究班平成7年度研究報告書 pp.21-24. 1996.

小笠原信明,山田裕一,後藤治子,鈴森 薫1,田村昭蔵21名古屋市大,2田村クリニック):Lesch-Nyhan症候群家系の出生前診断.愛知県特定疾患研究協議会平成七年度報告書 p.143, 1996.

鬼頭浩史,沖 高司1,荒尾和彦1,野上 宏11中央病院):上腕骨に嚢種様変化をきたした多骨性線維性骨異形成症の1例.骨系統疾患研究会記録集 pp. 71-74, 1996.

荒尾和彦1,野上 宏1,沖 高司1,鬼頭浩史,川上紀明21中央病院,2名古屋大):Marfan症候群の側弯症に対する治療経験.骨系統疾患研究会記録集 pp. 19-24, 1996.

学会発表

孫田信一:染色体不均衡を伴う配偶子の成立とその初期発生への関与と淘汰について(教育講演).日本臨床遺伝学会(横浜)1996.5.24.

成瀬一郎,慶野裕美,谷口雅彦,山田裕一,Hui,C.-c.11Hosp.Sick Children,Toronto):Gli3遺伝子発現レベルの差によるミュウタントマウスの脳と四肢における表現型の差日本発生生物学会(京都)1996.5.25.

藤本和則1、織田銑一1、孫田信一(1名古屋大):チャイニーズハムスターにおける染色体不均衡胚の初期発生の異常.日本実験動物学会(新潟)1996.6.6.

小野教夫,山田和彦1,吉田廸弘11北海道大):LECラットにおける肝炎発症と肝がんについて.LECラット研究会(秋田)1996.6.11.

慶野裕美、山田裕一、谷口雅彦、成瀬一郎:Gli3遺伝子発現量に差があるミュウタントマウス(Pdn/Pdn,XtJ/XtJ)における表現型の比較.日本先天異常学会(札幌)1996.7.25.

孫田信一,幸村紀子:逆位X染色体を有するチャイニーズハムスターとその成熟分裂における分離.日本先天異常学会(札幌)1996.7.27.

Yamada, K., Mizutani,T.1 (1Nagoya City Univ.):A new translational elongation factor for selenocysteyl-tRNA in eucaryotes. The Sixth International Symposium on Selenium in Biology and Medicine(Beijin, China)1996.8.19.

Fujiwara, T.1, Mizutani, T.1, Yamada, K. (1Nagoya City Univ):Analyses of intermediates in the conversion of seryl-tRNA (SeCys) to SeCys-tRNA (SeCys) in mammals. The Sixth International Symposium on Selenium in Biology and Medicine (Beijin, China) 1996.8.19.

Naruse, I., Keino, H., Yamada, Y., Taniguchi, M., Hui, C.-c.1, Sato, A.G.2, Yasuda, M.2 (1Hosp. Sick Children, Toronto, 2Hiroshima Univ.):Genetic Polydactyly/arhinencephaly mouse as the homologue of greig cephalopolysyndactyly syndrome (GPCS). Symposium of 1st Asian Pacific International Congress of Anetomists,“Gene and Merphogenesis” (Seoul, Korea) 1996.8.23.

武藤宣博,中川千玲:Schizosaccharomyces Pombeの過酸化水素超感受性変異株の性質. 日本生化学会(札幌)1996.8.27.

中川干玲,武藤宣博:S. Pombeカタラーゼ遺伝子の転写調節機構. 日本生化学会(札幌)1996.8.27.

山田裕一,後藤治子,岩崎信明1,中村了正1,小笠原信明(1筑波大):Lesch-Nyhan症候群におけるHPRT遺伝子変異と異常mRNAの発現. 日本生化学会(札幌)1996.8.29.

新川詔夫1,近藤新二1,富田博秋1,藤本正博1,近藤達郎1,松本 正1,池川志郎2,中村祐輔2,石田貴文2,孫田信一,福嶋義光3,松尾雅文4,Kantaputra, P.N.51長崎大,2東京大,3信州大,4神戸大,5Chiang Mai Univ., Thailand):連鎖解析に有用な遺伝病の6大家系.Medical Genetics研究会(北九州)1996.9.15.

孫田信一:染色体分離異常のメカニズム:precocious divisionの検討.日本遺伝学会(名古屋)1996.10.5.

孫田信一:逆位染色体における乗換えと分離の検討.日本人類遺伝学会(札幌)1996.10.23.

山田裕一,後藤治子,岩崎信明1,小笠原信明(筑波大):Lesch-Nyhan症候群におけるHPRT遺伝子変異:2塩基置換を有する日本人症例の原因変異の同定. 日本人類遺伝学会(札幌)1996.10.25.

