北欧諸国の福祉機器給付
スウェーデン障害研究所
項目 | 内容 |
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発表年月日 | 2004年(平成16年)3月15日 |
備考 | 英語版 協力 北欧障害協会 |
本報告書は、日本障害者リハビリテーション協会の研究補助金により、平成15年度に実施した国立身体障害者リハビリテーションセンターおよび浦和大学との共同調査研究の成果報告である。
- Reference group:
- Finn Petren and Lena Wiklund, Nordic Cooperation on Disability (NSH)
- Erland Winterberg and Inger Kirk Jordansen, Danish Centre for Technical Aids for Rehabilitation and Education, Denmark
- Juha Teperi and Tuula Hurnasti, the National Research and Development Centre for Welfare and Health (STAKES), Finland
- Bjork Palsdottir, the State Social Security Institute, Iceland
- Tone Mork, the National Insurance Administration, Norway
- Hakan Ceder and Susann Forsberg, the Swedish Handicap Institute, Sweden
- Translation to English:
- Translator Scandinavia AB, Stockholm, Sweden
- Project coordinator:
- Anna Lindstrom, the Swedish Handicap Institute Sweden
はじめに
本報告は北欧諸国における福祉機器の給付をとりまとめたものであるが、2004年6月21-24日にオスロで開催予定の第20回国際リハビリテーション協会総会においても北欧障害者協会(NSH)により発表されることになっている。
本報告は2003年5月19-20日にコペンハーゲンにて開催された第1回北欧福祉機器会議(NAT-C)との関連でNSHにより作成された“Aktuellt i Norden - Nationella system for formedling av hjalpmedel”(北欧各国の福祉機器の給付システム)という報告に基づいて作成されたものである。
英語版の制作はNSHとスウェーデン障害研究所が担当した。英語版の制作は日本からの提案にもとづいており、SVERI(スウェーデン国際リハビリテーション協会)を通して伝えられた。制作費用は、国立身体障害者リハビリテーションセンターおよび浦和大学の国際共同研究開発事業として、日本障害者リハビリテーション協会から提供された。
本報告書の国別の記述は、デンマーク:リハビリテーション・教育用福祉機器センター(デーニッシュセンター)、フィンランド:国立福祉健康研究開発センター(STAKES)、アイスランド:社会保障庁、ノルウェイ:保険庁およびスウェーデン:障害研究所が、共通のテンプレートを用いてそれぞれがとりまとめた。序章では北欧の福祉機器分野の連携について概観した。
ストックホルム, 2004年3月
Finn Petren
Director
Nordic Cooperation on Disability (NSH)
目 次
- 1.序章
- 福祉機器における北欧連携
- 福祉機器の給付システム
- 2.デンマークの福祉機器給付システム
- 給付システムの政策と原理
- 福祉機器給付の原則
- 組織と責任体制
- 資金
- 政府の支援機能
- 3.フィンランドの福祉機器給付システム
- 給付システムの政策と原理
- 福祉機器給付の原則
- 組織と責任体制
- 資金
- 政府の支援機能
- 4.アイスランドの福祉機器給付システム
- 給付システムの政策と原理
- 行政規則と不服申し立て
- 組織と責任体制
- 資金
- 政府の支援機能
- 5.ノルウェイの福祉機器給付システム
- 給付システムの政策と原理
- 福祉機器給付の原則
- 組織と責任体制
- 資金
- 政府の支援機能
- 6.スウェーデンの福祉機器給付システム
- 給付システムの政策と原理
- 福祉機器給付の原則
- 組織と責任体制
- 資金
- 政府の支援機能
1.序章
福祉機器における北欧連携
公的資金による障害者への福祉機器給付システムは北欧諸国の障害者施策の基礎づけをなす。これは国際的にも独特なシステムであり、社会は共助の精神により資金を提供し、可能な限り障害を補償しなければならない、という原理に基づいている。
福祉機器分野での北欧連携には長い歴史がある。1977年に、北欧閣僚会議の下で障害者施策の連携が始まったが、福祉機器も最初の連携課題として取り上げられた。北欧諸国の福祉機器給付システムが今では多くの共通点を持っているのも、このような北欧諸国の緊密な連携体制が大きな役割を果たしてきた結果である。
北欧の福祉機器給付に関する連携は、当初から福祉当局者によって展開されてきたが、長年にわたりそれぞれの国の福祉機器給付を担当する国家機関ないしは同等の機関の間での緊密な協力に基づいて推進されてきた。それらは、デンマーク・リハビリテーション・教育用福祉機器センター(デーニッシュセンター)、フィンランドSTAKES(フィンランド国立福祉健康研究開発センター)、アイスランド社会保障庁、ノルウェイ保険庁、スウェーデン障害研究所である。協力の内容はさまざまであるが、福祉機器の試験評価、機器の購買、情報などが含まれる。福祉機器給付を担当する北欧諸国の国家機関および同等の機関の責任者達はヘルシンキにある北欧リハビリテーション技術開発センター(NUH)の運営委員会のメンバーでもある。このNUHは北欧障害協会(NSH)と姉妹機関である。
北欧諸国における障害者への福祉機器給付システムの特徴は、徹底した地方分権と、地方、地域全体、さらには国レベルまで、さまざまなレベルの機関が関わっている点にある。福祉機器への公的出費はその規模も大きく、数十億の桁に達する勢いであるため、専門性を発揮した効率の高い活動が厳しく求められている。しかしながら、この北欧連携は、各国の福祉機器施策を最高の質にまで引き上げ、長年にわたり重要な意味を持ってきた。
北欧連携の必要性は、1990年代初頭以来の欧州統合の展開のもとに強まってきた。北欧諸国は欧州統合の展開という挑戦に挑み、北欧連携を一つのプラットフォームとして意識的に利用し、欧州連携の中で集団としての影響力を形成し、それを欧州研究開発計画および福祉機器標準化の領域で役立てようとしている。
北欧における福祉機器の連携は発展し続けている。その大局的な目的は、北欧諸国が伝統的に有する福祉機器分野における質の高い要求水準を今後も維持しさらに発展させること、障害を補償するために新技術を利用する点における模範的地位を一層強めることである。
福祉機器の給付システム
北欧諸国の福祉機器給付システムは、既に触れたように、多くの共通の特徴を有している。中でも重要な特徴はこれらの事業が公的資金で賄われている点である。しかし、給付モデルや地方、地域、国レベル間のコスト配分には相違がある。唯一ノルウェーだけは全額国費による福祉機器の給付が行われている。コスト負担に関する責任は、社会の様々なセクター(教育とか労働)に分割されており、責任の範囲もまちまちである。
現行の給付システムは複雑でり、様々な機関の連携を前提としている。その複雑さゆえに、北欧諸国の福祉機器給付システムに関する本報告書を準備するに当たっては、その複雑さに挑戦せざるを得なかった。われわれは、相互比較のできる記述を可能な限り与えることを目的とした。
北欧諸国の福祉機器給付システムは、多くの観点で模範的である。しかし、問題がない訳ではない。この節を終るにあたって、各国が福祉機器分野で将来共通に直面するであろう課題を2、3指摘しておく。
情報通信技術の発展は福祉機器分野において、いわばゴールポストの位置を移動させるような影響を与えた。すなわち、その発展により、障害を補償する新しい手段の道筋を切りひらいてきたが、同時に、「福祉機器」と一般の人が必要としたり欲しいと思うような「汎用品」との境界に関する論議に油を注いだ。この論争は新しいものではなく、かなり以前には皿洗い機が話題になった。現在は、コンピュータ、携帯電話、テレビ電話、スマートハウス技術などが俎上に上っている。
障害者のための福祉機器と一般消費者向けの製品との境界に関する議論は、人々が何を自分で支弁し、所有しようと考えるのかという問題を浮き彫りにした。自分で支弁すべきものは何かという問題も目新しいものではない。この問題は別の観点からこれまでにも議論されてきたものである。情報通信技術分野が発展したために、三度目に問題とされたものである。ここで問題となるのは、各セクター、行政機関の境界を越えた協調に対する要請である。それにより施策の全般的効率が向上するばかりではない。とりわけ、個人の観点からも、できるだけの効率向上が求められるからである。
北欧諸国が直面している課題は、公的負担と利用者優先の原理を維持しつつ、福祉機器の給付を新しい基準に適合させることである。北欧連携と経験の相互交換の重要性は今後も続くであろう。
Finn Petren
2.デンマークにおける福祉機器給付システム
給付システムの政策と原理
デンマークの障害者施策は、連帯の原理、補償の原理、セクター責任の原理という3つの主要な原理に基づいているが、福祉機器の給付制度もこれらの原理に基づいている。
連帯の原理とは、人は誰もが互いに責任を有しているという考えであり、さらに、助けを必要とする人々の求めに応じて将来の生活を保障するための事業を実施することを意味する。従って、この原理によれば、障害者のための施策は公的セクターの責任において資金を提供すること、すなわち、税金で賄うことを意味している。
補償の原理は、障害者に対してその障害によって生じる不利な結果を補償するということを意味する。この「補償行為」としては、福祉機器、住宅改修、付加的な経費の補助や雇用の他、社会が障害者に提供すべきものを現実のものとすることである。給付に関して強調すべき点は、障害者は、障害がなかった場合に負担したであろう費用については自己負担すべきであるが、反対に、障害によって生じた付加的な支出に関しては障害者が負担すべきではない点である。
セクター責任の原理は、給付システムの背景を明確にするに当たっての出発点である。この原理は、福祉機器施策、サービス、機器の提供に責任を有する公的セクターは、障害者がそれらに確実にアクセス出来るようにする義務を負っていることを意味する。障害に関する行政は、単に社会省(Ministry of Social Affairs)のみの問題に止まるものではなく、教育省(Ministry of Education and Research)、労働省(Ministry of Labour )、文化省(Ministry of Culture)、住宅省(Ministry of Housing and Building)、保健省(Ministry of Health)など、他の多くの省庁にもまたがっている。従って、福祉機器分野では、福祉機器給付に対する責任の所在はニーズを抱えたそれぞれの行政機構にある。
福祉機器給付の原則
