音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

第3回国連障害者の権利条約特別委員会

仮訳 デイリー・サマリー第4巻第8号 2004年6月3日(木)

NGO 地雷生存者ネットワーク

午前セッション
開始時刻 午前10時26分
終了時刻 午後0時59分

第23条及び24条に関する協議が終了し、WG報告書の国際協力に関する付属書の内容及び手続きに関する議論が始められた。メキシコ、ベトナム及び中国は、国際協力に関する新しい条文の草案を提出し、回覧した。

第23条:社会保障及び十分な生活水準(続き)

議長はNGOからのコメントを受け入れることから会議を始めた。

国際労働機関(ILO)はこの条文を支持し、次の文言を追加することを提案した。「締約国は、雇用保険を含む自国の社会保障制度を定期的に見直し、十分な支援が提供されるよう保証し、かつ、障害のある人が就職する際、或いは仕事や職業を続ける際、もしくは一般に開かれた労働市場に戻り有給の仕事を得る際に、不注意から何ら不当な妨げを受けることがないよう保証する。」これは、社会保障によって障害者が職業訓練や就職、自営業を始めることに対する意欲をなくすことがないよう、つまり「手当の落とし穴」に陥ることがないよう保証するものである。ILOは、特に発展途上国において多くの障害者が貧しい生活をおくっていることから、障害者、特に障害のある女性及び少女と高齢者に対する社会保障と貧困削減戦略を保証する規定を歓迎した。ILOは、労働の権利に関わる方面におけるこの条約の実施を監視することを喜んで補佐すると述べた。

レバノンは、条文の題名を「社会保障」に変更することを提案した。この題名なら、条項をある特定の機関或いは制度に関する内容に制限することがないからである。そして1の最初の文の「社会保障」を「あらゆる型の社会保障」に書き換えるよう提案した。更に第23条1(f)に文言を追加し、「障害のある人が、障害に基づく差別なしに、生命保険、健康保険及びその他の型の保険に加入できることを確保する措置」とすることを提案した。

国内人権機関(NHRI)は、題名を変更し、条文の条項1と2を並べ替えるというNZ(ニュージーランド)の提案を支持した。社会保障の権利と十分な生活水準とは現行の国際法では別々の権利として認識されており、十分な生活水準は単なる社会保障よりも広い意味を持つ。社会保障は十分な生活水準を達成するための手段である。それ故、NHRIは、1と2の順番を入れ替えるという提案に賛成した。そして1と2の冒頭部分は締約国の義務を説明しているとして、2の「適当な」を「必要な」と書き換え、「保障し」を「保護し」に書き換えることを提案した。第23条1(a)では、文章を「障害のある人にとって必要なサービス、機器及びその他の形式の支援を確保する」と修正するべきである。第23条1(c)の「重度の及び重複した」という文言は削除し、同様に、「これは自己を発展する意欲を阻害するものとなってはならない」も削除するべきである。第23条1(d)の「住宅」の前に「アクセシブルな」を挿入し、「障害のある人に一定数割り当てられた政府の住宅供給を含む」という文言は削除する。障害に関連した費用に関連なく一律に税金を免除することは望ましくないので、第23条1(e)は書き直されるべきである。第23条1(f)に関しては、この問題の複雑性を見直し、特に女性に対する差別について述べるべきである。更にNHRIは「清浄な水の入手」を第23条2に入れることを支持した。清浄な水は基礎的サービス(ベーシック・サービス)とされており、これはICESCR(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)に関する委員会による一般コメント15に詳しく説明されている。

世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク(WNUSP)は、特にこの条文の貧困削減を扱っている部分を支持した。そして障害者も平等に開発からの利益を得るべきであるというNZの提案に同意した。WNUSPは第23条1(c)から「重度の及び重複した」を削除することに賛成した。これは医学的モデルに基づいて障害者の差別をすることになるからである。WNUSPは第23条1(g)として、社会福祉サービスの提供に際して自主性を保つことを保証する、新しいパラグラフを加えることを提案した。それは以下の通りである。「社会福祉サービスの提供に際しては、サービスをセットで提供すること(他のサービスを受けることを条件としたサービスの規定)を避けるようにし、自主性が保たれるよう保証する。」代替案として、このパラグラフを第15条に入れてもよい。

障害者オーストラリア・インコーポレイテッド(PWDA)は、オーストラリア地域法律センター全国協会及びオーストラリア障害者組織連盟とともに、脚注99についてコメントし、「社会保険」をより意味の広い用語である「社会的支援」に替えることを提案した。これは障害者が健常者には必要ない多くの特別な措置を必要としているからである。この考え方なしでは、障害者向けのサービスを非差別という名目で意図せずして禁止してしまう結果になりかねない。一方、特別なサービスが非差別的な方法で実施されるよう保障することが重要である。それ故、1及び2は、非差別が特別な措置の規定ではなく実施に適用されることを明確にしたものへと書き直す必要がある。第23条1(c)の「困窮状況で生活している」の文言は、貧しくない障害者であっても、障害に関連した余計な費用がかかり、社会的支援を必要としていることがよくあることから、削除するべきである。これらの余計な費用は、主に社会的及び経済的参加に関連した費用であり、参加への意欲をそぐことにならないよう、解決されなければならない問題である。この目的は、各国の資源を利用して漸次実現される。「自己を発展する意欲を阻害するものとなってはならない」という文言については、障害者は概して自己の発展に社会保障を必要としていることから、特別な措置は個人的発展の意欲をそぐものではなく、むしろ自己の発展に必要な条件であると述べた。第23条2(d)(訳者注:1(d)?)に、「住宅」の前に「ユニバーサルデザインによる」と追加することを提案した。

障害者インターナショナル(DPI)は「重度の及び重複した」を削除することを提案した。これは医学的モデルに基づく概念である。DPIはまた第23条を分割するという意見を支持した。「生活水準」と「社会保障」という二つの問題はほとんどの人権法で別々に扱われている。国連の基準原則がWGにとって何らかの役に立つかもしれない。

第24条:文化的な活動、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加

アイルランドEUを代表して、「次のことを確保するためのすべての適当な措置をとる」を「障害者が次のことをするための適当な措置を促進する」と修正することを提案した。これは、もとの文章の記述では、締約国が行使する権力の範囲を越えたものまで含んでいるからである。条約は障害者全体を扱わなければならず、そのため第24条3は、ある特定の障害者グループだけを採り上げているので削除するべきである。第24条4は、新しい権利を作るように見えるのをさけるため、次のように改正すべきである。「締約国は、障害のある人が、他の者との平等を基礎として、レクリエーション、余暇及びスポーツ活動に参加できるようにすることを目的とし、次のことのため、適当な措置をとる。」これにより締約国がとる措置の目的が示される。指導やトレーニング及び支援は国によってではなく、スポーツ団体によってボランティアで提供されるので、第24条4(b)は、次のように修正されるべきである。「障害のある人が、スポーツ活動を企画し及びそれに参加する機会を持つことを確保し、かつ、適当な指導、訓練及び支援を受けられるよう奨励すること。」最後に、第19条で扱われている24条4(c)と、EUの修正案第24条4(b)で扱われている第24条4(d)は削除するべきである。

イエメンは第24条を二つの条文に分けることを提案した。一つは、第24条「知的活動、文明及び歴史を含む文化的活動への参加」で第24条3までがこれに当たり、もう一つは新しい第24条で、「レクリエーション及びスポーツ活動への参加」で、第24条4の内容に当たる。第24条1(b)の「マルチメディアの形態」の前に「自由な」を追加し、第24条1(c)の「テレビ番組」の前に「国際的及び地域的な」を加えるべきである。