Yamada, H.1, Fukatsu, A.1, Futenma, A.11, Adachi, T.2, Yamada, Y., Kitano, M.1, Miyai, H.1, Hirano, K.2, Kakumu, S.1 (1Aichi Med. Univ., 2Gifu Pharmac. Univ.): High incidence genetically elevated serum extracellular superoxide dismutase in hemodialysis patients. Annual Meeting of the American Sociaty of Nephrology (New Orleans, USA) 1996.11.3.

野村紀子,小野教夫,孫田信一:チャイニーズハムスターの配偶子を介して子に受け継いだX線誘発染色体異常の特徴.染色体学会(熊本)1996.11.19.

川本隆行,野村紀子,孫田信一:チャイニーズハムスター染色体1のモノソミー胚は2細胞期で発生を停止する.染色体学会(熊本)1996.11.9.

藤本和則1,織田銑一,孫田信一(1名古屋大):チャイニーズハムスター染色体2と6の不均衡胚における初期発生の異常.染色体学会(熊本)1996.11.9.

山田晴生1、普天間新生1,山田裕一,足立哲夫2,平野和行2,各務伸一11愛知医大,2岐阜薬大):ヒトで見られる Extracellular-Superoxide Dismutase (EC-SOD)遺伝子の変異と腎不全での頻度.日本過酸化脂質フリーラジカル学会(犬山)1996.ll.24

伊藤弘紀1,沖 高司1,荒尾和彦1,野上 宏1,鬼頭浩史(1中央病院):先天性脛骨欠損における腓骨中心化手術. 日本小児整形外科学会(横浜)1996.11.29.

沖 高司1,伊藤弘紀1,鬼頭浩史,荒尾和彦1,野上 宏11中央病院):小児股関節疾患への対応-精神遅滞合併例について-. 日本小児整形外科学会(横浜)1996.1l.29.

伊藤弘紀1,沖 高司1,荒尾和彦1,鬼頭浩史,野上 宏11中央病院):正常家系内における骨系統疾患の兄弟例.骨系統疾患研究会(横浜)1996.12.1.

中川千玲,山田憲一郎,武藤宣博:Schizosaccharomyces pombeカタラーゼ遺伝子の発現調節.酵母遺伝学フォーラム研究会(熊本)1996.12.6.

鬼頭浩史,山田裕一,後藤治子,野上 宏1,Yang,S.W.2,小笠原信明(1中央病院,2Seoul Natl.Univ.):日本人及び韓国人軟骨無形成症症例の遺伝子解析.整形外科集談会東海地方会(名古屋)1996.12.14.

荒尾和彦1,沖 高司1,伊藤弘紀1,鬼頭浩史,野上 宏11中央病院):脚延長による軟骨無形成症の膝蓋骨脱臼.近畿小児整形外科懇話会(大阪)1997.2.22.

山田裕一,後藤治子,小笠原信明:ヒト赤血球型AMPデアミナーゼ-その生理的意義と欠損の遺伝子解析-.日本プリン・ピリミジン代謝学会 シンポジウム「プリン分解酵素の生体における役割」(東京)1997.3.14.

講演など

後藤治子,山田裕一:遺伝病の遺伝子解析.愛知県臨床検査技師会(名古屋)1996.11.9.

孫田信一:脳形成障害に関与する染色体異常の発生機構と分離に関する研究.平成8年度厚生省精神・神経疾患委託費「脳形成障害の成因と予防に関する研究」班会議(東京)1996.11.27.

孫田信一:胚発生におけるゲノム不均衡と不活性化の影響に関する検討.平成8年度厚生省小児医療研究委託費「成育医療からみた発生分化の基盤的研究」班会議(東京)1996.12.14.

小笠原信明:女児のLesch-Nyhan症候群の発症機構.「遺伝子診断/情報」公開講演会,非メンデル遺伝の分子機構(大阪)1997.2.27.

その他の研究活動

学術集会企画
小笠原信明:シンポジウム「プリン分解酵素の生体における役割」.日本プリン・ピリミジン代謝学会(東京)1997.3.14.

海外活動
山田憲一郎:第6回生物学および医学分野におけるセレン国際シンポジウムに出席、研究発表(中国)1996.8.17.~8.24.

教育活動

孫田信一:分子生物学(名古屋市立大学医学部)1996.4.1.-1997.3.31.

武藤宣博:生物薬品化学特論(名古屋市立大学薬学部)1996.6.1.~1996.6.30.