福祉機器の給付に関わる基本的法律は、サービス法(Services Act)として知られている社会サービス法(Social Service Act)である。この法律は、機能障害(impairments)を補償するさまざまな助成金を適用する場合に用いられる法律で、例えば、在宅用の福祉機器・生活用品の助成(サービス法97条、98条)、住宅改修助成(サービス法102条)、追加的介護経費助成(サービス法28条、84条)、乗用車購入助成(サービス法99条)などの事業が定められている。
既に述べたように、セクター責任の原理は障害者政策に共通して適用されており、福祉機器給付の責任も、サービス法によって法整備されている施策以外に、様々な法律によって、様々な省庁の責務として規定されている。具体的には、活力のある社会法(事業での福祉機器への助成)、治療通達(治療目的で一時的に使用する福祉機器の助成)、小・中等学校法(小・中学校や自宅学習に用いる福祉機器の助成)、高等学校法、技術短大法、職業訓練法など(それぞれの課程で必要な福祉機器の助成)、SPS法(高等教育で使用する福祉機器の助成)などの法律で福祉機器の助成を定めている。
福祉機器の給付基準や助成基準は、助成を定めた法律ごとに別々に決めていて、それぞれがまちまちな基準を定めている。ただし、全てにわたる共通点として、案件を決定する場合は、必ず対象となる障害者個人に即して個別評価を行うという点を指摘しておく。これらの法律はフレームワーク法であるために、サービスのレベルは市町村や県によって独自に決めることが出来る。市民が平等にサービスを受け、その権利が守られていることを確かなものにするために、別の公的機関で処理を受けることも可能になっている。
在宅用福祉機器
サービス法の範囲において、身体的或いは精神的介護を要する障害者のために、福祉機器および生活用品を市町村が助成するのは次のような福祉機器である。
- 障害による長期的な影響を緩和する福祉機器
- 日常生活を活発にする十分な効果のある機器
- 就労に不可欠な機器
県が提供する助成の対象は次の通りである:
- 視覚障害あるいは眼疾患のために視力の回復ができない人々への光学的補助器具およびロービジョン補助器
- 義手、義足
- 補聴器
- 特別なIT化福祉機器とそれらの使用を支援する福祉機器
- 身体障害者用自動車
県は特殊な分野の福祉機器の助成に責任を負っている。その理由は、市町村では、そのような特殊な事例が少ないために、そのための専門家を配置するわけにはいかないが、県レベルでは、特殊な分野についても専門家を育てるに十分な件数を扱うからである。
デンマークでは、提供可能な福祉機器リスト、あるいは福祉機器と見なせる製品リストは作成されていない。しかし、1998年6月の法改正により福祉機器が一般機器、障害者に特別の有用性を持つ機器、福祉機器の3グループに分類された。
一般機器とは、誰もが必要に応じて購入する製品を指す。具体的には、一般用ベッド、テレビ、マットレス、いす、電話などである。一般機器は助成の対象にはならない。障害者に特別の有用性を持つ機器とは、一般大衆向けに製造され広く販売されている製品の中で、障害者にとって特に有用な製品をいう。(例えば、発話障害者のためのコンピュータなど)。この種の福祉機器には50%の助成金が支給され、使用者の所有物となる。3番目のカテゴリーが福祉機器であり、その製品は身体あるいは精神の障害による影響を軽減することを目的として製造されたものである。
施設に入所している障害者が個人的に使用する福祉機器に対する助成金も、在宅の障害者に適用される規則に準じて支給される。特別施設や居住型施設などの施設に入居している障害者が共同で使用する福祉機器や用具類は施設に配分され、その利用は当該施設の裁量にゆだねられる。
福祉機器は必要な期間にわたり無償で貸与される。配分、審査手順は、日常生活用具の場合と福祉機器の場合の両方とも同じものが適用される。
教育訓練用福祉機器
教育訓練分野での福祉機器の助成に関する規則は、既に説明したように、関連法規に規定されている。しかし、ここで対象となる福祉機器は、利用者が教育訓練を受けるに不可欠なものに限られる。たとえば、特殊教育と特殊教育用機器に関する規則によれば、児童の発達を促すために教師が使用する特殊教育の教材と機器については、教師の必要性に応じて教師に給付するのは小・中学校の責任である。用途が教育訓練の場合は、福祉機器はそれがパソコンの場合であっても無償で支給される。教育訓練用の福祉機器に関しては教育訓練のために必要である限り、その期間内は利用者の費用負担は不要である。
私立学校の生徒および教師にも、公立の小・中学校の生徒と同様の特殊教育補助具の給付申請をすることができる。
教育用福祉機器は、特殊教育補助具の一部として、就学前の子供にも提供される。(小・中学校法4.1.節参照)
職場での福祉機器
就労に際して、あるいは就労中に支給される福祉機器に関しては様々な選択肢がある。まず、活力ある社会法(Act on active social policy)第78条によれば、求職あるいは就労中の障害者にとって不可欠な機器類(福祉機器を含む)を給付する責任は市町村が負い、職場において本人の障害を補償する機器が支給対象となる。障害者が失業基金に登録している場合には、市町村だけではなくジョブセンターも、その障害者に対して福祉機器の給付を行うことが出来る。ただし、市町村とジョブセンターの責任範囲、境界線が何処なのかという点は完全には明確ではない。
リハビリテーションを受けている人は、活力ある社会法(アクティブ法63条)に則って市町村からの福祉機器の給付を選択することも出来る。
治療と訓練のための福祉機器
福祉機器の給付に関する病院サービスの責任範囲は、短期間のみの福祉機器給付に限られると治療通達(Treatment Circular)に定められている。その場合は、患者の病状も長期的なものではない。このような福祉機器は臨時的福祉機器ないしは治療具とみなされ、病院が貸与する。
一般的な福祉機器の支援
以上の他に、別の分野においても福祉機器の給付に関する規則が多数ある。例えば、職場、余暇教育などの分野、更には、障害ごとに異なった福祉機器の分野などである。障害ごとの例では、聾者、聴覚障害者、言語障害者などのためのテキストテレホン、聾者のための手話付きテレビ番組やビデオソフト、盲あるいは視覚障害者のための録音図書や点字図書などである。
行政の規則
福祉機器の受給対象となる障害、受給のための要件を定めた法律以外にも、事案ごとに行政手続きを定めた法律がある。とりわけ、公衆安全行政法(Act on Public Security and Ad-ministration)は、行政当局が事例を扱う場合に守るべき市民の公的安全確保と福祉事案の行政手続きにおける基本原理に関係している。
この法律のガイドラインには、他の多くのことと同時に次のことが記載されている。まず、行政事務においては、ユーザーの実情に関する多面的なアセスメントに基づいて首尾一貫した支援を提供しなければならないこと。また、目的の達成度、変更の必要性、可能な対策について公式に記録を残すこと。専門家によるアセスメントは当事者の市民の協力を得て行うこと。その際に、障害者自身のライフスタイルと自己知識が、入手しうる情報の専門家によるアセスメントとの関連が明瞭に記載されたアセスメントであること。
言い換えれば、全ての要因をケースノートに記録しなければならない。事例の推移を文書化することが義務付けられており、行政文書にアクセスする市民の権利として重要であるとサービス法に規定されている。
苦情処理
利用者がサービス法に基づいた福祉機器の給付の決定や住宅改修に不満がある場合、各県に設置された社会サービス委員会へ苦情を持ち込むことができる。ここで、第三者の立場からの検討がなされる。ここでの決定は法的効力を持ち、県、市町村、および当事者の三者は下された決定を受け入れなくてはならない。
もう一つの苦情処理手順は、社会問題のための中央政府の苦情処理委員会(Social Appeals Board)を経由するものである。当事者の何れかが法的決定に不満がある場合、その事件は苦情処理委員会に提訴される。この場合、苦情処理委員会は、その事件を再評価すべきであるか否かを一方的に判断し、決定する。苦情処理委員会は、これらの概要を公表し、将来の事例のための全国的な判例とする。
市民は決定に対する不満をサービス法以外の法律に則って提訴することもできる。ある場合には、該当する自治体の委員会へ不服申し立てをすることもできるし、特別苦情処置委員会を立ち上げることも可能である。教育に関しては、特殊教育を専門的に取り扱う広域特殊教育苦情処理委員会(Complaints Board for Extensive Special Education)という特別な委員会がある。
組織と責任体制
セクター責任の原理は、福祉機器の給付と普及業務の責任を多くのセクターや施設が負うことを示唆し、かつ、その福祉機器を広範囲に行き渡らせる義務があることを意味している。このことから、多くの異なったセクター、例えば、社会福祉、学校、職業訓練、および、就業環境など、セクター毎による給付システムを同時に立ち上げなければならなかった。
サービス法による給付システム
サービス法によれば、市町村は市民に対して生活上の困難を回避するための助言と支援を提供する責任がある。市町村はまた、福祉機器および生活用品に関する助言と支援を提供する責任がある。市町村は、責任が県にある以外の福祉機器の申請を受け付ける。市町村は福祉機器を購入・リサイクルして提供するための福祉機器センターを運営している。しかしながら、福祉機器を民間の供給業者からリースする市町村がどんどん増えてきており、供給業者が機器センターの機能を果たすような傾向や、複数の市町村による総合的共同購入や共同の機器センター機能の設置などの傾向が現れている。
デンマークには274の市町村があり、地方分権的傾向が強く、市町村は、独自の規則を制定している。大規模な市町村は地域事務所に分けられており、各事務所が福祉機器分野の責任者を置いている。このような組織形態で福祉機器給付業務を推進するためには、高度な知識、専門知識、実務的訓練が必要である。
県(全国14の県およびそれと同等の地位にある2大都市)は、県の分担する機器の給付案件の取り扱いに加えて、市町村のケースマネージャーに必要な専門知識を助言し提供しなければならない。市町村のケースマネージャーは問題解決を図るために、県の福祉機器センターに専門的な支援を求めることができる。市町村の福祉機器担当者のためのコースを多くの福祉機器センターが提供している。県はこのような事項を扱うための様々な仕組みをもっている。しかしながら、共通して全ての県に置かれているのが福祉機器センターである。規模はまちまちである。民営化されたものもあれば、全ての市町村の福祉機器ウェアハウスを組織して県全体で機能させるのが伝統となっているところもある。このように、全ての県は、それぞれ独自のやり方でこの問題に対処している。
利用者は、自分の居住する県の福祉機器センターとコンタクトをとってあらゆるタイプの福祉機器に関する助言とガイドラインを問い合わせるという選択もある。
資金
障害を補償するために給付される福祉機器を始めとするサービスは、公的セクターから税金により資金が支給されるのが通例であるが、既に述べたように例外がある。例えば生活用品の場合は価格の50%を自己負担しなければならないし、特殊改造の自動車に対しては、無利子で資金を借りることができるが返済しなければならない。支払い義務があるのは直接的には助成機関であるというのが一般的原則である。
市町村と県は、福祉機器と生活用品の費用に関して、67歳未満の人々の場合は、50%ずつを負担し、67歳以上の場合は市町村が全額支払う。しかし、サービス法 が1998年に施行された時点では、以前に述べた通り、県には、光学的補助器具、義手・義足、補聴器、および、情報通信技術による特別な福祉機器に対する支給の措置権限と財政的責務とが付与された。.
