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30年のあゆみ

日本障害者リハビリテーション協会30年、戸山サンライズ10年

NO.10


5 研究・出版活動

(1) 調査研究活動

車いす工業標準に関する研究

 1967(昭和42)年夏、当時文部省管理局教育施設部指導課におられた佐藤平氏(現日本大学工学部教授)は、肢体不自由養護学校の施設・設備建築にあたっての、便所のスペース、廊下幅、洗面台の高さ、出入口の大きさなど、寸法を定める場合の適切な基準について研究していた。そして建物の機能面で密接な関係がある「車いす」にその基準をもとめることに着目し、調査に当たられたが、「車いす」には、形状、寸法など基準がないことから、早急にその基準を決めるべきであると考え、「車いす」の工業標準化を図るべく、工業技術院、厚生省社全局等と相談された。
 このことが発端となって、工業技術院では、「車いす」のメーカーも数社あるのみで業界の連絡もなく、各メーカーがそれぞれの経験と工夫に基づいて製作していたため、品質及び製品仕様もまちまちで部品等の互換性がないなどのことから工業標準化することとし、その工業標準原案作成調査について1968(昭和43)年4月、日本肢体不自由者リハビリテーション協会に委託した。
 日本肢体不自由者リハビリテーション協会では、同年度中に原案(車いす大型)を作成し通商産業省工業技術院あて原案作成報告を完了し、それが同省の諮問機関である日本工業標準調査会専門委員会で審議に付された。なお、児童用「車いす」については、翌年の1969(昭和44)年に日本肢体不自由児協会が委託を受け、同上の経過をとった。当研究の成果により、車いすの部品の互換性が初めて可能となったのである。
 車いす工業標準原案作成委員は以下の18名の方々であった。

  稗田 正虎  鉄道弘済会東京身体障害者福祉センター所長
  石田 肇   日本医科大学医学部助教授
  飯田卯之吉  国立身体障害センター義肢課長
  小川 新吉  東京教育大学体育学部教授
  木下 茂徳  日本大学理工学部教授
  佐藤 平   日本大学工学部専任講師
  小原 二郎  千葉大学工学部教授
  本多 純男  関東労災病院理学診療科部長
  小野 勲   全国肢体不自由養護学校長会長
  緒方 亮一  全国肢体不自由自児父母の会副会長
  北田伊佐夫  八重洲リハビリKK社長
  北島藤次郎  北島藤次郎商店代表者
  中川 隆   工業技術院電機規格課長
  鈴木 幸一  厚生省社会局更生課長
  今泉 昭男  厚生省児童家庭局障害福祉課長
  寒川 英希  文部省初等中等教育局特殊教育課長
  小池 文英  日本肢体不自由者リハビリテーション協会事務局長
  田波 幸男  日本肢体不自由児協会常務理事

身体障害者の適職に関する研究

 1972(昭和47)年に労働省の委託事業として、「身体障害者の適職に関する研究」を実施した。実施に当たっては、日本障害者リハビリテーション協会内に「身体障害者の適職に関する研究委員会」を設置し、イギリス、デンマーク、ベルギー、イタリア、フランス、スウェーデン、ノルウェー、西ドイツ及びオランダ各国の身体障害者雇用に関する法律について研究を実施し、報告書を作成した。

諸外国における身体障害者雇用対策の研究

 1974(昭和49)年に労働省の委託事業として、昭和49年度身体障害者職業能力研究「諸外国こおける身体障害者雇用対策の研究」を実施した。研究の内容は、オーストラリア、フランス、西ドイツ、アメリカ等の諸国における身体障害者の雇用法制、対策、実態などを調査し、報告書にまとめた。
 昭和49年度身体障害者職業能力研究委員は以下の7名の方々であった。

  安積 鋭二  国立国会図書館参考書誌部経済社会課長
  江田 茂   労働省職業安定局業務指導課長
  飯原 久弥  日本肢体不自由児協会常務理事
  小池 文英  日本障害者リハビリテーション協会常務理事
  小島 蓉子  日本女子大学文学部社会福祉学科助教授
  松井 亮輔  日本キリスト教奉仕団アガペ第一作業所長
  野田 武男  日本チャリティー・プレート協会常務理事

中途障害者の継続雇用の促進

 1978(昭和53)年に、身体障害者雇用促進協会の委託を受けて行った研究で、企業の就労者が障害者になった場合、処遇に困惑する事例が多く、その継続雇用の効果的な方策は明らかにされていないことから、中途障害者の中でも四肢の中途切断者の問題に焦点を当て、雇用の実態を明らかにすることを通して、継続雇用の促進に資することを目的とした。
 研究内容は、日本における四肢切断者の現状、企業における受け入れの実際を調査し、4事例を通して職場復帰の問題点と要件を紹介し、障害についての正しい理解並びに心理的更生、適正配置、作業環境の調整について取り上げ、雇用主側と本人側からの2方向から検討を行ったものである。
 そのほか、心理的な重圧、断端の痛みと幻肢の痛みといった切断者における諸問題、義手、義足の現状、義肢装着訓練、職場復帰訓練等について概説し、リハビリテーションの実際を紹介している。
 調査・研究委員は次の方々である。

  太宰 博邦  日本障害者リハビリテーション協会会長
  飯田卯之吉  国立身体障害センター附属補装具研究所長
  池田 昆   東京都心身障害者福祉センター職能科主任
  加藤 博臣  鉄道弘済会資料室長
  小池 文英  全国肢体不自由児施設運営協議会会長
  今野 文信  日本肢体不自由児協会業務部長
  斉藤三十四  神奈川県総合リハビリテーションセンター相談指導科主任相談員
  澤 治子   国立身体障害センター作業療法専門職
  澤村 誠志  玉津福祉センターリハビリテーションセンター所長
  高木 美子  雇用促進事業団職業研究所第2研究部第2研究室長
  長尾 哲男  神奈川県総合リハビリテーションセンター作業療法士
  原田 豊治  東京心身障害者職業センター主任カウンセラー
  三ツ木任一  東京都心身障害者福祉センター職能科主任
  宮田 国精  日本肢体不自由児協会事務局長
  宗石 文男  日本肢体不自由児協会常務理事

