音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

障害者の環境改善のためのガイドライン

Guidelines for improving access for disabledpeople

リハビリテーション・インターナショナル(RI)技術・アクセス・国際委員会(ICTA)

「障害」が障壁をつくるのではない。 人間がつくり出した環境こそが、障害者の自立を制限する障壁となるのである。

設計上のガイドライン

 都市計画や建築設計の指針を作成する者が、障害者のニーズを考慮することは重要である。 国によって経済的、社会的、文化的状況は異なり、建築に関わる法律や規制もさまざまであるが、 障害者のためにどのような指針を設けるかという原則は、異なるものではなかろう。 したがって、このICTAガイドラインは、厳密な建築基準を示すものではなく、建物を設計し、建築する者が配慮すべき、環境上の問題点を指摘するものである。

「障害者」とは

 聴覚や視覚に障害をもつ人たち、さまざまな理由で歩行が困難な人たち、 車いすを使用しなくてはならない人たちは、しばしば人間がつくり出した環境上の障壁から行動の困難を受ける。 障害をもつ人たちは、障害をもたない人たちと同じようにさまざまな活動に参加し、 行きたいところに自由に行くことを望んでおり、またその権利を有している。 しかし彼らがもつ障害に、われわれが社全的な障壁を上乗せすることによって、 その権利を妨げているのである。社会的な障壁-すなわち建物や人の態度による障壁があるために、 障害をもつ人たちは、たとえほかの人たちとともに社会生活に参加したいと望んでも、 自らの参加を制限し、孤立せざるを得ないのである。 社会的な障壁は、障害をもつ人たちがどの店に、どの図書館に、 どの郵便局に行くかを決めつけてしまう。また彼らがどの芝居、映画、コンサートに行くか、 どの学校や講習に参加するか、どの職業を選ぶか、さらに彼らが働く能力があるかどうかさえ決めつけてしまう。 つまり社会的な障壁は、障害をもたない人たちがしていることを、障害をもつ人たちがいつするか、 どのようにするか、あるいはするかしないかさえ決定してしまうのである。

何ができるか

 社会的な障壁の多くは不要なものである。多くの障壁は、建物やその周囲を設計するときに、 わずかな費用で、あるいは費用を全くかけずに取り除くことができる。また改築・修繕の際にも、 多くの障壁は容易に取り除くことができる。障害をもつ人たちにとって使いやすい環境は、 障害の有無に関わらず、すべての人たちにとって使いやすいものとなる。例えば、ベビーカーを押す母親、 視覚や聴覚に障害をもつ人たち、高齢者など、移動の困難な多くの人たちにとって利用しやすい環境となる。 このガイドラインには、もし設計の際に考慮されれば、車いす使用者など障害をもつ人たちの自立に大きな影響を与えうるような、環境上の主要な問題点が述べられている。具体的にどの部分を取り入れるかは、建物の大きさや、 どのような人たちが使用するかによって変わってくる。

建物の外部、周囲

  1. 建物の外部、あるいは建物の間にある歩道には、障害物があってはならない。 通路は車いすでの移動に十分な広さがなくてはならない。道の表面は滑りにくいものでなければならない。
  2. 段差や階段があるところでは、その存在を明示し、手すりをつけると同時に、 緩やかなスロープを設置しなければならない。
  3. 柵、溝の鉄格子(グレーチング)、標識などを路上に設置する場合は、 通行人の危険にならないよう注意を払う必要がある。障害者用の公衆トイレは、利用者が出入りでき、 使用できる場所に設置しなければならない。

駐車場、建物への移動

  1. 駐車場が建物に隣接していることは、車で移動する障害者(運転する者も同乗する者も)にとって極めて重要である。
  2. 駐車場は、車いすの出入りに十分な広さがなければならない。
  3. 駐車場から建物までの通路は、平らであるか、スロープが付いていなければならず、段差によってさえぎられてはならない。

建物の出入口

  1. 建物の出入口は、識別しやすいものでなければならず、また屋根の付いたものが好ましい。
  2. 建物の出入口は、平らであり、扉が開きやすく、車いすが出入りできる広さがなければならない。回転ドアや、枠のないガラス戸は危険である。

建物の内部

  1. 建物の内部では、床は滑りにくいものでなければならない。段差や階段のあるところでは、その存在を明示すると同時に、スロープを設置しなければならない。
  2. 2階建て以上の建物には、腰掛けた位置から操作できるエレベータを設置し、建物内の主要な場所にすべて移動できるようにしなければならない。エレベータは、車いす1台と人間1人が入れる広さがなければならない。
  3. トイレや電話などの設備は、その所在が分かるように表示し、また障害をもつ人に利用できるものでなければならない。

視覚、聴覚、触覚による配慮

  1. 建物をより使いやすいものとするには、建物内の表示を読みやすく、目立つようにし、文字や数字を突起させるか浮き上がらせるとよい。扉の上に名前や数字を表示する場合は、目の高さにしなければならない。
  2. 建物をより使いやすいものとするには、建物内にスピーカーや磁気ループを設置し、また聴覚による信号や合図は視覚による信号や合図と連結させるとよい。スイッチや環境制御装置は、車いす使用者の手が届く範囲に設置しなければならない。
  3. 視覚障害者に対する配慮としては、色の対比や床の材質の変化によって、建物内の道筋や場所を分かりやすく示したり、危険を知らせたりする方法がある。

安全に関する配慮

  1. 非常時に障害者が建物から避難できる態勢を十分に整え、それを宣伝することによって、多くの人々がその建物を安心して利用できるようになる。

その他の注意

  1. 障害をもつ人々は、建物などを利用するうえで、手すり、杖、車いす、盲導犬などの助けを借りることが欠かせない。公的な場所と呼ばれる所へ、障害をもつという理由で立ち入りできないことがあってはならない。


主題 : 国際シンボルマーク使用指針(42ページ~45ページ)
発行 : 財団法人日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052  東京都新宿区戸山1-22-1
TEL : 03-5273-0601 FAX : 03-5273-1523