それ以来、障害者団体から、自分が使う福祉機器と供給業者を自ら選択できるようにして欲しいとの圧力が増してきている。これは装着型の福祉機器(胸部補綴物、ストーマ用具、整形靴など)に限られてきた方式であり、利用者には現金が支給され、自分で業者の選定をできることを意味してきた。しかし、この助成には、当該福祉機器に対する処方箋が必要である。そのことにより利用者は専門家の指導を確実に受けるとともに、公的助成機関は当該福祉機器の機能と品質について確信を持つことができる。県、市町村と供給業者の間で契約書(供給者契約)を作成するときには、利用者代表が参加しなければならない。これは、法的な要請になっている。
個人用の福祉機器の運用に関して、電動車いす用バッテリーの費用など利用者自身による自己負担が増加しているのが最近の傾向である。
公的助成機関が福祉機器を購入し、所有している。その結果、市町村と県は(すでに述べた幾つかの例外を除いて)それぞれのウェアハウスを設置している。国には、福祉機器の購買を行うセンター機能も無ければ、福祉機器をまとめて所有する機能も無い。国・自治体購買サービス( National and Municipal Purchasing Service)は現在のところ限定された福祉機器についての共同購入の調整や協定のフレームワーク作成の業務を行っている。
福祉機器の申請に関して、予算を超過していることを理由に却下することは認められない。
サービス法Services Actの範囲外の福祉機器は、公的セクターの他の予算により予算化されている。
小・中学校で使用される福祉機器は、市町村の教育システムによって資金供与される。学校当局は、教室で必要とする福祉機器の要件を評価、支給する責任がある。もし、生徒が高度な支援を必要とする場合、県はその資金供与を支援する。例えば、もし生徒に著しい読み書きの障害(ディスレクシア)がある場合、その生徒の必要とする支援のアセスメントに基づいて必要な福祉機器、例えば、音声合成機能と関連ソフトウエアを備えたコンピュータなどを給付することが、学校当局の責任となる。逆に、高等教育に用いる福祉機器のための資金供与に関しは、教育省の教育基金の管理する資金から供与される。この種の目的のために毎年予算が計上される。病院による臨時的な利用、治療のための福祉機器の費用は、ほとんどが県の負担である。
福祉機器関連経費、身体・精神障害の成人(単位:100万デンターククローネ)
(1991-2000年は決算額、2001、2002は予算額)
年 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 |
---|---|---|---|---|---|---|
予算額 | 1942 | 2059 | 2148 | 2248 | 2237 | 2287 |
年 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 |
予算額 | 2248 | 2428 | 2390 | 2607 | 2538 | 2369 |
出典:デンマーク統計、資源に関する社会的ステートメント
政府の支援機能
市町村は福祉施策の全分野にいて指導・助言を提供しなければならない。
県は、利用者、市町村のケースマネージャーの双方に対して、専門的知識が必要とされる場合に指導・助言を提供する義務がある。福祉機器分野では、県は福祉機器センターによる助言の提供責任を果たしている。
福祉機器センターを補うために、大部分の県は特殊技術・コミュニケーションセンター(ハイテク福祉機器への助言提供)、ロービジョンセンター(弱視用具に関する助言)、および、聴覚研究所(聴覚補助器具に関する助言)を立ち上げている。
デンマーク・リハビリテーション・教育用福祉機器センター(デーニッシュセンター: Danish Centre for Technical Aids for Rehabilitation and Education)は、全国的な情報センターで、リハビリテーションと教育のための福祉機器に関する情報の収集と提供を行っている。このセンターは県連合体が運営しているもので、デンマーク国内市場に流通する福祉機器のナショナルデータベースの維持管理を行っている。
この福祉機器データベースは、センターのウエブサイトから無料でアクセスすることができる。市町村および県は、ケースワーク業務、在庫管理、支援業務、統計業務等を考慮に入れた福祉機器分野の自らのマネージメントのために、このデータベースを活用している。この観点から、このセンターは、この分野で活発な組織とともに国内協力、北欧内協力、国際協力に参加している。更に、このセンターは試験評価および標準化に携わっており、それにより、優れた安全な福祉機器がデンマークの市場で流通するように貢献している。
デンマークのアクセシビリティセンター(Danish Centre for Accessibility)は、もう一つの全国規模の情報センターで、企業住宅局(National Agency for Enterprise and Housing)の援助の下にある。センターの主な任務は特殊なニーズのある人々のためのアクセスに関する知識を収集・提示する事業を立ち上げることである。
同様に、盲・視覚障害研究所(Institute for the Blind and Visually Impaired)は県連合体によって運営される施設である。その業務は、盲人および視覚障害者に福祉機器に関する助言と指導を提供することである。また、同時に、これらの人々を対象とした福祉機器センターも運営している。
社会的問題のための中央苦情処理センターである苦情処理委員会(Social Appeals Board)の福祉機器分野での重要性が増してきている。1998年6月の法律改正により苦情処理委員会に実際的な調整機能が付与された。地方自治の発展とともに県の自立性が強まっているにも拘わらず、全ての市民が、デンマークの何処に居住しようとも平等に扱われることを確立しなければならない。この目的のために、苦情処理委員会は、委員会の決定を順次進行形で公表し、また、特定分野のケースワークを解明し、その結果を文書として公表している。
公的資金で運用されている知識センターは以上の他にも様々な活動がみられるが、それらは特定の障害を対象としているのが多い。これら知識センターは各分野で重要な役割を果たしている。
3.フィンランドにおける福祉機器給付システム
給付システムの政策と原理
フィンランドは、15年以上かけて中央集権型から地方分散型行政へと大きく変革してきた。その結果、市町村の自治権は非常に大きなものになっている。国は市町村の広範囲な法定事業への財政的支援を行うが、住民サービスの在りかたは市町村自身が決めることになっている。
2000年に、STAKES (国立福祉保健研究開発センター)が、保健センターおよび中央病院でのリハビリテーション医療における福祉機器の利用状況について詳細な調査を実施した。その結果、地域によって福祉機器の給付の仕方に大きな違いが有ることが判明した。保健センターの68%および中央病院の83%では、福祉機器の給付に基準を設けて制限している。“福祉機器”の定義に曖昧さがあるために、法解釈が市町村によって様々に行われてしまっていることも明らかになった。
フィンランドの障害者政策は北欧型福祉モデルに基づいている。法律が市町村に対して住民のための福祉サービスと保健管理を設定するように義務づけている。目標は、市町村の住民が貧富の差や社会的地位の違いによることなく、必要なサービスを得られるようにすることである。基本的には、税金収入が財源を支え、民間のサービスと市民組織の活動によってサービスが補われるというモデルに基づく。
リハビリテーションシステムについては複雑であるために、リハビリテーションのための協力体制に関して法律が制定されている。この法律は、福祉サービス、保健サービス、労働、教育担当の省庁、フィンランド社会保険協会(Social Insurance Institution of Finland)が協力して、リハビリテーションの基準を策定することを義務付けている。これらの当局者は他のサービスシステムとも協力することが求められている。
福祉機器給付の原則
リハビリテーション医療のための福祉機器
市町村あるいはその組合は、その地域あるいは組合の管轄する地域でのリハビリテーション需要を満たすように、ハビリテーション医療サービスの内容及び範囲を設定しなくてはならない。リハビリテーション医療サービスには、福祉機器サービスが含まれる。そのサービスとは、福祉機器の必要性の査定と判定、所有権をともなうのか単に使うだけかの判定も含めた福祉機器の給付、福祉機器の訓練とフォローアップ、機器の保守などである。(公衆健康法:Public Health Act, 66/1972 および、特殊医療管理法:Act on specialised medical care, 1062/1989)
リハビリテーション医療のための福祉機器には、医学的根拠により証明された機能障害を補償するように設計されたもの、障害者が日常的作業をのために必要な装置、用具などが含まれる。また、リハビリテーションに必要な健康管理用具や運動用具も含まれる。学校あるいはその他の場面(リハビリテーション医療規則:Regulation on Medical Rehabilitation, 1015/1991)で必要なリハビリテーション医療のための個人用福祉機器は、小・中学校あるいは高等学校(17歳未満)においては障害児童に支給される。
福祉機器はリハビリテーション医療の一環として貸し出される。ただし再利用が出来ない用具は受給者の所有物となる。
リハビリテーション医療のための福祉機器は無料である。(福祉サービスおよび保健管理における患者の料金に関する法律:Act on client fees in the field of welfare services and health care, 734/1992)。
責任行政機関:市町村保健医療センター、特殊介護
機器、家庭用器具、用具、住宅改修
