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第3回国連障害者の権利条約特別委員会

仮訳 デイリー・サマリー第4巻第1号 2004年5月24日(月)

NGO 地雷生存者ネットワーク

午前セッション
開始時刻:午前10時28分
終了時刻:午後12時56分

条約の題名と序文に関する議論は延期された。第1条及び第2条の修正については、脚注8、第2条(a)及び第2条(c)の代替文言、また第2条への追加事項の可能性を中心に話し合われた。

議長を務めるルイス・ガレゴス(Luis Gallegos)大使が、第3回特別委員会(AHC)の開会を宣言し、総会(GA)及び作業部会(WG)の指示に従って交渉を始めるよう告げた。同議長は委員会に対し、この一連の過程に注目している6億の人々の期待に応えるよう、全力を尽くすことを強く求めた。議事案によれば、草案文書の特定の条文について協議することが求められている。各代表の発言は、簡潔かつ明確にし、5分以内にまとめなければならない。各国の意見或いは全般的な見解は、文書にして会議場で回覧しなければならない。WGと前回のAHCにおいては、NGOが重要な役割を果たしてきた。この第3回委員会での交渉は、WGによって行われた作業に基づいて進められる。加盟国の主張とNGOの主張とは、区別して扱われ、画面には国家代表による修正案及び提案のみが表示される。各部分の協議の後、NGOが見解を述べることができる。

議長は、文書は全体会議でのみ協議されることを強調した。更に、文書を現実のものにできるよう協力を求めた。

エジプトは、会議が午後6時以降まで続く場合、翻訳が作成できないとの懸念を示し、それ故6時以降は非公式会議を開かないよう求めた。議長は、殆どの非公式協議は午後6時以前に行うと同意した。

暫定議題A/AC.265/2004/L.1が採択された。作業の構成に関する草案A/AC.265/2004/CRP1が承認された。

アイルランドは、序文に関する協議を、まず一度条文を読んだ後、作業の最後に行うことを提案し、メキシコがこれを支持した。シエラレオネはその理由を尋ね、メキシコは、加盟国から提案された実質的な内容を初めに討議し、その後に本質的なことだけを含む序文に盛り込まれるべき概念的な枠組みを検討した方がよいからであると答えた。シエラレオネは、国連憲章の場合は、重要なことは憲章の中核をなす序文に記されているということを指摘したが、しかし、この問題を後で扱うという全体の意見に従った。

議長は、WGの調整役を務めたドン・マッケィ(Don Mackay)大使に感謝の意を表した。同大使はこの委員会に出席できなかったが、ニュージーランド代表を通じて声明を伝えた。大使は、WGの調整をすることができて光栄であったと語った。更に、WGは全ての発言を平等に考慮したこと、またWGは草案作成委員会でも交渉の場でもなく、それらはAHCのなすべきことであることを述べた。草案報告書には多くの意見が反映されており、脚注は主要な課題への案内役として役立てられる。WGに与えられた任務は複雑で、2週間という期間は短かったが、WGはその任務を果たした。文書の各部分に関する非公式協議の調整に当たったシエラレオネ、メキシコ、南アフリカ、コロンビア、韓国、南アフリカ人権委員会及び国際リハビリテーション協会(RI)に対し感謝の意を表する。WGにおける議論は、各代表が互いの意見を聞き、その過程を通じて学び合う、真に有意義なものであった。それぞれの意見は異なっていたが、全ての代表は共通の目的に向かって取り組み、固定観念にとらわれることはなかった。同大使は、このようなオープンさと柔軟性がAHCでも引き続きみられることを望んだ。更に続けてマッケィ大使は、この一連の過程が障害者(PWD)にとってアクセシブルであるべきだと主張した。特に法律用語が障壁となる可能性があるので、ニュージーランドは草案文書を簡単にした改訂版を準備した。これはUN Enableのウェブサイトに掲載されており、また参加者にも配布された。

中国は、WGの成果をたたえ、WGの報告書にはあらゆる局面に関する意見が反映されていると指摘した。この会議は実質的な交渉の始まりといえる。条約は障害者の経済的、社会的及び文化的権利とともに市民的及び政治的権利を含み、「障害者の生命及び発達の権利を保証する」包括的かつ総合的で、法的拘束力のある国際的な文書でなければならない。更にこの文書は、関係各者の義務について説明するものでなければならず、またそれによって権利と手段とが結びつけられる。従ってこれには、機会平等、貧困撲滅、社会保障制度、雇用機会及びバリアフリーな環境などの実現のような、条約の目的を達成するための経済的及び社会的政策に加え、立法上、行政上及び司法上の措置も盛り込まなければならない。またこの条約では、先進国と発展途上国との間の格差を考慮する必要があり、条約の重要な部分として国際協力が奨励されるべきである。関連する他の国際条約をモデルにした専門委員会による監視も行う必要があり、その際には条約を遵守しているかどうかに関する各国の報告書が検討されることになる。

ホセ・オカンポ氏(Jose Ocampo)は国連事務総長に代わって発言し、WG/AHCの活動に感謝の意を表した。そして社会的進歩の価値とより高い生活水準、また全ての人のための人権について語った。20年以上もの間、国連は障害者の完全平等に関わってきた。1982年の障害者に関する行動計画への取り組み、及び1993年の障害者の機会均等化に関する基準原則は、焦点を社会福祉的アプローチから人権を基本としたアプローチへと変換する上で役立った。社会こそが障害者に対するバリアを作っているのを見て、国連という国際的コミュニティーは、世界の6億人の障害者に変化をもたらすような条約の必要性を認識したのである。NGOや法律専門家、障害者、そして各国政府は、AHCに先立ち報告書の作成に尽力した。条約の目的は、包括的な社会の発展のための基礎を提供することである。事務総長は会議の成功を期待していると述べた。

オカンポ氏は、続けて自身のコメントを述べた。発展途上国の問題は、我々の気をくじくものである。障害者の80パーセントは発展途上国に住んでおり、問題の解決には貧困撲滅と社会統合の両方に焦点を当てる必要がある。同氏は参加者に対し、人権と社会的な発展とを結びつけることで、最も取り残されているグループにも手をさしのべるよう奨めた。