2.発生学部

研究の概況

鈴木信太郎

 発達障害の発生は主に発生の初期過程において遺伝的要因や環境要因によって引き起こされるものと一般に考えられている。したがって、当部門の主な業務である発生過程の研究は障害発生およびその予防の研究にとって中心的な課題であるといえる。発生の研究分野には色々なものが考えられるが、当部門では発足以来変異動物の作製とその解析をとおして各種疾患のモデル動物を確立し、病態の解明・治療法の研究を目指してきた。しかし、近年の分子生物学の急速な進歩により原因遺伝子の解明ぬきにこのような研究を行なっていくことは無意味になろうとしている。特に、ヒト全遺伝子の配列の決定が21世紀初頭にはなされようとしている今日、旧来の研究は見直さざるをえない状況になってきているといえる。当部門においても新部長就任を契機にこれまでの研究方向を修正し、新しい方向を目指そうとしている。一つの方向は新しい技法を用いた発生過程の基礎的な研究であり、もう一つの方向は原因遺伝子の分子遺伝学的解析を目指したものを考えている。
 第一研究室の竹内は当研究所で確立したgroggyラットの解析を行なってきているが、本年度はその一環として神経細胞の骨格異常を検出するGallyas-Braak染色法を用いて脳と脊髄の変化を調べた。その結果、groggyラットでは加令に伴い嗜銀性の顆粒の蓄積が見られることが判明した。この顆粒は抗tau抗体により染色されたが、アルツハイマー病の場合に見られるGallyas-Braak染色されるものと同じものかどうかは今後の研究課題である。
 第二研究室の米澤らは当研究所で確立した平衡感覚器異常のBUSマウスの遺伝子の同定を試みている。その結果bus遺伝子はマウス第10染色体に存在することを明らかにし、現在さらに詳しい位置の決定を行なっているところである。最近BUSマウスとは異なる内耳機能障害変異マウスにミオシンサブタイプの変異を起こすものが二種見つかってきている。そこで、新しいテーマとして内耳に発現しているミオシンを分離、同定しその解析を行なおうとしている。また、酸性プロテアーゼカテプシンEの生物学的機能の検討も行なっている。
 一方松田は高等動物において神経組織の形成に関与していることが知られているWntの機能解析を行なっている。方法としては器官培養法を用い、抗Wntl抗体やWntのシグナル伝達系に関与することが知られているGSK-3βの阻害剤リチウムの影響を検討することによりWntの機能の解明を目指している。本年度はこれらの処理により神経組織の形態に異常の起こることを明らかにした。目下その詳しい解析を行なっている。
 部長グループは細胞接着現象を通じて発生過程を細胞生物学、分子生物学、生化学等の手法を用いて多面的に解析しようとしている。第一の研究テーマとしてⅠ型カドヘリンの一つカドヘリン-4を用いて、カドヘリンの細胞外ドメインの機能解析を行い、接着活性におけるくり返し構造の機能を明らかにした。
 第二の研究テーマとしてはⅡ型カドヘリンの接着に関する一般的性質を検討することにより、カドヘリンの未解決課題解明に役立てるとともにⅡ型カドヘリンの機能を明らかにしようとしている。本年度はカドヘリン-5がⅠ型カドヘリンとは異なるユニークな性質を有することを明らかにした。また、第三にトランスジェニックマウスの技法を用いて、プロトカドヘリンの役割の検討を行い、プロトカドヘリンが神経組織の組織構築に関与している可能性を示す知見を得ている。
 現在当研究部の研究活動度は徐々に活発になってきており、9年度には若手研究員の採用も予想されていることから遠からず内外の強力な研究室に伍してユニークな仕事が行なえるようになるものと思われる。今後の部員の活躍に期待したい。
 本年度は新部長が南カルフォルニア大学より着任したが、その他の移動はなかった。また、研究補助金については文部省科学研究費一般研究費C(松田)一件の援助を得た。

老齢groggyラットの神経細胞に蓄積するGallyas-Braak染色に染まる物質

竹内郁夫

 Groggyラットは、我々が系統化した歩行異常を呈する突然変異ラットで、常染色体単純劣性遺伝を示す。これまでの組織学的研究でみられた異常の多くは軸索や軸索終末に関するものであったので、groggyラットでは軸索の維持か軸索輸送の機構に異常が起きている可能性が考えられた。そこで、神経細胞の細胞骨格異常を検出するGallyas-Braak(G-B)染色法でgroggyラットの脳と脊髄を調べたところ、生後90日では異常はみられなかったが、180日では5頭のうちの2頭で、細胞質に嗜銀性物質の蓄積がみられる神経細胞が種々の部位にみられた。360日では、この様な異常神経細胞がみられる個体数も、その出現部位も増加した。730日では、調べた4頭のgroggyラットの全てで異常神経細胞がみられ、これらは赤核、橋被蓋網様体核、三又神経中位核、顔面神経核、全ての延髄網様体核、舌下神経核、脊髄の7~9層の神経細胞に多くみられ、その他の種々の部位にも少数みられた。
さらに、末梢神経系の三又神経節にも同様の異常神経細胞がいくつかみられた。嗜銀性物質は、神経細胞の細胞核の周辺に集積している顆粒状構造に局在していた。正常の730日齢のSlc:Wistarラットでは、groggyラットと同様に神経細胞の細胞核周辺に顆粒状構造の集積がみられたが、これらは全く嗜銀性を示さなかった。Groggyラットの異常神経細胞の顆粒状構造は、neurofilamentとMAP-2の抗体には染まらなかった。正常tauの抗体で染色すると、顆粒状構造はgroggyラットとSlc:Wistarラットの両方で陽性であった。Tauの免疫電顕を行ったところ、tau陽性物質は神経細胞の細胞質に微少な不定形の構造としてフリーに存在したり、リポフスシンに取り込まれていたりしていた。G-B染色法はアルツハイマー病などにみられる神経繊維原性変化を検出する方法として知られ、異常に過リン酸化されたtauと最も良く反応するといわれている。Groggyラットの神経細胞でG-B染色に反応する物質がアルツハイマー病の場合と同じものか否かは今後の研究課題である。

