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「障害者の権利条約」国連特別委員会議長草案に関する意見書

第1部

[第6条〔障害のある女性〕]

○意見
ジェンダーに基づく格差是正のために、前文や、一般的原則、他の関連箇所に加え、障害女性に関する独立した条文を支持する。その内容としては、韓国提案、ファシリテーター提案(2005年8月8日付)、国際障害コーカス(IDC)提案(第7回特別委)に盛り込まれている「障害のある女性が、家庭内外における性的搾取、虐待及び暴力から保護されることを確保する」を盛り込む。
○関連国内施策
障害者基本法の将来の改正に当たっては、障害女性の社会参加、意思決定過程への参画促進に関する記述を盛り込む。たとえば、障害者基本法第17条第3項「中央協議会の委員は、障害者、障害者の福祉に関する事業に従事する者及び学識経験のある者のうちから、内閣総理大臣が任命するものとすること。この場合において、委員の構成については、中央協議会が<障害女性を含む>様々な障害者の意見を聴き障害者の実情を踏まえた協議を行うことができることとなるよう、配慮されなければならないものとすること」を挿入する。現在は、同協議会構成員30名のうち、障害女性は2名に過ぎない。

[第7条〔障害のある子ども〕]

○意見
障害児に関しては、前文および、第3条〔一般的原則〕での言及を行うほか、第7条を障害児に関する独立した条文とし「締約国は障害のある子どもを、性的虐待をはじめとする虐待、搾取、遺棄から保護する。締約国は難民生活を送る障害のある子ども及び障害のある孤児をはじめとする弱い立場にある障害のある子どもの権利を確保する。」を盛り込む。
○関連国内施策
子ども虐待防止法での「障害児」の保護への言及が求められる。また、検討されている障害者虐待防止法で、障害児に特に言及する。

第8条(障害に関する意識向上)

○修正
第8条の見出しは、単に「意識向上」とすべき
○意見 

議長草案が定める第8条(意識向上)はおおむね妥当であり、受け入れられる内容である。ただし、第8条第2項(a)―(ii)にある「セクシュアリティ」は、この条文で残すべきである。

第9条〔アクセシビリティ(利用のしやすさ)〕

○修正・理由
  1. 第1項柱書の「その他のサービスにおける障壁を明らかにし及び撤廃することにより、」を「その他のサービスにおける障壁を見分けかつ撤廃し、また、新しい障壁を防止することにより、」とする
  2. 第2項(a)において、中途失聴者・難聴者のニーズを反映させるため、「公共の建物及び設備において、点字表示及び読みやすく理解しやすい形式・‥」を「公共の建物及び設備において、点字表示、文字表示及び読みやすく理解しやすい形式・‥」とする。
  3. 第2項(b)において、中途失聴者・難聴者のニーズを反映させるため、「ライブ支援及び仲介者(案内者、朗読者及び手話通訳者を含む)」を「ライブ支援及び仲介者(案内者、朗読者及び手話通訳者、文字通訳者を含む)」とする。
  4. 民間部門に対しては、「容易にする」「促進する」という曖昧な努力規定から、より強い拘束力のある努力義務規定にしていくために、「確保する」を用いる。以下の項目が該当すると考える。
    (b)「アクセシビリティを容易にする」を「アクセシビリティを確保する」とする。
    (f)「アクセスすることを促進すること」を「アクセスすることを確保すること」とする。
    (g)「…分配を促進すること。」を「…分配を確保すること。」とする。
    (h)「援助及び支援を促進すること。」を「援助及び支援を確保すること。」とする。
  5. 第20条〔人のモビリティ(移動のしやすさ)〕を、本条の第3項として新しい条項を起こして、本条に合体する。
    【理由】
    本条の新しい条項として、第20条〔人のモビリティ〕を合体するという趣旨は、「アクセシビリティ」の概念を、基盤整備に関連する条項(第1、2項)と、障害のある人の個別的な特性に基づくニーズに対して効果的措置をとること(3項)を組み合わせることによって、民間主体への合理的配慮の提供を含む、より広義の概念にしていくことが重要と考える。
    【第3項新文案】
    1. この条約の締約国は、障害のある人の最大限可能な自立を伴った移動の自由を確保するための効果的な措置をとる。この措置には次のことを含む。
      (a) 障害のある人が選択する方法で及び時に、かつ、入手可能な費用で、障害のある人の移動の自由を確保すること。(→「容易に」を「確保」に修正する) 
      (b) 障害のある人が質の高い、モビリティのための補助具、機器、支援技術、ライブ支援及び仲介者を利用することを確保すること(これらを障害のある人に提供する民間主体への公的支援を通じて、入手可能な費用で利用可能なものにすることを含む。)。 (修正部分→1.「容易に」を「確保」に修正する、2.「障害のある人に提供する民間主体への公的支援を通じて、」を追加)
      (c) 障害のある人に対し及び障害のある人と共に働いている専門職員に対し、モビリティに関する技術の訓練を提供すること。
      (d) モビリティのための補助具、機器及び支援技術を生産する民間主体が障害のある人に係るモビリティのあらゆる側面を考慮することを奨励すること。
○意見
広義のアクセシビリティ規定となる第9条では、権利規定的な書き振りがあるとよい。社会権的規定なので、それほど問題にはならないと思われる。
○関連国内法規
交通バリアフリー法、ハートビル法あるいはこの2法を統合させた「ユニバーサルデザイン法」(検討開始?)。また参考として、日本福祉の街づくり学会などから提案されている「総合アクセス法」など。

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