メキシコは、題名の「余暇」と「スポーツ」の間に「身体鍛錬」を加えて変更することを提案した。また、第24条1(a)では、「活用する」に続けて、「表現する」を加え、「育成し、活用し、及び表現する」とする。第24条1(d)の「飲食場等」を「ホテル及びサービス機関」という文言に替える。第24条4の冒頭部分は「他の者との平等を基礎として」という文言を「他の者と公平であることを条件として」とする第24条4(a)の「スポーツ活動」は削除し、「余暇活動、身体鍛錬及びスポーツ」と入れる。第24条4(b)は「他の参加者に利用可能な支援について同一の」は削除し、代わりに「他の参加者と公平な条件での支援、」とする。第24条4(c)では、メキシコが提案したように「障害のある人」の前に「すべての」と入れることと、「障害のある子どもも含めて、すべての障害のある人が、教育制度内で、公平であることを条件としてスポーツ活動に参加する」という文言を「障害のある子どもが教育制度内のスポーツ活動関係に平等に参与する」と差し替えることを提案した。第24条4(d)では、「レクリエーション」の後に「及び」と入れ、「余暇」の後の「及びスポーツ」を削除し、「身体鍛錬及びスポーツ」を「活動」の後に入れることを提案し、「レクリエーション及び余暇活動、身体鍛錬及びスポーツ」とするとした。締約国はまた、障害者が文化的な活動に関わる機会を持てるよう促進する重要な役割を果たさなければならない。

タイは、第24条2から「不合理又は」という言葉を削除し、「いかなる」とすることを提案した。また、「国際法の規定を尊重すると同時に」を削除するべきであるとした。締約国は、これらの権利を確保する際に、立法に関わる主要な役割を果たさなければならない。多くの活動は民間機関によって企画・運営されているが、これらの機関は法律に従わなければならない。

チリは第24条1(d)の文化的施設の利用に関して、「アクセス」は重要であるとしながら、人々が文化的なイベントを楽しむには他に何が必要かを考えることも同様に重要であると指摘した。第24条4では、2つのサブセクションを加えることを提案した。一つ目では、障害者のスポーツの可能性を、様々なレベルで障害者の参加を促進することによって発展させることに言及し、二つ目では、スポーツやレクリエーション・プログラムを担当する教師やモニターを対象とした、障害者の参加を促進する方法についての研修を述べる。

南アフリカはレクリエーション及び余暇の権利を文化的権利から分け、文化的権利を新しい第24条に入れることを提案した。この新しい第24条には、脚注109で提案されたように、文化的及び言語的アイデンティティー及び権利に関する現在の条文の内容も盛り込まれる。文化的及び言語的権利を提供することはこの条約を他の国際法に従った形にするといえる。南アフリカはまたいくつかの修正案を出した。第24条4の冒頭部分にある「平等」という言葉は「公平な」に差し替えられ、「レクリエーション」の前に、「健康的なライフスタイルを促進するため」という文言を入れる。第24条4(a)では、「奨励し」を「保証し」に書き換え、「スポーツ活動の」前に「クラブの」を挿入する。これは、組織的なスポーツへの参加は、クラブから始まることが多いからであり、またより高いレベルへと進歩していくための基礎を、クラブが提供するからである。そして「可能な限り完全に」という文言は、障害者の限界に焦点を当てていると考えられるので削除する。第24条4(b)は次のように修正する。「障害のある人がスポーツ、レクリエーション及び余暇活動を企画し及びそれに参加し、かつ公平に、関連する指導、訓練、資源及び支援を受ける機会を持つことを保証する。」南アフリカは「同一の」資源及び支援を障害者に提供することは不公平であり、「他の参加者に利用可能な」という文言は余計であると説明した。第24条4(c)の文章は、次のように修正されるべきである。「障害のある人が、スポーツ、レクリエーション及び余暇施設を利用できるよう保証する。」障害のある子どもの、教育制度内でのスポーツ活動への参加に関する条項は、教育に関する第17条に移すべきである。第24条4(d)では、「平等に」という言葉を「利用する」の前に入れる。南アフリカは次のような新しいサブパラグラフ、第24条4(d)を提案した。「障害のある人が、スポーツ、レクリエーション及び余暇活動及び組織への完全参加を可能にするために、政府及び民間の資金を公平に利用することを保証する。」そして更にメディアを対象として、新しい第24条(d)は、次のように続けられる。「すべての公共のメディアに対し、障害のある人のスポーツ、レクリエーション及び余暇活動における業績を、障害のある人すべてがそのような活動に参加することができるということとともに、適切かつ公平に報道するよう、奨励する。」

ニュージーランドはこの条文の条項における重複性を指摘した。例えば、第24条1(d)の施設へのアクセスを規定した条項は、第19条の建築物に関するアクセシビリティーの記述と重複している。また、第24条1(b)で要求されているアクセシブルな形態の文化的な作品の問題も、第13条の情報へのアクセスの中で十分に扱われている。それ故、これらのサブパラグラフは削除できる。ニュージーランドはまた文化的/芸術的活動を他の活動と区別するという提案には反対し、この懸念を基に、第24条1の改正を提案し、第24条1と第24条4をまとめ、両方のタイプの活動に参加する権利を扱うことを提案した。(第24条2及び第24条3は基本的には変わらないまま残される。)改正案では、ニュージーランドはいくつかの他の懸念も解決しようとしている。現在の第24条4は、参加者が様々なレベルへと上達していくという、スポーツの競争性に関連しているようである。しかし、他の文化的活動もまた、競争するしないに関わらず、地域、地方、国内及び国際的なレベルで、向上を追求していくものなのである。更に、可能性を開発し、利用する機会は創造的及び芸術的試みと同様、身体的活動にも適用されるべきである。第24条1の冒頭部分の修正は、子どもの権利条約を含む他の国際人権法からの文言を使用することを目的としている。第24条1(b)の「平等を基礎として」という文言は、いくつかの活動は私的な活動で、一般の人には利用できないという事実を考慮している。ニュージーランドは第24条4(c)は二つの大きく異なる考えを含んでいると指摘し、サブパラグラフの後半部分を、教育制度内だけでなく、すべての文化的活動、余暇及び身体的活動への障害のある子どものアクセスを扱うよう、そしてそれを子どもに関する条文に移すよう提案した。ニュージーランドは第24条3を削除するというEUの提案には、聴覚障害者の文化的発展にとって手話は不可欠であることから、反対した。しかし、他の障害者グループの文化的アイデンティティーもここで扱うべきかどうかについて、検討することを勧めた。ニュージーランドは第24条2から「国際法の規定を尊重すると同時に」を削除するというタイの提案には反対し、この文言はこのパラグラフの実施を妨げることはないとした。

ケニヤは題名を「文化的活動、宗教、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加」と変更することを提案した。そして次のような新しいパラグラフ、第24条4を紹介した。「締約国は、障害のある人が、自己が選択する宗教を実践する基本的な権利を認め、次のことを確保するための適当な措置を講ずる。
(a) 精神性を開発し、信仰を実践する機会を享有すること。
(b) 参拝所、神殿及び宗教上重要な場所を訪れること。
(c) 信者の共同体に所属し、集会や参拝の一部分である儀式、祭典及び洗礼に完全に参加できること。
(d) 適当な宗教教育を受け、各自のニーズに最も適した形式の指導を受けること。
(e) 宗教的な虐待、搾取及び弾圧から保護されること。

イスラエルはいくつかの修正案を提出した。第24条1の冒頭部分は、「確保する」の前に、「最大限公平な法律として含め、」という文言を挿入する。第24条1(a)には、「地域社会」に「及び社会全体」と付け加え、「知的」という言葉の後に「及び身体的」という文言を追加する。また、第24条1(d)では、「図書館」の後に「コンサート及びその他の音楽的パフォーマンス」を挿入し、「可能な限度において」という言葉を、「可能な限り最大限に」と書き替える。第24条3は、「ろう者」は、「あらゆる種類の障害のある人」と差し替える。そして第24条4の最後の部分に、「以下のすべてを最大限公平に行う」と付け加える。第24条4(d)では、「余暇」の後に「観光」を追加する。

日本は第24条1の冒頭部分に関するEUの修正案に同意し、ここで論じられているいくつかの問題は、経済的な理由から、政府よりもむしろ民間セクターによって扱われなければならないと指摘した。第24条2については、日本は文の最後の部分は、「同時に」を「国際的な合意に従って」に替えて、国際的な合意に従うように強化することを提案した。そして第24条3は2(d)で扱うべきことであるとして削除するよう提案した。日本は第24条4の要点は支持したが、これはあまりに規範的すぎ、もっと簡単にする必要があるとした。