中途障害者の雇用実態と継続雇用の方策-脳血管障害者-

 1979(昭和54)年に、身体障害者雇用促進協会の委託を受けて調査研究したもので、脳卒中者の継続雇用には種々の要因がかかわりを持つことから、復職の実態、復職にかかわる身体的問題、心理・精神的問題、社会・経済的問題を明らかにすることにより、脳卒中者が職業生活を送る上での健康管理と心構え、脳卒中者を受け入れる場合の問題を検討することを目的とした。
 内容は、就労年齢にある脳卒中後遺症片まひ患者及び家族550名を対象に調査を行い、就業の実態、継続雇用の諸問題、職業生活上の諸問題を明らかにし、それぞれの事例における職場復帰の要件を考察したものである。
 調査・研究委員は次の方々である。

  太宰 博邦  日本障害者リハビリテーション協会会長
  石神 重信  リハビリテーションセンター鹿教湯病院副院長
  小池 文英  全国肢体不自由児施設運営協議会会長
  今野 文信  日本肢体不自由児協会業務部長
  島田 睦雄  雇用促進事業団職業研究所研究員
  種村 純   リハビリテーションセンター鹿教湯病院臨床心理士
  高木 美子  雇用促進事業団職業研究所第2研究部第2研究室長
  寺沢 節子  東京都心身障害者福祉センター職能科科員
  原田 豊治  東京心身障害者職業センター主任カウンセラー
  松田 勇   リハビリテーションセンター鹿教湯病院作業療法士
  三ツ木任一  東京都心身障害者福祉センター職能科主任
  横堀 英世  リハビリテーションセンター鹿教湯病院ケースワーカー

工程解析技法による職域拡大

 1980(昭和55)年に、身体障害者雇用促進協会の委託を受けて調査研究したもので、肢体不自由領域に工学的手法を適用することにより、職場の環境条件や作業方法の改善の方向を明らかにし、職域拡大の可能性を検討することを目的とした。長野県下の事業所を対象に作業解析により、作業仕様、動作系列別作業の現状、作業内容及び作業方式、作業状態図、改善着眼点・改善案等を調査し、調査対象職種でみる限り、「組立・手作業」、「機械加工作業」、「検査部門」に肢体不自由者の職域拡大を求めることができることが分かった。
 調査・研究委員は次の方々である。

  石川 弘康  福祉教育研究協議会事務局長
  倉田 昭三  鈴鹿工業高等専門学校教授
  田畑 米穂  東京大学工学部教授
  武田 嘉明  長野県立諏訪養護学校教諭
  山本 格治  東京理科大学工学部教授

聴覚障害者の就労実態と職場適応

 1981(昭和56)年に、身体障害者雇用促進協会の委託を受けて調査研究を行ったもので、従業員規模1,000人以上の企業に就労している聴覚障害者の仕事に対する意識、職場でのコミュニケーション、職場外での生活、また、その聴覚障害者を直接指導している人の意見などを調査することによって、特に大企業での聴覚障害者の安定的雇用に必要な方策を検討する基本資料を用意することを目的とした。
 調査・研究委員は次の方々である

  植村 英晴  聴覚障害者職業問題研究委員会
  桜井 英雄  聴覚障害者職業問題研究委員会
  松矢 勝宏  聴覚障害者職業問題研究委員会
  島田 久子  聴覚障害者職業問題研究委員会
  富川 哲次  聴覚障害者職業問題研究委員会

身体障害者に対応した移動システムの開発研究

 1982(昭和57)年、車両競技公益資金記念財団の助成を受けて研究を行ったもので、身体障害者、ことに歩行障害者の中で一般公共交通機関を利用することの不可能な者は45万9千人に達している。また全身体障害者の中で自宅の家屋内を自由に移動できない者は44万9千人を数えている。これら障害者に対する移動機器類の研究開発は日進月歩の状態であり、重度障害者の施設外生活及び外出は現在以上に多くなることが予想される。このような傾向にある時、単独行動中の重度障害者に対して緊急時下の移動体系の確立、移動行動に移る前の通報及び探索システムの開発、連絡の体系化は急務であろうと考えられる。
 そこで、わが国にはかかるニーズに対応できる設備、体系がないことから、ハード部分からソフト部分に至る体系的な開発を主眼としたものである。
 研究委員は次の方々である。

  木村 哲彦  国立身体障害者リハビリテーションセンター第一機能回復訓練部長
  島田 潤一  工業技術院電子技術総合研究所研究主任
  堤  賢    日本社会事業大学教授
  中島 尚正  東京大学教授
  近藤 英夫  国立身体障害者リハビリテーションセンター業務係長
  米本 清   国立身体障害者リハビリテーションセンター研究員
  玉木 修   日本障害者リハビリテーション協会事務局長

工程解析技法による重度身体障害者の職域拡大の研究

 1982(昭和57)年、車両競技公益資金記念財団の助成を受けて研究を行ったもので、運動機能障害者を対象とする作業標準の設定は、障害が重度化、重複化の傾向にあるわが国の実態からみて、即効薬としては現状の対策に応え得るものではないが、職業適性は機能の訓練及び就労適性訓練によって高められることが明らかになっているので、どのようなステップで作業方法の標準化を図るか、標準作業方法を設定した上で、機能訓練と就労適応訓練の結びつきを図るための基礎資料を得る点を研究の主眼とした。
 研究委員は次の方々である。

  荒井 元傅  全国精神障害者家族連合会事務局次長
  石川 博康  福祉教育研究協議会事務局長
  倉田 昭三  鈴鹿工業高等専門学校教授
  黒田 俊夫  黒田製作所所長
  今野 文信  日本肢体不自由児協会業務部長