第1条 目的

コーディネーターが第1条に関する協議を始めることを告げた。
第1条:「この条約は、障害のある人がすべての人権及び基本的自由を完全に、効果的にかつ平等に享有することを確保することを目的とする。」

バーレーンは、参加者に条約の題名を検討するよう求め、「障害者に関する国際条約」とすることを提案した。議長は、題名は後に議論されると述べた。

韓国は、障害がある女性について、障害がある子ども達に関する条文と同様な別の条文を設けることを求めた。そしてこれをどのように行うかについては柔軟性を持って対処するとし、同国が提案する文言を配布すると述べた。

アルゼンチンは、「この条約は、障害のある人の権利を保護し及び促進することを目的とする。」という脚注8の代替文言を支持すると述べた。このような文言は、条約の目的が義務であることを反映するものである。

アイルランドはEUを代表して、第1条は短く、要を得たものにするべきであると強調した。そして「効果的」という言葉は意味が分からず、また「完全かつ平等に」という文言に比べて責任が少ないように思えるのでこれを削除するよう提案した。

南アフリカは、第1条は序文の一部を繰り返し説明しているので、くどいのではないかと提案した。そして目的の部分を、「条約は障害のある人の権利を促進し、保護する。」とすることを提案した。

イエメンは、題名を短くしなければならないというバーレーンの意見に同意した。第1条では、人権の享有と促進に付属する義務について言及すべきであるとした。

メキシコは、脚注8の代替文言を支持したが、それを更に次のように修正するよう求めた。「この条約は、平等と公平という普遍的な原則に基づき、障害のある人のすべての権利と尊厳の完全な享有を促進し、保護することを目的とする。」

中国は、第1条と脚注8の文言に関して、メキシコ、アルゼンチン及び南アフリカに同意した。

アイルランドは、提案されたいくつかの代替文言よりも、WGによる草案中の文言の方を支持した。これは、「障害のある人の権利」では、障害者が健常者とは違った一連の権利を持っているかのように聞こえるからである。そうではなくて、障害者も他のすべての人達と同じ権利を持つ。しかしこれらの権利を享受する機会を認められていないのである。

バーレーンは、国際協力について第1条の中で触れるべきであると述べた。

エジプトは、「この条約は、障害のある人がすべての人権と基本的自由を、平等かつ完全に享受することを保証することを目的とする。」という文言を提案した。

ロシア連邦は、現在の形式の、草案文書中の文言を支持した。

インドは、障害者がしばしば権利を享受することを阻まれている点を指摘し、「障害のある人に対する差別を撤廃するよう努力することにより」という文言を追加するよう提案した。

日本は、第1条の原案にある文言は序文の内容と同じなのでくどい述べ、これは序文に関する議論の後に検討すべきであるとした。日本は脚注8の文言を支持した。条約は新たに権利を作るものではないが、条約によって合理的配慮のような、他の人権条約には含まれていない比較的新しい概念をいくつか紹介することになるのは確かであると加えた。

ヨルダンは第1条の原案にある文言を支持し、この文言は明確で、差別という言葉を加える必要は全くないとした。国際協力は第1条で触れる必要はないと述べた。

エルサルバドルは脚注8に対する支持を表明した。これは人権の促進と保護を含み、また社会的発展も含むからである。

モロッコは、インドの先の提案に加えて、「障害のある人に対するあらゆる形態の差別を防ぎ」という文言を追加することを提案した。
中国は、障害者の権利は人権であり、新しい権利は何も含まれないと述べた。同様に、女性と子どもも他の人々と同じ権利を持つが、それぞれに関する条約によって別の権利を保障されているわけではないと指摘した。

イエメンは、障害者は他の人々と同じ権利を持っているから人権を必要としていないというのは非論理的であると述べた。もし障害者がこれらの権利を享受しているなら、この条約は不要になるであろう。また国際協力を奨励し、差別を撤廃する必要もあるとした。

タイは、「確保する」という言葉を「促進し保護する」という文言に替えるよう提案した。すると次のようになる。「この条約は、障害のある人がすべての人権及び基本的自由を完全に、効果的にかつ平等に享有することを促進し、及び保護することを目的とする。」もしこれが不可能なら、脚注8を受け入れると述べた。

マリは、まず題名について同意することなくしては、目的について同意するのは難しいであろうとの考えを述べた。現在の題名では、障害のある人の権利及び尊厳の保護及び促進と謳っている。それ故、同国は脚注8を支持する。

バチカンのローマ教皇庁のローマ教皇庁は、参加者は序文に関する議論を後に回すべきであるが、第1条は序文と結びついており、決して序文に相反することがないようにしなければならないと指摘した。

メキシコは、差別の撤廃と国際協力の促進は条約の本論の中で基本的なことであるが、必ずしも第1条に入れる必要はないと述べた。そして次の文言を提案した。「本条約は、平等と公平という普遍的な原則に基づき、障害のある人のすべての権利と尊厳の完全な享有を促進し及び保護することを目的とする。」

ヨルダンは次の文言を提案した。「効果的な」という言葉の代わりに、「・・・・・促進、保護及び完全な享有・・・・・。」

リヒテンシュタインは、条約のすべての部分が互いに関連し合っており、すべて一度に協議してもよいくらいなので、初めに実質的な内容の部分を討議し、必要であれば、題名や序文の中のこれらの部分に関連したところへ付箋をつけて検討する方がよいと強く主張した。首尾一貫性が重要であり、現在の題名では第1条及び第4条とは異なる一般的な概念を想起させるので、条約の目的を説明する条文は必要ないかもしれない。しかし、目的について議論を続けることは、非常に短い題名を考えるためには役に立つといえる。題名は一般の人々やメディアが利用しやすいよう短くすべきである。障害者の権利について話し合うことは妥当であり、間違ってはいない。

シエラレオネは、条約の目的では、なぜ条約が必要なのかその理由を説明するべきであると提案した。序文のFとHは、障害者の権利の侵害に言及し、なぜ条約が必要なのかを記している。条約の目的は、障害者の差別とその権利の侵害を防ぎ、そして社会の一員として平等に参加することを保障することである。これをどのように行うかについての問題は、他の条文中で扱うことができる。