行動異常・内耳機能障害マウス(BUS/Idr)の原因遺伝子の染色体マッピング

吉木 淳1、日下部守昭1、花井敦子2、米澤 敏

 遺伝性多動マウス(BUS/Idr)は当研究所で見い出され確立された行動異常ミュータントである。旋回行動、多動、頭部の振せんを主徴とし、この病態は常染色体性劣性遺伝子の支配下にある。これまでの調査からこのミュータントが聴覚、平衡覚両面において機能障害を有し、このマウスが示す異常行動は平衡覚障害に基づいて惹起されていることが明らかとなっている。その原因遺伝子特定へむけて、遺伝子busの染色体マッピングを行なった。
 BUSマウス雌2頭と野性マウス(M.castaneus)雄1頭をもとにF2世代を作製し、その内の行動異常個体(48個体)を用いてMITマイクロサテライトによる各染色体の検索を行なった。その結果、行動異常と第10染色体マーカーのタイピングとの間に強いリンケージが認められた。そこで、F2個体195匹(異常個体114頭、正常個体81頭)について、第10染色体上の13個のマーカー(D10Mit153, D10Mit16, D10Mit52, D10Mit53, D10Mit88, D10Mit59, D10Mit149, D10Mit111, D10Mit20, D10Mit15, D10Mit91, D10Mit118, D10Mit180)を用いてさらに検索を行なった結果、busがD10Mit59とD10Mit149との間に位置していると考えられた。しかしながら、この両マーカーを含む領域にわたってcastaneus型のホモ個体が7/114頭存在したことから、行動異常個体の中にbusとは異なった病因による個体が含まれていることが考えられた。そこで、内耳組織標本を作製して検索したところ、BUSマウスの病態とは明らかに異なったspottingミュータントタイプの内耳病変をもつ個体の存在が確認された。現在、内耳組織像をもとに表現形を決定しながらD10Mit59/D10Mit149間の近傍マーカーを検索中である。第10染色体のこの領域には聴覚障害遺伝子waltzer(ν)の存在が知られており、busとνが対立遺伝子である可能性も示唆される。

 1理化学研究所、2共同研究科

内耳に発現するミオシン分子種の探索

米澤 敏、花井敦子1、森山昭彦2

 近年、内耳機能障害ミュータントマウスshaker-1,Snell's waltzerの病因がそれぞれミオシンVIIA、ミオシンVIの遺伝子上に起こった突然変異であることが相次いで明らかとなった(1995年)。両生類の内耳組織中に多くのミオシン分子種が発現していることが報告されているが、哺乳類の内耳機能とミオシンの関わりについては上記ミュータントマウスでの知見以外明らかではない。われわれは、ミオシンが11タイプに分類される数十の分子種からなるスーパーファミリーを構成していることから、哺乳類における聴覚障害、平衡覚障害の原因因子となりうる別なミオシン分子種がなお存在する可能性は高いと考えている。この仮説に基づき、まず、マウス内耳に発現しているミオシン分子種をdegenerate primersを用いたRT-PCR法、TAクローニング法により捉えることを試みた。
BALB/cマウスの内耳膨大部稜、卵形嚢を含む膜迷路標品からRNAを調製し、RT反応ののち、ミオシン頭部のATP結合ドメインと約100塩基対下流の保存性の高い領域に対応するdegenerate primersを設定してRT-PCRを行なった。PCR産物はTAクローニングののち、50クローンについて塩基配列を調べた。その結果、クローニングされたPCR産物はほとんどがⅠ型ミオシンに対応した塩基配列を示したが、Ⅹ型の配列に高い相同性(80%)を示すクローンおよびⅡ型と完全に一致する配列を示すクローンがそれぞれ1つずつ得られた。Ⅰ型およびⅡ型ミオシンについてはすでに多くの報告があるが、Ⅹ型については両生類平衡器にその発現が知られているものの、哺乳類での知見は皆無である。したがって、このⅩ型様の配列をもつクローンに焦点をあて、そのcDNAクローニングに着手するとともに、PCR産物の情報をもとにペプチド抗体の作製に入っている。