 1982(昭和57)年には、このほか、日本児童調査会の委託を受けて国際障害者年日本推進協議会と共同で「各国における障害者に対する国内行動計画への取り組みについての調査研究」を行った。

障害者の余暇活動に関する調査

 1983(昭和58)年に総理府より依頼を受けて、障害者の生活構造、余暇活動の志向、余暇のあり方などについて調査したもので、行政、民間及び障害者団体などにおける活動の組織化の状況や個別的な活動の実態を調査し、問題点の整理を行い、もって障害者の社会参加の促進及び今後の障害者対策の推進を図ることを目的とした。
 余暇構造では、仕事の領域(自営か勤務か)に差があり、余暇の志向では約5割の者が何らかの活動をしているが、活動の対象が障害者同士がほとんどであり、健常者との統合した活動が望まれており、特に重要な点は、身近な地域で活動する場や利用しやすい施設が、また、情報の提供を望む声が大きいとともに、障害者でも色々な活動の可能性があることをもっとアピールしてほしいとの要望が強いことが判明している。調査委員は次の方々であった。

  植村 英晴  国立身体障害者リハビリテーションセンター生活訓練専門職
  加藤 博志  国立身体障害者リハビリテーションセンター教官
  亀和田文子  前国立職業リハビリテーションセンター職業評価員
  坂本 洋一  国立身体障害者リハビリテーションセンター生活訓練専門職
  下田 巧   全国特殊教育推進連盟理事長
  玉木 修   日本障害者リハビリテーション協会事務局長

諸外国の障害者対策の推進状況等に関する調査

 1985(昭和60)年、米国、イギリス、オーストラリア、オランダ、フィリピン、韓国、タイ、中国、スェーデン、インドネシア、ニュージーランドの11か国について、資料に基づき調査を実施した。

障害者の外出、移動における意識調査

 1985(昭和60)、総理府の委託を受けて行った調査で、調査委員は次の方々であった。

  植村 英晴  国立身体障害者リハビリテーションセンター生活訓練専門職
  加藤 博志  国立身体障害者リハビリテーションセンター教官
  斎藤 正明  全国身体障害者総合福祉センター
  坂本 洋一  国立身体障害者リハビリテーションセンター生活訓練専門職
  下田 巧   全国特殊教育推進連盟理事長
  玉木 修   日本障害者リハビリテーション協会事務局長

東南アジア地域リハビリテーション実情調査

 1985(昭和60)8月から9月にかけて、日本船舶振興会の補助金を受け、インド、インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイの6か国についてそれぞれ現地に赴き実地の調査を行った。調査は2班を編成して行われたが、調査者は次のとおりである。

  斎藤 正明  日本障害者リハビリテーション協会事務局長
  二木 立   日本福祉大学教授
  松井 亮輔  職業訓練大学校助教授

 このほか、1986(昭和61)年には、「障害者福祉及びリハビリテーションにおける国際協力のあり方に関する研究」として、開発途上国の障害者担当者を対象とした研究プログラムの設定、その効果的方法について、また「視覚障害者のスポーツに関する意識調査」として、国立視力障害センター(函館、塩原、所沢、福岡)の入所者を対象としたスポーツに関する意識調査をそれぞれ研究調査した。

外国人が見た日本の障害者政策調査

 総理府の委託を受けて、1989(平成元)年に行ったもので、日本で福祉関係の研修を受けたことのある外国人にアンケートを実施し、外国人専門家から見た日本の障害者の現状を分析し、今後の障害者対策のための資料を得るとともに、開発途上国の関係者を対象として実施される「障害者リハビリテーションに関する研修」の今後のあり方を検討するため、必要な基礎資料を得る目的で実施したもので、海外(主としてアジア地域)から日本で障害者福祉もしくは関連領域の1か月以上の研修を昭和60年から平成元年までに受けた人々、もしくは日本でボランティア等として障害者にかかわった経験のある人々250名を対象とした。

欧米における障害者対策の動向に関する調査

 総理府の委託を受けて、1990(平成2)年に実施したもので、米国、イギリス、ドイツ、カナダ、デンマーク、EC、オーストラリアの8か国における障害者対策の専門家に、それぞれの国の障害者対策に関する法制、雇用、教育、福祉、生活環境、自立生活プログラムの情報の提供を依頼し、欧米における障害者対策をまとめ、今後の日本の障害者対策のための資料を得ることを目的として行われたものである。

障害者のための国際シンポルマークに関する調査

 国際委員会の専門部会であるICTA(福祉機器)委員会の下、国際シンボルマーク検討委員会を設置し、シンボルマークに関して、国内における受け入れられ方、使用状況の実態を把握する目的で、1990(平成2)年4月から10月にかけて、1 シンボルマークに関する意識調査、2 シンボルマークに関する地方自治体における実情等の調査、3 シンボルマークに関する障害者団体における実情等の調査、4 シンボルマークに関する障害者個人における実情等の調査、を行った。なお、この4種類の調査には、国際シンボルマークのみでなく、世界盲人連合(WBU)のマーク、世界ろう連盟(WFD)のマーク、全国中途失聴難聴者団体のマークに関する調査も併せて行っている。
 一般市民が国際シンボルマークをどの程度認識しているか、については、調査委員が関与している大学、講習会等に参加していた学生、主婦、会社員等、不特定の日本人健常者に対し、集団面接による本調査を協力依頼したものであるが、全員が国際シンボルマークについては何らかの形で見ているものの、その理解の仕方は多くの場合誤っており、その他のマークについては知られてもいないし、理解の仕方も正しいものではなかった。地方自治体、障害者団体の調査結果を踏まえ、検討委員会では、1991(平成3)年度、この国内調査の結果をICTA委員会に報告し、アクセスに関する諸問題を世界的レベルで解決するよう努力し、また、国内での国際シンボルマークをめぐる諸問題については、当面、「国際シンボルマーク使用マニュアル」を作成、その正しい普及と啓発に努力している。
 国際シンボルマーク検討委員会の委員は次の方々である。