障害者は日常活動のために必要とする機器類や家庭用器具あるいは用具を入手するための費用について、償還払いを受けることができる。その程度は、障害や疾病の程度により全額の場合、一部分の場合がある。
市町村は重度障害者の住宅改修や在宅用の福祉機器購入に要した費用に償還金を支払わなければならないが、その要件は、障害あるいは疾病の結果としてその改修や購買が日常活動に不可欠であり、また、施設でのケアの必要が無い場合に限られる。
住宅用福祉機器であって助成の対象となるものに、リフト、自動警報装置、据付型装置が含まれる。市町村も住宅用福祉機器を重度障害者の所有物とすることができる。(障害サービス支援法:Act on service and support due to disability, 380/1987)。
責任行政機関:自治体福祉サービス
重度障害者の職業リハビリテーションのための福祉機器
フィンランド社会保険協会(KELA)は国営の公的な保険協会である。この協会は重度障害者の就労と生計のための能力の維持・増進に要する高額もしくは特別仕様の福祉機器を給付することが義務付けられている。
“高額もしくは特別仕様の福祉機器”は、特別に高度な技術レベルを必要とすることを意味する。このような機器は申請者の障害の程度を考慮して個別に給付される。職業リハビリテーションは、福祉機器に対する要件を明らかにするとともに適合性を試験すること、使用法を訓練すること、使い方をチェックすること、そして必要なサービスを調達することが含まれる。
高等学校すなわち一貫教育学校の7年生から10年生に在学中の重度障害学生は、勉学に必要な福祉機器(たとえば、パソコンやロービジョンエイド)の支給を請求できる。このときの要件は、その機器がKELAが個別リハビリテーションプランとして承認した特別職業リハビリテーションの中に規定されていることである。(フィンランド社会保険協会によって準備されたリハビリテーション法:Act on rehabilitation arranged by the Social Insurance Insti-tution of Finland, 610/1991)
責任行政機関:フィンランド社会保険協会(KELA)
学校および授業で使用する福祉機器
障害児童および特別な支援を必要とする児童は、授業に参加するために必要な特別の福祉機器とサービスを無料で受ける権利がある。このような福祉機器は、パソコン、リフトあるいは特殊机である。(基本教育法:Basic Education Act, 628/1998)
責任行政機関:自治体教育サービス
障害者の就労支援
障害者の就労および職場復帰の支援のために、雇用者は職場の特別な配置のための資金助成が得られる。(雇用サービス法:Employment Services Act, 1005/1993)
責任行政機関:労働省
傷痍軍人向け福祉機器
財務省は、医療サービスの一部分として補装具、用具、福祉機器の給付とそのサービスと報酬、使用法の訓練に対して支弁の責務がある。
財務省は傷痍軍人に対し、仕事をする能力、住宅改修費用、および自宅でのサービスの需給、の少なくとも20%の補償を行わなければならない。
責任行政機関:財務省
交通事故、労働災害、職業病の後の福祉機器
保険会社は傷害保険法(Accident Insurance Act、608/48)に記載される職場における事故、職業病法(Occupational Diseases Act, 1343/1988)に記載される職業病、あるいは、道路交通保険法(Road Traffic Insurance Act, 279/1959)に記載される交通等のために必要となった福祉機器の費用を合意に基づき補償する。
責任機関:保険会社
管理規則とケースマネージメント手法
種々の法律は入手可能なガイドラインを示しているだけであって、様々な解釈が出来ることが明らかになっている。リハビリテーション・スタッフは、国家的ガイドラインの必要性を主張してきた。STAKESは福祉機器サービスの質を向上することを目指した勧告をまとめるために、様々な組織と共同で作業を行ってきた。社会保健省とフィンランド自治体連合が、それを2003年に出版している。
苦情申し立て手順
福祉機器サービスに関する決定への不服申立には明確なルールが決められており、福祉サービス、KELA、保険会社が対応することになっている。
その手続き手順は、保健医療サービスの手続き手順とは異なっている。保健医療サービスでは、福祉機器は医師の指示によるケアの一部を形成する。医師の指示によるケアに対する不服申立はできない。もし、自分の受けた福祉機器に満足できない場合、上席コンサルタントにメモを送る必要がある。上席コンサルタントの決定にも満足できない場合は、修正要求を保健管理委員会へ提出することができる。
事案は行政訴訟事案として行政裁判所への提訴も可能である。行政裁判所の決定に関する不服は行政最高裁判所へ提訴できる。
組織と責任体制
保健医療サービス
2002年末現在210の市町村がそれぞれの保健センターを設置しており、70の自治体連合(市町村の数は236である)が保健センターを作っている。これらのセンターはプライマリーケアと基礎的福祉機器(手動車いす、歩行補助器、排泄補助用具など)に関して責任を持っている。大規模な保健センターには福祉機器ユニットがつくられているが、小規模になると理学療法部によって運営される福祉機器チームが対応する。
福祉機器ユニットを備えた中央病院の数は21であり、電動車いすやリフト、ECS(環境制御装置)など高価で技術水準の高い福祉機器を扱う。さらに、眼科、聴覚科、肺科などすべての診療科が患者の福祉機器に対する要求に対して責任がある。福祉機器ユニットはトレーニングとその地区の福祉機器サービスの計画立案に責任がある。
プライマリーケアから特殊介護に至るまで福祉機器の給付は地域によって異なっている。医師が介護とリハビリテーション医療に必要な福祉機器の判定を行う。
社会サービス
市町村は障害者にサービスを提供するための福祉事務所をそれぞれ設置している。重度障害者は住宅改修、福祉機器の給付を受けることができるが、それらが生活上必要不可欠の場合に限られる。福祉サービスが申請に基づき費用を支払うが、場合によっては決定の前に医療機関の意見を聴取することもある。
フィンランド社会保険協会(KELA)
フィンランド社会保険協会(KELA)はフィンランド各地に400以上のサービス拠点を持っている。そのうち総合サービス事務所が258個所であり、支所が約130である。リハビリテーションの申請は障害者自身で行えるが、そのほか、保健サービス、労働事務所、教育部門、社会サービスなどの部分からの申請も可能である。さらに、他の補助のためにKELAに申請した医師の報告書に併せて請求を記載することも可能である。
申請書には、障害の状況とそれに伴う問題点が記載された医師の証明書を添付する必要がある。
学校システム
学校は学校や教室で使用する特殊福祉機器を障害児童に給付する義務がある。福祉機器を選択し、利用を勧めたリハビリテーション専門職がこれらの給付申請を行うことが多い。
労働サービス
雇用者は地域の雇用事務所に補助の申請を行う。申請は、疾病あるいは障害を受けた後労働市場に復帰してきた障害者を担当しているリハビリテーション専門職から提出されることもある。
財務省
法律では、戦傷や退役軍人関連の事項を担当するユニットが、兵役中に受傷あるいは罹病した人々、その配偶者、未亡人、親族に対して、兵役での受傷による損害の補償事務を行う。同じ法律により、内地の兵士、軍に勤務した職員、国連のPKFに参加した人々に対しても損失が支払われる。兵役での受傷に関する法律による補償の対象は、医療費、住宅改修およびリハビリテーションの費用、その他である。福祉機器は申請すれば給付されるが、申請者は本人、リハビリテーションあるいは介護専門職である。
資金
1990年代の初めに保健医療サービス費の総計が実質10%以上減少した。諸料金は1995年に上昇に転じた。1996年に、保健医療サービス費の総計が国民総生産の7.7%に達した。これは、OECDおよびEU諸国の平均よりわずか下まわっている。一人あたりの費用もOECD諸国の平均以下である(社会保健省、1999年)。
保健医療サービスの資金に関する限り、公的資金による費用の割合は減少してきており、保健医療サービスのためのコストを家計が負担する割合が増えている。1996年には、費用の約四分の一が家計の負担になっており、それはOECD諸国の中で最も高い値になっている。国の予算は減少してきているが、市町村が負担する費用の割合がわずかながら増加してきている。保健医療サービスにおける雇用者の慈善基金および個人保険の役割はわずかなものにとどまっている(社会保健省、1999)。
国および市町村
国は市町村が法定事業を執行するための資金援助を行っている。自治体による格差を平準化し、誰にでも同等のサービスが行き渡ることを担保するためである。国の分担金は市町村の収入の15%になっている(2001年の福祉サービスおよび保健費用の国の負担率は24.2%である)。市町村の支払いは税金収入、国の分担金、料金及びセールスによる収入によって賄われる。フィンランドの市町村には徴税の権限がある。市民税、固定資産税および法人税の一部が自治体収入の大よそ50%になる。平均的市民は収入の17.5%を市民税として納付している。福祉および保健医療サービスの費用の10%弱が料金収入によっている。
市町村はプライマリーケアと特別ケアに責任を持つ。これにより、救急対応、リハビリテーション、医療診断および治療が、全ての市民に行き渡るようにしている。
プライマリーケアサービスは保健センターによって提供される。全ての市町村は特殊医療が可能な病院を有する自治体連合に所属して地域病院を経営している。
フィンランド社会保険協会(KELA)
フィンランド社会保険協会が運営する健康保険は、私的保健サービス及び外来での投薬料を償還払いによって補填し、公的保健医療サービスを補完している。健康保険は、雇用者と保険加入者の支払いによって資金を得ている。国の役割は、健康保険基金に十分な資金があるかを確認することである。