エリトリアは脚注8の文言を支持した。

フィリピンは、短く簡潔な目的が極めて重要であると述べた。目的には社会に参加する責任についての記述も含むべきであるとした。

アイルランドは、権利と権利の享受との違いについて語った。移民労働者に関する条約及び子どもの権利条約という2つの国際条約において「権利」という文言が使用されているが、どちらも新しい権利を含んでいる。それ故、もし「障害のある人の権利」という言葉を我々が使うなら、それが一連の違った権利と見なされる可能性がある。障害者は他の人々と同じ権利を保証されている。しかしこれらの権利を常に享受できるわけではない。この条約のもとで、障害者がこれまで以上の権利或いはこれまでと違った権利を持つわけではないことをはっきりさせることが重要である。条約の目的は障害者による人権の完全な享有を保証することとするべきである。またアイルランドは、「人権」という言葉から「人」が省かれる傾向にあることを批判した。この省略によって、条約で意味する権利の種類に関して混乱が生じる可能性があるからである。アイルランドはまた、「公平」という言葉を入れることに反対した。この意味が人権の分野においては不明確だからである。

ウガンダは次の様な新しい文言を提案した。「すべての障害のある人の、すべての権利及び基本的自由の、完全かつ平等な享受を促進し、保護し、かつ実現する。」「実現する」という言葉によって、この条約により広く、また多くの人々が関わることを期待している。

コロンビアは、この問題に関する一つの理想像を作るとして、メキシコが提案した文言を支持した。

参加者はNGOからのコメントを受け入れた。

国内人権機関(NHRI)は次の文言を提案した。「この条約は、すべての障害のある人のあらゆる人権及び基本的自由を平等に享受することを促進し、保護し、実現することを目的とする。」この形式は、平等に焦点をあてることを保証するものである。

アジア・パシフィック・フォーラムは、草案文書にある原案の文言を維持することを支持した。特に「効果的に」という言葉は、これらの権利の単なる形式的な認識ではなく、権利の効果的な享有のために必要な状況を作るであろうとした。

第2条 一般的原則

アイルランドはEUを代表し、全般としては第2条に依存はない旨表明した。しかし(c)については、「すべての生活面への平等な市民及び参加者としての障害のある人の完全なインクルージョン」に替えて、「障害のある人の、対等な立場での完全かつ効果的な社会への参加及びインクルージョン」という新しい文言を提案した。EUはまた、CRC(子どもの権利条約)第4条を基に、新しいパラグラフ2として「締約国は、本条約の実行のために、すべての適当な立法措置、行政措置及びその他の措置をとらなければならない。経済的、社会的及び文化的権利については、自国における利用可能な手段の最大限の範囲内で、また必要な場合には国際協力の枠内で、これらの措置をとらなければならない。」を提案した。これは、条約の部分によっては漸次実施する必要がある一方で、例えば非差別のような、この条約の多くの部分は、その実施に時間をかけるべきではないという信念を反映している。

マリは国際協力に言及した新しいパラグラフ(f)を提案した。国際協力はこの条約の基本的原則であり、南北の協力と、南同士の協力の両方を含んでいる。

日本はおおむねEUに賛同したが、パラグラフ間の差異を明白にするために、第2条の最初の文は次のように変更すべきであるとした。「条約の目的を達成し、その規定を実行するために行動する際には、締約国は、特に以下の基本的原則に従わなければならない。」

シエラレオネは原案にある文言の受け入れを表明した。EUが提案した新しいパラグラフ2は、第4条の義務の項に入れるべきである。原則は義務とは異なる。

カナダは男女の平等に関する韓国の見解を支持した。そして「男女の平等」という題の新たなパラグラフを加えることを提案した。

ケニヤは、第2条に、障害者に絶えずふりかかる不利益を是正する積極的な行動とともに、人権の不可分性と相互依存性に関する内容を盛り込むよう主張した。

スーダンは、EUが提案する新しいパラグラフ2は原則ではなく義務の項に入れるべきであるとするシエラレオネに同意した。また、国際協力は一般的原則の項に盛り込むべきであるというマリの意見に賛同した。国際協力は、委員会が取り組む課題の中でも最も深刻で難しく、また重要なテーマの一つとなるであろう。

アイルランドは、シエラレオネとスーダンに対し、新しいパラグラフ2に関するEUの見解について回答した。EUは新しいパラグラフ2をこの条文に入れるか、或いは新しい条文として設けたいと考えており、「一般的義務」に入れることは望んでいない。なぜなら、条約全体が締約国に対する一般的義務を生み出すからである。国際的な人権条約の慣例では、条文に表題をつけることはない。EUは第4条について大幅な修正をしたが、これは第4条が議論されるときに論じられるであろう。EUは男女間の平等を支持するが、これを第2条に盛り込むことには反対で、序文に入れた方がよいと考える。

インドは、新しいパラグラフ2は最善の努力と漸進的実現の原則に基づくとして、これをこの条文にいれること、或いは別の条文を設けることを支持した。そして「重度の障害や知的障害、また重複障害のある人々の状況に特に注意を払う」ことと、「社会的モデルの方が、医学的モデルよりも好まれる」ということを更に認識するよう求めた。

ヨルダンは、一般的原則は正確でなければならないと述べ、受容、協力、自己決定、平等、及び地位向上などの一語からなるフレーズをいくつか提案した。この条文は明確な内容にしなければならない。

メキシコはEUによる(c)の新しい文言を支持し、新しいパラグラフ2は適切であると同意したが、これは一般的義務について規定した第4条に入れるべきであるとした。また男女間の平等或いは性差の観点から見た平等に関する記述を盛り込むことも支持した。そしてパラグラフ(d)に対し、「多様性」の代わりに「人間の尊厳」を加えて修正することを提案した。そうなるとこのパラグラフは次のようになる。「差異の尊重と、人間の尊厳及び人間性の一部としての障害の受容。」

コスタリカは、性差の問題は重要であるので、条約の一般的原則か序文のどちらかにこれを盛り込むべきであるという点に同意した。また参加とインクルージョンが重要であると強調して、2(c)の新しい文言を支持した。そして、EUの提案による新しいパラグラフ2を支持したが、この条文に含むことには反対した。2(a)については、「人の自立」の代わりに「人の自立した生活」というフレーズを提案した。自立した生活はよく知られている言葉で、誰も一人では生きていけないが、ある状況下では人は自立した生活を楽しむことができる。更にコスタリカは、「人生のあらゆる段階における個人的な発達」を追加することを提案した。なぜなら、このような文言なら障害者を「子ども扱いする」ことが少なくなるからである。