グアテマラは、2つの提案をした。第24条2では、知的所有権は障害者にとってこれまで障壁ではなかったとして「極端かつ差別的な」を削除することを提案した。第24条4では、「他の者との平等を基礎として」を削除するよう提案した。

カナダは、これよりも更に原則に基づく、またこれよりも規定的でない条文を支持した。第24条1の冒頭では、EUによって提出された改正を支持した。そして第24条1(b)、(c)及び(d)があまりに詳細すぎ、互いに、また特にアクセス問題を扱った他の条文と重複しているというニュージーランドの懸念を繰り返した。そして、第24条1(b)について、時代遅れになってしまった技術を列挙しているという問題点を指摘し、ニュージーランドが出した改正案を支持し、サブパラグラフを短くし、特定の形態に関する言及を削除することを提案した。第24条2では、「差別的」を残す一方で「不合理」を削除することを提案した。そして第24条4は、スポーツに関する大変重要な問題を専門に扱っているのでそのまま残すとした。第24条4(c)についてはこの内容が、場所へのアクセスと、子どものレクリエーション活動への参加という二つの問題を扱っており、どちらも条約の他の部分で扱われている、或いは扱うことができるというニュージーランドのコメントを繰り返した。カナダは第24条4(d)で何が意図されているのか分からないと述べ、明確にするか或いは削除するよう求めた。

韓国は、障害者のスポーツ活動に関する第24条4(a)に重要性を置いたカナダの意見に追随した。このサブパラグラフの範囲を広げるために、韓国は「及び障害のある人のニーズに合わせたスポーツ活動を、障害者向けのスポーツとともに促進すること。」と付け加えることを提案した。

ヨルダンは文化的活動及びスポーツの両方をこの条文に残すことを求めた。なぜなら、それは「精神と身体を一つにする」からである。そして更に「魂」という要素を加えるため、宗教を含めるというケニヤの提案を支持した。ヨルダンは第24条1(b)を次のように替えることを提案した。「文化及びスポーツに関わる器具、活動、サービス及び施設への公平なアクセス及び参加を享受すること。」サブパラグラフ第24条1(c)及び(d)は、そこで述べられている概念が前の条文に盛り込まれているので削除する。第24条4はすべて削除する。

中国は、「漸進的」を「適当な」の後に挿入することにより、徐々に進めていくことを付け加えることを提案した。パラグラフ24条2は、障害者の文化へのアクセスを確保する方法に焦点を当てるべきであり、締約国が、障害者に対する差別を引き起こさないような知的所有権の保護に関する自国の法律を、どのように作成するべきかを規定するべきではない。なぜなら、各国には法律以外にも、障害者が文化にアクセスすることを保証する他の手段があるからである。更に、不必要な矛盾を避けるために、知的所有権を保護する特別な国際法もある。中国は委員会がこのパラグラフをもう一度採り上げ、文化的権利の平等な享有を保証するような文言に替えることを検討することを勧めた。中国は委員会に脚注109(第24条3の脚注)に注目するよう呼びかけ、そこで述べられている、アンバランスな文書になってしまうことを避けるために、このパラグラフの内容は他のパラグラフ或いは条文にも反映されるべきであるという考えを支持した。また脚注111を考慮し、障害のない人のスポーツ活動は障害者のニーズには合わない可能性があり、パラリンピックのような障害者向けの活動を企画する必要があるとして、中国は第24条4(a)の「主流に」を削除することを提案した。

バーレーンはこの条文を支持し、第24条4(c)の「教育制度」を「特殊教育制度」とすることを提案した。

コスタリカは、この条文は重大な社会問題との関連性を持つとの考えを示した。なぜなら、生活の質は文化的生活、レクリエーション活動、余暇及びスポーツへ参加する能力に影響されるからである。第24条1(d)では、場所への物理的なアクセスに加えて、サブパラグラフで文化的な代表地の訪問を「楽しむ」こと(例えば火山を見て楽しむこと)についても触れるべきであるとした。第24条3については、現在のパラグラフでは重大な差別を引き起こすので、その点をきちんとわきまえ、次のように文言を替えることを提案した。「締約国はその管轄の下に生活する人が、独自の特別な文化的及び言語的アイデンティティーを持つことを認め、それを支援するためあらゆる適当な措置を講ずる。」第24条4では、コスタリカは「観光を含む」という文言を「レクリエーション」の前に挿入することを提案した。第24条4(b)では、「同一の」を削除し、サブパラグラフの後半部分を次のようにする。「障害のある人の参加を確保するのに適当な指導、訓練及び資源を受けること。」そして第24条4(c)の後に次のような新しいサブパラグラフを入れる。「障害のある人が観光活動にアクセスし、これを享受することができるよう留意すること。」第24条4(c)の「教育制度内の」は「教育制度を含む」に書き換える。サブパラグラフ第24条4(d)は削除する。

モロッコは第24条4(b)の「受ける」の前に「最小限の費用で」と入れることを提案した。

バチカンのローマ教皇庁は、この条文を原則として支持し、ケニヤの発言も支持した。宗教的な慣習はUDHR(世界人権宣言)及び国際法の両方で認められている、侵すことのできない権利である。本条約でこの権利の保護を謳っていることは、重大である。バチカンは人間の生活に精神、身体及び魂という多くの局面を統合するというヨルダンの意見に同意した。

アイルランドは自国の意見として、ケニヤによる提案にコメントした。アイルランドは一貫して宗教及び信仰の自由に関する問題を解決するよう主張してきており、この問題を条文に盛り込むことについて疑問を投げかけるのは、これに興味がないからではない。障害者は既にすべての人権を与えられており、この条約でそれをいちいち繰り返す必要はない。すべての権利は人権に関する二つの国際条約に盛り込まれている。思想、良心、宗教及び信仰の自由の問題はICCPR(市民的、政治的権利に関する国際規約)の第18条に十分に示されており、宗教及び信仰に基づくあらゆる形態の不寛容及び差別の撤廃に関する宣言で詳述されており、更に人権委員会の判決と、過去20年以上もの間アイルランドが唱え続けている決議でも詳しく扱われている。この枠組みにおいて、ケニヤの提案は、障害者の権利を著しく制限するものである。それは意図せずして障害者に関わる宗教の自由に対する別の権利を作りだし、障害者が国際法の下で既に保有する一般的な権利を知らず知らず損なってしまう。アイルランドはこの問題に関し、この条約の中で適当な形で言及することには反対しないが、ケニヤが提案する表現については深い憂慮を示した。

ウガンダは、多くの参拝場は障害者にとってアクセシブルではなく、宗教機関の主催者には障害者のニーズに気づいていない者もいるというケニヤの提案を支持した。このような機関の慣習は障害者にとって重荷であり、もし障害者が自己の選択する宗教機関で参拝する権利を享有しようとするなら、この条約に、これらの機関に関わるものが障害者のニーズを考慮することを保証する規定を盛り込まなければならない。第24条1(d)には、「展覧会」を加えて、「展覧会及び国の文化的に重要な遺跡」とする。第24条3には、「ろう者」の後に「及びろう盲者」と加える。第24条4(b)では、ある種の障害のある人には同一の指導を受けることはできない可能性があり、「必要な」の方がより適切な言葉なので、「同一の」を「必要な」に書き換える。また、ウガンダはケニヤの第24条4(d)への修正案を支持し、次の新しいパラグラフを第24条5として紹介した。「締約国は、この条文にあるすべての権利の享有に対する、あらゆる差別的な社会的障壁を取り除くため、すべての適当な段階的措置を講ずる。」

タイは、代表の中には知的所有権法の影響を誤解している者がいるとの懸念を表明した。知的所有権及び著作権を保護する現行の法律は、障害者が文化的な作品にアクセスする際に、確かに差別的な障害を引き起こし、かつ/或いはそのような障害につながるという証拠がある。この条約では、知的所有権及び著作権の保護を目的とする国内法及び国際法が、障害者の資料へのアクセスを制限することのないよう、保証する方法を見つけなければならない。