フィンランドスロットマシン協会
フィンランドスロットマシン協会(RAY)は、法律によって運営される組織で、公衆にゲームを提供することによってフィンランドの公益事業の推進のために資金を獲得することがその目的である。フィンランドスロットマシン協会の利益は全額フィンランドの公的利益を目的とした非営利団体に配分される。
全国規模の障害者団体が、フィンランドスロットマシン協会の支援により福祉機器サービスを行っている。これらの団体は、会員に指導・助言を提供しており、福祉機器の講義やセミナーを開催している。フィンランド視覚障害者連盟およびフィンランド精神障害者協会(Communication and Technology Centre Tikoteekki)は、自ら福祉機器センターを設置しており、市町村の健康福祉サービスや保険会社およびKELAなどを対象に、サービス(たとえば福祉機器の必要性の評価)の有償提供、製品の貸し出しと販売を行っている。
国の財務省は障害のある退役軍人のリハビリテーションを担当するが、その事業遂行のためにフィンランドスロットマシン協会から資金を得ている。
利用者の影響力
福祉機器においては、利用者が中心的役割を果たすべきであると考えられている。社会保健省は、あらゆる福祉施策において利用者を中心に位置付けることを重視している。理論的には利用者の影響力が機能しているということが出来るが、実際に決定を行うのは保健医療スタッフであり、特に福祉機器の分野では保健スタッフが決定する
国および自治体障害者評議会(多くの自治体に見られる)および、障害者団体は、フィンランドの利用者の影響を促進する上で重要な役割の一端を担う。
政府の支援機能
現在、製品情報や福祉機器の国によるデータベースで目ぼしいものはない。SAI-LAB (医療福祉産業の業界団体)は病院や保健ステーションの調達担当部門のためのデータベースを維持するとともに、組織間の通信システムの維持管理を行っている。このデータベースには病院あるいは保健福祉分野で必要な製品情報および供給業者情報がある。SAI-LABシステムの対象は病院と保健ステーションだけである。
STAKESはApudataという福祉機器分野のサービスと組織に関するデータベースを保守管理している(www.stakes.fi/apudata)。
福祉機器の試験評価に関しては、北欧諸国とEU規則の合意に基づく試験以外には、体系的な福祉機器の試験評価を行っていない。医療庁は福祉機器の製造販売業者をモニターする義務がある。製造業者および代理店は潜在的危険について報告する義務がある。
いくつかの医療ケア地域が共同で製品を購入する場合もあるが、大部分の福祉機器センターは自ら見積書を取り価格同意書を作成している。
4.アイスランドの福祉機器給付
給付システムの政策と原理
アイスランドの障害者・高齢者施策の基本原則は差別禁止、補償、セクター責任の3つの原則に基礎を置いている。特に、国民が必要とするサービスを享受し、公的部門、特に国による税からの資金援助を受けられることを重視している。
アイスランドの法律によると、福祉機器の給付に責任のあるのは、保健社会保障省、社会省、教育・科学・文化省の3省である。このうち、保健社会保障省の役割が最も大きく、この省の様々な機関が福祉機器給付の実務に責任を負っている。この中には、社会保障法の執行に責任のある社会保障庁、ロービジョン及びリハビリテーション医療法に基づいたアイスランド・ロービジョン・リハビリテーション・クリニック、国立言語聴覚研究所、保険法に基づいた病院および施設がある。社会省の8つの地方局が障害者法に基づいた67歳以下の障害者行政を担当している。市町村は小中学校法に基づいて小中学校への責務を負っている。
社会保障庁は社会保障法ならびに福祉機器関連規則に基づいて福祉機器行政を担当している。福祉機器の要件は以下の三点にまとめられる。
- 人々の能力の改善
- 自助の機会の増進
- 障害者の介護の促進
社会保障庁は福祉機器出費に対する補助割合(たとえば50%、70%、100%)、特定限度額および両者の組み合わせ(たとえば90%、ただし上限を26000アイスランドクローネ:1クローネ=約1.59円(2003年4月))などがある。一般原則としては再使用可能な機器に関しては社会保障庁が購入価格の100%を支払う。
行政規則と不服申し立て
行政は、公的なケースワークの管理、情報および差別禁止に関する規制の責務を持つ。ケースワーク、ケースノート、文書記録などに関しては時間的枠組みが設けられているが、ケースワークの情報に関する権利については特別の定めがある。
社会保障庁の取り扱うすべてのケースについて異議申し立てが認められており、これには福祉機器に関する補助金額の決定も含む。これらを社会保障規制委員会が担当している。
組織と責任体制
福祉機器の給付に関しては様々なセクターからの多くの組織が関わっている。関連あるすべての分野が関わっていることが重要である。問題となるケースに応じて関連する組織は異なってくるが、利用者自身のほかにリハビリテーション、保健、学校、職場、福祉機器関連施設、ほかの組織が関わってくる。
社会保障庁の福祉機器センターが在宅障害者のための福祉機器に関する包括的責任を持つ。福祉機器センターは在宅の日常活動のための機器を給付するが、この中には運転補助用具、コミニュケーション補助機器、補装具(義肢装具並びに整形靴)、使い捨て用品(おむつ、ストーマ用具、導尿カテーテルと蓄尿袋など)、治療用機器(呼吸器治療用具、循環療法用具、注射用具など)がある。福祉機器センターはまた、情報、助言、ケースワーク、維持管理を含むサービス、再利用、契約、訓練などの責を負っている。さらに、たとえば肺と酸素療法のために病院との契約を結んでいるが、この種の特別なサービスも担当している。
購入契約を行う福祉機器は、歩行補助器、自走用車いす、ベッドと付属品、リフト、おむつとトイレ用品、義肢装具、導尿カテーテルと蓄尿袋、警報機、酸素療法用具、CPAP/BIPAP(睡眠療法の補助器具)および関連サービスなどである。
福祉機器の給付に関する規則は社会保険庁のウェブサイト<www.tr.is>上、hjalpartakjamidstod” (the assistive technology center)の項目で公開されている。規則は、給付に関する一般規則と定義、福祉機器分類に応じて定めた詳細規定の2つの部分からなっている。詳細規定には機器ごとに給付条件、社会保障庁の補助率が詳細に規定してある。
国立言語聴覚研究所は聴覚のリハビリテーションと言語聴覚障害者のための福祉機器に関する責務があり、情報、助言、ケースワーク、サービス、再使用購入の責務を負っている。
アイスランド・ロービジョン・リハビリテーション・クリニックは盲および視覚障害者のリハビリテーションと福祉機器に関する責務があり、情報、助言、ケースワーク、サービス、再使用購入の責務を負っている。
8つの地方局は、教育期間中の16歳以上および就労中の18歳以上の障害者のための福祉機器の給付を担当している。
病院と施設(養護老人ホームを含む)は、患者・入所者のための福祉機器の責務を負っている。
小・中学校は生徒の使う福祉機器を給付する。
以上のほか、特定の福祉機器に関する助言を受け持つ知識センターがある。たとえば、障害者のためのコンピュータセンターがあるが、これはユーザー団体、障害者団体によって運営されている。
資金
福祉機器は主として国の財政負担となってはいるが、小中学校における福祉機器は市町村の負担となっている。ほとんどの福祉機器は無料で給付されるが、利用者が部分的な負担を求められる機器もある。たとえば整形靴は自己負担率が10%であり、12ヶ月以下の使用期間の装具は30%が自己負担となっている。
福祉機器を給付する機関が機器を購入し、所有する。再使用可能な機器は、一度使った後変換しなければならない。
政府の支援機能
社会保障庁の福祉機器センター、国立言語聴覚研究所、アイスランド・ロービジョン・リハビリテーション・クリニックは障害者、聴覚障害者、視覚障害者、言語障害者などが福祉機器を活用するための知識センターを形成している。福祉機器の目的は、障害者・高齢者の社会参加を促進し、活力を持ってその役割を果たせるようにすることにある。これらのセンターは情報と訓練の提供を促進するとともに、その責務を果たしている。
社会保障庁は福祉機器給付のためのデータベースを最近開発している。これは、情報、統計、検索のニーズに対応しており、電子的接続も可能にする予定である。福祉機器のISO分類を給付システムおよびデータベースで採用することによって国境を越えた福祉機器給付システムの比較が可能となった。
社会保障庁の福祉機器センターは入手可能な福祉機器について、1994年以来貿易センター(Rikiskaup)と協力体制を築いている。この目的は、良質で安全な機器を適切な価格で供給するための契約を供給業者との間で締結することにあった。福祉機器センターは機器の採用について勧告することを目的とした関係者グループを作った。これは、福祉機器センター、リハビリテーション専門職および利用者からなっている。
社会保障庁の福祉機器センターは供給業者、利用者グループ、リハビリテーションセンター、保健センターなどと情報交換の会を持っており、情報の普及と交換をはかっている。
福祉機器の給付に関する北欧協力はアイスランドの福祉機器の発展にとっても重要である。
5.ノルウェイの福祉機器給付
給付システムの政策と原則
政府の障害者施策における行動計画は障害を次のように定義している。「障害とは、個人が自立と社会参加の継続に要する個人の能力と社会からの要求水準との不一致をいう。」(The Government’s action plan for people with disabilities 1994-1997, Department for Health and Social Affairs and the White Paper no. 8 1998-99: About the action plan for people with disabilities 1998-2001.)