  委員長  野村 歓   日本大学理工学部助教授
  委員   高橋 儀平  東洋大学建築学科専任講師
        田中 徹二  日本点字図書館館長
        寺山久美子  東京都立医療技術短期大学教授
        中村 盛夫  弁理士
        野村 克哉  東京都心身障害者福祉センター聴覚言語障害科指導主任
        村上 塚磨  東京都心身障害者福祉センター視覚障害科主事
        村田 稔   弁護士

(2)長寿社会福祉基金事業による調査研究

障害者リハビリテーションに関する調査・研究事業

 社会福祉・医療事業団「長寿社会福祉基金事業」による委託及び助成事業として、1990(平成2)年から実施してきた調査・研究で、年度により調査研究項目に変更はあるが、リハビリテーションにおける広い範囲にわたる側面を取り上げてきている。

1990(平成2)年度
◎身体・聴覚障害者モデル事業

1 地域社会で障害者を支援する先駆的システム開発事業
(1)身体障害者福祉センターにおけるモデル的デイサービスの実施調査研究
 特にデイサービスのあり方について、A型センター及びB型センター8か所を抽出、その活動状況から現状と問題点を分析、評価した。
(2)在宅身体障害者の機能回復訓練及びレクリエーション・マニュアルの作成事業
ア 機能回復訓練マニュアルの作成
 機能回復訓練指導者を対象とした指導マニュアルを研究し、ビデオフィルムによる「機能訓練と楽しいスポーツ」(40分)を作成した。
イ 障害者レクリエーション・マニュアルの作成
 特に、福祉施設におけるレクリエーションのあり方について研究し、レクリエーション・プログラムの意義、基本的な手順及びレクリエーション運営の基本的な手順等を解説した「障害者レクリエーション・マニュアル」を作成した。

2 盲ろう重複障害者にかかる通訳者養成派遣事業
(1)訪問相談・通訳派遣事業
 在宅盲ろう者に対して、通訳のできる相談員を派遣して通訳・介助にあたるほカ㍉家族等からの電話、ファックスによる相談に応じる事業を実施した。
(2)通訳者養成及び盲ろう者の対話能力開発事業
 盲ろう者の外出や外部との連絡等を援助するため、手話、指文字、指点字、手書き文宇等コミュニケーション手段を習得して通訳・介助者の養成を行うとともに、盲ろう者同士のコミュニケーションを可能とする対話方法の訓練・指導を実施した。
(3)情報誌等発刊事業
 わが国初の盲ろう者問題専門誌「コミュニカ」を創刊し、関係諸機関に配布するとともに、広く一般の人々への定期購読を呼びかけた。また、定例講習会の情報として「交流会だより」を8回発行した。
(4)盲ろう者に関する調査研究事業
 当面、盲ろう者について調査が行われている資料の収集を行い、平成3年度からの実態調査事業の実施に向けて企画立案を行った。

3 聴覚障害者向け字幕ビデオの効果音表現に関する研究
 聴覚障害者が健常者と同じようにテレビ、ビデオの鑑賞を可能にするため、映像の事象場面をいくつかのタイプに分け、字幕表示の方法や効果のある音等について調査研究を実施した。

4 在宅重度障害者の自立生活に関する研究
(1)重度障害者地域生活調査研究
 脊髄損傷や脳性マヒといった重度の障害をもった人々がパーソナルコンピュータを駆使しつつ社会参加を目指して頑張り、この取り組みを力強く支えている心身障害者小規模通所援護施設「イサハヤアート」をモデルに、重度障害者の地域における自立と社会参加の一般的可能性を検証した。
(2)療護施設に生活する四肢マヒ重度障害者の「地域生活準備プログラム」の研究
 施設で取り組まれている地域生活へ向けた「準備プログラム」の内容を把握するため全国の療護施設を対象に調査を実施した。

◎全国身体障害者シンポジウム開催事業
 身体障害者のリハビリテーションを主題としたシンポジウムとセミナーを開催した。
1 総合リハビリテーション研究大会(11月17.18日、北九州市)
2 身体障害者リハビリテーション研究集会’90(9月6.7日、東京)
3 日本のリハビリテーションを展望する懇談会(3月21.22日、熱海)
4 医学的リハビリテーションのあり方(調査研究)

◎身体障害者の日常生活環境の向上に対する調査研究事業
1 モデル的「まちづくり」に関する調査研究
 公共建物、交通機関、道路、住宅等が障害をもつ人ももたない人もすべての人々が利用しやすいように配慮された「まちづくり」の推進に資するため、モデル的「まちづくり」の基本理念、事業の視点、整備の方向、整備構想案の研究を行うとともに、事業の推進システムについても研究した。

2 身体障害者等の社会参加を促進するために在宅者向け通所施設づくりに関する調査研究
「国連・障害者の10年」を記念した施設づくりに焦点をあてて調査研究を実施した。
(1)記念施設の理念
(2)記念施設の性格と機能
(3)記念施設の事業メニュー
(4)記念施設周辺の機能と性格
(5)計画地の概要と計画の基本方針 等

3 「住みよい福祉のまちづくり」実態調査
 わが国における今後の先進的な「まちづくり」の推進に資するため、これまで全国各地で取り組まれてきた「福祉のまちづくり」事業の実態を調査し、その事業評価を実施した。

4 外国文献調査
 海外における障害者の環境改善にかかわる法律制度を調査した。具体的には、米国における建築物と交通機関に関連する法律を中心に調査し、アクセスビリティ関連法制度を紹介できた。

◎障害者文化振興に関する実証的研究事業
 障害者の文化振興に関する調査研究事業として、次のとおり実施した。
1 手話・狂言研究開発
 「狐塚」、「伯母ケ酒」、「牛盗人」の三曲について、音声と手話との一体的演出について研究し、実際の手話狂言を公演した。
2 視覚障害者の触覚による文化振興開発を実施
3 肢体不自由者のアートバンクの展開に関する調査研究を実施