南アフリカは、5つの事柄を記した原案の文言と、すべての追加された提案事項とを支持した。そして、アクセシビリティーに関する新しいパラグラフを加えるよう提案した。アクセシビリティーとユニバーサルデザイン(第19条)は、条約にとって本質的で、締約国の状況を変えるのに役立つであろう。南アフリカは、「多様性」を「人間の尊厳」に替えるという、メキシコの修正案を支持した。更にEUが提案した新しいパラグラフ2も支持したが、それは一般的義務の項に移すよう強く主張した。

エリトリアは国際協力について条約の別の部分で触れることを支持した。

日本は、第2条にバリアフリーな環境の実現を謳った新しいパラグラフを加えることを提案した。これは条約に社会的な局面を追加することになるであろう。

ロシア連邦は、締約国がいったん署名すれば、条約の実行のためにあらゆる適切な行動をとらなければならないのだから、EUが提案した新しいパラグラフ2の最初の部分はくどいと述べた。更に、男女間の平等に関するパラグラフもまた、既に差別に対する一般的な禁止に含まれているので余計であるとした。

ノルウェーは、性の平等は、条約に含むべき重要な概念であると確認したが、それをどこに入れるのが的確かはまだ決められないとした。

リヒテンシュタインは、一般的原則とは何を意味するのかを問いかけ、これらは条約の特定の条文の解釈と適用に役立つ原則であるという回答を提供した。原則はすべての実質的な内容の条文に関連し、かつ適用することができるようにし、その文言は条文に照らし合わせて吟味されなければならない。原則は目的であってはならない。

タイは自己決定を一般的原則に盛り込むことを望んだ。これはいくつかの国内法で謳われている。タイはEUによる(c)の修正案を支持したが、「人生のあらゆる局面で」と付け加えることを求めた。そして新しいパラグラフ2の内容を支持し、「障害包括型国際協力」という新しいパラグラフを設けることを提案した。これは新たな国際協力ではなく、すべての国際協力に障害問題が盛り込まれるということである。アクセシビリティーやユニバーサルデザインは別の条文に述べられているが、もう一つの一般的原則とするべきである。

インドは一般的原則の中で社会的モデルを確認することを提案した。これにはアクセシビリティー、バリアフリーな環境、及び個人が社会参加し、尊厳を持って生きることを妨げるあらゆる状況の是正が含まれる。インドは、医学的モデルよりも社会的モデルの方が優先されるということと、不平等や不利益の解決のために積極的な差別撤廃措置を行使することができるという内容を、第2条に追加することを提案した。

次に参加者はNGOからのコメントを受け入れた。

Association of Community Legal Centers(コミュニティー・リーガル・センター協会)は、以下の追加文言を含んだ上で、現在の草案文書を支持した。「(f)搾取、暴力、損害、虐待、迷惑行為、放置からの保護及び、(g)生存と最大限の可能性を実現する権利。」障害者、特に女性や子ども或いは重複障害者は、ますます虐待の危険にさらされている。障害者の生命は軽んじられ、それ故障害者に対する医療的及び社会的介入がより少なくなっている。障害者は保護されなければならず、またその最大限の可能性を実現するために必要な資源が与えられなければならない。

国内人権機関は、2(a)に文言を付け加えて、「人間の尊厳、個人の自律(自己の選択を行う自由を含む)、及び人の自立を尊重する」とすることを提案した。そして2(b)では、非差別に非女性差別を加えることを提案した。また2(e)は、「equality of opportunity(機会の平等)」ではなく、「equality of opportunities(さまざまな機会の平等)」とするべきだと強く主張した。同機関は更に、アクセシビリティーとユニバーサルデザインを支持し、合理的配慮の原則を追加することを提案した。すべての人権は不可分であり、相互に依存しており、相互に関連しあっている。

International Disability Convention Solidarity in Korea(韓国国際障害条約連盟)は、一般的原則に自己代表性を追加することを提案した。誰も障害者に代わって発言するべきではなく、障害者自身が自分たちのために発言すべきである。

世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)及び世界盲人連合(WBU)は2(a)へ文言を追加し、「尊厳、個人的な自己決定を通じて自分自身で選択する自由を含む個人の自律、及び人の自立」とすることを提案した。

午後セッション
開始時刻:午後3時06分
終了時刻:午後6時

第3条に関する協議は、文書全体に関する実質的な交渉が完了するまで延期されることになった。第4条に関する協議では、EUにより重要な提案が出され、これに関連して第5条及び第7条についても大幅な修正が提案された。多くの代表はEUの提案を検討するため、早くこれを印刷して配布するよう求めた。第4条に関する協議は翌日も続けられることになった。EUによる修正案の電子版はUNウェブサイトで入手することができる。

第2条 一般的原則(続き)

他の代表は誰も第2条について発言を希望しなかった。国際育成会連盟(II)及び世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)は、一つ或いは二つの障害だけを採り上げたり、障害の程度に焦点を当てて否定的なレッテルをはったりするのは適切ではないという見解を表明した。

第3条 定義

ニュージーランド(NZ)は、用語の多くは草案についての議論を進めていくうちに定義されると考えられるので、第3条としてわざわざ定義を入れる必要はなく、従って第3条に関する議論は延期すべきだという意見を出した。最終的な文書では用語の多くは使われない可能性があるので、これによって不必要な作業を省くことができるであろう。

EUは、用語や概念の定義を入れるのなら、別に条文を設けるよりもむしろその用語が最初に出てくる条文の中で定義するのが一番よいと述べて、NZの意見に大筋で同意した。EUは、障害を定義しようとすることには問題があり、条約の目的には必要ないとし、そのため定義に関しては特に条文を設けないことを望んだ。

南アフリカアフリカ・グループのコーディネーターとして、医学的モデルとは異なる、もっと包括的なモデルを提案した。それは障害だけでなく、広い意味での障害者に関わる定義である。しかし、AHCが障害を定義することには問題があると憂慮を示した。