ナミビアは、題名に「宗教」を入れるというケニヤの提案を支持した。第24条4(a)の「奨励する」は「確保する」に書き換え、「主流に参加すること」は「統合されること」に書き換える。そして「国際的な」の後ろに、「あらゆるレベルの」を挿入する。第24条4(b)では、「同一の」に替えて「必要な」とする。またナミビアは新しい第24条4(e)を提案した。それは次の通りである。「女性の障害者や難民の障害者のような、複数の形態の差別を受ける障害のある人の、スポーツ、レクリエーション及び余暇活動への参加を確保すること。」

フィリピンは、締約国が認識し、支持すべき問題の一つとして宗教を盛り込むという、ケニヤ、ウガンダ、バチカン及びナミビアが出した提案を支持した。

議長は関心のあるNGOからのコメントを受け入れた。

国際育成会連盟(II)は、音楽のように、スポーツは知的障害者及びすべての人に対して自己表現の機会を提供すると述べた。音楽とスポーツは人々を一つにし、また障害に関わらず、人々がともに理解し、賞賛することができる。そこで、誰もが自信と自尊心を持てるよう、また誰もがチームの一員であるかのように感じられるよう、支援することが必要である。スポーツは統合されなければならない。IIはスペシャル・オリンピックを越えて、スポーツにおける真のインクルージョンへと移行していくことの重要性を強調した。

ランドマイン・サバイバー・ネットワーク(LSN)は、この条約に、レクリエーション、スポーツ及び余暇への参加とともに文化的な活動へ参加する権利も盛り込むことを完全に支持した。障害者のスポーツやレクリエーション活動への参加は、身体の健康や精神の健康及び社会統合に貢献する。しかし障害者がスポーツやレクリエーション活動に参加できない例は大変多い。スポーツ、レクリエーション及び余暇に対する権利に関する強い規定は、これらに参加することの、個人及び社会の両方にとっての重要性に対する意識を高めることに役立つであろう。LSNはスポーツ、レクリエーション及び余暇について別の条文で扱うというイエメンの提案を強く支持した。国連の障害者の機会均等化に関する基準原則(UN SR)では、文化を扱う規則とスポーツ及びレクリエーションを扱う規則という、別々の規則が設けられている。条文を分けることにより、それぞれの権利に関する問題を十分詳しくすることができ、また締約国が実施及び監視するのを支援することができる。LSNは宗教を加えるというケニヤの提案を支持した。また、現在の文書は障害のある子どもの遊ぶ権利について言及しておらず、このことは子どもの権利条約(CRC)のような現行の法律からの離脱を表しているとの懸念を示した。そして障害のある子どもが年齢に適した遊び、余暇及びレクリエーション・スポーツ活動にアクセスする権利を特に扱った新たなサブパラグラフを加えることを提案した。

障害者オーストラリアオーストラリア・インコーポレイテッドオーストラリア地域法律センター全国協会、及びオーストラリア障害組織連盟はこの条文の規定を賞賛した。そして知的所有権法(著作権を含む)によって生じる障害の撤廃は単に文化的情報だけでなく、すべての情報に適用されると述べ、この条項は第19条2(アクセシビリティー)でもっと総合的に扱ってもよいと提案した。第24条1(d)では、文化的に重要なすべての方面の場所をアクセシブルにすることを明確にするために「展覧会及び国の文化的に重要な遺跡のすべて」とする。LSN及びその他の代表が提案したように、第24条4(b)では、障害者はスポーツに参加するために特別な支援を必要とする可能性があるので、「必要な」を「同一の」の代わりに入れる。第24条4(c)に盛り込まれた考え方は、混乱を避けるため2つの条文に分ける。またこのパラグラフの中の、「開催地」に続けて「施設及び機関」という言葉を入れる。宗教的行事への参加及び宗教的な場所へのアクセシビリティーもまたこの条文で取り扱われるべきである。

セーブ・ザ・チルドレン(SCF)は、他の障害がない人々と同様に、人格、可能性、及び表現の発達に娯楽の権利が果たす役割の重要性を強く主張した。児童、青年、及び成人の障害者が社会性を発達させるために、娯楽及びスポーツが重要であることを認識し、SCFは以下の新しいパラグラフを挿入することを勧めた。

「締約国は、すべての障害のある児童及び成人の娯楽の権利を認め、かつ、次のことを確保するための、すべての適当な措置を講ずる。

(a) 障害のある人が、他の者と対等に、潜在的な人格及び表現力を発達させる機会を有すること。
(b) 障害のある人が、社会生活に順応し、友人を作り、社会に参加する機会を有すること。
(c) 障害のある人が、他の者と対等に、行楽地を訪れ、またイベント及び活動に参加すること。
(d) 障害のある人が、他の者のように娯楽を始め、またこれに参加するのに必要な支援を受けること。

第24条1(b)には以下の文言を追加する。「そして同様なアクセシビリティーが、障害のある児童に適切な、文学的及び文化的な作品にも適用されること。」

世界盲ろう連盟(WFDB)は、スポーツ及ぶ文化が同じ条文で扱われていることに対する憂慮を示し、これらを分けるよう勧めた。盲ろう者は他と異なる、触覚の世界で生きている。そしてその結果、忍耐、慎重、集中というような特性を発達させる。これらの特性は、芸術家に必要とされており、それ故、彼らにとって文化は単に消費するものではなく、実行する権利でもある。WFDBは、盲ろう者にとって文学及びその他の作品にアクセスすることが、著作権法の強化によりますます難しくなっていることから、タイの提案を支持した。

北東大学社会スポーツ研究センター(Northeastern University Center for the Study of Sport in Society)は、イエメン、南アフリカ及びナミビアの第24条4に関する提案と、第24条4(a)に地域レベルでの参加を盛り込もうとするニュージーランドの奮闘ぶりを支持した。この条文は、「地域的、国内的及び国際的な」に替えて「参加するすべてのレベルにおいて」と改正されるべきである。また同センターは、第24条4(b)に「障害者向けの」と入れる韓国の提案について、この規定は、障害のある選手が同様な障害を持つ他の選手とともに参加できるスポーツプログラムを開発する意志を反映しているとして、これを支持した。条約は障害者をスポーツ活動の「主流」に参加させるという、率直な見解を述べている。しかし、第24条4(b)では、第24条4(a)の規定との重複を避けるため、障害者向けのスポーツについて言及することが必要である。同センターは、第24条4(b)の「同一の」を「必要な」に書き換えるというウガンダの提案を支持した。

世界ろう連盟は、自己の持てる限りの可能性と人格の発達に、この条文が重要である点を指摘した。そして特にろう者にとっては、言語がアイデンティティーの発達の基礎となるのでこのことが当てはまると述べた。ろう者の文化は視覚に基づいている。ろう者の言語、アイデンティティー及び文化の権利は、手話が他の文化との溝をうめてくれるので、社会からの隔絶を意味するものではない。これらのろう者の文化的及び言語的権利が認められなければ、ろう者はその十分な創造性、芸術性及び知的可能性を発展させることができないであろう。

世界盲人連合(WBU)は、第24条2に関するタイの提案を強く支持した。学校の教科書でさえも著作権法の適用を受け、時に視覚障害者にとってアクセシブルにすることができないからである。また第24条1(c)については、WBUは文化的な作品へのアクセス手段として、音声による説明への言及を文言に加えるよう提案した。

国内人権機関は、この条文を文化的生活を扱った条文と、レクリエーション、余暇及びスポーツを扱った条文の2つに分ける価値を認めた。また、第24条3を残すよう勧めた。

アラブ障害者団体は文化的生活をレクリエーション、余暇及びスポーツと分けるよう勧めた。これは障害者にとってスポーツは唯一のレクリエーションではなく、身体的及び社会的観点から見てリハビリテーションもかねているからである。同団体は、イエメンの提案を支持した。

ユダヤ教進歩主義世界連合は第24条を入れることを支持し、宗教活動及び儀式へのアクセスを有する権利を加えるという提案を完全に支持した。同連合は、すべての文化的及び宗教的作品をアクセシブルにすることを奨励する新しいパラグラフを提案した。