1991(平成3)年度

◎身体障害者の地域における先駆的在宅サービスモデル事業
1 障害者の社会参加への支援マニュアル作成普及事業
(1)在宅福祉における身体障害者福祉センター活動の研究
 センター活動事例について調査し、デイサービス事業及びスポーツ活動の現状と問題点について解明、今後の福祉センター活動の推進方法を提言した。
(2)社会福祉における機能訓練マニュアルの研究
 肢体不自由者で特に知的な発達障害と重複障害をもつ心身障害児・者を対象としたマニュアルの研究を実施し、遊びを含め基礎的な運動づくり、体力づくり等ボールを器材とした「機能訓練とボール」のマニュアルを作成した。
(3)社会福祉におけるレクリエーション・マニュアルの研究
 レクリエーション指導者養成カリキュラムのあり方について調査研究を行うとともにレクリエーション・カウンセリング方法についての研究を実施した。

2 盲ろう重複障害者通訳派遣事業
(1)訪問相談事業
 在宅盲ろう者に対する通訳者の派遣を積極的に行った。
(2)通訳養成及び盲ろう者の対話能力開発事業
 通訳経験者に対するフォローアップ講習として定例講習会、合宿講習会を実施した。
(3)情報誌の発行
 広報誌「コミュニカ」を2回、情報誌「交流会だより」を11回発行した。
(4)盲ろう者実態調査研究費
 盲ろう者より直接、生活の状況を聴取するためのアンケート方法について研究を行い「アンケート用紙」の原案をまとめた。
(5)地方都市体制整備事業
 盲ろう者に対するボランティア活動を開始しようとしている地域の体制整備への支援を実施した。

3 聴覚障害者向け字幕ビデオ効果音調査事業
 現代若者のトレンデイな話し言葉の字幕表現のあり方及びアニメに必ず伴うスピーディな会話と様々な疑似効果昔の字幕表現の追求を行った。

4 言語障害に関する啓発ビデオ作成普及事業
 失語症やマヒ性構音障害による言語障害者の自立とコミュニケーションの回復指導・訓練用ビデオの作成普及相談・指導を実施した。

◎全国身体障害者シンポジウム開催事業
 本年度も引き続き、リハビリテーションに関するシンポジウムとセミナーを次のとおり開催した。
1 総合リハビリテーション研究大会(12月5.6日、東京)
2 身体障害者リハビリテーション研究集会’91(9月19.20日、仙台市)
3 地域リハビリテーション・セミナーの開催(3月11~13日、熊本市)

◎身体障害者の日常生活環境の向上に対する調査研究事業
1 障害者に配慮した「まちづくり」の推進に関する調査研究
 この調査研究は、障害者に配慮した「まちづくり」の視点から対象地区として設定した「泉北ニュータウン泉が丘地区」の交通現況を整理し、当該地区に予定されている記念施設にかかる交通需要量を予測するとともに交通システム、特に、駐車場対策に関する調査研究を実施した。
 なお、交通現況調査の一環として「身体障害者の移動に関するアンケート調査」を実施した。
2 重度障害者の自立生活援助に関する調査研究
 自立生活の面からは、障害当事者の視点で生活実態の調査、分析と現行制度の調査を実施した。
  ○肢体不自由者の生活実態調査
  ○重度障害者の自立生活支援の実態調査
  ○在宅福祉の現状分析
  ○欧米における障害者の自立生活支援に関する調査
  ○日本における自立生活支援の提言
 社会参加の面からは、各地で作成されている「生活ガイド」の収集、調査と全国の交通機関の施設設備等の調査を実施した。

◎障害者文化振興に関する実証的研究事業
1 「石山完とその仲間たち」身障者の絵画展図録を作成した。
2 障害者の国際的芸術活動「ベリースペシャルアーツ」について研究を実施。
3 わたぼうし語り部芸術祭を開催。
4 「聴覚障害者の文字情報-字幕放送」について研究会を開催。
5 視覚的演劇(聴覚障害者の観劇を豊かにするため、音響、照明等舞台技巧)の開発研究を実施。
6 障害者の文化活動に関する検討(障害者のためのダンス・ワークショップを素材)。

1992(平成4)年度

◎身体障害者の地域における先駆的在宅サービスモデル事業
1 障害者の社会参加への支援事業
(1)デイサービスにおける身体障害者福祉センター機能のあり方の研究
 特に、在宅の重度障害者等を対象としたデイサービスのあり方について、実態を調査し、モデル的サービスのあり方を研究した。
(2)機能回復訓練とスポーツについての調査研究
 在宅障害者の機能訓練運動の充実を目的とし、特に車いす使用の障害者を対象とした機能訓練運動の指導書マニュアルを作成した。
(3)レクリエーション・マニュアルについての研究
 社会福祉におけるレクリエーションの進め方として、セラピューティック・レクリエーション(治療的レクリエーション・サービス)に立ったカウンセリングの事例マニュアルを作成した。

2 盲ろう重複障害者通訳派遣事業
(1)訪問相談事業・通訳派遣事業
 在宅盲ろう者の日常生活、社会生活の円滑化を図るため、要請に応じて相談・通訳者を派遣するとともに、本事業の啓発活動を進めた。
(2)通訳養成及び盲ろう者の対話能力開発事業
 訪問相談、通訳派遣事業の拡充を図るため、講習会内容の充実に努め、また、通訳技法の統一、相談指導技術の向上を図るため、全国大会として合宿講習会を実施した。
(3)情報誌等発刊事業
 広報誌「コミュニカ」を年3回発行し、関係者、関係機関へ配布した。
 情報誌「交流会だより」を毎月発行し、通訳者、盲ろう者の日常的な情報交換を補うよう努めた。
(4)地方都市体制整備事業
 全国各地における盲ろう重複障害者の社会参加と生活自立の促進を図るため、地域の拠点づくりへの支援、通訳人材の確保と養成への支援等の活動を積極的に行った。