イエメンは、定義のために条文を設けるよりも、むしろ別に用語集を作り条約に付録としてつけることを提案した。また、障害の社会的モデルを医学的モデルに対峙するものとして支持したが、定義をすることは「辞書学の海」へと議論が発展していく可能性があると付け加えた。

ロシア連邦は、障害を定義することは、様々な国の法律がこの用語に違った方法でアプローチしているので不適切であると反論した。そして多くの労働機関の規約でもこの問題を扱っていると述べた。

バチカンのローマ教皇庁は、いくつかの用語については定義が必要であると述べた。しかし草案作成の過程を進めていく際には、特にどの法律文書にも載っていない用語については、オープンかつ柔軟に対処する必要があるとした。

日本は、条約で使われる障害及び障害者の定義が各国の定義と一致しない場合、そのような国々の政府に、条約に規定されている条項の実施を義務づけることは更に難しくなる可能性があると憂慮を示した。

同代表は、この問題は議長の判断に従い後回しにし、現在ある覚え書き、脚注及び作業部会による草案に加え、議論を進める上で役立つ提案を文書で提出することとし、後ほど特に定義を扱う時間を委員会でとるべきであると提案した。

カナダは、定義の部分或いは障害に関する定義がそもそも必要であるかどうか、疑問を投げかけた。そして、初めに文書全体を通して検討してから、障害の定義が必要か、或いは可能であるかどうかを再検討することを提案した。特に、必要とされる技術的専門知識が利用できるよう、小グループでの検討が役立つであろうと述べた。

オーストラリアは、用語をそれが出てくる文章の中で説明することにはある程度のメリットはあるが、「障害」は既に条約の題名に入っているので、この段階で定義を説明することは有益とはいえないと述べた。

南アフリカは、この特別委員会の間に定義の部分に取り組む機会を持つ必要があるという見解を支持し、今こそ作業部会(WG)による草案文書の中で触れられている数々の定義を検討するときであるという考えを述べた。ノルウェーは、定義に関する議論を後日に延期するというカナダ、NZ及びEUの見解を支持した。コロンビアは、定義の問題は加盟国が条約を作ろうとする際には極めて重大であると述べた。これらの代表は、別に時間をとって小グループ会議で検討するか或いは正式な会議で後日検討するということを提案したが、この問題について議論し、これについて妥協案を作成すること自体は有益であるという考えを示した。

議長は、「複数の代表が、この条文の後に続く条文で関連事項を扱うことから、この条文を後で検討するべきであると感じており、また他の問題を処理する前に、今ここでこの問題の妥協案をひねり出すことは適切ではない。この条文については本セッションではなく、後でとりあげることとする。」と述べ、定義に関する協議を延期した。

第4条 一般的義務

アイルランドは、EUを代表し、第4条、第5条及び第7条を注意深く検討したと述べた。これら3つの条文は、広い範囲で非差別と非差別を保証する方法や手段を扱っていると考えられるからである。そのためEUは、これら3つの条文を非差別に関する一つの条文にまとめることを提案し、更に後ほど第7条の非差別にまとめられない残りの部分について提案したいと述べた。

これにより第4条は、障害者の非差別を確保するために必要な一連の原則を確立することになる。パラグラフ1の冒頭部分は、次のように差し替えられる。「障害のある人に対する非差別を保証するために、締約国は特に次のことを約束する。」そしてパラグラフ(a)は、「行政機関、国家及び地域の政策を見直し、どこであろうとそれが存在する限り、差別をもたらしたり、継続させたりする影響や目的を持ついかなる法律及び規則も改正し、廃止し、無効にする効果的な措置をとること。」と修正される。アイルランドは、この修正案は現在の(a)に似ているが、より強力な責務を要求するものであると主張した。またEUの提案には、パラグラフ(b)についても、「平等の権利及び障害を理由とする非差別の権利」を「機会の平等」に替えるという、短い修正が含まれている。更にパラグラフ(c)の文言についても、「主流に据える」という動詞を国際的な法律文書の中で使うことへのEUの懸念から、次のように変更することが提案されている。「締約国は、障害のある人のニーズ及びこれらの人々に関わる事項が、別途扱われることなく、経済的及び社会的開発計画及び開発政策に組み込まれることを保証しなければならない。」パラグラフ(d)に関しては、次の修正案が提案された。「障害のある人に対するいかなる差別的行為或いは慣例に関わることも差し控え、そして公の当局及び機関がこの義務に従って活動することを保証すること。」パラグラフ(e)では、EUは「企業」の前の「民間」という言葉を削除することを提案している。更にEUは、パラグラフ(f)はユニバーサルデザインを扱っているので、第19条に移すべきだと提案している。またパラグラフ2については、監視と実施をとり扱っている第25条に移すことを提案した。

アフリカ・グループのコーディネーターとして南アフリカ(SA)は、同グループにとって経済的、社会的及び文化的権利の漸進的実現は非常に重要であると指摘し、第4条の維持を求め、この点に関して脚注19を支持した。同グループはまた、「障害のある人のための、政府による資源の意図的な配分」に言及することを望んでいる。

日本は、項目(f)の後に新たな文言を挿入することを提案した。この新しい項目(g)は次の通りである。「障害のある人がその能力を十分に行使することによって、自立した生活を送れるような状況及び環境を提供すること。」これを加えるのは、障害者の雇用機会がなく、障害者が自立して、或いは政府による保護を受けながら生きるのを助ける必要があるからである。そのため日本は、条文の中で障害者の地位向上という概念を提案したのだ。日本はまた、サブパラグラフ(a)の前に、子どもの権利条約第2条(1)からとった、「この条約に定める権利を監査し、確保し、かつ採用するために」という新たな文言を挿入することを求めた。この文言は、この条約を他の人権に関する条約に同調させるものである。日本は更に、既に法律ができていて、それに基づいてこの条約の目的を達成しようとする場合のために、サブパラグラフ(a)の「立法上」の前に「適当な」という言葉を挿入するべきであると提案した。またパラグラフ2に関して、日本はこれが第18条(c)と同じ問題を扱っているので、そちらに移すことを提案した。