WG草案文書付属書 国際協力

議長は、WGによる国際協力に関する条文の草案は特にないことを告げた。しかし、この問題は付属書IIの討議要約にまとめられている。

メキシコは国際協力(IC)問題について別の条文を設ける必要があると主張した。WGは、条約の条項の実施に対する義務は国内の機関に課せられるとしながら、条約で設定された目標の達成のために行われる支援活動において、ICの相互補完的な性格は重要な要素であるという点で合意を得た。メキシコは新しい条文の草案を提出した。これには協議で出された様々な見解が盛り込まれており、それに法律文書や法律の枠組みの中で見られるICに関する記述が続けられている。提案された追加条文では、誤解や歪曲を避けつつ、様々な関係者を認め、この条約におけるICの明確化をはかろうとしている。提案された条文は次の3つの部分に分けられている。1)国内でのIC及び国家間のIC、2)国と地域団体及び国際団体との間のIC、そして3)市民社会内或いは民間セクター内でのIC及び市民社会と民間セクターとの間のIC」。この条文案の作成においてメキシコは、委員会に出された様々な国際的法的拘束力を持つ法律文書、決議及びその他の文書、提案及び出版物について、障害者に適切な基準を使い検討した。

アイルランドEU代表として、すべての人権法では条項の実施及び達成は、本質的に個々の締約国の義務であると強調した。締約国による条約の義務の実施は、いかなる場合も決して国際的な援助或いは支援を受けることを条件としてはならない。障害者はすべての人権と基本的自由を享有しなければならず、非差別に向けた締約国の義務はICがないという口実で回避されてはならない。委員会は、条約の効果的な実施に役立てられる経験、知識及び実践原則を国際的に共有し、かつ交換することに関する規定を盛り込むことを検討するべきである。EUは、新しくEUが提案した第2条の一部にICについて盛り込み、序文にもICに関する適切な記述を入れることを提案した。

タイはこの条約の実施に必要な構造として、この条文を入れることを支持した。特にメキシコ案の1(c)に反映されている概念を支持したが、これを次のように修正することを提案した。「現行の及び将来のIC活動、ICに関する合意及びプログラムが障害者にとって包括的であることを確保すること。」メキシコ案の1(d)では、「機器」をより広い意味を示す「技術」に書き換えるべきであるとした。

議長は、メキシコによる条文案はWGによる正式な提案ではないので、事務局はこれに対する修正はしないと告げた。

南アフリカはアフリカグループのコーディネーターとして、ICを条約の別の条文にすることを支持した。そしてメキシコによる提案を支持した。ICは3つの段階において重要である。1)政府レベル、2)非政府レベル、3)国際機関の枠内。技術、能力向上、情報交換その他の問題が、この提案の中で強調されなければならない。

中国はこの条約の目標を実現するためにICが重要であるとの考えを示した。そしてICの概念を条約に盛り込むことを原則として支持し、それには条文を別途設けるべきであるとした。

インドは提案された条約の漸進的実施が、各国政府の主要な義務であるという点に同意した。しかし、ICの仕組みを通じて、この過程を強化することができると認めた。インドは、これを別の条文にするという他の代表の意見に同意し、メキシコの提案を支持した。しかしまた、子どもの権利条約第23条4の「障害を有する児童」を「障害のある人」に書き換えた、「締約国は、国際協力の精神により、予防的な保健並びに障害のある人の医学的、心理学的及び機能的治療の分野における適当な情報の交換(リハビリテーション、教育及び職業サービスの方法に関する情報の普及及び利用を含む。)であってこれらの分野における自国の能力及び技術を向上させ並びに自国の経験を広げることができるようにすることを目的とするものを促進する。これに関しては、特に、開発途上国の必要を考慮する。」という表現も受け入れると述べた。

メキシコはこのICの問題に関する手続きを明確に説明するよう求めた。

議長は、WGによって提案された条約の草案では、このような文言を入れることについて全く同意が得られておらず、その代わりに付属書がこれに関する討議を示しているので、委員会は現在、全く違ったタイプの方法で協議をすすめていると答えた。それ故、委員会全体がWGによる報告書の付属書を初めて検討する今の時点で、草案の討議にはいるのは適切ではなく、草案を作るかどうかについても、もっと後の段階で決めるべきであると述べた。

午後セッション
開始時刻 午後3時10分
中断時刻 午後5時23分
再開時刻 午後5時59分
終了時刻 午後6時

国際協力に関する討議は終了し、これを条約の草案文書に入れる方法について他にいくつか意見が述べられた。セッションの後半は、第4回特別委員会及び翌日の議題に関する手続き上の問題と、NGOが非公式協議に参加できるかどうかの問題に関する討議に当てられた。

国際協力(続き)

レバノンは、この条約の実施を確保するため、ICを序文及び独立した条文に盛り込むことを支持した。ICは必ずしも世界的な協力を意味するわけではない。レバノンはメキシコと中国が提案した文書をおおむね支持した。メキシコの草案は完全かつ包括的である。レバノンはこれを更に検討したい。

ヨルダンは他の問題と同様、障害問題についてもともに協力することが重要であると同意した。ICは一般的義務に入れるべきで、別の条文に入れるべきではない。

イエメンは、締約国が義務に従って行動するのを助けるため、条約でICについて非常に明白に言及する必要があると述べた。これは締約国による不活動につながることはない。ICには専門知識や情報の交換及び経済援助が含まれ、例えば義援金を障害者のために取っておくことが考えられる。イエメンはレバノンに同意し、ICについて序文と個別の条文の両方に記すべきだとした。

オーストラリアはこの条約の実施は国家の責務であり、条約の遵守は、国際的な支援を得ることを条件にすべきではないとして、EUに同意した。オーストラリアは条約中でICについて言及することには異論はなく、可能性としてはEUの新しい条文2或いは序文で、個別の条文に代わる形か、或いは個別の条文への追加の形で盛り込むことが考えられる。もしICを定義するなら、できるだけ広い意味を持たせて定義するべきである。

イスラエルは障害の分野はあらゆる種類のICを進めるのに非常に適した分野であると述べた。そして、条約は国内で実施される事柄であり、ICに依存するべきではないという意見に同意した。しかし、その重要性を鑑み、ICは序文に入れるだけでなく、個別の条文でも取り扱われるべきであるとした。イスラエルはメキシコの提案に対するいくつかの修正を勧めた。障害者は障害者として認められるのが難しいので、次の新しいパラグラフ1(f)を追加する。「様々な社会保護を目的とした、地域的な或いは国際的な障害者証明書の問題に関して最終的な合意を得ること。」障害者にとって研究が重要であるので、2(e)に「二国間、地域的及び国際的な研究及び開発基金の設立を含む」を追加する。サブパラグラフ3(a)には「様々な国における、地域機関及び地方自治体機関の間での提携及び協力に関する合意を含む」という文言を付け加える。ICは、条約の実施について国際的及び国内的に監視することの必要性とは区別される。

パレスチナは、ICはすでに実施されていることで、特にユニバーサルデザインの分野については、個別の条文を設けることが重要であると指摘した。経験の交換は、締約国がアクセシビリティーの概念を実施できるようにするため、不可欠である。締約国は障害者の権利に関する情勢について、情報提供しなければならない。

メキシコは各代表の提案が事務局の修正案に反映されていないことへの懸念を示し、これを要求した。アイルランドはその後この件につき説明を求めた。議長は各代表の発言は事務局が記録するということに同意した。アイルランドは、EUはこの手続きに全く異存はないと述べたが、これらの記録に当たっては、条約に盛り込むかどうかに関する先入観を持つことなく行うべきだと指摘した。

ジャマイカは条約の実施を確実に成功させるため、ICは条約のすべての段階において、基本的原則でなければならないと述べた。補助器具開発のための技術的支援が必要であるが、補助器具は障害者が殆ど関わっていないところで作られているので、技術コストが高くつく。技術が広い分野に適応さることにより多くの障害者がもっと低いコストで補助器具や補助機器を入手できるようになる。ICはまた、先進国の再保険者が、発展途上国に住む障害者に対する保険を認めようとしないことにより生じている生命保険の問題の解決にも役に立つ。

コスタリカはICに関するメキシコによる徹底的な研究を賞賛した。しかし、オーストラリアに同調し、メキシコが提案する文書はあまりに詳細すぎると述べた。ICは序文と個別の条文の両方に入れるべきである。また南北間の協力及び南同士の協力の両方が必要である。