 1共同研究科、2名古屋市大・自然科学研

細胞内酸性プロテアーゼカテプシンEの生物学的機能の探索

景山 節1、木村礼子、米澤 敏

 カテプシンEは、ペプシノーゲンやカテプシンDなどとともにアスパルティックプロテアーゼに属する酵素である。この酵素は非分泌性でERに局在しており、蛋白質のプロセシングに関与している可能性が指摘されているが、その生理的基質は未だ特定されていない。カテプシンEの生物学的機能を探る一環として、サブスタンスPを基質としたカテプシンEの選択的測定法により、ラットとサルの組織、および各種のcell lineのカテプシンE活性を比較調査した。その結果、カテプシンEが胃に加え、造血系・リンパ系組織に多く存在しているというこれまでの知見はラットとサルに共通しており、中枢においても微量ながらカテプシンEの発現が認められるという点も共通であった。アルツハイマー病患者の脳では神経細胞や老人斑に免疫組織化学的にカテプシンEの局在が認められるとする報告があり、中枢における本酵素の存在の意味を探ることは今後の課題である。また、例外的にサルの十二指腸には胃に匹敵する高いカテプシンE活性が認められたがその意味は不明である。各種の癌細胞、PC12細胞、内皮細胞などのcell lineにも本酵素の存在を認めたが、活性レベルはいずれも低かった。
 ラット肝臓におけるカテプシンE活性は成獣ではほとんど認められないが、胎生期にあってはその50倍にも達している。このことに着目して、ラット9.5日胎仔培養系を用いて、培養液中にAscaris由来のカテプシンE阻害剤を加えその効果を調べたが、11.5日胎仔までの発生過程において異常発生の兆候は認められなかった。カテプシンEの機能についてはこれまで多くの仮説が提出されているがそれらを裏付ける決定的なデータはない。カテプシンEの生物学的役割を断定的に論ずるため、この酵素を欠失したマウスを作製することを指向しつつ、マウスカテプシンE遺伝子のクローニングに着手した。

 1京都大霊長研

ラット中枢神経系の形態形成機構の解析

松田素子

 Wntシグナル伝達は、脊椎動物の多くの過程に見られ、中枢神経の部域化にも関与していることが示唆されている。一方、リチウムがGSK-3βに直接結合し、その機能を阻害することが、最近報告された。GSK-3βは、Wntシグナル伝達経路の分子である。
 私達は、ラット中枢神経系の形態形成機構の解析を進めているが、今回は、リチウムを用いて実験を行った。胎生9.5日ラット胚を、種々の濃度の塩化リチウムを添加したラット血清中で、48時間培養した。50,100、150μg/mlの塩化リチウムを添加した場合、処理胚の発生・分化は対照胚と同じであったが、200μg/mlを添加した場合、眼胞形成不全、端脳(終脳)の膨大が少ない、後脳の頭尾長が短い等、中枢神経系の形態形成異常が見られた。対照胚の組織切片像では、端脳と間脳の境の切れ込み、眼柄の突出・切れ込み、ロンボメアの突出・切れ込みが明瞭であったが、処理胚では、それらが不明瞭か、全く見られなかった。脳脊髄神経の発生・分化を観察した結果、運動神経は対照胚とほぼ同じであったが、2H3染色では、対照胚より劣った三叉神経とごくわずかな顔面神経が見られ、舌咽神経は見られなかった。リチウム処理によるロンボメア形成不全は、神経冠細胞の発生不全を伴うことが考えられる。抗β-カテニン抗体染色の結果、対照胚では、肢芽、中脳・間脳・後脳の背域、髄脳の腹域、眼胞の縁、鼻板等に染色が見られた。処理胚では、中脳・間脳・後脳の背域、髄脳の腹域の染色と ともに、端脳の嘴域に染色が見られ、肢芽の染色は少なかった。また、対照胚では、端脳、端脳と間脳の境、眼胞域、後脳から髄脳域にかけて、染色されていない部分が見られたが、処理胚では、それらの部域は、染色されていた。リチウム処理でWntシグナル伝達系が変化していることが示唆される。
 以上の結果は、端脳、端脳と間脳の境、眼胞域、後脳域では、Wntシグナル伝達系が不活化しており、β-カテニンが抑制されると神経管に突出・切れ込みが形成される、という機構が働いている可能性を示唆している。端脳も神経管の大きな突出なのかもしれない。