アルゼンチンは、締約国の義務には手段が含まれると述べ、第4条(1)の代替文言として「締約国は、人権と基本的自由の行使と享有を保証することを約束する。」を提案し、そこから次の段階へと進められるとした。国際協力に関しては、子どもの権利条約の文言を使うことができるとし、「締約国は、この条約で認められている、経済的、社会的及び文化的権利を実行するために、行政上、立法上及びその他の種類のあらゆる措置を講ずる。締約国は、自国における利用可能な手段の最大限の範囲内で、また必要な場合には国際協力の枠内で、これらの措置を講ずる。」という文言を提案した。このように、経済的、社会的及び文化的権利が徐々に実現されつつある。

アルゼンチン代表は、今後は非常に長い提案は、前もって回覧するよう提案し、他の参加者もこれを支持した。また参加者は、EUがサブパラグラフ(d)を削除する意図を明らかにするよう求めた。そして提出された修正案は実行可能ではあるが、それによって条約の効力が弱まることへの懸念を示した。更に、国家は一つのまとまりで、そこでは司法部門が重要な役割を果たしていることから、司法上の手段を盛り込むよう求めた。サブパラグラフ(d)には、「公の当局及び機関」の後にもう一行、「及び公共のサービスを実施している民間機関」という文言を付け加えなければならない。なぜならこれらの民間機関はこの条約によってとられる措置に従って活動しなければならないからである。

カナダは、パラグラフ1の「その管轄の下にある」という文言は明確でなく、混乱を招くので削除することを主張した。例えばこれは障害のある亡命希望者を対象としない可能性がある。

ニュージーランドは第4条2を次のように修正することを提案した。「この条約を実施するための政策及び法令を発展させ及び実施するに当たり、締約国は、障害のある人及びその代表団体と協力して行わなければならない。」この修正により、第5条2(d)が余計になるので削除される。

イエメンは、各代表がEUの提案を検討する十分な時間がないことへの懸念を示し、いくつかの用語は、義務に関する国際的な法律文書に入れるには一般的すぎるという考えを示した。

ケニヤは障害者が「二重の危険にさらされる」懸念を表明した。特に施設に収容されている障害者がこれに当たる。そこでケニヤは、次のパラグラフを追加することを提案した。「紛争、自然災害などの状況において弱者である障害のある人に対し、或いは、子どもや女性であるため、もしくはHIV/AIDSに罹患しているために弱い立場にある障害のある人に対し、特別な保護及び支援を提供すること。」同代表はこの発言を通じ、HIV/AIDSが障害者にどのような影響を与えるかについてあまり考慮されていないことを指摘した。ケニヤは「実施と監視を行う確実で効果的な構造」の必要性を明確にしたパラグラフの追加を主張した。

ケニヤ代表は、委員会の作業手順、すなわち「次々と修正案を挙げるやり方」では、どの提案が広く支持されているのかがはっきりと分からないと指摘した。また長文かつ詳細な提案は、政府代表及びNGOに対し事前に文書で回覧するよう要求した。条約の目的に関してはこれまでいやと言うほど議論されており、それは差別に対する戦いをしのぐほどであったと同代表は語った。同代表はEUによる提案を文書にするよう望むが、しかしそれでは委員会が自らに課した役割や目的を弱める可能性があるとした。一般的義務に関するこの条文の冒頭部分は、第1条と一致した内容にしなければならない。そして第1条は既に広く検討されている。WGが用意した文書には正当な根拠が載っており、役に立つ。国際協力に関しては、特別にこれに関する条文を設けることを、現時点では望んでいる。

セルビアは、長文の提案は事前に文書で提出するよう各代表に訴え、この点で他の代表と同調した。セルビアはEUの決定に対し、全般的な支持を表明した。特に「主流に据える」という文言を修正することについて、これは障害者運動に関わっていない人には分からない言葉であるという理由から賛同した。セルビアはまた、NZの「緊密に協議するものとし」を「協力し」に言い換えるという意見を賞賛した。

アイルランド(EU)は第4条(d)に関するコスタリカの質問に答え、「この条約に合致しないいかなる活動又は行為も差し控え」という文言を削除するのは、国際法の基本的原則では、締約国は条約に反する行為を差し控えるべきであるとしているので、これを記載する必要ないと考えるからであると述べた。しかし障害者に対する差別的行為を差し控えるというのは新しい考えで、締約国が約束すべき具体的な責務として強調するに値するとした。

日本を含む各代表は、EUが「立法上、行政上その他の措置をとること」という文言を削除するよう提案した理由を尋ねた。

EUはこの問題を検討する余地はあるとしたが、各代表が修正案をすべて読み終わるまではそれ以上のコメントは避けたいと答えた。

インドは国際協力に関する短い修正案を出した。パラグラフ(f)の後に次の文言を加えるということである。「経済的及び技術的支援を通じて発展途上国と協力し、発展途上国がこの条約の目的及び目標を漸次達成するための活動を支援すること。」

リヒテンシュタインは、第4条の冒頭部分に関しメキシコを支持した。そして、第1条及び第4条間の一貫性の必要を強調した。同代表は、法律文書には、締約国が義務を実施する際にとらなければならない措置の概略を示すという慣例があると指摘した。この条文の草案は、現状のままでは締約国がどのように条約を実施したらよいかと、そのために使える手段を示すように書かれているといってよい。更にリヒテンシュタインは、「主流に据える」という文言に関するEUの提案を支持し、「主流に据える」は他の言語に翻訳するのが難しいので別の文言を使うことに同意した。

タイは第4条の現在の草案に満足していると述べたが、「主流に据える」の代わりに「統合する」という言葉を使うことを提案した。そして一貫性を保つために、「国際協力を含む」という文言を第4条1(c)に追加することを提案した。タイはまた、第4条1(f)についても短い修正を提案した。「支援技術を含む」という文言を最初の文につけることと、最後の文は混乱を招く可能性があるので、削除するということである。