ニュージーランドはメキシコの提案を十分に検討する機会がなく、ICの概念をどこに入れるかについて、つまり、新しい条文に入れるか或いは既存の条文に入れるかについては何も意見を述べなかった。しかし、この概念は条約に盛り込むべき重要なものであるとした。メキシコのアプローチは長すぎ、また詳細すぎて、法的拘束力を持つ条約の文言としては適切ではない。これはこの条約をめぐる多くの議論を反映しており、詳しい文言を好む代表もいれば、より一般的でありつつ法的に強制可能な文言を望む代表もいる。ICに関するどの部分も、条約の残りの部分と同じアプローチを取らなければならない。

キューバは、ICは発展途上国における実施を促進すると述べた。そして連帯の精神が反映されなければならないと指摘した。メキシコの提案は徹底的かつ包括的である。ICの促進はこの条約の目的でなければならない。

マリはこの条約におけるICの原則を個別の条文に入れることを支持した。協力は、南北間のものと南同士のものの両方が考えられる。ICは依存を意味するのではない。誰も大きくないし、誰も小さくないからである。

アルゼンチンは、ICは条約の目標及び目的を達成するための重要な手段であるが、義務ではないと述べた。そして序文と一般的義務で国際協力に言及している子どもの権利条約(CRC)の文言を使うことを支持した。CRCの第4条は、以下の通りである。「締約国は、この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずる。」また、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(ICESCR)では、「締約国は、自国における利用可能な手段の最大限の範囲内で、また必要な場合には国際協力の枠内で、これらの措置を講ずる。」と規定している。

フィリピンは、この委員会に参加している加盟国は、障害者の権利を促進し保護するため、国際協力の精神で取り組んでいるので、ICはこの条約にとって不可欠であると強調した。そしてメキシコの提案を支持した。

グアテマラは、ICが障害者の完全な権利の発展に極めて重要であると信じており、序文に入れるだけでなく、個別の条文を設けることを支持した。そしてメキシコの文書にある原則を支持した。

トリニダードトバゴは、この条約の実施は南北間及び南同士の協力によってより実施しやすくなるという理由から、ICに関する個別の条文を設けることを支持した。

ノルウェーは、この条約の実施は締約国にゆだねられていると強調した。ICは実施の条件にはなり得ない。ICについては、国の努力を奨励するために、文書中で言及されるべきであり、簡潔かつ原則に基づくべきである。メキシコの草案は興味深いが、あまりに詳しすぎる。

ベトナムは中国が提案した条文を支持し、これにベトナムが考えた文言を追加することを提案した。

カメルーンは、この条約の実施を支援するためICを駆使しようという観点から、メキシコ及び中国が提案したような、ICに関する個別の条文を支持した。そして同国がこの条文の文言を考案すると述べた。

日本は個別の条文を設けることを支持した。日本はICの欠如はこの条約を実施しない言い訳になる可能性があると憂慮し、ICによって実施が促進されるであろうと述べた。そしてICは情報交換、実践原則の交換、及び南北間、南同士、そして北同士の協力を含むという信念を語った。同国は、メキシコ及び中国の提案を検討する予定であるが、メキシコ案の2(e)にある、「二国間、地域的及び国際的な経済協定を促進し」という文言が、新たな機構を作ることを意味するのか或いは既存の機構を利用することを意味するのか明確にするよう求めた。

カナダはこの問題の難しさを強調し、条約は国の責務であり、締約国の義務を減じるためにICが利用されることがあってはならないとして、慎重に草案を作成する必要があることを主張した。そしてプログラムに基づいた内容ではなく、原則に基づいた内容として、ICについて序文で言及することを支持した。

チリは、序文が条約の場面を設定しているとして、ICを序文に盛り込むことを支持した。ICはまた、締約国への勧告のため、個別の条文にも載せるべきである。

コロンビアは、ICはコストがかかるものではなく、投資であるとして、個別の条文を設けることを支持した。ICにより、供与国と被供与国の両方が利益を得る。

メキシコは、日本の問いに答えて、適当な機構を背景に持たない権利は役に立たないと述べた。この条約の中には多くの新しい基準が記載されており、各国はこれらの新しい基準を実施するための支援を必要とするであろう。メキシコ案のパラグラフ2(e)は新たな機関を設けることを意味しているのではなく、既にある資源を利用すること、そしてそれらのプログラムに障害者の平等な権利の享受を盛り込むことを意味している。

委員会はNGOからのコメントを受け入れた。

特別報道官は、この条約の実施には、国際コミュニティー全体の道徳的な義務があるということを確言した。ICを個別の条文として盛り込むことは、絶対に必要であることとして示すことであり、またこれを序文に入れることはこの条約を再確認し、強化することになる。ICは必ずしも物質的な協力だけを意味するのではない。それはまた情報、知識、統計、技術、研究及びコミュニケーションや教育を改善する手段の交換のような技術協力も含んでいる。また、国際機関、国内機関及びNGOなど、すべてのレベルの機関が果たす役割を強調しなければならない。

ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)は、開発を担当する国連の機関として、障害者の権利の完全な享有を確保するための国際的な技術協力に重点を置くことを支持した。ESCAPは、この権利を現在の文書とバンコク草案の序文に盛り込む考えを述べた。しかし、技術協力の実施に関する詳細な手段は、付属文書か或いは実施ガイドライン、勧告又はILOが提案した任意の条約議定書でもよいが、これらのような別の文書にいれるのがより適切かつ効果的とも考えられる。

国内人権機関は、障害者の人権を実現するための締約国の活動を支援するICには多くの形態があると指摘した。一つの効果的な形態は、国内人権機関との協力であり、これまで、両者及び地域全体をも巻き込んで、多くの分野において同機関の現実に即した技術的知識及びその他の経験を、互いに共有してきた。発展途上国間のあらゆる方向に向けたこのような情報及び経験の交換を含む協力は、この条約の実施に非常に役に立つ。NHRIは、もしICに関する特別な条文がこの条約に盛り込まれるのなら、これら機関の役割をその条文の中で認めるよう要求した。

ランドマイン・サバイバーズ・ネットワーク(LSN)は、この条約にICを盛り込むことを要求した。これまで、世界中の地雷の被害にあっている社会及び紛争後の社会がLSNのネットワークを通じて情報と経験を共有してきたことには計り知れないほどの価値があった。各ネットワークは特有の問題に直面しているが、共通の、共有できる経験、目標及び解決手段を持っており、もしこのようなネットワークを通じた協力の仕組みがなければ、分かり切ったことを1からやり直してしまう恐れがある。そしてすべての国もまた、もしICが条約実施の支援手段として盛り込まれなければ、この危険に直面するのである。東西南北、どこの国々も皆同じように、お互いから学ぶことができる。ICを入れることは、一般的原則としてだけでなく、実施手段としてもまた重要なのである。数々の重要な人権条約の本文では、締約国の義務の実施における技術協力の必要性が繰り返し唱えられてきた。国連のミレニアム開発目標(MDGs)に明解な障害問題の視点が欠けていることを考えると、開発分野に関わるICについてこの条約に盛り込むことは、MDGsが障害者の権利のために貢献することを確保するのに役立つであろう。ICは、数多くの現行の国際法、すなわちICESCR、CRC、事実上すべての環境条約、及びWHOによるたばこ規制枠組み条約を根拠としている。

ハンディキャップ・インターナショナルは、知識及び経験の交換に基づくICは、資源の無駄を省き、この条約を効果的に実施するために必要であると主張した。国際機関による紛争後の国々の再建プロジェクトには、何十億もの資金が費やされているが、これによってアクセシビリティーへの障害が取り除かれるかというと、むしろ新しく作られているといった方がよい。更に、障害者団体が行動計画の作成と監視に参加することによってのみ、この条約を正当に実施することができる。