3 聴覚障害者向け字幕ビデオ効果音調査事業
 時代劇で使われている言葉は、現代生活では馴染みがうすい。メリハリをつけ、味を出しながら聴覚障害者に喜ばれる字幕表現のあり方を追求した。

4 言語障害に関する啓発ビデオ作成普及事業
 3年度に引き続きビデオを通じての啓発活動を行うとともに、新たに教材ビデオとして「家庭でできる言語訓練」を作成した。
 さらに、在宅言語障害者等への相談事業、訪問言語指導を行うほか、新たに訪問指導者養成研修事業を実施した。

◎全国身体障害者シンポジウム開催事業
 平成4年度限りの事業で、国民会議の行事の一環として、障害者対策として関心の高い11テーマを選び各分野で活躍されている講師を多数招き、「テーマ別集会」を開催(12月7日、霞が関を中心に11会場)。また、総合リハビリテーション研究大会は12月15日、16日の2日間にわたり、大阪において実施、身体障害者リハビリテーション研究集会’92は、9月29日、30日の2日間、東京にて実施した。

◎身体障害者の日常生活環境の向上に対する調査研究事業
1 障害者に配慮した「まちづくり」の推進に関する調査研究
 近年、全国各地において次第に「福祉のまちづくり」の動きが見られるようになってきた。
 ことに、ボランティアグループ、団体、自治体等による障害者、高齢者向けの「街のアクセス」に関する案内書等は、数多く作られている。
 これらアクセスに関する資料等を全国的に調査・収集し、「わが街アクセスガイド・リスト」を作成して、全国の関係機関へ配布する等その利用促進を図り「まちづくり」推進の啓発に努めた。

2 重度障害者の自立生活援助に関する調査研究
 在宅重度障害者の生活実態を調査分析し、障害者が自立生活を維持していくに必要な支援システムの研究を実施した。特に福祉施設でトレーニングをうけた重度障害者同士が、地域で生活支援のためのセンターを組織し、地域住民と密着な連携をとることをとおして、自立生活を可能にしているかを評価、分析した。
(1)重度障害者の自立生活支援システムに関する調査研究
(2)障害者自立生活ホーム「トークハイム」(ビデオ作成)

◎障害者の社会参加への支援事業
1 障害者の社会参加への支援事業
(1)デイサービスにおける身体障害者福祉センター機能のあり方の研究
 特に、在宅の重度障害者等を対象としたデイサービスのあり方について、実態を調査し、モデル的サービスのあり方を研究した。
(2)機能回復訓練とスポーツについての調査研究
 在宅障害者の機能訓練運動の充実を目的とし、特に車いす使用の障害者を対象とした機能訓練運動の指導書マニュアルを作成した。
(3)レクリエーション・マニュアルについての研究
 社会福祉におけるレクリエーションの進め方として、セラピューティック・レクリエーション(治療的レクリエーション・サービス)に立ったカウンセリングの事例マニュアルを作成した。

◎障害者文化振興に関する実証的研究事業
 「国連・障害者の10年最終年記念事業」のなかで、「障害者の芸術祭開催」事業として実施した。
 「国連・障害者の10年最終年記念」国民会議の一環として、12月6日(日比谷公会堂、都庁ひろば)を中心に文化・芸術の祭典を国民的イベントとして開催した。

1993(平成5)年度

◎身体障害者の地域における先駆的在宅サービスモデル事業
1 言語障害に関する啓発ビデオ作成普及事業
 言語障害者の自立とコミュニケーションの回復指導・訓練用ビデオの作成、提供の他、相談・指導、指導者育成研修事業を実施した。
 また、4年度に引き続きビデオを通じての啓発活動を行うとともに、新たに教材ビデオとして「私たちの職業訓練」を作成した。

◎全国身体障害者シンポジウム開催事業
1 総合リハビリテーション研究大会(11月13日・14日、東京・全社協ホール)
 リハビリテーションの各分野で活躍する人々の研究成果の発表・討論を行い、障害者の福祉、リハビリテーションの向上発展の技法と方針を見いだし、障害者福祉の充実を図った。
2 福祉のまちづくり国際セミナー(9月13日・14日、神戸・国際会議場)
 高齢者・障害者が自立した生活を営むことができるように「福祉のまちづくり」に先導的な取り組みをしている各分野の専門家が「福祉のまちづくり」の啓発と進展を図るためにセミナーを開催し、情報交換、研究協議を行った。
3 地域リハビリテーション・シンポジウム(5月20日、横浜・パシィフコ横浜)
 高齢者・障害者が住み慣れた地域で、医療、保健、福祉等生活全般にかかわるサービスが受けられ、健康で明るい生活が送れるようリハビリテーションの各分野で活躍している人々が一堂に会し、「地域リハビリテーション」に関する研究発表と討議を行い、地域リハビリテーションの推進を図った。

◎身体障害者の日常生活環境の向上に対する調査研究事業
1 重度障害者の自立生活援助に関する調査研究
 在宅重度障害者の生活実態を調査・分析し、障害者の自立生活援助に関する課題を6項目に整理し、障害者が生活しやすい地域社会実現に向けた「障害者に関する地域福祉計画」づくりの具体的課題を明らかにしようと試みた。6項目は次のとおりである。「移動と介助」、「就労」、「レクリエーション」、「福祉機器の利用」、「住居、環境の改善」。
2 中途失聴・難聴者向け手話開発研究
 現在の手話は、音声語と対応していないので、中途失聴・難聴者が自分の持っている言葉をそのまま表現することができないため、手話の普及が遅れている。そのため、現在の手話の範囲、できるだけ日本語に忠実に表現する方法を研究し、中途失聴・難聴者に適した手話を開発し、コミュニケーションの円滑化と障害者の社会促進に寄与するため、「中途失聴・難聴者向け手話の研究開発」を作成、発行した。