イスラエルも、漸進的実現という概念を入れるのに適切な条文は第4条であるとの考えを示した。そして、「締約国は、この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずる。経済的、社会的及び文化的権利に関しては、自国における利用可能な手段の最大限の範囲内で、また、必要な場合には、国際協力の枠内で、これらの措置を講ずる。」という子どもの権利条約(CRC)第4条に基づき、第3のパラグラフを追加することを提案した。CRC第4条の2番目の文は、漸進的実現が適用される本条約中の条文、9d、13、15、16、17及び19から24を引き合いに出すよう修正されなければならないが、それは、これらが障害者に関わる国際法の中では新しい概念であることから、どの権利が経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(ESCR)に適用されるのかを明確にするのに役立つであろう。2番目の文はまた、国際協力に関する最後の文言に替えて、ESCRの第2条1に基づき、「このような権利の完全な実現を漸次達成するために」という文言を入れるよう修正されるべきである。

ニュージーランドは、第4条(2)の「障害のある人及びその団体と緊密に協議するものとし、また、障害のある人及びその団体を積極的に関与させる」に替えて、「障害のある人と協力する」とする修正案を出した。更に、最後の文に、「障害のある人の専門知識と、障害のある人に関わるすべての問題において障害のある人自身が提供できるリーダーシップを認める」と追加することを提案した。

休会時刻 午後4時25分
再開時刻 午後4時52分

EUは「EU提案 2004年5月24日」をまとめ、修正案を提出した。(UN Enable ウェブサイトで入手できる。)

EUの新しい第3条は「非差別」という題で、第7条の大部分を盛り込んでおり、すでに提案された第4条の修正と、第5条および第6条の一部も含んでいる。現在の第4、5、6条の、新しい第3条にまとめられていない部分と第7条は削除されるか、あるいは別の箇所へ移されることになる。

レバノンは、他の条約の一般的義務のような条項は最初に記載され、そこでは締約国がどのように条約の目的を達成できるか、要点を述べるのが慣例であると指摘した。同代表はこの条文を残すことを望み、「非差別はこの条約の一部分に過ぎない。」と述べて、一般的義務は非差別に限られないということを明確にした。

クウェートは、現在提案されている事柄は草案文書の「バランス」を脅かし、その結果文書が作業部会の意図したものから外れてしまうと警告した。広範囲の変更或いは一般的な変更は、どのようなものであれ条約の全般的な改正に等しい。提案は以前同意が得られたことと「一致して」いなければならない。

イエメンは、英語でしか書かれていないEUの提案を検討する時間をもっととるよう求めた。またアラブ・サミットから、2004年から2014年にかけてアラブ障害者の10年とすることが5月23日付けで発表された。

メキシコは、「非常に急速にWGによる文書から外れつつある」協議の方向性を「深く憂慮する」と述べた。メキシコは多くの他の代表と同様、WGが様々な見解をまとめるために骨を折って多くの作業をしたという見方をしており、たとえその作業が最終的とはいえなくても、共通の基盤を反映していることには違いがないと考えている。もしEUの提案が作業の基礎とされるのなら、WGによる文書を「台無しに」してしまうことになるであろう。EUが第4条につけた新しい題も、条約の範囲をかなり制限することになるであろう。またメキシコは、正当な理由に基づくレバノンの意見を支持し、第7条を検討するまで、これらの修正案は保留とすることを提案した。パラグラフ1の最初に「この条約の目的を達成するために、締約国は・・・・。」という文言を加え、それに一般的義務のリストを続けるべきであるとの考えを示した。

サブパラグラフ(a)に関するEUの提案は、国内の法令及び政策しか考えておらず、締約国が条約の条項を実施するために立法上の措置をとることで、もっと積極的な姿勢でこの問題にアプローチすることができるようにした現在の文書の目的を考慮していない点で、「全く消極的」であるとした。一方、サブパラグラフ(b)で「権利」を「原則」に置き換え、「機会の平等」を明記するというEUの提案には全く異存はない。またサブパラグラフ(c)から「主流に据える」という言い方を削除し、(f)を第19条に移すという修正案にも同意する。しかし、サブパラグラフ(d)への修正は、差別にのみ焦点を当てて条約の他の目的を除外している点で、限定的である。そして統計及びデータ収集に関する第6条を第25条に移すことの重要性についても、今の時点では監視に関する規定が特に詳しく記されていないので、不明確であると述べた。

メキシコは、締約国の主要な目的は、「NGOと緊密な関係を結びながら」、自国において適当な措置を講ずることによって条約を実施することであると繰り返した。

最も重要なのは「WGの成果を生かす」ことであり、各代表はどの意見が支持を得、どの意見が支持を得ていないか議長に分かるように、そしてそれに従って修正案を作成できるように、全般的な発言をするよう自らを制限すべきである。さもないと、委員会は「我々の前にあるWGによる文書の意義を損なうような行動を既に始めている。実際はこれこそが、交渉のたたき台となる文書であるというのに。」

ヨルダンは第4条を残す重要性を強調した。非差別は重要であるが、それは他の義務に取って代わるものではない。差別に関する文言で他の条文と重複している部分は修正することができ、それによってEUの懸念は解決できる。第5条もまた残すべきである。

ニュージーランドは、EUの提案に従って条文を全体的に再構成することについては、この段階でコメントすることはしないとした。EUが提案したパラグラフ1、(a)、(b)、(d)及び(f)の特定の文言の改正は、条約の範囲を狭めてしまう。しかし1(c)については、主流に関する文言を替えることには同意し、1(e)についても「企業」の前の「民間」を削除する点で同意した。1(f)の2番目の文は具体的すぎるので他に移すべきである。パラグラフ2を第25条に移すことについての判断は保留した。

ケニヤは障害者との協議の重要性を考慮し、パラグラフ2を第25条へ移すことに抵抗を示した。しかし「企業」の前の「民間」を削除するというEUの提案には同意した。同代表は「可能な限りWGによる草案を使って作業するべきである。さもなければ、同意に達することが難しくまた面倒になるであろう。」と指摘した。

バーレーンは、本来の草案文書を基に作業するというクウェートの提案を支持した。

コスタリカは、この条文の冒頭部分は条約の目的に直接結びつけられるべきだという他の代表の意見に同意した。1(a)は、締約国に障害者の人権の実現を妨げるような慣例や慣習を一掃する一方、障害者の人権の範囲を広げるような法律を採用することを積極的に義務づけている点で、そのまま残すべきである。1(b)は、憲法の改正に言及することは避けるべきであり、また締約国の司法の枠組みの中で具体的に修正するという一般的な文言にとどめるである。1(e)は、条約の規定に従って公共のサービスを提供している民間機関にも適用されるべきである。

