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「障害者の権利条約」国連特別委員会議長草案に関する意見書

第3部

第31条〔統計及びデータ収集〕

○意見
  1. 基本的に支持する。
  2. 議長草案第4条(一般的義務)の3項―「締約国は、この条約を実施するための法令及び政策を発展させ及び実施する場合において並びに障害のある人と関連する事項に係る他の意思決定過程において、障害のある人及びその団体と緊密に協議し、かつそれらを積極的に関与させる。そのような事項には、(略)データ収集の立案及び実施とを含む。」に、本条が明記されたことは特に重要である。

第32条〔国際協力〕

○意見 
国際協力に関する独自の条文を支持する。条文案としては、第6回特別委員会でのファシリテーター案を基本的に支持する。とりわけ、同ファシリテーター案の(c)は、政府開発援助をはじめとする国際協力プログラム全般が障害者を排除しないという原則を確立するために重要である。
○関連国内施策
ODA全般とりわけ、ミレニアム開発目標(MDG)の実施と、人間の安全保障事業での障害の位置づけを明確にする必要がある。

第33条〔国内実施及び国内モニタリング〕

○意見
  1. 国内モニタリングの過程に、新しく3項として、当事者参画が明記されたことは重要。
  2. JDFの意見・要望事項として、基本的にこれまで国内モニタリングで提起してきた内容(以下、引用)に特段の変更はない。今後、パリ原則(1993年)の「国内人権機関」の役割、機能にかかわる課題(独立性当事者性、ジェンダーバランスの確保等)にどこまで近づいているかという観点から検討していく必要がある。
    来年の通常国会における人権擁護法案の提出の動向に関心を払いつつ、同法案に基づく「中央人権委員会」の内容と評価については、下記JDFの要望及び意見の「国内モニタリングに関する要望及び意見の(3)役割」との関連で、慎重に検討していく必要がある。
○JDFの意見、要望からー国内モニタリングに関する要望及び意見
(1)草案第25条第1項については、政府部内のどこに調整機関を置くべきか明確にするとともに、調整機関に当事者の意思を反映させていくこと。女性の条約では、内閣府に男女参画局が指定されている。障害者の条約では、少なくとも外務省の所轄部局と内閣府の障害者施策推進本部が政府内の総合的調整機能の役割を果たし、NGOの参画と意見を反映するための協議機関を設置することが必要である。
【草案第25条】
  1. 締約国は、この条約の実施に関連する事項についての中心的な活動機関を政府内に指定するものとし、また、多様な部門及び多様な段階において関連のある活動を推進するため、調整機関の設置又は指定について正当に考慮する。
(2)草案第25条第2項については、行政機関からの独立性と当事者性が確保された国内監視機関において、救済を含めた権利の監視を行い、また当事者の意思が反映されるための仕組みと役割を明確にすること。国内監視機関においては、「国内人権機関に関するパリ原則」(1993年)を踏まえ、行政機関からの独立性と当事者性(委員構成における障害NGOの積極的な参画等)が確保され、実効性のある権限と役割をもたせるために、条約の国内実施状況を監視し、権利侵害の救済を明記した監視・救済委員会の設置法の検討が必要である。(国家行政組織法第3条との関連)
【草案第25条】
  1. 締約国は、その法的及び行政的な制度に従って、この条約で認められた権利の実施を促進し、保護し及び監視するための枠組を国内で維持し、強化し、指定し及び設ける。
(3)役割について
  1. 条約に基づき、国内の法令、政策及び計画を監視すること。
  2. 条約に基づき、国内法令の影響に関する研究に着手し、それを推進すること。また、障害のある人に与える影響を評価するための制度を開発すること。
  3. 条約の不遵守についての苦情申立てを処理すること。
  4. 国内監視委員会は、条約の実施に関する不尊守の申立てを受けると、まず、任意の調査を行い、任意の調査によって事案が明らかにならない場合でかつ事案の解明が必要と判断される場合には、職権による立ち入りも含めた調査を実施する。
  5. 調査の結果、条約に違反することが確定した場合は、不利益または被害の 回復に向けた調停を行う。
  6. 調停が不調に終わった場合で、かつ差別、権利侵害の行為が認定されるときには、事案の重大性、緊急性に応じて、是正命令、警告、公表、勧告、要望等の処分を行う。
  7. 条約の実施状況について調査・監視し、定期的にその調査結果をまとめ、関連法令の改廃・制定に関し、提言を内閣に提出する。
  8. 条約の実施に関する国際的監視委員会に提出する「政府報告書」の作成を政府から委託を受けて行う。

第34条(国際モニタリング)

○意見
議長草案における国際モニタリングに関する条文(第34条)は空白である。もっとも、国際モニタリングを本条約に含めることについては、すでに一般的合意が得られている。また、モニタリングを、既存の人権条約のそれと同等かそれ以上のものにすべきであるとの合意も得られている。さらに、モニタリングのすべての段階に障害者自身と障害者団体が完全に参加することについて一般的支持もある。 第7回特別委員会では、国連人権高等弁務官事務所が準備する、人権条約体改革作業に関する報告等に留意した柔軟な規定を練り上げることになる。その際、すでに合意が得られているように、既存の人権条約と同水準かそれ以上のものを目指しながら、障害者自身がモニタリングに実質的に関与するという原則を具体化する規定ぶりを探る必要がある

○ 第4部については特になし

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