◎障害者の社会参加への支援事業
 障害者のリハビリテーションに関する啓発事業
 障害者の社会参加に対する一般の人々の理解と認識を高めるための啓発活動を積極的に展開する「わかりやすいリハビリテーション」の作成、発行をした。

◎障害者文化振興に関する実証的研究事業
1 聴覚障害者向け「文字放送」に関する研究
 わが国の聴覚障害者に対する字幕放送は、文字多重放送によって行われているが、放送時間は週15時間程度ときわめて少ないのが実情である。わが国と欧米における字幕放送の現状、課題等について、調査・研究し、字幕放送の拡充・普及に向けた対応策を研究した。
2 地域における障害者の文化・芸術祭開催
 障害者がその障害を克服し、自らの生きがいと潜在能力を引き出すため、地域で演劇、音楽、絵画、書道等文化・芸術活動が行われている。これら全国各地の障害者芸術・文化活動の実態を調査し、モデル的事業について実証的研究を行い、障害者の文化・芸術活動の全国的普及と振興を図るため、大阪・兵庫・奈良・沖縄・東京で実施した。

(3) 出版活動等

定期刊行物

 月刊「障害者の福祉」の創刊
 国際障害者年記念事業として、1981(昭和56)8月、障害者福祉に関する総合的機関誌、月刊「障害者の福祉」を創刊した。現在、約3,000部を発行している。月刊誌刊行に当たっては、日本アイ・ビー・エム株式会社から助成金と職員の派遣があった。ここに記して改めて謝意を表したい。


写真  「障害者の福祉」

 創刊時の編集委員は次のとおりであった(50音順)。

  板山 賢治  厚生省社会局更生課長
  木村 哲彦  日本身体障害者リハビリテーションセンター第一機能回復訓練部長
  小池 文英  心身障害児総合医療療育センター所長
  小島 蓉子  日本女子大学教授
  今野 文信  日本肢体不自由児協会業務部長
  調  一興  東京コロニー常務理事
  若林 之矩  労働省職業安定局業務指導課長

書籍

 1981(昭和56)年 
  総理府・国際障害者年担当室監修 「国際障害者年関係資料集」
  厚生省社会局更生謀監修  「日本の身体障害者」
  厚生省社会局更生謀監修  「Rehabilitation Services for Disabled Persons in Japan」

1982(昭和57)年
  厚生省社会局更生課監修 「身体障害者相談手帳」
   「障害者の生活百科」
   (日本小型自動車振興会の補助を受け、「障害者の生活百科」(英語版)を翻訳刊行したもの)

1988(昭和63)年
  「アジアのリハビリテーション」
  「Rehabilitation in Asia and the Pacific」

1992(平成2)年
  「日本のリハビリテーション」
  「Rehabilitation in Japan」

1993(平成3)年
  「国際シンボルマーク使用指針」

映像関係

1984(昭和59)年
  「日本の障害者リハビリテーション」(PR映画・英語版)
  日本小型自動車振興会の補助を受けて、日本の障害者リハビリテーションを紹介した16mm映画、20分。

1986(昭和61)年
  「障害者とリハビリテーション」
  第16回リハビリテーション世界会議のためのPR映画。

6 「アジア太平洋障害者の10年」と展望

「アジア太平洋障害者の10年」の決議

 国連アジア太平洋経済社会委員会(United Nations Economic and Social Commission for Asia and the Pasific、略称ESCAP)は、1947(昭和22)年に設立された国連経済社会理事会の下部機構たる地域委員会の一つで、アジア太平洋地域の経済社会開発のため種々の地域協力プロジェクトを推進している機関である。1992(平成4)年4月に、中国の北京市で開かれたESCAP第48回総会では、1993年から2002年までを「アジア太平洋障害者の10年」とする決議を採択した。これは、1993(平成3)年バンコクにおいて開催した「国連障害者の10年」の評価に関するアジア太平洋専門家会議で「同10年」の活動を継続する提言が行われたこと、同年10月にマニラで開催されたESCAP第4回アジア太平洋社会福祉・社会開発閣僚会議で、1982(昭和57)年12月の国連総会で決議された「障害者に関する世界行動計画」の継続がうたわれたこと、などの経緯を踏まえたもので、今後のESCAP活動の新たな方向性を打ち出したものと言えよう。