アイルランドは、WGが行った素晴らしい仕事の成果を認めた。しかし同時に、それはいかなる方法で使われようと、AHCの作業に先入観をもたらすものではないと述べた。WGに参加していた政府代表でさえも「自分たち自身の意見を発言して」おり、この委員会は政府がお互いに協議し合う初めての機会なのである。WGの成果は合意を得たものとは考えられず、必ずしも条約の構造を形作るものではない。EUが提案した修正案は広く協議の対象となる案であり、WGで出されたすべての提案と同様、正当なものとして認められる。

EUは現在の第4条が一般的義務の形をなしているとは考えていない。これは本質的に非差別を扱っており、第7条でも繰り返されているので、再構成するに値する。

タイはEU案に関するニュージーランドの見解を支持した。更に、1(c)に「国際協力を含む」という文言を追加するというEUの修正案も支持した。パラグラフ2の障害者の関与に言及した部分の「内容と精神」は一般的義務の中に残されなければならない。なぜなら障害者の役割は、単に今後も更なる展開が必要とされるフォローアップや監視の過程だけなく、政策決定及び実施のすべての段階におよび期待されるからである。

トリニダード・トバゴは、国際条約において締約国の義務を明確に記載することの重要性を強調し、文言を強化し、簡潔にするのはよいが、この条文自体は残すべきであるとした。パラグラフ2及び第25条の両方もまた残されるべきで、パラグラフ2には、「第25条を損なうことなく」というような文言を前置きとしてつけるとよい。

国内人権機関(NHRI)は、第4条(1)の冒頭部分、特に「その管轄の下にある」という文言を削除する提案に憂慮を示した。確かにこのような文言は、意図せずとも、市民でない障害者や亡命希望者である障害者に対する差別につながる可能性がある。しかし第4条(1)からこの文言を削除することは、条約の範囲を実質的に非差別に焦点を当てたものへと狭めることになり、この条約は包括的な国際法から離れはじめることになるであろう。

ランドマイン・サバイバーズ・ネットワーク(LSN)は、この条文は締約国の実質的な義務を要約する上で極めて重要であり、EUの提案による非差別の立場からの狭義のアプローチよりも広い範囲をカバーしており、また今後もそうし続けなければならないと強調した。LSNは、南アフリカ、ヨルダン、メキシコ、リヒテンシュタインその他の代表の見解を支持している。完全なインクルージョンとは、差別が無いということ以上のことを意味する。本条約は、障害者の市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的権利を完全に保証しなければならない。地雷の被害に遭っている国々のサバイバーとの活動に基づいて考えれば、このような条約による保証は、障害者が人権を享受する際大変重要である。「民間」企業の「民間」の削除については、他の条約では民間セクターに範囲が広げられており、障害者に対する差別の大部分が民間セクターの雇用とアクセシビリティーの分野で起こることを考えると、幾分懸念を感じる。LSNは、国際協力を1(c)に盛り込むというタイの修正案を支持する。

世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)は、政府が条約の実施のために努力すること、また条約の規定に合致するように政策や法律を改正することは、非差別かどうかの判断のみに左右されるべきではないと強調した。非差別の判断は、あらゆる状況に常に適用されるわけではない、特別なタイプの判断だからである。WNUSPは、障害者の専門知識とリーダーシップを認め、障害者との協力に関して記載するようパラグラフ2を強化することに強い支持を表明した。

欧州障害フォーラム(EDF)は、サブパラグラフ(a)に「法律及び規則により」と追加することを支持した。1(c)では、資金の提供者と受領者の両方に、障害者を考慮するよう義務づけた開発協力について特に言及するよう求めている。また、脚注18を支持し、この条文に救済に関する記述を加えるよう求めた。更に、女性の障害者や、土着の少数民族の障害者のような、特別な問題或いは差別のタイプに直面している障害者のため、特別なパラグラフを盛り込むというケニヤの提案を支持した。EDFはパラグラフ2を強化するというNZの見解を歓迎した。EDFは一般的義務を非差別とまとめるというEUの提案、特に冒頭部分を非差別に限った内容にすることには反対した。EU案1(c)の、開発計画の中で「障害のある人を区別して扱わない」という内容は、障害に関わる事項を主流に据えることが、通常の計画の中でインクルージョンを推進しながら、特別な計画も求めるという二つのアプローチを必要とするので、いくらか問題がある。パラグラフ2を第25条へ移すことはこの段階では必要ない。


特別委員会のデイリー・サマリーは、ランドマイン・サバイバーズ・ネットワークが発行する。このネットワークは、地雷の被害を受けた6つの途上国において手足を失った者の支援網を持った、米国に拠点を置く国際組織である。このサマリーでは障害者の人権に関する条約の詳細を詰める特別委員会の議事録を扱っている。

サマリーは MS Word形式で www.landminesurvivors.org/library_learn.php. に掲載される。このサマリーは、翌日の午前10時までにwww.worldenable.netおよびhttp://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc3summary.htmに掲載される。
スペイン語(障害者インターナショナル http://www.dpi.org/sp/resources/topics/convencion/boletines04.htm)、フランス語
(ハンディキャップ・インターナショナル http://www.handicap-international.org/esperanza/news/adhoc2004.asp)および 日本語(DINF webmaster@dinf.ne.jp)の翻訳もある。
第3回会合のリポーターはマーガレット・ホルト、ロビン・スチーブンズ、ジュリア・ホワイト、編者はザハビア・アダマリーおよびローラ・ハーシーである。制作アシスタントはアニー・ガウルである。質問および意見がある方はzahabia@landminesurvivors.orgにメールを頂きたい。

ランドマイン・サバイバーズ・ネットワークは、ニュージーランド、メキシコ、タイの代表団、ハンディキャップ・インターナショナルSHARE - SEE プログラムに対して、第3回特別委員会のデイリー・サマリーの作成で支援を頂いたことに謝意を表する。引き続き、財政的または物質的支援を求めている。さらに情報を希望する方はlsn@landminesurvivors.orgにメールを頂きたい。