障害者オーストラリア・インコーポレイテッドオーストラリア地域法律センター全国協会オーストラリア障害者組織連盟国際育成会連盟(II)全米障害協会コスタリカ障害者人権フォーラム及び全国障害者組織連盟は共同で、系統立ったICの枠組みに関するメキシコ及び中国代表による提案を支持した。世界に6億人いる障害者のおよそ3分の2が発展途上世界で暮らしている事実を考慮し、この条約の事実上の実施には、発展途上世界に対する資源、知識、技術援助及び政策に関する助言の提供が不可欠である。障害者は貧しい人々の中でも最も貧しい者であることが多く、このような障害者がこの条約から利益を得るためには、ICは必須である。ICは北から南への援助とは限らず、発展途上国間でも、アクセシビリティー基準の一致や非国家主体の規制に関して、また知的所有権及び著作権法のような構造的な障害の撤廃、電話通信、保険及び民間航空の分野で行うことができる。ICがしばしば情報交換以上のことを伴い、また実質的な資源の移動が既に多数の国々の銀行及びNGOを通じて行われていることを認識することが重要である。現在の援助計画は、障害者に対する障壁を除くのではなく、むしろ新たに障壁を作ってしまうことがよくある。例えば、アクセシブルでないインフラストラクチャー、或いは障害のある児童が参加することができない教育プログラムなどがこれに当たる。供与国と被供与国の両方が、障害問題を主流に据えなければならない。DPO(障害者団体)は、監視と国内における条約の実施におけるその重要な役割を考慮すれば、この枠組みの中で支持されなければならない。上記団体の各代表は、すべての国がICを前提とすることなくこの条約の規定に従う火急の義務を受け入れなければならないというEUの見解を強く支持した。

世界盲人連合は、障害問題はすべての国際開発協力において主流に組み込まれなければならないと主張した。ICへの言及が序文でなされても、或いは個別の条文でなされても、そのいずれに関わらず、この条約では発展途上国及び先進工業国の両方の、ICに関する義務を認めなければならない。

リハビリテーション・インターナショナル(RI)は、例えばアクセシブルな建造物、保健医療、教育及び技術など現行の開発協力を障害者のニーズに一致させる強力な文書の必要性を特に主張した。南北間の技術協力には、視察、研修/科学交流プログラムなどが含まれ、また、南同士の協力には、実践原則、ネットワークづくり及びワークショップが含まれる。これらは障害者を取り巻く状況を現在の水準にまで向上させる上で極めて重要であった。RIはまた、いくつかのNGOの立場について誤解を解くことに努めた。NGOはこのような条約を実施する責任は政府にあること、またICが、ある国が「他の国へ請求書を送る」ということではないということは認識している。しかし、ICはこの条約の目標を実現するための重要な手段となりうる。

欧州障害フォーラムは、ICは不活動の言い訳として利用されるべきではないというEUの見解を支持した。この条約から生じる義務はICの存在に依存するべきではない。しかし、メキシコの提案の要旨は喜んで受け入れる。ICは情報交換に関する限り、「分かり切ったことを1からやり直す」のを避ける手段である。障害者は、多国間及び二国間の協力に参加する必要がある。現在、先の発言者達によって強調されたように、公共の資金が障害者を排除する新たな障壁を設けるために使われ続けている。

世界盲ろう連盟は、メキシコと中国がこの件に関してイニシアティブを発揮したことに対し、謝辞を述べた。同代表は、過去10年間、ICによって世界中で盲ろう者団体が新たに結成されてきたと指摘した。このために各国に協力を求めることは難しかったが、ICに関する条文があれば、各国が障害者コミュニティーの存在に目を向けるのに役立つであろう。

障害者インターナショナル(DPI)は、その会員の80%が発展途上国で暮らしていると述べた。ICについては更に議論を進める必要があるが、この条約を障害者にとって役立つものとするには、ICの問題に取り組むことは非常に重要である。

アラブ障害者団体はICを序文と個別の条文の両方の形で盛り込む必要があると主張した。そしてレバノンの提案を支持した。ICには専門家の交流、研修、研究の実施、また障害問題に関わる世界中の活動家と政府官僚及び障害者の間の連絡を活発にすることが含まれる。

世界ろう連盟(WFD)は、IC及び多数の段階における協力を支持している。全ての人のための情報社会、ミレニアム目標及び貧困削減計画などの国連の活動では、障害者について考慮する必要がある。障害者は、世界のコミュニティーに貢献できる情報及び資源を持っている。WFDは条約でICに関する個別の条文を作ることが必要かどうかははっきりといえないが、序文には入れる必要があると考えている。

ICの枠内で活動しているILOは、ICはすべての国際開発活動において障害問題に関わる要素を促進する必要があり、更に貧困削減プログラムに資金を提供している世界銀行及び国際通貨基金(IMF)にもこれを広げる必要があると指摘した。障害者問題をこれらのプログラムに組み込む必要性に注意を促すことによって、この条約は重大な貢献をすることになるであろう。

チリは裁判を受ける権利に関する条文を提案し、障害者はこの基本的な権利を得るのが難しいと述べた。同国が提案する条文は以下の通りである。「締約国は、係争に関わる訴訟手続き、或いは係争に関わらない訴訟手続きにおいて、障害者が正義を申し立てる法的能力を促進するため、法律への適切なアクセスを保証しなければならない。」司法機関は、この権利が保証されるよう、裁判官及び裁判所職員に対する研修を行わなければならない。同代表は、また「条約の解釈基準」を提案した。条約の規定は、障害者の権利に対するいかなる侵害も避けるために、常に障害者に有利なように解釈されるべきである。

メキシコはチリに対し、これら2つの提案を感謝した。原則として、これらの提案、特に二番目の提案はAHCによって検討されるべきである。メキシコは、AHCに以下を条約へ追加することを検討するよう提案した。「この条約は、障害者にとってより有利ないかなる規則或いは法律をも損なうべきではない。」

議長はすべての参加者に対し、率直かつ民主的に、お互いを尊重しながら協力して活動してきたことに対する謝辞を述べた。40を越える国々と12のNGOがこの会議で発言した。本会議で同意が得られたように、草案文書の題名、構成、序文、第3条及び第25条の第一読会は8月に開かれる第4回特別委員会へと持ち越される。金曜日には、第1条及び第2条をまとめた草案に関する非公式協議と、もし時間があれば、第6条及び第9条に関する非公式協議の開催を予定する。AHC事務局(エクアドル、南アフリカ、スウェーデン及びフィリピン)は、非公式協議のやり方について合意に達していない。事務局は次のように、条文に関する討議を担当する「事務局後援国(後援者)」を任命する点では合意している。第1条及び第2条―議長;第4条―アルゼンチン;第5条―リヒテンシュタイン;第6条―フィリピン;第8条―エクアドル;第9条―カナダ;第10条―トリニダードトバゴ;第11条―スウェーデン;第12条―チェコ共和国;第13条―モロッコ;第15条―ニュージーランド;IC―メキシコ。

アイルランドはNGOによる非常に重要な貢献を指摘し、議長に対し、NGOが非公式協議に参加できると確認することを求めた。

メキシコも、後援国の立場から、これらの協議をNGOに対して閉ざすべきではないという理解に基づき、非公式協議の方法を説明することを求めた。同国は、もし何も反対意見が無ければ、NGOが条文に関する協議に参加できること、そして各代表が必要と考えた際に召集される非公開会議だけを、NGOに対して非公開とすることを求めた。今は非公開会議を開く時ではない。メキシコは同国が担当する協議からはNGOを排除しないと述べた。

カナダはメキシコとEUの意見を支持し、条文内のいくつかの問題は関連し合っているのに、別の「事務局後援国」が担当するよう割り当てられていることへの懸念を表した。そしてこのやり方における一貫性について説明を求めた。

カタールはこれらの「事務局後援国」による協議が同時に行われるのか、或いは一度に一つずつ行われるのかに関して説明を求めた。

タイはこれらの協議へのDPO(障害者団体)の参加を支援したいと述べた。そして議長に協議が同時に行われるのか、それとも条文ごとに行われるのか説明を求めた。

議長は、事務局は明日の協議の進め方について同意に達することができなかったと答えた。非公式協議は、各代表がすべての協議に参加できるようにするため、同時には開催されない。事務局は次の会議の予定表を作成する。次回、AHCは後回しにされた序文、第3条、構成、題名及び監視に関する第一読会を行う。そしてその後、残りの過程に取り組む。AHCは第1条から24条(第3条を除く)までと、国際協力に関する提案の第一読会を終了したばかりである。すべての修正案は、各代表が入手できるようになっており、正確性を確保するためにウェブに載せてある。3回にわたる事務局会議が開かれたが、草案の検討方法についてすべての事務局メンバーが同意したわけではなかった。しかし、事務局は後援国、すなわち条文の協議を担当する「事務局後援国」の任命については同意を得た。これらの担当国は次の会議のために条文の文言その他の情報を準備する。議長が理解している限りでは、明日の協議にはNGOの参加は認められない。事務局の中にはこの決定に同意する者もいれば、反対している者もいる。