障害者が遭遇する問題点:
・ 実際的な問題は、彼らが周囲から期待されるとおりに行動することができないため、重要な問題に関して自らが社会の隅に押しやられたと感じる点にある。
障害があるということを、社会が個人に期待する機能と、実際にできる機能との間のギャップとしてとらえることができる。従って、障害は環境依存的なものである。言い換えると、実際的な問題は、社会の要求と個人の可能性とのギャップに依存するということである。福祉機器、アクセス可能な環境、技術的計測、人的支援などは全て機能的観点からの社会の要求を減じるものである。つまり、それによって、人が一層自立的な生活が送れるようにするものである。環境がアクセス可能になればなるほど、人は特別な解決策を持つ必要性が一層少なくなる。
障害の影響は、個人の能力の増進、社会の要求の低減によって軽減することができる。訓練、教育、介護、支援により人の能力を高めることが可能である。社会からの要求を低減させるためには、周囲環境を改良しアクセシブルにする。
福祉機器と個人への支援は、上記要求と能力のギャップを軽減するために有効である。
福祉機器給付の原則
在宅用福祉機器他
“福祉機器”という用語は、“障害を軽減するあらゆる福祉機器および人間工学的解決策”を指す。すなわち、
- 身体に装着する福祉機器
- 訓練のための福祉機器
- 福祉機器
福祉機器は障害を補償することを支援するもので、コミュニケーションおよび移動の支援ツール、ロービジョン用具、補聴器、認知支援用具、活性化支援用具、情報通信機器、および障害者用改造自動車など、多くのグループが含まれる。
治療用具もかつては(国営の)健康保険の補償対象であったが、2003年1月1日より、これが保険制度(病院)に基本的に移管された。
福祉機器はリハビリテーション計画に含まれていなければならず、以下の支援を目的としている:
- 障害者の能力の増進
- 障害者の自立の促進
- 障害者の自己充足の増進
- 障害者の介護の促進
長期間(2~3年以上)にわたって障害を受けている人や、疾病あるいは損傷、身体的欠損により著しい障害に苦しむ人々は、健康保険から福祉機器のための補助を受けることができる。一時的に福祉機器を必要とする人々は市町村からのサポートを申請することができる。
さらに、福祉機器は、障害者の日常生活や在宅介護における実際的問題の解決のために機能強化が不可欠かつ適切であることが必須条件である。国の健康保険スキームは、当事者のニーズを満たす福祉機器の中で最適なものを提供する。
障害のない人も通常利用する福祉機器は給付の対象ではない。例えば、洗濯機、テレビ、一般的な台所用品など。しかし、これらの器具を適合させるために必要な補助具は対象となる。
障害者への福祉機器給付には多くの部署が関係する。たとえば、保健福祉省(SOS)及び保険庁、国民保険法がカバーする福祉機器に関して最大の任務を負っている。国民保険法第10条が福祉機器に対する補助を定めている。
それ以外の部署も福祉機器に関して重要な役割を担っている。運輸通信省および教育研究省の二つはその例である。前者は交通と遠隔通信サービスを、また、後者は教育、訓練、研究をそれぞれ所掌する。両省ともそれぞれがコントロールする公的分野での給付と情報に責任がある。
職場、学校で利用する福祉機器
健康保険制度は、職場での機器および物理的環境の改修を支援する。当該障害者にとって、職業リハビリテーションの一環としての就職や適切な仕事への復帰のために有効かつ必要であると認められた場合に補助が与えられる。“適切な仕事”とは、現状の身体的・知的能力の下で、マスターすることができる仕事のことである。
職場環境法Working Environment Act13条に従って、職場環境を障害者に適合するように力を注ぐことが義務である。にもかかわらず、障害のある被雇用者が、適切な仕事を継続するために、健康保険制度が支援することになっている。
適切な仕事への就労支援は、職業リハビリテーションの一部として支援されることが多い。このような例では、当人と地域労働事務所によって予め準備されたリハビリテーション実施プランが求められる。大学レベルでの教育を受けるために必要な福祉機器には、それが職業リハビリテーションの一部に含まれていなくても必要とする福祉機器への補助が与えられる。自営の場合でも、障害者に必要であれば商売を継続するために支援が与えられる。
運動、刺激、活性化支援用具
健康保険制度は、青少年の運動、刺激、活性化のための福祉機器を給付することができる。2003年1月から、26歳以下の障害者はこの種の支援を得られる。ゲームやスポーツのための特別な用具や補助具も給付の対象となるが、この場合障害者のために特別にデザインされたものであるか、あるいは、当該活動の継続に不可欠な場合に限られる。このような道具の中には、ゲーム機のスイッチ、障害者用スキーなどが含まれる。競技スポーツや通常のゲームのための用具、あるいはスポーツ用品は対象にならない。
他の目的のための福祉機器
健康保険制度では、他の目的のための福祉機器や支援も給付するが、補助を受ける福祉機器の数量や年間の時間数など分野に応じた条件が決められている。下記の領域に対しては特別の規則が定められている:
- 聴覚障害者のための補聴器および通訳
- 盲ろう者のための通訳とガイドヘルプ
- 視覚障害者のための盲導犬と対面朗読および秘書サービス
- 裁縫のための基本的型紙
- コンピュータ
- 学校での福祉機器
- 自動車および他の移動手段
- 標準型コンピュータ
小中高等学校で使用する福祉機器(学校用福祉機器)
義務教育中の児童生徒は学校での実際的な困難を軽減する福祉機器のための補助を健康保険制度から受けることが可能であり、また学校は個々の教科に関連する福祉機器を補助する。コンピュータにより困難さを直接軽減するような場合にはコンピュータが補助され、また、学校の授業にとって効果がある場合にも提供される。
コミュニケーションのための福祉機器
コミュニケーション機器は日常生活の福祉機器に関する規則に従って給付される。必要性の評価に当たっては、他の日常生活を補助する機器の場合と同様な評価を行う。つまり、利用者がそれ以外にはコミュニケーション手段を持たず、コミュニケーションの問題解決のためにはその機器が最も合理的な選択肢である場合に限られる。デジタルカメラを含むコンピュータ機器は保険庁が設定している特別ガイドラインに則して給付される。ガイドラインによれば、コミュニケーションに用いられるデジタルカメラの判定に関しては、補助具を用いない限り、コミュニケーションが極めて困難である場合に限られる。
標準型コンピュータへの補助金
標準型コンピュータへの支援に関する限り、2003年1月に規定が改定され、貸出制度から補助金制度に変わった。すなわち福祉機器センターから標準型コンピュータを購入するために一定額の補助金が支払われる。補助金制度で給付される装置は個人の所有物となる。利用者は4年間のサービス、サポートおよび保険を提供する業者であれば、自由に選定可能である。買い替えの申請は4年毎に限られる。
対象としている利用者は、複雑な問題を有せず、進行性疾病でもない障害者で、1年以上にわたり日常生活や学校生活で使用するコンピュータ装置を必要とする場合である。コンピュータを利用する資格はあるが補助金制度からはずれたユーザーは健康保険制度からローンの形で支援を受ける。
運営規則
ノルウェイでは、福祉機器の基盤として個別プランを活用するプロジェクトが始められ、今では標準的な手続きとなっている。個別プランを利用することによって、このようなプランを持つユーザーへの福祉機器給付手続きが大幅に簡素化された。プランの全期間にわたり、ユーザーはプランがカバーする福祉機器の貸与を受けることができ、その間、通常の申請は不要である。なすべきことは新規の福祉機器が必要であることを市町村へ伝えるだけである。健康保険がその用具を彼らに貸与することになる。
長期にわたり複雑なサービスを公的機関から受ける必要があるユーザーの場合は、市町村の保健サービスがそのためのプランを作成する。健康保険制度が個別プランの作成を開始できていない間も、健康保険制度はこのようなプランを福祉機器貸与の基盤として利用することが出来る。
不服申し立て他
もしユーザーが自分の要求が十分に考慮されていないと感じた場合、決定に対する不服を6週間以内に当局へ訴えることが出来る。その訴えが成功しない場合は、その当局の決定に対する更なる不服を保険控訴審判所(National Insurance Court of Appeal)に提出することが出来る。審判所は行政機構で通常の司法ではない。ここでの決定は通常の裁判所へ訴えることが出来る。
組織と責任体制
福祉機器による首尾一貫した解決を導くためには、多くの政府機関が協力しなければならない。ユーザーは多くの人々に助言を求める。これらの関係者は利用者との共同作業によって解決策が成功するために目的を共有する必要がある。
福祉機器の給付には様々なセクターと様々なレベルのスキルを必要とする。関係する全てのセクターを含むことが大切である。市町村が似たようなケースの経験を持っている場合には、問題が単純であっても複雑であっても、第一線の現場レベルで解決可能である。まれに生じる問題や、複雑な問題など、より高度な能力や特別なスキルを必要とする場合、彼ら自身のスキルが不十分な場合には、福祉機器センターからの指導・助言を得ることが推奨される。
自治体は市民全ての健康とリハビリテーションに対する責任がある。福祉機器の給付はそのような責任の一部分である。福祉機器センターは第二線のサービス機関であり、県域全体をカバーする知識および技術資源機関である。ノルウェイには福祉機器センターが19箇所あり、県ごとにそれぞれ1箇所である。これらのセンターは、保険庁により運営される国営システムの一部分である。全国自動車センター、SUITE(Sunaas情報技術センター)、NONITE(北ノルウェイITユニット)、全国盲ろう者サービスなどは、第3レベルの知識センターであり、これらもまた保険庁の一部分である。これらはいずれも福祉機器給付の個別分野の専門家であり、全ノルウェイで利用者、第一線および第二線のサービス提供者のために働いている。