カドヘリンの細胞外ドメインの繰り返し構造の削除、重複が細胞接着活性に与える影響

村瀬佐知子1、平野伸二1、鈴木信太郎

 カドヘリンは細胞間の接着を担い、形態形成などの過程において重要な役割を果たしている接着分子で、カルシウム依存性のホモフィリックな接着活性を持つ。カドヘリンには幾つかの型が知られているが、クラッシック型カドヘリンは細胞外ドメインにカドヘリンに特有なモチーフの5回の繰り返し構造を持つ。くり返し構造間にはカルシウムイオンが結合しドメイン全体を強固な構造に保っていると考えられている。各くり返し構造は互いに高い相同性を示すものの、それぞれ特徴を備えており、膜貫通部分に近いものは相同性が比較的低い。アミノ末端のくり返し構造(EC1)は接着特異性を決定するという役割を持つことが知られているが、その他のくり返し構造の役割については不明である。そこで本研究ではくり返し構造の削除や重複が接着活性にどのような影響を与えるかを調べることにより、繰り返し構造の役割を明らかにしようとした。クラシック型カドヘリンであるカドヘリン-4のEC3を削除すると、接着活性は野生型の約50%に減少するものの保持された。またEC2とEC3、EC3とEC4のように2つのくり返し構造を削除した場合、活性はさらに減少したが、完全に消失はしなかった。E-カ ドヘリンについてもEC3の削除により約50%の活性を示し、EC2,3,4の3つのくり返し構造を削除しても、弱い活性を示した。これらのことから、5回の繰り返し構造は活性発現に必須ではないが、安定な構造を達成し、高い活性を確保するためには重要であるものと考えられる。

 1南カリフォルニア大、ドヒニ眼研究所

Ⅱ型カドヘリンCadherin-5の接着構造とその機能

鈴木信太郎、青木英子

 カドヘリンは初め細胞接着分子として同定されたが、今では様々な性質を示すカドヘリンが種々の組織に多数発現していることが明らかにされてきている。その結果、カドヘリンは単なる接着分子としての機能以外になんらかの機能を持っていることが示唆されるようになってきているが、詳しいことは不明である。そこで、この問題解明の一環としてカドヘリンの一ファミリーであるⅡ型カドヘリンの接着に関する性質を明らかにし、Ⅰ型カドヘリンとの比較検討を行なった。Ⅱ型カドヘリンの一種カドヘリン-5はCa2+依存性に細胞-細胞間に局在化する。この局在は非常に不安定でCa2+を含まない緩衝液で洗浄すると数分で容易に消失し、細胞間の接着もこわされた。また、トランスフェクタント細胞をcalyculin Aで処理するとroundingを起こし、細胞間接着が弱まるが、この細胞を元の培地に戻すと再び元の形態にもどった。この時Ca2+抜きの培地を用いると細胞間の接着は起こらなかった。カドヘリン-5は通常の細胞接着活性の測定法で接着活性を示すことはできないが、今回の結果はカドヘリン-5が弱い細胞接着活性を持つこと、またこの活性がリン酸化で 調節されている可能性を示唆している。 カドヘリンは細胞内蛋白質と複合体を作っていることが知られているが、カドヘリン-5もクラッシックカドヘリンと同様の複合体を作り、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120cas等と結合していることが免疫沈降法で明らかとなった。一方、カドヘリン-5はクラシックカドヘリンと異なり、細胞内骨格系との結合は弱く、非イオン系界面活性剤で可溶化すると容易に可溶化される。この性質がⅡ型カドヘリンの局在の不安定性の一因になっている可能性が考えられる。このようにカドヘリン-5はクラシックカドヘリンと共通の性質を示すが、ユニークな性質もあわせ持っており、クラシックカドヘリンと異なる機能を持つことを示唆している。

トランスジェニックマウスを用いたプロトカドヘリンの機能の解析

Xiopeng Wang1、平野伸二1、Henry Fong1,鈴木信太郎

 プロトカドヘリンはカドヘリンスーパーファミリーに含まれる大きなサブファミリーに属している。高等動物の場合これらの分子は神経系に数多く発現しており、複雑な発現の調節を受けているが、その機能はまだ推測の域を出ない。そこで、私達はこれら分子の機能を解析する目的でトランスジェニックマウスの技法を用いてプロトカドヘリン-2をマウスの神経性網膜に強制発現し、その影響を検討した。用いたプロモーターは網膜に特異的に発現しているG蛋白のγ-サブユニットのものである。今回3系統のマウスを得たが、いずれも神経性網膜の形態に異常を呈した。これらの網膜は見掛け上横方向に増大し、結果として網膜が波を打った構造を示した。また、網膜の厚さも多少増大したが、層構造は野生型によく似ていた。しかし、数種類の抗体を用いてより詳細に検討を加えたところ層構造にも乱れの生じていることが判明した。これらの結果は予想されていたようにプロトカドヘリンが神経系の構築に関与している事を強く示唆している。今後はこれらのトランスジェニックマウスをさらに詳しく解析して、プロトカドヘリンの作用機構を解明する計画である。

 1南カリフォルニア大、ドヒニ眼研究所

研究業績

著書・総説

Suzuki, S.T.: Structural and Functional Diversity of Cadherin Superfamily. J.Cell.Biochem. 61:531-542, 1996.