アイルランドは、明日の協議にNGOが全く参加しないという事務局の決定に対し、どの代表もNGOの参加に反対を表明していないことから、驚きを示した。NGOの専門知識はこの委員会でも認められている。それは政府が持たない、そして実際上持つことができない専門知識である。NGOも参加した交渉を続けることが不可欠である。EUはNGOの前でEUの見解を知らせることを希望し、この決定が再検討されることを期待する。EUはこの点を非常に遺憾に思う。

議長は事務局の見解を説明した。事務局のメンバーの中には、非公式協議はNGOがいないところでの会議を意味すると信じている者がいる。議長の個人的見解は、NGOが参加してもよいというものである。

カナダはNGOの重要な役割を考慮し、もしNGOが参加できないという決まりがあるのなら、カナダは協議担当者の役を引き受けないと主張した(拍手)。更に、すべての非公式協議についてその方法に一貫性を持たせることが不可欠であるとした。NGOの参加が、協議担当者の意向により、ある非公式会議では許され、他の非公式協議では許されないとしたら、不適切である。それは手続きの方法として受け入れることはできない。

ニュージーランド(NZ)は事務局の決定に幻滅したと述べた。そして非公開非公式協議へと移行することに同意しないと述べた。非公開会議は難しい問題を解決するため、交渉の最後の段階では必要かもしれないが、この段階では必要ない。NZ政府の障害問題に対する戦略での基礎的な原則は、NGOと協力して法律や政策を開発するということである。この条約の基礎的な原則は、この条約を実施するためにNGOが協力するということである。もし条約自身がNGOを排除するのなら、皮肉的であり、矛盾している。もしAHCが公開の非公式協議で交渉を進め、それが政府間の交渉なら、NGOは、発言はできなくてもオブザーバーとしては参加できるようにするべきである。NZは、閉ざされた扉の後ではどの条文の協議も担当しないというカナダの決定に同調し、同様の立場をとる。

タイは、条約の精神においてDPO(障害者団体)の積極的な関与を必要としていると指摘した。DPOを条約達成のプロセスから排除しては、それは不可能である。

イエメンも同様に驚きを示した。そしてNGOの参加に反対する者は誰か尋ねた。イエメンはこれらのNGOに隠すことは何もない。会議は各国が国家間の関係について政治的立場を議論している間は非公開にしてもよいが、NGOはこの条約に関与し、また貢献してきたので、すべての議論に参加するべきである。発言者はイエメン政府とNGOの両方を代表し、NGOがすべての議論に参加する必要性を強く主張した。

イスラエルは、NGOと障害者を排除することに強く反対した。そしてこれは条約の精神に反するとして、事務局に考え直すよう熱心に勧めた。AHCは自らが説くことを実践しなければならない。障害者の権利に関する改革を進める上では、「私たちを抜きにして、私たちのことを決めないで」というモットーに示されているように、障害者が自分自身の人生に責任を持つことが極めて重要なのである。協議担当者の中にNGOを入れるべきである。障害者の権利に関する問題を検討する際には、イスラエルは障害者及び障害者団体と協議する。

メキシコは、総会決議とAHCの決議の両方が、NGOの参加に関して参考にできると指摘した。この条約に関する一連の過程は、2年前の当初より、NGOの参加による利益を受けてきた。議長はAHC全体が、非公開会議が必要だと決定するまでの間、これまでの方法をとり続けることを決定するべきである。非公開会議にするかどうかは議長或いは協議担当国による決断とするべきではなく、全体的な決定とすべきである。後の段階で非公開会議が必要になることがあるかもしれないが、今はその時ではない。メキシコは明日の会議は非公式ではあるが、非公開ではなく、AHCが全体として非公式、非公開と決定しない限り、担当国との協議は非公式ではあるが、非公開ではないと述べた。

議長は、個人的には多数の代表のコメントと同意見であるが、自分は委員会の「管理下」にあるのだと告げた。議長は第1条及び第2条についての会議にNGOが参加することに反対する者は誰かいるか尋ねた。

カタールは、NGOの参加を完全に支持すると述べた。そして明日の会議が非公式なのか公式なのか説明を求めた。

議長は質問を明確にした。「明日午前中の会議を公開にすることに反対する者は誰かいるか?」

メキシコは、規則についての自国の解釈を述べ、カタールの問いに答えた。公開会議には、NGOその他が自由に参加できるが、非公開会議はそれができない。非公式会議は、アプリオリに非公開であるとは定義されていない。非公式会議は、公式の議事録や録音を全くとらないという点で、公式会議と区別される。非公式会議の目的は、「文書を整理し、意見をまとめること」であり、新たな提案の正式な記録をすることなく、非公式に議論し、同意に達する可能性がある事項について討議することである。メキシコは、明日は非公式公開会議を開くよう提案した。

サウジアラビアは「文書の編集」の方法について説明を求めた。そして第2次読会の間、各代表は追加提案を出すことができるのかどうか尋ねた。

マレーシアは、メキシコの「公開及び非公開」という用語の解釈は、公開及び非公開会議について言及している、国連の手続きに関する公式用語の解釈とは一致しないと指摘した。国連の解釈では、非公開会議は加盟国だけに公開されるとしている。マレーシアは、自国の閣僚に見解を求める必要があるので、「文書を整理し」とはどういう意味なのか説明するよう求めた。

南アフリカは事務局におけるアフリカグループの代表として、「今後どのように続けるかについて事務局が出した結論に従っていない」ことを深く憂慮すると発言した。この問題に関する長い議論、またアフリカグループが出した提案をもとに、先へ進める平和的な方法を同グループと事務局が更に協議するため、南アフリカは会議の中断を求めた。そして事務局の協議は総会(GA)の決議に従ったものとするべきであると述べた。GA決議では、NGOの参加に関して同意が得られない場合、政府代表だけが参加すると規定している。もしAHCがGA決議から離れる必要があるのなら、共通の理解を得るために更なる議論が必要である。

議長は会議を中断した。会議が再開されたとき、議長は、明日の協議は第1条及び第2条について討議する公式な公開本会議の形で行われるということで、事務局が合意に達したと発表した。


特別委員会のデイリー・サマリーは、ランドマイン・サバイバーズ・ネットワークが発行する。このネットワークは、地雷の被害を受けた6つの途上国において手足を失った者の支援網を持った、米国に拠点を置く国際組織である。このサマリーでは障害者の人権に関する条約の詳細を詰める特別委員会の議事録を扱っている。

サマリーは MS Word形式で www.landminesurvivors.org/library_learn.php. に掲載される。このサマリーは、翌日の午前10時までにwww.worldenable.netおよびhttp://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc3summary.htmに掲載される。
スペイン語(障害者インターナショナル http://www.dpi.org/sp/resources/topics/convencion/boletines04.htm)、フランス語
(ハンディキャップ・インターナショナル http://www.handicap-international.org/esperanza/news/adhoc2004.asp)および 日本語(DINF webmaster@dinf.ne.jp)の翻訳もある。
第3回会合のリポーターはマーガレット・ホルト、ロビン・スチーブンズ、ジュリア・ホワイト、編者はザハビア・アダマリーおよびローラ・ハーシーである。制作アシスタントはアニー・ガウルである。質問および意見がある方はzahabia@landminesurvivors.orgにメールを頂きたい。

ランドマイン・サバイバーズ・ネットワークは、ニュージーランド、メキシコ、タイの代表団、ハンディキャップ・インターナショナルSHARE - SEE プログラムに対して、第3回特別委員会のデイリー・サマリーの作成で支援を頂いたことに謝意を表する。引き続き、財政的または物質的支援を求めている。さらに情報を希望する方はlsn@landminesurvivors.orgにメールを頂きたい。