福祉機器の給付
福祉機器が貸与されるためには、利用者には身体的であれ知的であれ何らかの障害に起因する実際的な問題が存在することが必要である。このため、ユーザーの包括的な状況と福祉機器給付の具体的目的に関する調査が必要となる。これは、治療プラン、介護プラン、訓練プラン、リハビリテーションプランあるいは職業リハビリテーションプランに含まれねばならない。
様々な可能性について検討したあとで一つ以上の福祉機器を選定する。専門員は福祉機器センターに相談し、試用の目的で福祉機器を借り出すことが出来る。
評価判定のために申請書を作成し福祉機器センターに提出する。申請書には十分に詳しくまた適切な情報に基づいた正当な情報を書き込むことが重要である。そうすることが、処理の迅速化に役立つ。
福祉機器センターが申請を承認すると、福祉機器が利用者のところへ送られる。しばしば、福祉機器は調整が必要であり、さらに重大な適合を必要とすることもある。これらの作業は福祉機器センターが行う。
福祉機器の利用に関する十分な指導、訓練、練習は、福祉機器そのものと同様に重要である、その福祉機器を推奨した専門職は、その用具のフォローアップと、利用者の問題解決への有効性の評価、訓練と調整の追加の必要性の評価を、利用者と共同して進めなければならない。
利用者は、サービスや修理が必要になった場合のコンタクト先を口頭と書面の両方で情報を受けなければならない。
プロセス評価として、ユーザーが有用な支援を得たかどうか、また、適切な機器が予定の日数で受け取ったかチェックしなければならない。
資金
福祉機器は国家予算で手当てされる。予算枠の中で、福祉機器は“支援予算”として計上される。予算は19箇所の福祉機器センターに配分される。保険庁がこの予算の執行責任を有する。
福祉機器の給付は、利用者個人の権利に基づく。このことは、もし、ユーザーが福祉機器の給付要件を満たすならば、たとえ予算を超過しても用具を提供する義務があることを意味する。
補聴器のようないくつかの福祉機器にたいしては、利用者が一部分支払う制度もある。
政府の支援機能
福祉機器供給契約部は保険局に所属する。この部は、ノルウェイの福祉機器供給業者との契約に関する責任を有する。福祉機器供給契約部が介入して供給業者との間で包括的な合意をするのは、手動や電動の車いすのような主要な福祉機器が含まれる場合である。包括合意の対象となる福祉機器は国家標準を形成する。包括合意の意図するところは、国全体で良質な用具を合理的な価格で入手可能とすることにある。
福祉機器センターは国内標準の中からそれぞれの地域標準を選択する。保険局は、ADL補助具のような小規模の福祉機器に関しては包括合意を求めない。この場合福祉機器センターが供給業者と直接契約を交わす。
関係者グループが様々な製品分野に関して立ち上げられている。関係者グループは、福祉機器供給契約部および福祉機器部からの職員、福祉機器センターの専門家および利用者自身から構成される。このグループの役割は、価格交渉をすることが望ましいと考えられる適切な製品を推奨することである。
保険庁は福祉機器データ-ベースを維持している。この“福祉機器データ-ベース”は2000年9月に発足した。ノルウェイは、スウェーデン、デンマークとともに、データベースの技術開発を行っている。このデータベースは現在建設中である。供給業者は様々な福祉機器に関する適切な情報を、このデータ-ベースに入力する義務を負うような方向で進められている。データは特別のテンプレートに基づいて入力されることになっている。
福祉機器の分野で5つの国内標準が制定されている。それらは、“フロントライン・トレーニング”、“福祉機器の緊急修理”、“救急車サービス活動”、“福祉機器試験評価”、“福祉機器センターのレンジワーク”である。これらの国家標準は福祉機器センターのサービスに期待されるサービスの質を記述している。
この国家標準を冊子の形式で出版することにより、市町村等は福祉機器センターの業務とそれに求められる需要を見出すようになった。その結果、センターで可能な業務、責務とすべき業務において現実的に期待できる事項を明確にした。
国家標準もまた、安定した国家サービスを開発するのに役立っている。これらの標準は、特定の分野やサービスについて、全ての県で共通する手続き実現する効果がある。
存在する国家標準は現在見直しが行われようとしている。同時に、福祉機器給付に関連するその他の分野についても標準化が求められている。
6.スウェーデンの福祉機器給付
給付システムの政策と原則
障害者施策の目的は、障害者が社会の成員として十分に活動できる社会を実現することにある。すべての人が平等であるということが社会の編成原理の出発点となるべきであり、障害のある市民も、全ての人とまったく同等の権利と義務を有するということである。このことは、スウェーデンの国会(Riksdagと呼ぶ)で決議された “Fran patient till medborgare” [患者から市民へ]という国の行動計画に極めて明確に表現されている。
この政策目標を達成するためには、品質の良い福祉機器を利用できることがその死命を制する。
福祉機器は障害者が以下の目的のために必要となるものである:
- 機能・能力の将来的な喪失の予防
- 機能・能力の維持・改善
- 日常生活を送るための機能・能力で、不全あるいは喪失したものの補償
福祉機器に関する全国的な分析が現在進められており、2004年中に完了する予定である。この分析のタスクは、職場、学校で使用されている福祉機器をレビューし、同時に、利用者への課金の原則や、ICT(情報通信技術)関連用具の原則などを検討することである。
福祉機器給付の原則
家庭での福祉機器、治療目的の福祉機器など
保健医療サービス法(§ 3 b および § 18 b)によれば、県と市町村は障害者に福祉機器を提供する義務がある。同法は、県および市町村の義務法であるが、個人に福祉機器を与えるための法律ではない。福祉機器の判定に対する不服を裁判所に申し立てる権利はない。
保健医療サービス法のもとで、県および市町村は、福祉機器と認定すべき製品や障害者に処方できる製品などに関する福祉機器の規則を独自に制定できる。同様に、料金体系も独自に制定する。従って、スウェーデンでは居住する地域によって給付される福祉機器の種類が違ってくる。
福祉機器は個人が次のようなタスクを自立してあるいは誰かの介助を得て実行することを支援する:
- 基本的な個人的ニーズ(着衣、食事、排泄など)
- 移動
- 社会とのコミュニケーション
- 自宅および近隣地域で必要な機能
- 経路の探索
- 自宅での日常生活の遂行
- 通学
- レジャーやリクリエーションへの参加
教育・訓練場面での福祉機器
学校・大学で使用される福祉機器には次のようなものがある:
- 個人用の福祉機器
- 教育補助具
- 基本的機器
学校・大学での個人用福祉機器(学校福祉機器)は、学生が授業に出席するために障害を補償する機器である。公衆保健当局、つまり県および市町村は、この給付に責任があり、保険医療サービス法が根拠となっている。保険医療職員、すなわち作業療法士、言語療法士および理学療法士は、適切な福祉機器を判定し処方する責任がある。
公衆保健当局が学校福祉機器の提供に責任があるのは下記の種類の学校である:
- 高等学校
- 短期大学、大学
- 国・市町村による成人教育
全ての学校は、保健医療サービス法には義務規定がないが、福祉機器を購入する義務がある。
公衆保健当局は、教育補助具および基本的福祉機器の給付および施設改修の義務がある。障害のある学生は、場合によっては特殊な教育補助具を必要とする。小・中学校、特殊学校、高等学校、国の監督下にある独立学校において、教育用福祉機器を入手し資金援助することはこれら学校の義務である。
学校と保健医療サービスとの責任分担は、公衆保健当局との合意内容に左右される。現在進行中の国の福祉機器に関する分析作業では、この境界の所在を含めて学校における福祉機器の調査を行うことになっている。
職場での福祉機器
障害者が就業を可能にする福祉機器は就労用福祉機器として知られており、県労働委員会および社会保険局の責任である。被雇用者の労働災害を予防するための機器は、雇用者の責任であり、職員のための福祉機器といわれている。
就労用福祉機器は、障害者が職場で特別に必要とする福祉機器を指す。職場は障害者が活動できるように改修しなければならない。職場での福祉機器並びに職場の改修に対する責任は、社会保険局とスウェーデン雇用局が共有する。社会保険局は雇用の継続のために必要とされる就労用福祉機器に対して責任がある。一方、スウェーデン雇用局は、障害者が実際に確実に就労できることに責任がある。どのような被雇用者であっても、働くのに困難な障害があったり、長期にわたる療養の影響を受けたり、リハビリテーションを続けていたり、職場復帰に支援が必要であったりした場合には、就労用福祉機器への資金援助を社会保険局から受けることが出来る。被雇用者、自営業者、雇用者のいずれもこれらの資金援助を受けることが出来る。
スウェーデン雇用局は職員が職種の切り替えや失業期間を終えて新しい職場に就くことを可能にするために必要な職場用福祉機器について責任がある。スウェーデン雇用局は同様に若い障害者が彼らの職業実習で必要とする福祉機器や職業訓練のために視覚障害者が必要とするトーキングブックや点字書籍を購入する費用に対する責任もある。
社会保険局とスウェーデン雇用局はこれらの場合にリハビリテーションサービスと福祉機器の専門家を契約することがある。
他に建物および自動車の改造に関する規則と支援システムがある。
組織と責任体制
福祉機器は、公衆保健当局すなわち県および市町村が提供するケアおよびリハビリテーション・ハビリテーションの取り組みの一部である。スウェーデンには21の県と290の市町村がある。
日常生活やケア・治療を促進するために、家庭、近隣の環境、学校で使われる福祉機器は、公衆保健当局、すなわち、県および市町村の責任である。県及び市町村にある様々な部署の保健・医療担当職員が福祉機器の処方を作成する。
県レベル