Suzuki, S.T.: Protocadherins and diversity of cadherin superfamily. J.Cell Sci. 109:2609-2611, 1996.

鈴木信太郎:プロトカドヘリンおよびその関連蛋白質;その他のカドヘリン.Bio Science 用語ライブラリー細胞接着、羊土社、pp.152-155, 1996.

鈴木信太郎:プロトカドヘリン、現代化学増刊細胞接着分子、東京化学同人,pp.25-28,1996.

鈴木信太郎:N-カドヘリン;E-カドヘリン;神経組織に発現しているその他のカドヘリン.Bio Science用語ライブラリー脳神経、羊土社、pp.181-184,1997.

原著論文

Aoki, E., Semba, R., Hu, Y.1, Ma, N.1, Takeuchi, I.K, (1Mie Univ.): Prenatal and postnatal development of NO synthase and NADPH diaphorase in juxtaglomerular region of rat kidney. Acta Histochem. Cytochem. 29:339-343, 1996.

Takeuchi, I.K., Takeuchi, Y.K.1, Murashima, Y.2, Seto-Ohshima, A. (1Gifu Coll. Med. Technol., 2Tokyo Inst. Psychiatr.): Altered axon terminals containing concentric lamellar bodies of cerebellar Purkinje cells in Mongolian gerbil. Experientia 52:531-534, 1996.

Takeuchi, Y.K.1, Takeuchi, I.K., Aoki, E. (1Gifu Coll. Med. Technol.): Acid phosphatase cytochemistry and cathepsin D immunocytochemistry on multitubular bodies in cerebellar Purkinje axons of groggy mutant rat. J. Electron Microsc. 45:509-513, 1996.

Takeuchi, Y.K.1, Takeuchi, I.K., Murashima, Y.2, Seto-Ohshima, A. (1Gifu Coll. Med. Technol., 2Tokyo Inst. Psychiatr.): Age-related appearance of dystrophic axon terminals in cerebellar and vestibular nuclei of Mongolian gerbils. Exp. Anim.n. 46:59-65, 1997.

Yamamoto, S.1,2, Yonezawa, S., Ichinose, M.3, Miki, K.3, Masui, T.1, Fukushima, S.2, Inoue, H.1, Tatematsu, M.1 (1Aichi Cancer Ctr., 20saka Univ., 3Tokyo Univ.): Immunohistochemically demonstrated variation in expression of cathepsin E between uracil-induced papillomatosis and N-butyl-N-(4-hydroxyburyl)nitrosamine-induced preneoplastic and neoplastic changes in rat urinary bladder. Virchows Arch. 427:589-594, 1996.

Nakamura, K.1, Yonezawa, S., Yoshizaki, N.1 (1Gifu Univ.): Vitellogenesis-related ovary chathepsin D from Xenopus laevis: Purification and properties in comparison with liver cathepsin D. Comp. Biochem. Physiol. 113B:835-840, 1996.

Yonezawa, S., Nodasaka, Y.1, Kamada, T.1, Fujita, S.C.2, Kato, K., Yamada, Y., Ogasawara, N., Shoji, R. (1Hokkaido Univ., 2Mitsubishi Kasei Inst. Life Sci.): Cochlear histopathology of the mutant bustling mouse, BUS/Idr. Acta Otolaryngol. (Stockh.) 116:409-416, 1996.

Kageyama. T.1, Yonezawa, S., Ichinose, M.2, Miki, K.2, Moriyama, A.3 (1Kyoto Univ., 2Tokyo Univ., 3Nagoya City Univ.): Potential sites for processing of the human invariant chain by cathepsins D and E. Biochem. Biophys. Res. Commun. 223:549-553, 1996.

Yoshizaki, N.1, Yonezawa, S. (1Gifu Univ.): Salt concentration-dependency of vitellogenin processing by cathepsin D in Xenopus laevis. Develop. Growth Differ. 38:549-556, 1996.

Kageyama, T.1, Moriyama, A.2, Kato, T.2, Sano, M. and Yonezawa, S. (1Kyoto Univ., 2Nagoya City Univ.): Determination of cathepsins D and E in various tissues and cells of rat, monkey, and man by the assay with β-endorphin and substance P as substrates. Zool. Sci 13:693-698, 1996.