アジア太平洋障害者の10年、 1993年-2002年


アジア太平洋経済社会委員会は、
 障害者に関する世界行動計画についての1982年12月3日の国連総会決議(37/52)と、国連総会が1983年から1992年を国連障害者の10年と宣言した障害者に関する世界行動計画の実施に関する1982年12月3日の決議(37/53)をはじめとする障害問題に関するすべての総会並びに経済社会理事会決議を想起し、
 国際障害者年の目的である「完全参加と平等」の効果的な実施とフォローアップにかかわる国際障害者年についての1980年3月29日のESCAP決議207(XXXVI)をも想起し、
 障害の危険が高齢化とともに高まり、また、域内各国で予測される社会の急速な高齢化に伴い、障害者の数が相当増加することに留意し、
 国連障害者の10年が障害問題への認識を高め、ESCAP域内での障害予防と障害者の更生の両面でかなりの進展をもたらしたものの、とりわけ、開発途上国と後発開発途上国における障害者対策に格差がみられることを認識し、
 1991年10月の第4回アジア太平洋社会福祉・社会開発閣僚会議が第2の障害者の10年への支持を表明したことに留意し、
 更には、アジア太平洋経済社会委員会によって1991年8月に開催されたアジア太平洋地域における国連障害者の10年の成果を評価する専門家会議が、ESCAP地域での現在までの成果をさらに確実にするために第2の障害者の10年が必要であると勧告したことに留意し、
 1.ESCAP地域で1992年以降、障害者に関する世界行動計画の実施に向けて新たな刺激を与えるとともに、同世界行動計画の目標、特に完全参加と平等の達成に影響している問題を解決するための域内協力の強化を目的として、1993年から2002年をアジア太平洋障害者の10年と宣言する。
 2.経済社会理事会及び国連総会に対し、本決議を承認し、世界レベルで本決議の実施への支持を勧めるよう要請する。
 3.すべての加盟国、準加盟国政府に対し、以下の諸事項を含む障害者の完全参加と平等を促進する施策の策定を目的とし、自国、自地域での障害者の状況をレビューするよう要請する。
(a) 経済・社会開発における障害者の参加を促進するための国内政策と計画の策定及び実施
(b) 障害者問題に関する国内調整委員会の設立及び強化。同委員会内での障害者、障害者組織の役割と適切且つ効果的な代表の協調
(c) 国際開発機関・NGOと協力し、障害者への地域に根ざした支援サービスの拡大と家族へのサービス提供のための支援
(d) 障害を持つ児童・成人への肯定的な態度を涵養するための特別な努力と障害を持つ児童・成人の更生、教育、雇用、文化・スポーツ活動、物理環境へのアクセスの改善
4.障害に関係する要素を各機関の活動計画に系統だてて統合し、本決議の各国内での実施を支援するために、関連するすべての国連システムの専門機関と機関にESCAP地域内で実施中のプログラム、プロジェクトの調査を行うよう要請する。
 5.障害者組織の能力と活動を強化するために、社会開発分野の非政府組織に、その経験と専門知識を活用するよう要請する。
 6.障害を持つ市民が潜在的可能性を完全に発揮できる手段を整備するために、政府機関と協力するとともに、自助能力を高めるために、先進国と途上国の障害者間の結び付きを強化するよう、障害者組織に要請する。
 7.以下の面で、加盟国・準加盟国政府を支援するよう事務局長に要請する。
 (a) 新「10年」での国内行動プログラムの策定・実施
 (b) 建築物、公共施設、運輸・通信システム、情報、教育・訓練、福祉機器への障害者のアクセスを促進するためのガイドライン、立法の策定と実施
 8.「10年」終了まで、本決議の実施について本委員会に2年ごとに報告し、必要に応じて「10年」の勢いを維持するための行動を本委員会に勧告するよう、事務局長に要請する。


「アジア太平洋障害者の10年」の推進

 「アジア太平洋障害者の10年」の決議を受けて、この10年を推進する組織づくりが国の内外において進められた。
 国際的には、「アジア太平洋障害者の10年」キャンペーン’93国際NGO沖縄会議により決議され、わが国においては、日本身体障害者団体連合会、日本障害者協議会(JD)、全国社会福祉協議会、本協会等で組織された「新障害者の10年推進会議」が発足した。
 障害分野NGO連絡会 1993(平成5)年6月、主要民間団体の関係者約20名が集まり、アジア地域においてリハビリテーション分野での国際協力・交流事業を行っている民間団体のネットワーク化が話し合われた。同年9月30日には、オブザーバー参加の4団体を含む18関係団体の代表出席のもとに、障害分野NGO連絡会(Japan NGO Network on Disability、略称JANNET)の発足準備会が開かれ、12月13日に開催された総会においてJANNETは正式に発足した。山口薫(日本精神薄弱者福祉連盟理事長)を会長に選任し、会長、幹事長を中心に活動を開始することになった。事務局は本協会におかれた。
「アジア太平洋障害者の10年」キャンペーン’93国際NGO会議
 「アジア太平洋障害者の10年」の決議採択後、初の国際的行動である「アジア太平洋障害者の10年」キャンペーン’93国際NGO沖縄会議障害者の社会参加に関する沖縄会議が、1993年10月18日、19日の2日間、沖縄市、宜野湾市において開催された。日本身体障害者団体連合会、日本障害者協議会(JD)、全国社会福祉協議会、及び本協会の4団体は、沖縄県実行委員会とともに実行委員会を組織し、会議の準備、運営に積極的に協力した。
 16か国及び六つの障害分野NGOから1,300名が参加したこの会議では、基調報告、カントリーレポート、シンポジウムなどの各セッションにおいて、本地域の障害者の社会参加を推し進めるための地域協力のあり方について積極的な意見、提案がなされ、会議での討議をもとに、「沖縄アピール」と民間活動についての「決議」並びに国連及び各国政府に対する「勧告」を採択した。
「アジア太平洋障害者の10年」推進NGO会議(推進会議)
 「アジア太平洋障害者の10年」を具体的に推進することを目的として前記沖縄会議の決議により設立されたもので、発起人には16か国のNGOや国際リハビリテーション協会(RI)、世界盲人連合(WBU)、世界ろう連盟(WFD)、国際精神薄弱者福祉連盟(ILSMH)、障害者インターナショナル(DPI)などの主要NGOが参加した。推進会議は毎年アジア太平洋地域でキャンペーンを継続して展開することを決定している。
 アジア太平洋リハビリテーション従事者行動ネットワーク(Rehabilitation Action Network for Asia and the Pacific、略称RANAP) RANAPシンポジウムが1993(平成5)年10月22~23日、韓国のソウル市で開かれている。また、プロジェクト協力事業としてインドネシアのソロ市で1993(平成5)年10月11日から22日まで開かれたCBR創業者ワークショップに協力している。
 このように、「アジア太平洋障害者の10年」を中心とするアジア太平洋地域でのわが国の期待される役割はますます大きくなっており、特にこの10年のプロジェクトに要する財源は任意な拠出金で賄われることになっているものの、わが国が最大の拠出国である。世界における情勢、わが国が置かれている立場を考える時、本協会の果たすべき責任は極めて大きいといえる。


主題・副題:

30年のあゆみ
日本障害者リハビリテーション協会30年 戸山サンライズ10年

発行者:
財団法人日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
TEL 03-5273-0601 FAX 03-5273-1523

頁数:123頁~140頁

発行年月:平成6年11月30日