地域の保健センターあるいはプライマリーヘルスケアにおいて福祉機器が処方されるのは主として身体障害者である。これらのセンターには、福祉機器の必要性を判定し処方する医師、看護師、場合によっては作業療法士や理学療法士が配置されている。人々はしばしば聴覚センターやロービジョンセンターなどで診察を受けるように指示を受ける。
福祉機器センターの職員は、通常その県や市町村の人々の相談業務を行う。身体障害者、音声・言語障害者、認知障害者のための福祉機器の処方を行う。複雑な福祉機器やまれな機器の場合、あるいは福祉機器の適合を行う場合には相談業務も行っている。福祉機器センターは、情報提供と福祉機器の処方のための訓練を行い、人材を提供する。これらのセンターは別の重要な機能として、処方された福祉機器を給付する機能も有している。
聴覚センターおよび相当する施設は聴覚リハビリテーションを行う。そこでは、聴覚機能テスト、聴覚補助機器およびヒヤリング用具の試験、適合、処方、および用具使用者の訓練を行う。聴覚センターは聴覚障害に関わる情報の提供も行う。
通訳センターおよび言語サービスセンターは、聾者および言語障害者のための通訳業務を担当する。翻訳センターはテキスト電話の処方をすることもある。
ロービジョンセンターは、視覚障害者のリハビリテーションを行う。この中には、福祉機器の必要性に関する検査と判定およびリハビリテーションの開始、読書や移動のしかたの教育を行う。
整形外科の診療所は、県の仕事を代行する。これらは、医師による義肢装具および整形靴の処方である。
ハビリテーションおよびリハビリテーションユニットは、先天性障害、主として身体障害あるいは重複障害のある青少年、成人の治療を行う。福祉機器は彼らの治療の一部を成し、ハビリテーションのプロセスの中で、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士によって処方される。
肺クリニックや糖尿病ユニットなど、入院患者の介護に関わる病院においては、それぞれの領域の福祉機器に責任がある。
言語療法診療所では、発話・言語障害のある人々に福祉機器の処方を作成し、代替コミュニケーション訓練を行う。県によっては、コミュニケーションセンターを設置し、一層複雑なコミュニケーションを扱い、職員を訓練している。
高度なコンピュータ技術に基づく福祉機器の専門技術者が配置されている福祉機器センターあるいはコンピュータセンターを設置している県もある。
子供コンピュータセンター(Datateks)では、まだ読み書きの出来ない障害児が特別のコンピュータソフトウエアを使ってみることが出来る。彼らはソフトウエアと制御用機器を借り出して、自宅のコンピュータで用いることが出来る。
市町村レベル
市町村は在宅や市町村の施設などにおける高齢者・障害者の保健・医療サービスに責務がある。このことは、身体障害者をはじめとするリハビリテーションおよび福祉機器に対する責務も含まれる。市町村の中にはこの種の仕事に責任のあるOTやPTを採用しているリハビリテーションユニットを有するものも多く、そこでは福祉機器の処方と訓練を含み、またその需要予測といった作業を行っている。県の福祉機器センターと密接な協力関係がある。
特別施設のスタッフ、ホームヘルプスタッフあるいは親族が、処方された福祉機器が適切に利用されていることの確認作業を支援する。
多くの市町村には、ホームインストラクターがおり、視覚障害者、あるいは聴覚障害者を助け、彼らが福祉機器の使い方を実習するのを助け、より一層活発な社会参加を支援する。
看護師たちは医療担当の立場から、市町村保健医療サービス、並びにリハビリテーションと福祉機器の領域でサービスの質と安全にたいする責任をもつ。リハビリテーション医療に責任を有するスタッフを配置した市町村もある。
市町村は、在宅を可能にするために必要と判定された住宅改修に責務を有するが、その申請のためには作業療法士、医師あるいはこれと同等の医療職による証明書を必要とする。
処方の手順
福祉機器の処方は、保健医療サービス法に基づき、保健医療サービスのスタッフによって行われる。福祉機器の処方プロセスは、ハビテーションあるいはリハビリテーションの一部分であり、特別なハビテーション・リハビリテーションプランが必要である。このプランには福祉機器の処方、その評価の責任者、達成目標など解決策を含むプランが必要である。患者は可能な限りこの計画立案に参画しなければならない。
処方された福祉機器の70%ほどは65歳以上の老人に使われている。視覚補助機器、聴覚補助機器、装具が必要な場合には、患者はそれぞれロービジョンセンター、聴覚センター、補装具ワークショップに紹介される。このような施設で処方される視覚補助機器、聴覚補助機器、装具の数は非常に多く、県がこれらの福祉機器に責任をもつ。
福祉機器センターで処方される他の福祉機器(身体的障害、認知障害など)の処方に関しては、この責任は県と市町村とで分担する。福祉機器を処方する人――通常はOT、PT、ST、看護師であるが――は県あるいは市町村の職員であり、福祉機器はプライマリーヘルスケアサービスの中でスタッフにより直接処方される。処方担当者が機器に対する技能が不十分と自覚したときには福祉機器センターの福祉機器専門職員が相談にあたる。
ベンチレータやいびき防止のためのCPAP、吸入器などの福祉機器は、保健医療サービス法によって処方される。しかし、処方の手順は若干異なっており、病院の臨床医がこれらの福祉機器の処方とフォローアップに対して責任がある。
福祉機器の処方を行うのは、患者の必要度の評価に基づいて適合する製品を選定するスタッフである。彼らは、自分の属する自治体が決めた規則に即して適用可能な福祉機器の選定をおこなう。高価な福祉機器の場合には福祉機器の購入に先だって処方を承認するための公式の決定がしばしば必要とされる。
処方のプロセスは、対象となる福祉機器の分野や処方権限のある専門職の職種、保健福祉当局者に依存することはない。処方のプロセスは段階を追って進行するが、一人の同一スタッフがそのプロセス全体に一貫して関与することもできるし、一部分のみに関与することもできる。様々な段階、たとえばリハビリテーションプランの策定などにおけるそれぞれの責務を明確にしておくこと、一連のケア全体を通じて情報の転移が効率的に機能することが肝要である。
処方のプロセスは以下の段階を含む:
- 支援の必要性の評価
- 適切な用具を評価・適合・選択すること
- 必要があれば、特別な場合の適合について指示書を作成する。
- 訓練並びに情報提供の指示
- フォローアップと福祉機器の機能、便益の評価
処方プロセスの各段階における詳細な情報はスウェーデン障害研究所刊行の“障害者のための福祉機器の処方プロセス”に詳述してある。なお、この文献はスウェーデン語のみである。
苦情申し立て
公式には、福祉機器の処方に対する法廷への提訴の権利は存在しない。保健医療サービス法は保健医療行政官庁に対する義務法であるが、患者の福祉機器に対する権利は書かれていない。決定に不服な者は、県あるいは市町村の担当責任者あるいは患者委員会に訴えることができる。
利用者の影響力
福祉機器の運用に関しては、利用者の役割が大きくかつ強力である。その参加と影響力は、様々な様相を呈する。個人として参加し影響力を行使することにより、自分自身の福祉機器の処方に参加し影響を与えることができる。ここでは、利用者がこのプロセスに適切に参加できる機会が本来的に利用者に与えられているという事実に力点が置かれている。
利用者は障害者団体を通して影響を行使することもできる。福祉機器活動に関しては様々な連携の方法がある。県はコンサルテーション団体を束ね、障害者オンブスマンを組織している。そこでは、他の問題と共に、福祉機器問題に関して定期的に政治家や行政官と意見交換の機会を持っている。福祉機器センター、ロービジョンセンター、聴覚センターなど、福祉機器担当の各ユニットは、様々なグループ、利用者評議会などを設けて適切に問題提起が行われるよう取りはからっている。これらの組織は、単独であるいは福祉機器施策に関して、リハビリテーションと福祉機器に関連した様々なプロジェクトを行っている。
資金
福祉機器の費用は県と市町村が負担し、本来は利用者には無料になっている。責任の分担は組織と責任分担の条項に規定されている。利用者に個別に課金される福祉機器もある。たとえば、整形靴、鬘、補聴器などである。また、車いすのタイヤ、電池などの消耗品の支払いも同様に利用者負担である。
就労用福祉機器は社会保険庁、スウェーデン雇用庁、雇用主が支払い、利用者には支払いを求めない。
政府の支援機能
スウェーデン障害研究所は福祉機器とアクセスに関する障害者のための知識センターである。障害研究所は障害者の完全参加と平等を実現するため、品質の良い福祉機器の保障、福祉機器の効率的な給付とアクセシブルな環境の実現を目指している。スウェーデン障害研究所は研究開発を鼓舞し、福祉機器の試験評価をおこない、知識と方法の開発、情報と訓練を提供している。障害研究所のスポンサーは、スウェーデン政府、県連合体、市町村連合である。
障害研究所は
- 福祉機器、福祉機器活動、障害者のためのアクセスの開発、改良のために活動する。
- 知識と方法の開発に努め、保健経済の研究を行う。
- 市町村、県、中央政府、障害者団体、企業その他の団体に福祉機器の専門的知識を提供するとともに協力体制を築く。
- 新規技術を採用する研究を鼓舞するとともにデザイン・フォア・オールを促進する。
- 福祉機器製造業者に協力して新規福祉機器の開発を支援する。
- 安全な福祉機器の生産を目指して、試験と標準化に努力する。
- 情報提供と知識および経験を普及し、福祉機器における全国規模ならびに国際的協力関係を構築する。
- 公的保険当局者のために共同購入を推進し、高品質で安全な福祉機器を障害者に低価格で届けるとともに福祉機器の費用対効果を向上させる。
スウェーデン障害研究所は利用者向け、専門職向けの資料、書籍を発行している。HIDAは機器データベースで、インターネットからアクセスでき、福祉機器の情報を提供する。障害研究所は、福祉機器と障害に関する限り北欧で最大の図書館を保有している。