Moriyama, K.1, Hashimoto, R,1, Hanai, A., Yoshizaki, N.2, Yonezawa, S., Otani, H.1 (1Shimane Med. Univ., 2Gifu Univ.): Degenerative hairlets on the vestibular sensory cells in mutant bustling (BUS/Idr) mice. Acta Otolaryngol. (Stockh.) 117:20-24, 1997.

学会発表

竹内郁夫、青木英子、大島章子、竹内よし子11岐阜医技短大):プルキンエ細胞にみられる二種類の肥大軸索終末と酸性フォスファターゼ活性.日本解剖学会(福岡)1996.4.3.

竹内よし子1、竹内郁夫、青木英子(1岐阜医技短大):プレキンエ細胞軸索内に形成される多重管状構造物における酸性フォスファターゼとカテプシンD.日本解剖学会(福岡)1996.4.3.

青木英子・竹内郁夫:ラット腎臓の発育時における一酸化窒素合成酵素活性の変化.日本解剖学会(福岡)1996.4.3.

松田素子,仙波りつ子,木谷 裕1,友岡康弘21農水省家畜衛試、2東京理科大):ラット中枢神経発生におけるネスチンの機能.日本発生生物学会(京都)1996.5.24.

竹内郁夫、竹内よし子11岐阜医技短大):Groggy 突然変異ラットにおける脊髄の萎縮.日本実験動物学会(新潟)1996.6.5.

木村礼子,米澤 敏:白内障マウス(CTA/Idr)のレンズタンパク成分の2D-PAGEによる解析.日本先天異常学会(札幌)1996.7.25.

北川道弘1、鈴木信太郎(1国立大蔵病院):Ⅱ型カドヘリンの性質について.日本生化学会(札幌)1996.8.26.

景山 節1、米澤 敏、森山昭彦21京都大霊長研、2名古屋市大):カテプシンD,Eの切断特異性とインヴァリアント鎖のプロセシング.日本生化学会(札幌)1996.8.27.

吉崎範夫1、米澤 敏(1岐阜大):ゼノパスにおける卵黄タンパク貯蔵の分子機構.日本動物学会(札幌)1996.9.18.

松田素子,仙波りつ子:抗 Wnt-1 抗体処理ラット胚における前後軸形成異常.日本動物学会(札幌)1996.9.19.

仙波りつ子、竹内郁夫、仙波禮治1、加藤兼房(1三重大):脳由来神経栄養因子.ラット脳における加齢変化と局在.日本神経化学会(横浜)1996.10.2.

Kusakabe, M.1, Yonezawa, S., Hanai, A., Matsumoto, N.1, Hiraiwa, N.1, Ike, F.1, Yoshiki, A.1 (1Inst. Phys. Chem. Res.):A gene for bustling (bus) behavior in mice is located on Chr 10. Internatl. Mouse Genome Con. (Paris, France) 1996.10.8.

北川道弘1、鈴木信太郎(1国立大蔵病院):カドヘリンと相互作用している分子の研究:新しい試みとこれまで得られている結果の再検討.日本細胞生物学会(京都)1996.10.23.

吉木 淳1、米澤 敏、花井敦子、松本直紀1、平岩典子1、池 郁生1、日下部守昭11理化学研):マウスのBustling(bus) 遺伝子座の染色体マッピング.日本疾患モデル学会(東京)1996.11.22.

Kitagawa, M.1, Suzuki, S.T. (1National Hospital at Okura): Type Ⅱ cadherins show unique features distinct from those of classical cadherins. American Society for Cell Biology, San Francisco, 1996.12.10.

Katoh-Semba,R., Takeuchi, I.K., Watanabe, M,Semba, R.1, Kato, K. (1Mie Univ.): Regional distribution and developmental changes of neurotrophin Proteins in the mouse or rat brain and possible in vivo functions of neurotrophin-3 in the developmental rat brain.Ⅸth Taniguchi Symp. (Div. Mol. Cell. Biol.), "Neurotrophins in Develpment and Plasticity of the Brain" (Osaka) 1997.3.11.

竹内郁夫、竹内よし子11岐阜医技短大):老齢groggy突然変異ラットの神経細胞における Gallyas-Braak法と tau 免疫染色に反応する構造の出現.日本解剖学会(長久手)1997.3.28.

講演など

Suzuki, S. T.: Adhesion complex of a type Ⅱ cadherin, cadherin-5 Membrane Research Forum, Tokyo. 1997.2.18.

教育活動

米澤 敏:生物学(愛知県立春日井看護専門学校)1996.4.1.~1997.3.31.


主題:
発達障害研究所年報 第25号 No.1
1頁~22頁

発行者:
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所

発行年月:
1997年09月

文献に関する問い合わせ先:
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
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